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第三章 ニキを元の世界に帰してやりたいのだ
3-6
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微妙な空気のまま、旅館に着いた。
「うわーっ、ショボい商店街でやってた福引きの景品にしては、素敵なお宿だね」
「苺、言い過ぎ」
わざとはしゃいでみせたら、ニキも笑ってくれた。
今日は楽しい新婚旅行だ。
わからない未来のことはまた考えればいい。
「え、部屋、間違ってない……?」
案内された部屋は離れで、かなり立派だった。
経費削減で平日のみにした商店街のプランとは思えない。
「あー……。
差額払って、ランクアップしてもらった」
ぽりぽりと照れくさそうに首の後ろを掻きながらニキが目を逸らす。
「はい……?」
つい、ぱちぱちと何度かまばたきをしてしまう。
わざわざなんで、そんなことを?
「せっかくの新婚旅行だろ?
素敵な思い出にしたくて……」
さっきから彼はあらぬ方向を見ながら、ちらっ、ちらっと私に視線を送ってくる。
もしかして少し前に欲しいものがあるとか言っていたのは、これ?
だとしたら……。
「……ありがとう、ニキ」
甘えるように彼に肩を軽くぶつける。
「別に俺は、なにも……」
さっきかニキはらしくなく照れっぱなしだ。
そういうところ、可愛くて好き。
お風呂は部屋付きだった。
開放感のある露天は景色もよく、素敵だけれど。
「一緒に入るか?」
「入るかー!
それ以前に、丸見えなんですけど?」
当然のごとく誘ってきたニキを、間髪入れず断る。
それはいい、いやよくないが、どうして最近の宿は、部屋から丸見えの設計でお風呂を作るんだ?
恥ずかしくないのか、これは。
「どうせ見えるんだから一緒に入ればいいだろ」
さらにニキが誘ってくるが、それとこれとは別問題というか。
「じゃ、じゃあ私は、本館の大浴場に……」
などと断りながら、ふと思う。
今日は一応、新婚旅行なわけで。
ならここは、一緒に入ってもいいんじゃない?
「残念。
じゃあ、俺ひとりで……」
「……一緒に、入る」
それでも彼の顔は見られなくて、後ろからシャツの裾をちょんと掴んで告げる。
「苺?」
「だから、一緒に入っていいよ。
今日は新婚旅行だから、特別」
「ありがとう、苺。
でも、無理はしなくていいからな」
後ろに回ってきた手が、柔らかくくしゃくしゃと私の頭を撫でる。
そういうの、いいなって思う。
一緒にお風呂には入ったものの、なんとなく距離を取ってしまう。
「そんなに警戒しなくても」
くつくつとおかしそうにニキが笑い、カッと頬が熱くなる。
「いや、警戒とかそんな」
顔を僅かにお湯に沈め、ぶくぶくと言い訳は誤魔化した。
「まあ、苺がこうやって一緒に風呂に入ってくれたってだけで俺は満足だけどな」
私の心を見透かしているのか、ふふっと小さくニキが笑う。
しかしこれで満足って、仮にも私たちは夫婦なんですよ?
いいのか、本当に。
なんて、いまだに彼に身体を許さない私が言えることではないが。
お風呂から出たあとは夕食だった。
「苺。
いままでありがとう。
これからもよろしく」
「……よろしく」
スパークリング日本酒の入ったグラスを小さくあわせ、乾杯する。
……これからも、か。
それって、あとどれくらいなんだろう。
一年?
十年?
それとも、明日?
ううん、いまは考えない。
「美味しそうだね、料理」
「苺が好きそうなの、頼んでおいた」
料理はご当地牛のステーキを中心にした会席料理だった。
美味しい食事についついお酒が進み、そして。
「うわーっ、ショボい商店街でやってた福引きの景品にしては、素敵なお宿だね」
「苺、言い過ぎ」
わざとはしゃいでみせたら、ニキも笑ってくれた。
今日は楽しい新婚旅行だ。
わからない未来のことはまた考えればいい。
「え、部屋、間違ってない……?」
案内された部屋は離れで、かなり立派だった。
経費削減で平日のみにした商店街のプランとは思えない。
「あー……。
差額払って、ランクアップしてもらった」
ぽりぽりと照れくさそうに首の後ろを掻きながらニキが目を逸らす。
「はい……?」
つい、ぱちぱちと何度かまばたきをしてしまう。
わざわざなんで、そんなことを?
「せっかくの新婚旅行だろ?
素敵な思い出にしたくて……」
さっきから彼はあらぬ方向を見ながら、ちらっ、ちらっと私に視線を送ってくる。
もしかして少し前に欲しいものがあるとか言っていたのは、これ?
だとしたら……。
「……ありがとう、ニキ」
甘えるように彼に肩を軽くぶつける。
「別に俺は、なにも……」
さっきかニキはらしくなく照れっぱなしだ。
そういうところ、可愛くて好き。
お風呂は部屋付きだった。
開放感のある露天は景色もよく、素敵だけれど。
「一緒に入るか?」
「入るかー!
それ以前に、丸見えなんですけど?」
当然のごとく誘ってきたニキを、間髪入れず断る。
それはいい、いやよくないが、どうして最近の宿は、部屋から丸見えの設計でお風呂を作るんだ?
恥ずかしくないのか、これは。
「どうせ見えるんだから一緒に入ればいいだろ」
さらにニキが誘ってくるが、それとこれとは別問題というか。
「じゃ、じゃあ私は、本館の大浴場に……」
などと断りながら、ふと思う。
今日は一応、新婚旅行なわけで。
ならここは、一緒に入ってもいいんじゃない?
「残念。
じゃあ、俺ひとりで……」
「……一緒に、入る」
それでも彼の顔は見られなくて、後ろからシャツの裾をちょんと掴んで告げる。
「苺?」
「だから、一緒に入っていいよ。
今日は新婚旅行だから、特別」
「ありがとう、苺。
でも、無理はしなくていいからな」
後ろに回ってきた手が、柔らかくくしゃくしゃと私の頭を撫でる。
そういうの、いいなって思う。
一緒にお風呂には入ったものの、なんとなく距離を取ってしまう。
「そんなに警戒しなくても」
くつくつとおかしそうにニキが笑い、カッと頬が熱くなる。
「いや、警戒とかそんな」
顔を僅かにお湯に沈め、ぶくぶくと言い訳は誤魔化した。
「まあ、苺がこうやって一緒に風呂に入ってくれたってだけで俺は満足だけどな」
私の心を見透かしているのか、ふふっと小さくニキが笑う。
しかしこれで満足って、仮にも私たちは夫婦なんですよ?
いいのか、本当に。
なんて、いまだに彼に身体を許さない私が言えることではないが。
お風呂から出たあとは夕食だった。
「苺。
いままでありがとう。
これからもよろしく」
「……よろしく」
スパークリング日本酒の入ったグラスを小さくあわせ、乾杯する。
……これからも、か。
それって、あとどれくらいなんだろう。
一年?
十年?
それとも、明日?
ううん、いまは考えない。
「美味しそうだね、料理」
「苺が好きそうなの、頼んでおいた」
料理はご当地牛のステーキを中心にした会席料理だった。
美味しい食事についついお酒が進み、そして。
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