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眞澄ルート 1章
恋に気づく瞬間 7
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手を繋いで夜道を歩く。眞澄くんは私のスピードに合わせてくれている。
「ごめんね、変なことしちゃって。部屋に行けば済んだのに……」
「いや、却って助かった」
散歩に出ることで眞澄くんが助かったのなら良かったけど、何か困ったことが起こったのかと疑問に思う。
「何かあったの? 大島先生が来た? ちゃんと封をしたはずだったのに……」
「そうじゃなくてさ……」
言い淀む眞澄くんが心配で上目遣いに見るけれど、彼は視線を逸らして伏し目がちになる。睫毛が長い。
眞澄くんは頭を掻きむしるような仕草をして小さくため息をつくと、観念したように口を開いた。
「……みさきを部屋に入れたら、俺が……何するかわかんねーだろ!」
低声だけどぶっきらぼうに言い放たれて、ややあってから理解した。映画館のときみたいなことになるということだ。思い出して、頬が紅潮してしまう。
「……良い、よ」
左胸が抉られるような痛みを感じる。声帯もひきつっているみたいな感じがして上手く声が出ないのに、ひとりでに言葉が紡がれた。
「眞澄くんなら」
精悍な印象を受ける整った顔を真っ直ぐ見ることができない。眞澄くんが今どんな表情をしているのか知りたいけれど、怖くもあった。繋いだ手の指先に自然に力が入ってしまう。
「何され……」
言い終わるより早く、唇を眞澄くんの唇で塞がれた。驚きで身体が硬くなってしまう。
彼は私の肩に手を置き、長い腕を伸ばして物理的な距離を作る。そしてうな垂れた。
「……勘弁してくれ。それ以上聞いたら、ここで襲いかかる自信がある」
顔を上げると、街灯が照らしたのは照れくさそうにした眞澄くんだった。
身体が勝手に動いていた。短いキスを私からする。
「あ……あれ?」
黒曜石のような瞳が呆然と見開かれている。
「眞澄くん……?」
動かない眞澄くんの目の前で掌を左右に振ってみた。反応がない。
「ま、眞澄くん?」
「……反則だろ」
そう呟きながら頭を抱えて屈んだ眞澄くん。心配になって、私もしゃがんで精悍な面を覗いてみる。
目が合うと眞澄くんは困ったように破顔した。
「声が、聞きたかったの」
「知ってる」
差し出された大きくて少し冷たい手を握ると、小さく笑い合ってふたり同時に立ち上がる。
「私、ね……」
私の世界を壊してしまう言の葉。だけど止められなかった。
「好きなの」
適度に鍛えられた胸板に引き寄せられる。痛いくらい強く腕の中に押し込められた。だけど嬉しいと思う。おずおずと広い背中に手を回す。
「眞澄くんが好き」
「好きだよ。みさき」
耳朶に触れる蕩けるほど甘美な囁きに、全て預けたくなる。適度に鍛えられた胸板に顔を埋めると吐息がこぼれた。だけどこんなに力を込めていたら昼間に切られた辺りが痛まないか、ふと気になってしまった。
「もう痛くない?」
顔を上げると眞澄くんは柔らかく目を細めた。
「それどころじゃなくなった」
そっと唇が触れ合う。一度鼻の頭が触れ合う距離になって見つめ合った。漆黒の双眸に吸い込まれてしまう錯覚に陥る。
再び口唇が重なった。優しいキスに安心する。呼吸の続く限り触れあっていた。
「やっぱ、我慢できない」
そう呟いた眞澄くんは私の唇を舐めた。下唇を吸われて自然に隙間ができた。そこへ眞澄くんの舌が割り込んできて私の歯列をなぞる。
「んっ……」
痛いくらい抱きしめられていたけれど、そうしてもらわないと腰が砕けて立っていられなかった。
眞澄くんの舌がゆっくり私の口の中でうごめいている。
「ふ、ンん……っ」
ぞくぞくして、ぞわぞわする。鼻にかかった声がひとりでにこぼれてしまう。
「みさき……」
眞澄くんの黒曜石のような瞳が、少し潤んでいるように見えた。
「声、かわいすぎてヤバイ。もっと聞かせて」
もう一度、深くつながるキスをした。
いつもと変わらないベッドで、いつもの寝間着を着て目覚める。
昨夜のことを思い出すと自然に顔がにやけてしまう。だけど次の瞬間、夢だったらどうしようと不安になった。
制服に着替えて部屋を出る。階段を降りたところで眞澄くんとばったり会った。
「おはよう」
今までわりと平気だったのに、今日はまだ顔も洗っていない姿を見られてちょっと恥ずかしい。髪を頬へ引っ張って少しでも隠そうと努力した。
「おはよ。珍しくひとりで起きたな」
頭を優しくひと撫でされる。何だかいつもと違う雰囲気が漂った。
目が合うとお互い照れ笑いしてしまって、昨夜のことは現実だと改めて感じる。
「今夜は無理だけど、また抜け出そうぜ」
耳元で密やかに告げられた。耳たぶも心もくすぐったい。
もう淳くんから今夜、大島先生が雪村さんのところへ案内してくれるという話を聞いたみたいだ。
にやけていないか心配なので、先に洗面所で顔を洗うことにした。
いつもの通り学校へ行った。大島先生も今日はおとなしく教育実習生として過ごすみたい。
2時間目の生物の授業が始まってすぐ、どうも周りの女の子たちがそわそわしていると感じたの。みんなグラウンドを見ている。私も窓の外へ視線を向けると、3年生が運動会の練習をしていた。
眞澄くんと淳くんがいる。男子は棒倒しをするみたいだ。女子の先輩たちが黄色い声援を送っている。
勝負は呆気なくついた。ラグビー部と思われる身体の大きな男子数人が棒を守る相手チームの男子達を凪ぎ払い、眞澄くんと淳くんが見事な連携プレーでふたりとも素早く棒の上に登って倒す。
かっこいいと見とれてしまった。今までより眞澄くんがキラキラ光って見える。
グラウンドでも歓声が上がっている。練習でこれなのだから、ギャラリーの増える本番はたいへんなことになりそうだ。
満面の笑みの眞澄くんの隣で、穏やかに微笑む淳くんの横顔が目に入る。
淳くんだけじゃなく、みんなにちゃんと伝えないといけないと思った。みんな大好きだけど、それとは違う好きを見つけてしまったから。
きっと今まで通りではいられない。悲しいけれど、受け入れなくては。
私が出した答えだ。
「ごめんね、変なことしちゃって。部屋に行けば済んだのに……」
「いや、却って助かった」
散歩に出ることで眞澄くんが助かったのなら良かったけど、何か困ったことが起こったのかと疑問に思う。
「何かあったの? 大島先生が来た? ちゃんと封をしたはずだったのに……」
「そうじゃなくてさ……」
言い淀む眞澄くんが心配で上目遣いに見るけれど、彼は視線を逸らして伏し目がちになる。睫毛が長い。
眞澄くんは頭を掻きむしるような仕草をして小さくため息をつくと、観念したように口を開いた。
「……みさきを部屋に入れたら、俺が……何するかわかんねーだろ!」
低声だけどぶっきらぼうに言い放たれて、ややあってから理解した。映画館のときみたいなことになるということだ。思い出して、頬が紅潮してしまう。
「……良い、よ」
左胸が抉られるような痛みを感じる。声帯もひきつっているみたいな感じがして上手く声が出ないのに、ひとりでに言葉が紡がれた。
「眞澄くんなら」
精悍な印象を受ける整った顔を真っ直ぐ見ることができない。眞澄くんが今どんな表情をしているのか知りたいけれど、怖くもあった。繋いだ手の指先に自然に力が入ってしまう。
「何され……」
言い終わるより早く、唇を眞澄くんの唇で塞がれた。驚きで身体が硬くなってしまう。
彼は私の肩に手を置き、長い腕を伸ばして物理的な距離を作る。そしてうな垂れた。
「……勘弁してくれ。それ以上聞いたら、ここで襲いかかる自信がある」
顔を上げると、街灯が照らしたのは照れくさそうにした眞澄くんだった。
身体が勝手に動いていた。短いキスを私からする。
「あ……あれ?」
黒曜石のような瞳が呆然と見開かれている。
「眞澄くん……?」
動かない眞澄くんの目の前で掌を左右に振ってみた。反応がない。
「ま、眞澄くん?」
「……反則だろ」
そう呟きながら頭を抱えて屈んだ眞澄くん。心配になって、私もしゃがんで精悍な面を覗いてみる。
目が合うと眞澄くんは困ったように破顔した。
「声が、聞きたかったの」
「知ってる」
差し出された大きくて少し冷たい手を握ると、小さく笑い合ってふたり同時に立ち上がる。
「私、ね……」
私の世界を壊してしまう言の葉。だけど止められなかった。
「好きなの」
適度に鍛えられた胸板に引き寄せられる。痛いくらい強く腕の中に押し込められた。だけど嬉しいと思う。おずおずと広い背中に手を回す。
「眞澄くんが好き」
「好きだよ。みさき」
耳朶に触れる蕩けるほど甘美な囁きに、全て預けたくなる。適度に鍛えられた胸板に顔を埋めると吐息がこぼれた。だけどこんなに力を込めていたら昼間に切られた辺りが痛まないか、ふと気になってしまった。
「もう痛くない?」
顔を上げると眞澄くんは柔らかく目を細めた。
「それどころじゃなくなった」
そっと唇が触れ合う。一度鼻の頭が触れ合う距離になって見つめ合った。漆黒の双眸に吸い込まれてしまう錯覚に陥る。
再び口唇が重なった。優しいキスに安心する。呼吸の続く限り触れあっていた。
「やっぱ、我慢できない」
そう呟いた眞澄くんは私の唇を舐めた。下唇を吸われて自然に隙間ができた。そこへ眞澄くんの舌が割り込んできて私の歯列をなぞる。
「んっ……」
痛いくらい抱きしめられていたけれど、そうしてもらわないと腰が砕けて立っていられなかった。
眞澄くんの舌がゆっくり私の口の中でうごめいている。
「ふ、ンん……っ」
ぞくぞくして、ぞわぞわする。鼻にかかった声がひとりでにこぼれてしまう。
「みさき……」
眞澄くんの黒曜石のような瞳が、少し潤んでいるように見えた。
「声、かわいすぎてヤバイ。もっと聞かせて」
もう一度、深くつながるキスをした。
いつもと変わらないベッドで、いつもの寝間着を着て目覚める。
昨夜のことを思い出すと自然に顔がにやけてしまう。だけど次の瞬間、夢だったらどうしようと不安になった。
制服に着替えて部屋を出る。階段を降りたところで眞澄くんとばったり会った。
「おはよう」
今までわりと平気だったのに、今日はまだ顔も洗っていない姿を見られてちょっと恥ずかしい。髪を頬へ引っ張って少しでも隠そうと努力した。
「おはよ。珍しくひとりで起きたな」
頭を優しくひと撫でされる。何だかいつもと違う雰囲気が漂った。
目が合うとお互い照れ笑いしてしまって、昨夜のことは現実だと改めて感じる。
「今夜は無理だけど、また抜け出そうぜ」
耳元で密やかに告げられた。耳たぶも心もくすぐったい。
もう淳くんから今夜、大島先生が雪村さんのところへ案内してくれるという話を聞いたみたいだ。
にやけていないか心配なので、先に洗面所で顔を洗うことにした。
いつもの通り学校へ行った。大島先生も今日はおとなしく教育実習生として過ごすみたい。
2時間目の生物の授業が始まってすぐ、どうも周りの女の子たちがそわそわしていると感じたの。みんなグラウンドを見ている。私も窓の外へ視線を向けると、3年生が運動会の練習をしていた。
眞澄くんと淳くんがいる。男子は棒倒しをするみたいだ。女子の先輩たちが黄色い声援を送っている。
勝負は呆気なくついた。ラグビー部と思われる身体の大きな男子数人が棒を守る相手チームの男子達を凪ぎ払い、眞澄くんと淳くんが見事な連携プレーでふたりとも素早く棒の上に登って倒す。
かっこいいと見とれてしまった。今までより眞澄くんがキラキラ光って見える。
グラウンドでも歓声が上がっている。練習でこれなのだから、ギャラリーの増える本番はたいへんなことになりそうだ。
満面の笑みの眞澄くんの隣で、穏やかに微笑む淳くんの横顔が目に入る。
淳くんだけじゃなく、みんなにちゃんと伝えないといけないと思った。みんな大好きだけど、それとは違う好きを見つけてしまったから。
きっと今まで通りではいられない。悲しいけれど、受け入れなくては。
私が出した答えだ。
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