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1.秘密にする必要性
一年間の諸々を経て、俺、蔵田嘉規と彼女、佐々#鳴海__なるみ__#が付き合い始めて三ヶ月。
部内の、一泊二日の慰安旅行がやってきた。
ふたりっきりではないとはいえ、初めて一緒に旅行なんかに行くんだから、少しくらいは……などと思うのは、俺だけなんだろうか?
視線が合うとさっと逸らされる。
隣に座ると逃げられる。
……帰ったら、お仕置き決定、だな。
だいたい、ナルの奴は俺と付き合ってるのを周囲に隠したがる。
別に社内恋愛禁止じゃないし、ばれたってかまわないと思うのだが?
第一、最近のナルは可愛くなって、ちょっかいかけてくる奴もいるから苛々する。
このあいだも、食事に誘われてた。
だからその夜。
「ナル。
どうして俺と付き合ってるって云わない?」
顎を掴んで上を向かせ、無理矢理視線を合わせる。
俺の銀縁ハーフリムの眼鏡とナルの、プラスッチク赤スクエアの眼鏡の、二枚のレンズ越しに見える瞳は、小動物のように怯え、視線を彷徨わせてる。
「きょろきょろするな。
俺を見ろ」
おそるおそる俺と視線を合わせたナルだったけれど。
みるみるうちにその目には涙がたまっていく。
「だ、だってー」
とうとう、ふぇーんと泣きだしたナルをたまらなくなってぎゅっと抱きしめた。
……というか。
ほんとは泣かせる必要、ないんだが。
想いを通じ合わせた日。
泣いたナルが可愛くて。
それ以来、ついつい泣かせたくなる。
「ん?
だって、なに?」
「まわりに、贔屓されてる、とか、贔屓してる、とか、思われたく、ないん、です……」
しゃくりあげながら話すナルは、まるで小さな子供みたいで可愛い。
まじめなナルらしい言葉にも納得だ。
「別に俺はナルが恋人だからって贔屓しない。
それはナルが一番、わかってるだろ」
「わかってます、けど。
そういうふうに、見る人も、いるので。
私はいいけど、嘉規さんが困る、から」
困ったように小首を傾げるナルに、思わず唇をふれさせた。
そのままナルの、眼鏡を外す。
……眼鏡を外すのは、より深いキスの合図。
そう教え込まれてるナルはゆっくりと、その濡れた大きな瞳を閉じた。
再びふれさせた唇に、ナルの吐息が漏れる。
何度もその薄い唇を喰んで感触を楽しんだ後、彼女の中へと進入した。
互いの舌がふれるたび、ナルが甘い吐息を漏らす。
それさえも愛おしくて、漏らさずすべて、吸い込んだ。
銀糸をつなげたまま唇が離れると、ナルは熱で潤んだ瞳で、ぼーっと俺を見上げてた。
「俺はいいんだ。
ナルがつらくなければ」
また、その唇に口づけを落とすと、ナルの手が俺のシャツを掴む。
懇願する、その瞳にゾクリとした。
そのままベッドに運び、思う存分ナルを可愛がり……この話は、うやむやになってしまった。
部内の、一泊二日の慰安旅行がやってきた。
ふたりっきりではないとはいえ、初めて一緒に旅行なんかに行くんだから、少しくらいは……などと思うのは、俺だけなんだろうか?
視線が合うとさっと逸らされる。
隣に座ると逃げられる。
……帰ったら、お仕置き決定、だな。
だいたい、ナルの奴は俺と付き合ってるのを周囲に隠したがる。
別に社内恋愛禁止じゃないし、ばれたってかまわないと思うのだが?
第一、最近のナルは可愛くなって、ちょっかいかけてくる奴もいるから苛々する。
このあいだも、食事に誘われてた。
だからその夜。
「ナル。
どうして俺と付き合ってるって云わない?」
顎を掴んで上を向かせ、無理矢理視線を合わせる。
俺の銀縁ハーフリムの眼鏡とナルの、プラスッチク赤スクエアの眼鏡の、二枚のレンズ越しに見える瞳は、小動物のように怯え、視線を彷徨わせてる。
「きょろきょろするな。
俺を見ろ」
おそるおそる俺と視線を合わせたナルだったけれど。
みるみるうちにその目には涙がたまっていく。
「だ、だってー」
とうとう、ふぇーんと泣きだしたナルをたまらなくなってぎゅっと抱きしめた。
……というか。
ほんとは泣かせる必要、ないんだが。
想いを通じ合わせた日。
泣いたナルが可愛くて。
それ以来、ついつい泣かせたくなる。
「ん?
だって、なに?」
「まわりに、贔屓されてる、とか、贔屓してる、とか、思われたく、ないん、です……」
しゃくりあげながら話すナルは、まるで小さな子供みたいで可愛い。
まじめなナルらしい言葉にも納得だ。
「別に俺はナルが恋人だからって贔屓しない。
それはナルが一番、わかってるだろ」
「わかってます、けど。
そういうふうに、見る人も、いるので。
私はいいけど、嘉規さんが困る、から」
困ったように小首を傾げるナルに、思わず唇をふれさせた。
そのままナルの、眼鏡を外す。
……眼鏡を外すのは、より深いキスの合図。
そう教え込まれてるナルはゆっくりと、その濡れた大きな瞳を閉じた。
再びふれさせた唇に、ナルの吐息が漏れる。
何度もその薄い唇を喰んで感触を楽しんだ後、彼女の中へと進入した。
互いの舌がふれるたび、ナルが甘い吐息を漏らす。
それさえも愛おしくて、漏らさずすべて、吸い込んだ。
銀糸をつなげたまま唇が離れると、ナルは熱で潤んだ瞳で、ぼーっと俺を見上げてた。
「俺はいいんだ。
ナルがつらくなければ」
また、その唇に口づけを落とすと、ナルの手が俺のシャツを掴む。
懇願する、その瞳にゾクリとした。
そのままベッドに運び、思う存分ナルを可愛がり……この話は、うやむやになってしまった。
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