30 / 64
第五章 恋だの愛だの
5-7
しおりを挟む
夕食にはまだまだ早いので、彪夏さんと望と三人でトランプをした。
健太は相変わらず服の改造で、真由さんは撮り溜めてある韓流ドラマを見ている。
録画機能付きのテレビはまとまったお金が入ったときに、思い切って買ってよかったと思う。
もう、十年越えだけれど。
「ええっと……」
ババ抜きにしたが、望は彪夏さんの膝に座り、札を広げている。
「これとこれも抜けるぞ」
「あ、ほんとだ!」
彪夏さんに教えられ、うきうきと望が揃えた札を捨てる。
なんだかふたりはまるで親子みたいで、ほっこりした。
最初、あんなに警戒していたのが嘘のようだ。
三回ほどやると望も飽きてくる。
今度はお気に入りのアニメをかけてもらい、真由さんと一緒に観だした。
私は健太が洗濯物を取り込んだので、それを畳む。
「なあ。
ずっと健太、縫い物してたけど、そんなに繕って着なければいけないほど、服が買えないのか?」
眼鏡の下で心配そうに、彪夏さんの眉が寄る。
「違う違う。
確かに新品は滅多に買えないけど、古着だったら買えるし。
でもサイズがあわなかったり、デザインが気に入らなかったりするだろ?
だから俺が改造してんの」
「改造……?」
おかしそうに笑いながら健太が答え、彪夏さんは少し首を捻った。
「リフォームっていうの?
清ねぇのスーツも俺が改造してる」
「マジか!?」
彪夏さんは食い気味に驚いているが、まあそうなるよね。
「あのスーツ、健太が作ってるのか?」
「そう。
装飾付けたり、外したりもだし、少し形を変えたりもするよ」
「凄いな」
うんうん、うちの健太は凄いのだ。
もっと褒めていいんですよ?
「だったらさ」
健太の肩に腕をかけ、彪夏さんが部屋の隅へ連れていく。
「……こういうのはできるか?」
「……うーん。
布代がね……。
あと、うちのミシンじゃ厳しいかな」
「……出す出す、それくらい。
ミシンも買ってやる」
「……ほんとに!?
だったら頑張って作るよ!」
こそこそ話しながら彪夏さんは携帯を操作しているが、いったいなんの話をしているんだ?
「今頼んだから、明日には届くと思う」
「サンキュー!
彪夏にぃ」
健太は大喜びしているが、なにを買ってもらったんだ?
高価なものじゃなければいいけれど。
夕方になって、ようやく真が泥だらけで帰ってきた。
今日も大冒険だったようだ。
「食べられる草、取ってきた」
「言い方!」
笑いながら差し出された袋を受け取る。
中にはいっぱい山菜が入っていた。
こうやって真が採ってきてくれる山菜は、我が家の貴重な食料だ。
お風呂に入れたいところだが我が家は追い炊き厳禁なので、濡らしたタオルで汚れた身体を拭かせる。
「彪夏にぃ、いらっしゃい!」
「そんなに汚れてなにしてきたんだ?」
頭に葉っぱまでのっけている真を見て、彪夏さんは目をまん丸にしていた。
「山行ってきた!」
「山……?」
彪夏さんは怪訝そうだが、そうなるだろう。
なにしろここから一番近い山は、車でも三十分ほどかかる。
そんなところまでひとりで、しかも自転車で行くものだから、携帯が必要になる。
真も帰ってきたので夕食にする。
結局、ロールキャベツにキャベツとゆで玉子のサラダにした。
幸い、キャベツと卵はたくさん買ってある。
「いただきます!」
全員で……と言いたいところだが、巧はバイトからまだ帰ってきていない。
遅くなるらしいので仕方ないな。
「今日のロールキャベツ、うっめー!」
ガツガツと掻き込むように真は食べていて、つい笑ってしまう。
いつもは鶏胸ミンチで混ぜ物大量だもんね。
そりゃ、美味しいだろう。
「うん、うまいな」
口にあわなかったらどうしようと思ったが、彪夏さんも喜んでいるみたいだし、よかった。
「だろ?
清ねぇのメシはうまいんだ。
オレやっぱり、毎日清ねぇのメシがいい……」
ロールキャベツをスープまで飲み干し、お皿をテーブルに置きながら真がため息をつく。
「……真」
じろっと健太が真を睨み、真はびくっと身体を震わせた。
「健太にぃと巧にぃのメシだって美味しいよ?
でもさ、清ねぇのほうが数倍うまいし」
「いつまでも清ねぇに頼るわけにはいかないだろ。
それに清ねぇはもうすぐ結婚して、この家を出ていくんだ」
淡々と言われた健太の言葉が、重く胸にのしかかる。
どうして健太は私が、まるで他人みたいに言うんだろう。
家族だと思っていたのは私だけだったんだろうか。
「健太。
俺と結婚しても清子はこの家の家族だよ」
「わかってるよ、そんなの」
投げやりに言う、健太の気持ちがちっとも私にはわからなかった。
健太は相変わらず服の改造で、真由さんは撮り溜めてある韓流ドラマを見ている。
録画機能付きのテレビはまとまったお金が入ったときに、思い切って買ってよかったと思う。
もう、十年越えだけれど。
「ええっと……」
ババ抜きにしたが、望は彪夏さんの膝に座り、札を広げている。
「これとこれも抜けるぞ」
「あ、ほんとだ!」
彪夏さんに教えられ、うきうきと望が揃えた札を捨てる。
なんだかふたりはまるで親子みたいで、ほっこりした。
最初、あんなに警戒していたのが嘘のようだ。
三回ほどやると望も飽きてくる。
今度はお気に入りのアニメをかけてもらい、真由さんと一緒に観だした。
私は健太が洗濯物を取り込んだので、それを畳む。
「なあ。
ずっと健太、縫い物してたけど、そんなに繕って着なければいけないほど、服が買えないのか?」
眼鏡の下で心配そうに、彪夏さんの眉が寄る。
「違う違う。
確かに新品は滅多に買えないけど、古着だったら買えるし。
でもサイズがあわなかったり、デザインが気に入らなかったりするだろ?
だから俺が改造してんの」
「改造……?」
おかしそうに笑いながら健太が答え、彪夏さんは少し首を捻った。
「リフォームっていうの?
清ねぇのスーツも俺が改造してる」
「マジか!?」
彪夏さんは食い気味に驚いているが、まあそうなるよね。
「あのスーツ、健太が作ってるのか?」
「そう。
装飾付けたり、外したりもだし、少し形を変えたりもするよ」
「凄いな」
うんうん、うちの健太は凄いのだ。
もっと褒めていいんですよ?
「だったらさ」
健太の肩に腕をかけ、彪夏さんが部屋の隅へ連れていく。
「……こういうのはできるか?」
「……うーん。
布代がね……。
あと、うちのミシンじゃ厳しいかな」
「……出す出す、それくらい。
ミシンも買ってやる」
「……ほんとに!?
だったら頑張って作るよ!」
こそこそ話しながら彪夏さんは携帯を操作しているが、いったいなんの話をしているんだ?
「今頼んだから、明日には届くと思う」
「サンキュー!
彪夏にぃ」
健太は大喜びしているが、なにを買ってもらったんだ?
高価なものじゃなければいいけれど。
夕方になって、ようやく真が泥だらけで帰ってきた。
今日も大冒険だったようだ。
「食べられる草、取ってきた」
「言い方!」
笑いながら差し出された袋を受け取る。
中にはいっぱい山菜が入っていた。
こうやって真が採ってきてくれる山菜は、我が家の貴重な食料だ。
お風呂に入れたいところだが我が家は追い炊き厳禁なので、濡らしたタオルで汚れた身体を拭かせる。
「彪夏にぃ、いらっしゃい!」
「そんなに汚れてなにしてきたんだ?」
頭に葉っぱまでのっけている真を見て、彪夏さんは目をまん丸にしていた。
「山行ってきた!」
「山……?」
彪夏さんは怪訝そうだが、そうなるだろう。
なにしろここから一番近い山は、車でも三十分ほどかかる。
そんなところまでひとりで、しかも自転車で行くものだから、携帯が必要になる。
真も帰ってきたので夕食にする。
結局、ロールキャベツにキャベツとゆで玉子のサラダにした。
幸い、キャベツと卵はたくさん買ってある。
「いただきます!」
全員で……と言いたいところだが、巧はバイトからまだ帰ってきていない。
遅くなるらしいので仕方ないな。
「今日のロールキャベツ、うっめー!」
ガツガツと掻き込むように真は食べていて、つい笑ってしまう。
いつもは鶏胸ミンチで混ぜ物大量だもんね。
そりゃ、美味しいだろう。
「うん、うまいな」
口にあわなかったらどうしようと思ったが、彪夏さんも喜んでいるみたいだし、よかった。
「だろ?
清ねぇのメシはうまいんだ。
オレやっぱり、毎日清ねぇのメシがいい……」
ロールキャベツをスープまで飲み干し、お皿をテーブルに置きながら真がため息をつく。
「……真」
じろっと健太が真を睨み、真はびくっと身体を震わせた。
「健太にぃと巧にぃのメシだって美味しいよ?
でもさ、清ねぇのほうが数倍うまいし」
「いつまでも清ねぇに頼るわけにはいかないだろ。
それに清ねぇはもうすぐ結婚して、この家を出ていくんだ」
淡々と言われた健太の言葉が、重く胸にのしかかる。
どうして健太は私が、まるで他人みたいに言うんだろう。
家族だと思っていたのは私だけだったんだろうか。
「健太。
俺と結婚しても清子はこの家の家族だよ」
「わかってるよ、そんなの」
投げやりに言う、健太の気持ちがちっとも私にはわからなかった。
11
あなたにおすすめの小説
ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
花里 美佐
恋愛
☆『君がたとえあいつの秘書でも離さない』スピンオフです☆
堂本コーポレーション御曹司の堂本黎は、英国でデビュー直後のピアニスト栗原百合と偶然出会った。
惹かれていくふたりだったが、百合は黎に隠していることがあった。
「俺と百合はもう友達になんて戻れない」
普通のOLは猛獣使いにはなれない
ピロ子
恋愛
恋人と親友に裏切られ自棄酒中のOL有季子は、バーで偶然出会った猛獣(みたいな男)と意気投合して酔った勢いで彼と一夜を共にしてしまう。
あの日の事は“一夜の過ち”だと思えるようになった頃、自宅へ不法侵入してきた猛獣と再会し、過ちで終われない関係となっていく。
普通のOLとマフィアな男の、体から始まる関係。
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。
和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。
政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる