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第三章 ニキを元の世界に帰してやりたいのだ
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「それでは、よろしくお願いします」
おばちゃんたちに会釈し、観光案内所を出る。
かなちゃんはニキの肩の上で上機嫌だ。
「さて。
このあたりにこの子の両親はいないみたいだし、どこ探そうか?」
「んー、おばちゃんたちが組合の宿泊施設を当たってくれるって言っていたし、俺たちは観光しながら探すか」
「そうだね!」
ニキの提案に賛成し、歩きだす。
そのまま、街をぷらぷらした。
「……ねえ」
「……なんだ?」
かなちゃんに聞こえないように、こそこそと話す。
「まさかツノ、見えてる……とかないよね?」
さっきからニキの肩に座るかなちゃんが握っているのは……彼のツノだ。
「見えてる……よな、これ?」
ニキも確認するようにちらりと彼女へと視線を向ける。
「え?
認識阻害で見えないんじゃなかったの?」
もしかしていままで、周りに見ていないと思っていただけで、実は見えていたとしたら大問題だ。
「幼くて勘の鋭い子には見えるのかもな。
動物みたいに」
「ああ……」
ニキの言葉に納得した。
動物とかニキを見た途端、怯えて逃げちゃうもんね。
それと同じか。
しかし。
「ちち、のどかわいた」
ニキのツノを叩き、足をバタバタさせているかなちゃんを盗み見る。
まさか、彼女の父親も魔族で、異世界から転移してきたとかないよね?
ジュースは飲ませてやりたいがアレルギーが怖いので、サイダーで手を打った。
砂糖水なんだから大丈夫……だよね?
「けふっ。
しゅわしゅわするー」
炭酸は初めてだったのか、目を丸くしてかなちゃんが小さくゲップする。
それすら可愛らしい。
小さな生き物はなにをしても可愛いのだ。
「しゅわしゅわするねぇ」
ニキも同意見らしく、完全に彼女を見る顔は蕩けている。
「人間の子供ってこんなに可愛いんだな」
「ちち、やめるー!」
ニキからつつかれ、頬を膨らませるかなちゃんも大変可愛らしい。
「はいはい」
笑いながら彼は手を引っ込め、自分のカップを掴んだ。
「次はどこに行こうか」
「足湯とかどう?」
「いいな、それ」
「あしゆー、あしゆー」
無邪気にはしゃぐかなちゃんは大変可愛らしい。
それに、なんだかんだ言ってニキは父親らしく見えていた。
子供ができたらこんな感じになるのかな。
それも、悪くない。
足湯でまったりしていたら、ニキの携帯が鳴った。
観光案内所からで、近くに来ている劇団が子供がいなくなったと探していると教えてくれた。
三人で劇団が借りているという小劇場へ向かう。
「ちちー!」
「佳菜子……!」
私たちを出迎えたのは魔王……ではなく、魔王役で頭に立派なツノをつけた男性でした。
その姿を見て、思わずニキと顔を見合わせて笑っていた。
「すみません、すみません。
ちょっと目を離した隙にいなくなって」
かなちゃんの父親は恐縮しきっているが、それはいい。
「その……普段からその格好なんですか?」
かなちゃんがあのツノでニキを父親だと判断していたとしたら、それしかない。
「ああ、これですか?
サイズ感を得るために、いつも着けています」
「そうですか……」
世の中にはいろいろな人がいるので、これ以上はなにも聞かずにおこう。
かなちゃんに別れを告げ、車を取りに戻って旅館へ向かう。
「しっかし、随分懐かれてたね。
『ちち、いかいないでー!』だって」
泣いてニキから離れようとしたなかったかなちゃんを思い出し、つい笑ってしまう。
「あー……。
いいよな、子供」
「……え?」
ぽそっと照れくさそうにニキが落とし、思わずその顔を見ていた。
「俺も苺とのあいだに子供が欲しいなー、……とか言ったらどうする?」
一瞬だけうかがうように、彼の視線が私へと向かう。
「えっと。
……考え、させて」
ニキの顔を見るのが怖くて、俯いて答えた。
「……そっか」
酷く残念そうな声が聞こえてきて、反射的に頭が上がる。
「でも、考えてはくれるんだな」
彼は笑っていたがどこか淋しそうで、ずきんと胸が痛んだ。
「……うん。
考える、よ」
前へと視線を戻しながら、声はどこかぎくしゃくとなる。
かなちゃんと一緒にいて、ニキとのあいだに子供ができるのも悪くないと思っていた。
しかし、いざとなると迷いが生じる。
ニキはいずれ、向こうの世界に帰る人。
なら、こちらの世界に未練はなるべく作らないほうがいい。
すでにそうなっている私の、言うべき台詞ではないが。
しかしそうわかっていても、ここに彼を繋ぎ止めておきたい自分がいる。
そのときがきたら、私はどうするのだろう?
おばちゃんたちに会釈し、観光案内所を出る。
かなちゃんはニキの肩の上で上機嫌だ。
「さて。
このあたりにこの子の両親はいないみたいだし、どこ探そうか?」
「んー、おばちゃんたちが組合の宿泊施設を当たってくれるって言っていたし、俺たちは観光しながら探すか」
「そうだね!」
ニキの提案に賛成し、歩きだす。
そのまま、街をぷらぷらした。
「……ねえ」
「……なんだ?」
かなちゃんに聞こえないように、こそこそと話す。
「まさかツノ、見えてる……とかないよね?」
さっきからニキの肩に座るかなちゃんが握っているのは……彼のツノだ。
「見えてる……よな、これ?」
ニキも確認するようにちらりと彼女へと視線を向ける。
「え?
認識阻害で見えないんじゃなかったの?」
もしかしていままで、周りに見ていないと思っていただけで、実は見えていたとしたら大問題だ。
「幼くて勘の鋭い子には見えるのかもな。
動物みたいに」
「ああ……」
ニキの言葉に納得した。
動物とかニキを見た途端、怯えて逃げちゃうもんね。
それと同じか。
しかし。
「ちち、のどかわいた」
ニキのツノを叩き、足をバタバタさせているかなちゃんを盗み見る。
まさか、彼女の父親も魔族で、異世界から転移してきたとかないよね?
ジュースは飲ませてやりたいがアレルギーが怖いので、サイダーで手を打った。
砂糖水なんだから大丈夫……だよね?
「けふっ。
しゅわしゅわするー」
炭酸は初めてだったのか、目を丸くしてかなちゃんが小さくゲップする。
それすら可愛らしい。
小さな生き物はなにをしても可愛いのだ。
「しゅわしゅわするねぇ」
ニキも同意見らしく、完全に彼女を見る顔は蕩けている。
「人間の子供ってこんなに可愛いんだな」
「ちち、やめるー!」
ニキからつつかれ、頬を膨らませるかなちゃんも大変可愛らしい。
「はいはい」
笑いながら彼は手を引っ込め、自分のカップを掴んだ。
「次はどこに行こうか」
「足湯とかどう?」
「いいな、それ」
「あしゆー、あしゆー」
無邪気にはしゃぐかなちゃんは大変可愛らしい。
それに、なんだかんだ言ってニキは父親らしく見えていた。
子供ができたらこんな感じになるのかな。
それも、悪くない。
足湯でまったりしていたら、ニキの携帯が鳴った。
観光案内所からで、近くに来ている劇団が子供がいなくなったと探していると教えてくれた。
三人で劇団が借りているという小劇場へ向かう。
「ちちー!」
「佳菜子……!」
私たちを出迎えたのは魔王……ではなく、魔王役で頭に立派なツノをつけた男性でした。
その姿を見て、思わずニキと顔を見合わせて笑っていた。
「すみません、すみません。
ちょっと目を離した隙にいなくなって」
かなちゃんの父親は恐縮しきっているが、それはいい。
「その……普段からその格好なんですか?」
かなちゃんがあのツノでニキを父親だと判断していたとしたら、それしかない。
「ああ、これですか?
サイズ感を得るために、いつも着けています」
「そうですか……」
世の中にはいろいろな人がいるので、これ以上はなにも聞かずにおこう。
かなちゃんに別れを告げ、車を取りに戻って旅館へ向かう。
「しっかし、随分懐かれてたね。
『ちち、いかいないでー!』だって」
泣いてニキから離れようとしたなかったかなちゃんを思い出し、つい笑ってしまう。
「あー……。
いいよな、子供」
「……え?」
ぽそっと照れくさそうにニキが落とし、思わずその顔を見ていた。
「俺も苺とのあいだに子供が欲しいなー、……とか言ったらどうする?」
一瞬だけうかがうように、彼の視線が私へと向かう。
「えっと。
……考え、させて」
ニキの顔を見るのが怖くて、俯いて答えた。
「……そっか」
酷く残念そうな声が聞こえてきて、反射的に頭が上がる。
「でも、考えてはくれるんだな」
彼は笑っていたがどこか淋しそうで、ずきんと胸が痛んだ。
「……うん。
考える、よ」
前へと視線を戻しながら、声はどこかぎくしゃくとなる。
かなちゃんと一緒にいて、ニキとのあいだに子供ができるのも悪くないと思っていた。
しかし、いざとなると迷いが生じる。
ニキはいずれ、向こうの世界に帰る人。
なら、こちらの世界に未練はなるべく作らないほうがいい。
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しかしそうわかっていても、ここに彼を繋ぎ止めておきたい自分がいる。
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