社内恋愛~○と□~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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2.社内旅行

その後。

この話を再びすることなく、慰安旅行の日を迎えてしまった。
確かに社内の旅行で大手を振っていちゃつくことはできないが、少しくらい、と思う。
第一、一緒に暮らしてる現在、二日もこんな状況なんて耐えられるはずもない。


悶々としながら迎えた夜の宴会。
課長の俺は当然上座。
なるべく人から離れたいナルは遙か遠くの、下座の幹事の前。
部内の慰安旅行とはいえ、遠すぎる。

苛ついているのをまわりに悟られないように、完璧な笑顔を張り付かせる。
注がれる酒にも、話しかけられる声にも、いつも通りを演じて返しながら、ずっとナルを気にしていた。

「佐々さん、飲んでるー?」

ナルを呼ぶ声に、ピクリと肩が震えた。
そっちに視線を向けたいのに、隣の下部しもべ部長が盛んに俺に話しかける。
仕方ないので、耳だけしっかり、一言一句、聞き逃さないようにナルの方に向ける。

「えっと。
飲んでますー」

へらへら笑ってるであろう、ナルの声にイラッとしたが、あれは人見知りで引っ込み思案なナルなりの処世術なので我慢我慢。

「ほんとー?
なに飲んでんのー?」

なおもナルに話しかけ続ける男――木山きやまの胸ぐらを掴みたいが、これも我慢。

「あー、えっと。
ビール、です」

「俺もビールー。
気が合うね、俺たち」

「えっと。
そう、ですね」

……なにが「気が合うねー」だ。
木山の奴。
俺のナルに気安く話しかけるな。

へらへらと笑う木山に、へらへらとナルは同意しているが。
「えっと」がついてたので許してやる。

「えっと」はナルの口癖で、あれが出てくるのは困ってる証拠だ。

「グラス空じゃん?
注いでやるよ」

「あー、えっと。
ありがとうございます」

ナル、飲み過ぎ。
そろそろ適量超えるぞ?

「でだな。
蔵田くんはどう思う?」

「えっ、あ、そうですね」

ナルに気を取られて話を聞き流してたら、突然下部部長に振られて焦った。

「まあ、それはそれでいいんじゃないでしょうか?」

適当に誤魔化して返事をした……けれど。

「じゃあ、君、近いうちに大阪支社に転勤な。
いやー、よかった。
向こうの戸次べっき部長から、しつこく頼まれててさー。
ほんとよかった」

「……はい?」

……え。
転勤って、なに?

「聞いてなかったのか?
いや、聞いてなかったにしろ、承知したものはもう取り消せないからな」

「……はい」

下部部長の、迫ってきた大きな顔に。

……ただ頷くことしかできなかった。
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