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2章
お部屋訪問 1
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係長のお家は、駅に近い立派なマンションだった。うちの給料でこんなところに住めるのだろうか。疑問に思う。
オートロックの出入り口を通り抜けて、エレベーターに乗る。
係長の後ろをついて歩いた。
「どうぞ、入って」
「お、お邪魔します」
一人暮らしの男性の部屋に上がりこむのは初めてなので緊張する。
玄関はすっきり片付けられていた。消臭剤まで置かれている。
ついキョロキョロしてしまう。ここで係長は生活している。これまで何人ぐらいの彼女がここを訪れたのだろう。
リビングに入れてもらう。おしゃれで面食らった。
「何か飲むか?」
係長は上着を脱いでソファーの背もたれに無造作にかける。ネクタイを緩める姿にドキリとする。返事をする前に係長は冷蔵庫を開けていた。
「酒か水しかないが」
「お、お酒で……」
すでに飲んでいたけれど、さらに酔わないと緊張でいられない気がした。
「ビールかチューハイ、どちらにする?」
「チューハイをお願いします」
缶ビールと缶チューハイを手に取った係長がこちらを振り返る。
「突っ立ってないで、ソファーに座れば良い」
「は、はい……」
ソファーの傍らに荷物を置かせてもらって、端にちょこんと座る。身体はカチコチだ。
係長が隣に腰かける。座面が動いたことに緊張した。
昨日の今日ですでにこの展開。自分のことなのに早すぎてついていけない。
手渡されたアルコールを一気に半分ぐらい飲んでしまう。
「大丈夫か?」
「大丈夫です……」
甘くて度数の低いチューハイ。係長の冷蔵庫にどうしてあるのだろう。
アルコールの手伝いもあって彼女になったスイッチがカチリと入った。
「奏は甘いお酒も飲むの?」
いきなりタメ口になって馴れ馴れしいかなとドキドキしながらも言ってみる。
「新商品があったら試してみたくなる」
「わかるー」
何だか嬉しくなった。私もそう言うところがある。それに係長が自然に話してくれる。それに気分を良くした私は、ちょっと調子に乗り始めてしまった。
「あっちが寝室?」
「ああ」
「見ても良い?」
立ち上がって寝室のドアの前に行く。ちらりと振り返ると、係長は少し困った表情になっていた。
「何もおもしろいものはないぞ」
そう言いながらも扉を開けてくれた。
中を覗く。ベッドは私の部屋のものより大きいと思った。セミダブルくらいだろうか。紺色の寝具だ。
壁際の木製ラックにはプロの人が使うようなカメラがレンズと一緒に並べられている。
カメラの撮り方みたいな本が何冊も並んでいた。
本棚も置いてあって、マンガがたくさん並んでいる。何だか安心した。
「カメラが趣味……?」
「最近はあまり撮れていないが、今度、実梨を撮らせてくれないか?」
背後に立っていた係長が私の髪を一房すくって、唇を落とした。
私もコスプレをしていたから、撮られるのは嫌いじゃない。
だけど素の私を撮影されるのはどんな感じなのだろう。
「裸とか、変な写真は嫌だよ?」
「わかってる」
ぎゅっと背中から抱きしめられる。係長の体重が私にのしかかった。
「奏……?」
「良かった……」
深いため息と一緒に吐き出された安堵の言葉。どうしてだろう。
「……断られるかもって、思ってた」
係長みたいにモテそうな男性にも、そんな気持ちがあるのかと驚いた。
とても人間味にあふれているように思えて、それだけで愛しく感じる。
「彼氏のお願いだから……」
私を抱きしめる係長の手の甲にそっと触れる。係長が少し息を呑んだような気がした。
「実梨……」
押し当てるようなキス。すぐに深くなる口づけ。互いの吐息が荒くなる。
「シャワー……浴びたい」
「あ、ああ……」
オートロックの出入り口を通り抜けて、エレベーターに乗る。
係長の後ろをついて歩いた。
「どうぞ、入って」
「お、お邪魔します」
一人暮らしの男性の部屋に上がりこむのは初めてなので緊張する。
玄関はすっきり片付けられていた。消臭剤まで置かれている。
ついキョロキョロしてしまう。ここで係長は生活している。これまで何人ぐらいの彼女がここを訪れたのだろう。
リビングに入れてもらう。おしゃれで面食らった。
「何か飲むか?」
係長は上着を脱いでソファーの背もたれに無造作にかける。ネクタイを緩める姿にドキリとする。返事をする前に係長は冷蔵庫を開けていた。
「酒か水しかないが」
「お、お酒で……」
すでに飲んでいたけれど、さらに酔わないと緊張でいられない気がした。
「ビールかチューハイ、どちらにする?」
「チューハイをお願いします」
缶ビールと缶チューハイを手に取った係長がこちらを振り返る。
「突っ立ってないで、ソファーに座れば良い」
「は、はい……」
ソファーの傍らに荷物を置かせてもらって、端にちょこんと座る。身体はカチコチだ。
係長が隣に腰かける。座面が動いたことに緊張した。
昨日の今日ですでにこの展開。自分のことなのに早すぎてついていけない。
手渡されたアルコールを一気に半分ぐらい飲んでしまう。
「大丈夫か?」
「大丈夫です……」
甘くて度数の低いチューハイ。係長の冷蔵庫にどうしてあるのだろう。
アルコールの手伝いもあって彼女になったスイッチがカチリと入った。
「奏は甘いお酒も飲むの?」
いきなりタメ口になって馴れ馴れしいかなとドキドキしながらも言ってみる。
「新商品があったら試してみたくなる」
「わかるー」
何だか嬉しくなった。私もそう言うところがある。それに係長が自然に話してくれる。それに気分を良くした私は、ちょっと調子に乗り始めてしまった。
「あっちが寝室?」
「ああ」
「見ても良い?」
立ち上がって寝室のドアの前に行く。ちらりと振り返ると、係長は少し困った表情になっていた。
「何もおもしろいものはないぞ」
そう言いながらも扉を開けてくれた。
中を覗く。ベッドは私の部屋のものより大きいと思った。セミダブルくらいだろうか。紺色の寝具だ。
壁際の木製ラックにはプロの人が使うようなカメラがレンズと一緒に並べられている。
カメラの撮り方みたいな本が何冊も並んでいた。
本棚も置いてあって、マンガがたくさん並んでいる。何だか安心した。
「カメラが趣味……?」
「最近はあまり撮れていないが、今度、実梨を撮らせてくれないか?」
背後に立っていた係長が私の髪を一房すくって、唇を落とした。
私もコスプレをしていたから、撮られるのは嫌いじゃない。
だけど素の私を撮影されるのはどんな感じなのだろう。
「裸とか、変な写真は嫌だよ?」
「わかってる」
ぎゅっと背中から抱きしめられる。係長の体重が私にのしかかった。
「奏……?」
「良かった……」
深いため息と一緒に吐き出された安堵の言葉。どうしてだろう。
「……断られるかもって、思ってた」
係長みたいにモテそうな男性にも、そんな気持ちがあるのかと驚いた。
とても人間味にあふれているように思えて、それだけで愛しく感じる。
「彼氏のお願いだから……」
私を抱きしめる係長の手の甲にそっと触れる。係長が少し息を呑んだような気がした。
「実梨……」
押し当てるようなキス。すぐに深くなる口づけ。互いの吐息が荒くなる。
「シャワー……浴びたい」
「あ、ああ……」
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