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もしかして(2)
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放課後になると、女子はバレンタインのお菓子を配りに、様々なクラスへ行った。杏夏は普段通り部活に行こうとした。剣道場へ歩いていたその時、校舎裏から男女の話し声が聞こえた。彼らにばれないようにこっそりと覗いたらそこには、誠一とこの学年で1、2を争う可愛い女の子がいた。
「ん? 津末じゃん。女の子と校舎裏にいる」
興味があった杏夏はそのまま隠れて様子を見ていた。すると。
「これ、もらってほしくて。手作り苦手って聞いて、慌ててさっき買ったものだからあまり高くはないんだけど。でも、気持ちは入ってる! 好きです!付き合って下さい!」
「ごめん。僕には婚約者がいるから君の気持には応えられない。チョコも受け取れない。申し訳ない」
「そっか。婚約者って杏夏ちゃん?」
「寺東さん? 違うけど、どうしてそう思うの?」
「津末君、彼女と仲良しだからそうなのかなって」
「仲良し、なのかな」
「うん、私にはそう見えるよ」
「そっか」
「じゃあ、また」
「あ、うん」
誠一に告白した女子はすっきりした顔で校舎に戻っていった。
「そこで何しているんですか。寺東さん」
「げ、津末」
「げ、とはなんですか。覗き見の趣味があったとは」
「別に、そんな趣味ないよ。部活行こうと思ったら話し声聞こえて覗いてみたら津末だったから」
「ふーん」
そう言って誠一は杏夏に向かって右手を差し出した。
「何ですか、これは」
「チョコください、の手です」
「はあ? さっきあんなに可愛い女の子のチョコを断っておいて何言ってるんだ、君は! そんなにチョコほしいなら君ならいっぱいもらえるでしょ」
「断った」
「なんで?」
「興味ない子からもらってもめんどうなだけだから」
「つまり、私には興味がある、と」
「うん。いつも僕に歯向かってきて、面白いなって」
「それはいい意味での興味なのか?」
「うん、いい意味」
「そっかー。でもごめん。今日バレンタインって忘れててなにも用意していないんですよね」
「え? でも剣道部が今日は部活でチョコもらえる、って」
「ああ。女子部員でお金出し合ってお得パック買ったよ。多分それのこと」
「ふーん」
「安心した?」
「安心する理由がないね。別に落ち込んでないし」
「ふーん。じゃ、私部活行くから!」
「ああ。頑張れ」
「さんきゅ」
杏夏はそう言って剣道場へと駆けていった。その場に残っていた誠一は、なんで彼女が剣道部にチョコ配ると思って不安になって、お得パックだって知って安心しているんだ、と思っていた。
「……んな、あんな!」
「えっ?」
「ちょっと、大丈夫? 今日の杏夏おかしいよ」
「うん。ぼーっとしてる」
「あ、ごめん。考え事してた」
「珍しいな。部活命! って感じなのに」
「うるさいな。男子は黙ってチョコでも食べてな」
「へいへい」
部活の途中の休憩時間で、部活仲間に声をかけられた杏夏は先ほど見た光景を思い出していた。(あいつが告白断ってほっとした。もしかしてあいつのこと好きなの? でも、婚約者がいるって。どうしよう)答えの出ない問に向き合っているうちに休憩時間が終わりを告げた。
「ん? 津末じゃん。女の子と校舎裏にいる」
興味があった杏夏はそのまま隠れて様子を見ていた。すると。
「これ、もらってほしくて。手作り苦手って聞いて、慌ててさっき買ったものだからあまり高くはないんだけど。でも、気持ちは入ってる! 好きです!付き合って下さい!」
「ごめん。僕には婚約者がいるから君の気持には応えられない。チョコも受け取れない。申し訳ない」
「そっか。婚約者って杏夏ちゃん?」
「寺東さん? 違うけど、どうしてそう思うの?」
「津末君、彼女と仲良しだからそうなのかなって」
「仲良し、なのかな」
「うん、私にはそう見えるよ」
「そっか」
「じゃあ、また」
「あ、うん」
誠一に告白した女子はすっきりした顔で校舎に戻っていった。
「そこで何しているんですか。寺東さん」
「げ、津末」
「げ、とはなんですか。覗き見の趣味があったとは」
「別に、そんな趣味ないよ。部活行こうと思ったら話し声聞こえて覗いてみたら津末だったから」
「ふーん」
そう言って誠一は杏夏に向かって右手を差し出した。
「何ですか、これは」
「チョコください、の手です」
「はあ? さっきあんなに可愛い女の子のチョコを断っておいて何言ってるんだ、君は! そんなにチョコほしいなら君ならいっぱいもらえるでしょ」
「断った」
「なんで?」
「興味ない子からもらってもめんどうなだけだから」
「つまり、私には興味がある、と」
「うん。いつも僕に歯向かってきて、面白いなって」
「それはいい意味での興味なのか?」
「うん、いい意味」
「そっかー。でもごめん。今日バレンタインって忘れててなにも用意していないんですよね」
「え? でも剣道部が今日は部活でチョコもらえる、って」
「ああ。女子部員でお金出し合ってお得パック買ったよ。多分それのこと」
「ふーん」
「安心した?」
「安心する理由がないね。別に落ち込んでないし」
「ふーん。じゃ、私部活行くから!」
「ああ。頑張れ」
「さんきゅ」
杏夏はそう言って剣道場へと駆けていった。その場に残っていた誠一は、なんで彼女が剣道部にチョコ配ると思って不安になって、お得パックだって知って安心しているんだ、と思っていた。
「……んな、あんな!」
「えっ?」
「ちょっと、大丈夫? 今日の杏夏おかしいよ」
「うん。ぼーっとしてる」
「あ、ごめん。考え事してた」
「珍しいな。部活命! って感じなのに」
「うるさいな。男子は黙ってチョコでも食べてな」
「へいへい」
部活の途中の休憩時間で、部活仲間に声をかけられた杏夏は先ほど見た光景を思い出していた。(あいつが告白断ってほっとした。もしかしてあいつのこと好きなの? でも、婚約者がいるって。どうしよう)答えの出ない問に向き合っているうちに休憩時間が終わりを告げた。
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