可愛い女性の作られ方

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
17 / 17
六.結婚――一緒にいることを誓います

4.ずっと一緒にいることを誓います

しおりを挟む
五月の連休。両家の顔合わせをした。 
場所は会社の近くの有名ホテル。
結局、結納はしないことになって、顔合わせだけで済ませることにした。

当日、うちの両親はスキップしそうな勢いでやってきたけど……やっぱりお義母さんは仏頂面。
結婚は認めてくれたけどやっぱり嫌々だから、私とは目も合わさない。
ぎくしゃくした空気にうちの両親が気まずい思いをしているのかといえば……脳天気なうちの親は全然気が付いていない。
いつもは困る両親だけど、こんな時は大助かりだ。

「あ、お義父さん、お義母さん。
と、父さん、母さん。
もう顔合わせも終わったことですし、今日にでも入籍しようと思ってます。
よろしくお願いします」
 
うちの両親は顔がもう、めっちゃきらきらしている。
しかし、お義母さんは寝耳に水とばかりに、驚いた顔している。

……そして私も。
いま初めて聞いた。

「……貴尋。
そんなに急がなくても」

「そうですよ!」
 
もうお義母さんは爆発寸前、って感じだ。  
お義父さんが必死でなだめている。

「だって俺、早く子供が欲しいから。
こんな言い方をするのは優里にはほんとにほんとに申し訳ないんだけど、優里も年が年だし、ゆっくりしてられない」

「えっ、あっ、……うん」
 
……ううっ。
なんか恥ずかしー。
貴尋と私の子供。
私だって、欲しい。

「そんなの、わかってるわよっ!」
 
お義母さんは結局、怒ったまま帰っていった。
お義父さんが目配せしてくれていたから、……きっと、大丈夫だと……思う。
あとで一応、ご機嫌伺のワッフル送っとこう。


そのあと。

うちの両親は「式場はここもいいわねー」とかいいながらホテルを見学し、図々しくもお役所までついてきて、私たちの入籍を見届けて帰ってきましたとも。
はい。


連休明けて会社に入籍報告すると、それはもう、蜂の巣つついたような大騒ぎ。    

……中身が男と思われている私が、しかも七つも年下の元部下と、結婚したんです。
そりゃあ、大騒ぎにもなりそうなもんです。

結局、みなが話を聞きたがり仕事にならないもんだから、終わったら飲み会が開かれることになり、
急遽大人数での場所を押さえるために何人かが走り回る結果となりましたとさ。


飲み会がだいぶ進んできた頃。
……私は裕紀に絡まれていた。

「最近なんか、可愛くなって女らしくなってきたとは思ってたけど。
そういうことだったんだ」

「えっ。
ああ」

「なんで俺の前でもそんな態度とらなかったんだよ?」
 
……おまえが気付かなかっただけだっちゅーの。

「初めからそんな可愛い態度見せてれば、俺だって考えなくもなかったのに」
 
……だからおまえが、見つけられなかっただけだろーが。
貴尋は見つけてくれて、引き出してくれた。   

「俺じゃあ、見せる気にもならなかったって訳?」
 
……別にわざと見せなかった訳じゃないって。
何度もいうようだけど、おまえが見つけられなかっただけ。

「それとも、若い男がよくて猫かぶってるの?」
 
……はぁっ?
そんなことある訳ないだろうが!

カチンときて、まだビールの入ったコップを握ったとき、さりげなく、貴尋に上から押さえられた。

「はあ?
なにいってるんですか?
優里は元から可愛いですよ。
特にベッドの中とか、滅茶苦茶可愛いのに。
それがわからないなんて、もしかして高城先輩……下手、なんですか?」
 
裕紀は顔を真っ赤にして怒っている。
貴尋は余裕で見下したように笑っている。

「優里、帰りましょう」

「あ、でも、主役が帰ったら」

「もうみんな、できあがってるからいいですよ。
幹事にはいっておきますから」
 
幹事に適当に言い訳して、貴尋はすぐに私の元に戻ってきた。    
ふたりで一緒に店を出る。

「前からいってやりたかったんですよねー。
あー、スッキリした」

「あんなこといったら、あと大変になるよ」

「別に?
絶対、俺の方が上手いですから。
……どうなんですか、優里?」

「え、あ、…………うん。
貴尋が一番、気持ちいい」

「なら問題ないです!」
 
上機嫌に貴尋は、繋いだ手をぶんぶん振り回している。

……うん。
こいつは思っている以上に、大物なんじゃないか?

……後日。
「加久田は相当のテクニシャンで、篠崎はそのテクニックに惚れたらしい」と何故か課内では囁かれていた。
……あ、いや、半分は正解みたいなもんだけど。


式は九月に挙げることになった。
いつも通り仕事しながら、合間に式場の手配や衣装合わせ、招待状の手配なんかしていると、あっという間に八月になっていた。


「優里?
最近、調子悪そうじゃないですか?」

「そう、か?」
 
……うん。なんか体がだるいんだよねー。
このところ仕事が立て込んでいるから、
疲れているのだと思うけど。

「……もしかして、できたんじゃないですか?」

「え?」
 
……できたって、……赤ちゃん、だよね?
そういえば、最後に生理きたのって……。

「最後きたの、いつですか?
ゴミの感じからしても、結構前じゃないですか?」

「……二ヶ月くらい前、かも」
 
貴尋と付き合うようになる前は。
不順なことが多かったら、一ヶ月くらい飛んでいても気にならなかった。
でも、よく考えたら、今月もきていない。

「明日検査薬、買ってきますね」 

「……うん」


翌日。
検査キットで調べてみたら、陽性反応が出た。
病院に行ったら、ちゃんと妊娠していた。
貴尋は大喜びで、……それから妙に、過保護になって困っている。


式の当日。
ウェディングドレス着て、私は不安になっていた。

……ドレス、似合っているのかな?
ううん。
それ以上に貴尋はほんとに私でよかったのかな?
お義母さんだって、まだ心から許してくれていないし。
いいのかな?本当に?

マリッジブルー?マタニティブルー?どっちなのか両方なのか知らないけど、ひたすら不安でたまらない。

「優里、なに泣きそうな顔してるんですか?」

着替えて私の様子を見に来た貴尋は、困ったように笑っている。

「だって、貴尋、ほんとに私、貴尋と結婚していいのかな?
大丈夫なのかな?
ねえ、貴尋?」    

「なにいってるんですか?
俺の奥さんは優里って決まってるんですから」

「……うん」

「それに今日は、俺と、優里と、おなかの赤ちゃんと、ずっと一緒って神様に誓う、素敵な日なんですから。
いまから泣いててどうするんですか?」

「そう、だね」
 
……目尻に溜まっていた涙を拭って、キスしてくれた。
おかげで不安が治まっていった。
 
お父さんに腕をとられて、カーペットの上を歩く。
いった先には貴尋が待っている。

誓いの言葉を言い、指環を交換する。
ベールが上がって貴尋と目があった。

「優里と子供を一生、愛しています」

唇が重なり、おさまりきれなくなった幸福が涙になって落ちていく。

……私は。
神様ではなくて貴尋に誓う。
なにがあっても、ずっと貴尋を愛している。
大事にする。         
ずっとずっと、一緒にいることを誓います……。


【終】
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと? そんな男、こっちから願い下げ! ——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ! って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

譲れない秘密の溺愛

恋文春奈
恋愛
憧れの的、国宝級にイケメンな一条社長と秘密で付き合っている 社内一人気の氷室先輩が急接近!? 憧れの二人に愛される美波だけど… 「美波…今日充電させて」 「俺だけに愛されて」 一条 朝陽 完全無欠なイケメン×鈴木 美波 無自覚隠れ美女

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜

葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」 そう言ってグッと肩を抱いてくる 「人肌が心地良くてよく眠れた」 いやいや、私は抱き枕ですか!? 近い、とにかく近いんですって! グイグイ迫ってくる副社長と 仕事一筋の秘書の 恋の攻防戦、スタート! ✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼ 里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書 神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長 社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい ドレスにワインをかけられる。 それに気づいた副社長の翔は 芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。 海外から帰国したばかりの翔は 何をするにもとにかく近い! 仕事一筋の芹奈は そんな翔に戸惑うばかりで……

処理中です...