祓い屋の家の娘はイケメンたちに愛されています

うづきなな

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1章

目覚める

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 みんなで夕飯を食べて、私はリビングで眞澄くんとテレビゲームをしてからお風呂に入った。

 明日は学校が休み。でもあまり夜更かししないで寝てしまおうと部屋へ戻る。

 部屋の前に行くときちんと閉めたはずのドアが開いている。
    誰かいるのかとそっと覗き込むと、みやびちゃんがベッドの上で丸くなって寝ていた。かわいい姿ににやにやしながら私もベッドに潜り込む。

 ふと気になったことがあって、みやびちゃんに声をかけた。

「みやびちゃんはどうしてみんながお祖父ちゃんのところに来たのか、知ってる?」
「詳しくは知らないわ。周様はそういうことべらべら話さないもの」
「そうだよね……」

 お祖父ちゃんは確かにいつもにこにこ笑っていて、あまり多くを語らなかった。

「知らない方が良いこともたくさんあるのよ」
「え?」

 私は身体を半分起こしてみやびちゃんを見る。

「みさきが何も知らないで能天気に笑ってくれるから、あっちゃんたちは穏やかに、普通の人間っぽい生活をしていられるのよ。それに、話したくなったら向こうから教えてくれるわよ。だから、みさきは何にも知らなくていーの」

 子猫に小バカにされているみたいな感じがしてちょっとおもしろくない。むー、と唇を尖らせたけれど、反論しても言い負かされるのがオチだと自分でもわかる。

「はーい。おやすみなさーい」

 悔しいから、がばっと勢いよく布団を被って目を閉じた。







 早く寝たせいか、休みの日なのにいつもよりかなり早く目が覚めてしまった。
 まだみんな眠っているみたいで、家中静まり返っている。
   あまりの冷え込みにお布団から出るのが億劫で少し悩んだけれど、やっぱり裕翔くんが気になるので見に行くことにした。

 みやびちゃんは私が動くと耳をぴくぴく動かしたけれど、まだ起きたくないから寝るという強固な意思を見せた。
 太陽の昇っているのに今朝はとても寒くて、パジャマの上にもこもこのパーカーを羽織って結界を張っている鍛練場に行ってみる。

 裕翔くんはまだ目覚めていなかったけれど、昨夜見た時より更に大人に成長しているように見えた。

 驚いて凝視していると、パチリと目が開いた。
 お互い見つめ合ったまま無言の時間が続く。裕翔くんがにこっと、とても人懐こい笑顔を見せたことでそれは終わった。

「おはよう」

 そう言って身体を起こす。やっぱり大きくなっていた。座っているから確実ではないけれど、私より背が高そうに感じる。

「おはよう、みさき」

 かわいらしい口調で明るく言って、いきなり抱きついてきた。

「んー、いい匂い」

 裕翔くんが私の髪に顔を埋める。何が起きているのか理解できなくて硬直してしまう。すると彼が唇を私の髪に滑らせた。

「きゃああああぁぁぁ……」

 気がついたら悲鳴を上げていた。
    男の子にこんなに触れられたことが無いから混乱していた。何とか離れようと試みたけれど、力が強くてびくともしない。

「は、離して……」
「何で?」

 無垢な笑顔で聞かれると返答に困ってしまう。

 廊下からバタバタと足音が聞こえて、ばたんとドアが開いた。

「どうした!?」

 眞澄くんと淳くんが駆けつけてくれた。ふたりとも一瞬固まったけれど、眞澄くんが私をがっちりと抱きしめていた裕翔くんを引き剥がす。

「あーん、みさきー」

 目が据わっている眞澄くんに羽交締めにされながらも裕翔くんはこちらに両手を伸ばした。

「何事ですか?」

 眼鏡をかけていない誠史郎さんが小さく欠伸をしながら現れる。現状を見て小さく首を傾げた。

「離してよー。みさきちゃん、助けてー」

 裕翔くんは小さな子供のような目でこちらを見ている。何だかかわいそうになってきたのだけれど。

「えっと……」
「みさき! 絆されるんじゃない!」

 ぴしゃりと言い放つ眞澄くんは、本当に私のことをお見通しだ。

「落ち着いてください、眞澄くん」

 やれやれと言わんばかりに誠史郎さんは首を振る。

「離してあげてくれないか?」

 淳くんに言われて眞澄くんは裕翔くんを解放したけれど、まだ警戒しているのがわかる。

「君は今日から裕翔と呼ばれる。それはいいかな?」

 淳くんが裕翔くんの正面に立って問いかけた。すると裕翔くんは満面の笑みで大きく頷く。

「うん。いろいろアマネに教えてもらったよ。オレは今日からユートで、ここでみんなと暮らすって。みさきを護るのが仕事で、学校にも行かなきゃいけない。だから、みんなよろしく」
「こちらこそ、よろしく。それにあたって、裕翔。まず僕らは、無闇に誰かに抱きついたり触れたりしないというのがマナーなんだ。わかってくれるかい?」

「そうなの?何で?」
「互いに心地良く過すためだよ。余計な誤解や諍いは起こさない方がいいだろう?」

 淳くんがとても穏やかに諭すと、本当にわかったのかは怪しいけれど、裕翔くんは納得した様子だった。

「君の部屋へ案内するよ。まだ早い時間だし、もう少し休むといい。次に目が覚めたら、今度はたくさん話そう」

 廊下へ裕翔くんを誘導して、淳くんはこちらを振り返る。

「あとは僕に任せて」

 ふわりと優しく微笑んだ。

「……悪いな」
「どういたしまして」

 淳くんがぽんと眞澄くんの肩を軽く叩いてから、裕翔くんを連れて去っていく。
    眞澄くんは大きな溜息を吐いた。

「羨ましいですか? 裕翔くんが」
「はあっ!?」

 大声を出した眞澄くんはなぜか真っ赤になっていた。

「自分に正直になった方が楽になれると思いますよ」

 誠史郎さんは意地悪な微笑を眞澄くんに投げかけてからこちらを一瞥する。

「私は羨ましかったですから」

 何が羨ましいのかわからなくてきょとんと誠史郎さんを見上げる。目が合うと、彼は端正な唇に薄く意味ありげな微笑みを浮かべた。

「さて、私も部屋に戻ります」

 訳がわからず、呆然と誠史郎さんの背中を眺めていた。
 ふたりになったので眞澄くんはどうするのかと思ってそちらを見ると、ぱちりと目が合う。すると、なぜか突然眞澄くんが真っ赤になった。そして避けるように視線をそらされる。

「くそっ……! 誠史郎のやつ……。みさき、悪い。俺も部屋に戻る!」
「う、うん…」

 なんだかよくわからないけれど、勢いに圧倒されてしまう。
 ひとり取り残された私はどうしようかと少し考えたけれど、朝食の支度をしようとキッチンへ移動した。
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