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第一章 令嬢秘書の正体
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「できたよー」
できあがったオムライスをふたつ、テーブルの上に置く。
社長にはインスタントで申し訳ないがコーヒーを出した。
「うまそうだな」
などと言われても、社長の分はない。
「俺も食べたい」
「え……」
まさかの言葉が出てきて戸惑った。
だって、あの桜花航空の御曹司だよ?
自分だって億稼いでいるんだよ?
それが、オムライス、しかも一般人の作ったものを食べたいなんて言うと思う?
「俺の分も作ってくれ」
しかし社長は私の顔を見て、人懐っこくにぱっと笑った。
「ええっと……。
お口にあうとは思えませんが……」
食べてまずいとか言われたら嫌だし。
それに、残されて食材を無駄にするのは絶対に避けたい。
「なんだ、俺には作ってくれないのか?」
やんわりと断ったら、みるみる社長がご機嫌斜めになっていく。
「でも……」
「あー、誰かに叩かれた頬が痛いなー」
それでも渋っていたら、もう外していた氷をわざとらしくまた社長は頬に当てた。
「うっ。
……作りますよ」
渋々ながら立ち上がり、また台所へ向かう。
ああやって脅してくるなんて、卑怯だ。
余りは冷凍すればいいと残りご飯を全部ケチャップライスにしていたので、あとは玉子を巻くだけでよかったのは幸いだった。
手早く調理して、社長の前に出す。
「どうぞ」
「おー、うまそーだーなー」
ほくほく顔で社長がスプーンを取る。
私もかまわずに食べはじめた。
「うん、うまい!
なあ、望もそう思うだろ?」
「さやねぇちゃんのオムライスはせかいいち、おいしいんだよ!」
「そんな……。
褒めてもなにも出ないですよ?」
ふたりから褒められて悪い気はしない。
一瞬、どうして御子神社長がここにいるのか、忘れそうになった。
いかん、いかん。
食事も終わり、うとうとしはじめた美妃を布団に寝かせる。
望は先程の番組にまた釘付けだ。
「鍵を届けていただき、ありがとうございました。
でも、どうして私の家が?」
貧乏バレ予防のために、今まで一度も家まで送ってもらわなかった。
なのにどうしてここがわかったんだろう?
「一応、直属の部下の分くらいは住所は頭に入っているから、わかる」
ドヤ顔で、大きな手で覆うように眼鏡を上げる社長を、なんとも言えない気持ちで見ていた。
そういえば、全スタッフの名前は頭に入っているとかいつも言っているが、もしかして本当……?
「しかし、清子がこんな貧乏暮らしをしているとは思わなかったぞ。
うちの給料はそこまで低くないはずだがな?」
社長の疑問はもっともだ。
仮にも桜花グループに属する会社、しかもLCCとしては国内最大手。
さらにその会社の社長付の秘書ならばそれなりの給料はもらっている。
「あー、家族が多くてですね……」
力なく笑って誤魔化しながら、視線が明明後日の方向を向く。
この話題にはあまり、触れないでほしい。
「だいたい、両親はどうしたんだ?
まさか、清子がこのふたりを育てているのか?」
眼鏡の向こうで社長の目が大きく見開かれる。
「えっと……。
当たらずとも遠からずというか……」
休みの日はもちろん、平日も帰りに実家へ寄って面倒を見ることもある。
最近は健太も巧も大きくなっていろいろできるようになり頼もしくなったとはいえ、まだまだ義母ひとりだけでは危なっかしい。
「ちょっと待て。
確認していいか?
清子のご両親はご存命なのか?」
その長い指を額に当てて少し考えたあと、さらに社長が聞いてくる。
それは確かに、確認したくなるだろう。
「その、実母は幼い頃に他界しました」
「それは……すまない」
聞いてはいけないことだったのではと、正直に詫びてくる社長はいい人だ。
いや、それは前から知っているけれど。
「いいんです。
弟妹の母親、私にとっては継母……ですか。
彼女は元気といえば元気なんですが、身体が強くないのであまり働けないんです。
それに美妃を産んでまだ、五ヶ月しか経ってないですし」
「それは大変だな。
父親は?」
「父は……」
あの父を、どう説明したらいいんだろう?
常識から離れまくり、常人では理解のおよばないあの父を。
「いや、いい。
わるいな、こんな話をして」
私が言い淀んでいたせいか、社長はなにか誤解しているようだ。
いや、実際のところ、私の中ではそのような存在なので問題はないか。
「それで清子が家族を支えているんだな。
とりあえず会社から扶養手当が出るように手配しよう」
「ありがとうございます」
御子神社長の眼鏡の陰に、光るものが見えるのは気のせいだろうか。
それでも収入が増えるのは嬉しいので、素直に頭を下げておいた。
「他にも俺にできることがあったらなんでも言ってくれ」
なにか彼の感動スイッチを押してしまったようだが、これであと三人弟がいるとか知ったら、どうなるんだろう……?
できあがったオムライスをふたつ、テーブルの上に置く。
社長にはインスタントで申し訳ないがコーヒーを出した。
「うまそうだな」
などと言われても、社長の分はない。
「俺も食べたい」
「え……」
まさかの言葉が出てきて戸惑った。
だって、あの桜花航空の御曹司だよ?
自分だって億稼いでいるんだよ?
それが、オムライス、しかも一般人の作ったものを食べたいなんて言うと思う?
「俺の分も作ってくれ」
しかし社長は私の顔を見て、人懐っこくにぱっと笑った。
「ええっと……。
お口にあうとは思えませんが……」
食べてまずいとか言われたら嫌だし。
それに、残されて食材を無駄にするのは絶対に避けたい。
「なんだ、俺には作ってくれないのか?」
やんわりと断ったら、みるみる社長がご機嫌斜めになっていく。
「でも……」
「あー、誰かに叩かれた頬が痛いなー」
それでも渋っていたら、もう外していた氷をわざとらしくまた社長は頬に当てた。
「うっ。
……作りますよ」
渋々ながら立ち上がり、また台所へ向かう。
ああやって脅してくるなんて、卑怯だ。
余りは冷凍すればいいと残りご飯を全部ケチャップライスにしていたので、あとは玉子を巻くだけでよかったのは幸いだった。
手早く調理して、社長の前に出す。
「どうぞ」
「おー、うまそーだーなー」
ほくほく顔で社長がスプーンを取る。
私もかまわずに食べはじめた。
「うん、うまい!
なあ、望もそう思うだろ?」
「さやねぇちゃんのオムライスはせかいいち、おいしいんだよ!」
「そんな……。
褒めてもなにも出ないですよ?」
ふたりから褒められて悪い気はしない。
一瞬、どうして御子神社長がここにいるのか、忘れそうになった。
いかん、いかん。
食事も終わり、うとうとしはじめた美妃を布団に寝かせる。
望は先程の番組にまた釘付けだ。
「鍵を届けていただき、ありがとうございました。
でも、どうして私の家が?」
貧乏バレ予防のために、今まで一度も家まで送ってもらわなかった。
なのにどうしてここがわかったんだろう?
「一応、直属の部下の分くらいは住所は頭に入っているから、わかる」
ドヤ顔で、大きな手で覆うように眼鏡を上げる社長を、なんとも言えない気持ちで見ていた。
そういえば、全スタッフの名前は頭に入っているとかいつも言っているが、もしかして本当……?
「しかし、清子がこんな貧乏暮らしをしているとは思わなかったぞ。
うちの給料はそこまで低くないはずだがな?」
社長の疑問はもっともだ。
仮にも桜花グループに属する会社、しかもLCCとしては国内最大手。
さらにその会社の社長付の秘書ならばそれなりの給料はもらっている。
「あー、家族が多くてですね……」
力なく笑って誤魔化しながら、視線が明明後日の方向を向く。
この話題にはあまり、触れないでほしい。
「だいたい、両親はどうしたんだ?
まさか、清子がこのふたりを育てているのか?」
眼鏡の向こうで社長の目が大きく見開かれる。
「えっと……。
当たらずとも遠からずというか……」
休みの日はもちろん、平日も帰りに実家へ寄って面倒を見ることもある。
最近は健太も巧も大きくなっていろいろできるようになり頼もしくなったとはいえ、まだまだ義母ひとりだけでは危なっかしい。
「ちょっと待て。
確認していいか?
清子のご両親はご存命なのか?」
その長い指を額に当てて少し考えたあと、さらに社長が聞いてくる。
それは確かに、確認したくなるだろう。
「その、実母は幼い頃に他界しました」
「それは……すまない」
聞いてはいけないことだったのではと、正直に詫びてくる社長はいい人だ。
いや、それは前から知っているけれど。
「いいんです。
弟妹の母親、私にとっては継母……ですか。
彼女は元気といえば元気なんですが、身体が強くないのであまり働けないんです。
それに美妃を産んでまだ、五ヶ月しか経ってないですし」
「それは大変だな。
父親は?」
「父は……」
あの父を、どう説明したらいいんだろう?
常識から離れまくり、常人では理解のおよばないあの父を。
「いや、いい。
わるいな、こんな話をして」
私が言い淀んでいたせいか、社長はなにか誤解しているようだ。
いや、実際のところ、私の中ではそのような存在なので問題はないか。
「それで清子が家族を支えているんだな。
とりあえず会社から扶養手当が出るように手配しよう」
「ありがとうございます」
御子神社長の眼鏡の陰に、光るものが見えるのは気のせいだろうか。
それでも収入が増えるのは嬉しいので、素直に頭を下げておいた。
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