31 / 36
第六章 俺がオマエを死なせない
6-3
しおりを挟む
「まだ、なの……!?」
切っても切っても足はすぐに復活し、また襲ってくる。
いたちごっこだ。
私たちが守る中、祖母はもう一〇本以上の矢を打っているが、核はなかなか見えてこない。
それだけ穢れが大きいのと、蟲がもとの状態に戻るのもいつもよりも早いせいだ。
祖母に襲いかかる足を防いでいる私もへとへとだが、集中して矢を打っている祖母はもっと大変なはず。
さらに祖母が矢を三本打ち、ようやく赤く輝く核が姿を現した。
「威宗!」
「はっ!」
祖母が呼ぶと同時に威宗がビルの縁を蹴り、穢れへと大きく跳躍する。
――うおおおぉぉぉぉぉん!
祖母が御符を矢にセットして弓につがえると、最後のあがきとばかりに足が一気に襲ってきた。
「伶龍!」
「任せろ!」
伶龍が踊るように次々に足を叩き落としていく。
私もそれを、援護した。
その中で祖母が矢を放ち、核へ命中する。
瞬間、威宗が核を切り捨てた。
「やった……!」
さらさらと核は崩壊していった……が。
「……え?」
全員が目を見張り、穢れを見ていた。
「なんで、消えないの!?」
核が崩壊すれば、穢れは消えるはずなのだ。
なのに、その気配はまったくない。
それどころか半分ほどまで抉れていた蟲はまた集まってもとの形になり、ずり、ずりっと何事もなかったかのように前進を続けている。
「どういう、こと?」
なにが起こっているのか理解できず、誰もが呆然と立ち尽くす。
それが、いけなかったんだと思う。
――おおぉぉぉーん!
振り上がった穢れの足が、こちらに迫ってくる。
とっさのことで身体が動かない。
「翠!」
床を蹴った伶龍が、私を抱いてそのまま転がる。
その少し上を、足が凄い勢いで通過していった。
その軌道を追った先には、祖母がいる。
「ばあちゃん、避けて……!」
いつもなら機敏な祖母も、このときばかりは反応が遅れた。
「光恵様!」
威宗の悲痛な叫び声が聞こえると同時に、穢れの足が当たり、祖母が吹っ飛んだ。
「ばあちゃん!」
慌てて起き上がり、伶龍の手を借りて祖母のいるビルへと移る。
「ばあちゃん!
ばあちゃん!」
呼びかけるが祖母からの返事はない。
祖母の服は裂け、白い着物が赤く染まっていた。
「光恵様!」
すぐに威宗も、駆け寄ってくる。
「ばあちゃん、しっかりして!」
息はしている、死んではない。
すぐに手当てすれば助かるはず。
「……ったく、うるさいね」
少しして祖母が、開けづらそうに瞼を開いた。
「いててて……。
威宗」
「はっ」
威宗の手を借り、祖母が身体を起こす。
「騒ぐんじゃないよ。
ちーっと怪我をしただけだ」
少しのはずがない、祖母の呼吸は荒く、浅い。
かなりの深手のはずだ。
「たぶんありゃ、核が複数あるタイプだね。
昔、文献で読んだことがある」
「うん」
話しているあいだにも、祖母の着物の赤い範囲が広がっていく。
怖い、祖母まで亡くしたらどうしよう。
怖くて涙が浮いてくる。
けれどそれを、ぐっと堪えた。
これ以上、祖母を心配させるわけにはいかない。
「すぐに大ばあちゃんが到着する。
アンタはさっきと同じで、大ばあちゃんを援護しな。
きっと母さんなら、なんとか……して……くれ……る……」
祖母の声が次第に途切れ途切れになり、そのうち完全に途絶えた。
「ばあちゃん?
ばあちゃん!」
呼びかけるがもう祖母の瞼は開かない。
「……許さない」
「翠?」
心配そうに伶龍が、私の顔をのぞき込む。
「威宗。
ばあちゃんを後方へ運んで」
「はっ」
祖母を抱え、ビルの合間を跳躍してあっという間に威宗が去っていく。
すぐにその姿は見えなくなった。
切っても切っても足はすぐに復活し、また襲ってくる。
いたちごっこだ。
私たちが守る中、祖母はもう一〇本以上の矢を打っているが、核はなかなか見えてこない。
それだけ穢れが大きいのと、蟲がもとの状態に戻るのもいつもよりも早いせいだ。
祖母に襲いかかる足を防いでいる私もへとへとだが、集中して矢を打っている祖母はもっと大変なはず。
さらに祖母が矢を三本打ち、ようやく赤く輝く核が姿を現した。
「威宗!」
「はっ!」
祖母が呼ぶと同時に威宗がビルの縁を蹴り、穢れへと大きく跳躍する。
――うおおおぉぉぉぉぉん!
祖母が御符を矢にセットして弓につがえると、最後のあがきとばかりに足が一気に襲ってきた。
「伶龍!」
「任せろ!」
伶龍が踊るように次々に足を叩き落としていく。
私もそれを、援護した。
その中で祖母が矢を放ち、核へ命中する。
瞬間、威宗が核を切り捨てた。
「やった……!」
さらさらと核は崩壊していった……が。
「……え?」
全員が目を見張り、穢れを見ていた。
「なんで、消えないの!?」
核が崩壊すれば、穢れは消えるはずなのだ。
なのに、その気配はまったくない。
それどころか半分ほどまで抉れていた蟲はまた集まってもとの形になり、ずり、ずりっと何事もなかったかのように前進を続けている。
「どういう、こと?」
なにが起こっているのか理解できず、誰もが呆然と立ち尽くす。
それが、いけなかったんだと思う。
――おおぉぉぉーん!
振り上がった穢れの足が、こちらに迫ってくる。
とっさのことで身体が動かない。
「翠!」
床を蹴った伶龍が、私を抱いてそのまま転がる。
その少し上を、足が凄い勢いで通過していった。
その軌道を追った先には、祖母がいる。
「ばあちゃん、避けて……!」
いつもなら機敏な祖母も、このときばかりは反応が遅れた。
「光恵様!」
威宗の悲痛な叫び声が聞こえると同時に、穢れの足が当たり、祖母が吹っ飛んだ。
「ばあちゃん!」
慌てて起き上がり、伶龍の手を借りて祖母のいるビルへと移る。
「ばあちゃん!
ばあちゃん!」
呼びかけるが祖母からの返事はない。
祖母の服は裂け、白い着物が赤く染まっていた。
「光恵様!」
すぐに威宗も、駆け寄ってくる。
「ばあちゃん、しっかりして!」
息はしている、死んではない。
すぐに手当てすれば助かるはず。
「……ったく、うるさいね」
少しして祖母が、開けづらそうに瞼を開いた。
「いててて……。
威宗」
「はっ」
威宗の手を借り、祖母が身体を起こす。
「騒ぐんじゃないよ。
ちーっと怪我をしただけだ」
少しのはずがない、祖母の呼吸は荒く、浅い。
かなりの深手のはずだ。
「たぶんありゃ、核が複数あるタイプだね。
昔、文献で読んだことがある」
「うん」
話しているあいだにも、祖母の着物の赤い範囲が広がっていく。
怖い、祖母まで亡くしたらどうしよう。
怖くて涙が浮いてくる。
けれどそれを、ぐっと堪えた。
これ以上、祖母を心配させるわけにはいかない。
「すぐに大ばあちゃんが到着する。
アンタはさっきと同じで、大ばあちゃんを援護しな。
きっと母さんなら、なんとか……して……くれ……る……」
祖母の声が次第に途切れ途切れになり、そのうち完全に途絶えた。
「ばあちゃん?
ばあちゃん!」
呼びかけるがもう祖母の瞼は開かない。
「……許さない」
「翠?」
心配そうに伶龍が、私の顔をのぞき込む。
「威宗。
ばあちゃんを後方へ運んで」
「はっ」
祖母を抱え、ビルの合間を跳躍してあっという間に威宗が去っていく。
すぐにその姿は見えなくなった。
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる