クロニクル・エヴァーガーデン

カイル

文字の大きさ
10 / 13
第二章

10

しおりを挟む
私の前に現れたその男から匂う悪魔特有の異臭が、私の鼻の中を通り抜ける。そして、彼の特異な点は、その異臭だけではない。彼の肉体は、一部黒みがかっていたという点で、人間の姿とはかけ離れていた。

「お前は、誰だよ。私達の戦いを邪魔をしたんだから、死ぬ覚悟はできてんのか?」

私が剣を構えるも、彼は動じない。

「あと、もしかして、お前、楽園教の悪魔だな?」

彼は答える気配を見せない。それでも、私は全くと言っていいほど構うことなく、続ける。

「それにしても、このGUILTY、洗脳系とかではなく、領域系のGUILTYだよな? てことは、お前……"傲慢"だろ? あの七つの大罪のうちの」 

しかし、彼は私のその複数の問いを無視して、一言だけ、言う。

「お前達は、復讐などというチンケな理由で、俺の主に近づくべきではない」

私はそのフル無視男の言葉に腹を立てながら、剣を握る。

しかし、私が踏み込むより先に………彼はゆっくりと動き始めた。

なんと恐ろしいことに、その男は私が踏み込んだのと同時に立ち上がり、私が一歩進んだのと同時に、ゆっくりと歩き出し、私が三歩進んだ辺りで、私の隣へと並び立ったのだ。

────もしかして、この固有領域…………時空系の能力も混じっているのか?

私がそんな予想を立てている間に、既にその男は私の右肩をポンポンと叩いてきた。

そして、私に呪いの言葉をかける。

「だから、シャーナたちにも伝えてくれ。────『新大陸にだけは、近づくな』………と」

私は当然の疑問を彼にぶつける。

「シャーナ達って……なんで、お前がそれを言う? お前、悪魔だろ。それも、GUILTYを使えるということは、七つの大罪クラスの…………」

「それは」

────その言葉の終わり際、彼から感じられたのは、深い哀愁。彼はその表情で、呪いの言葉を吐き出す。

「シャーナとメアリーは、この俺────ケイン・ロビンソンが人間だった頃の娘だから……といったところだろうな」

そして、彼がその哀愁に満ちた表情を見せたその次の刹那。

そのGUILTYの固有領域は、音を立てて崩れ、消え去った。

****

「グルーシャさん!! 目を覚ませ!!!」

「グルーシャさん!! 俺達の為に沢山尽くしてきたあんたは死んじゃ駄目だ!!! 生きてくれ!!!」

────みんなの声が、聞こえる。

この感じ────私は、あの"GUILTY"の固有領域が崩壊してから、頭から地面に落下して、気を失ってた……のか?

それに、ここは…………花畑?

それと、みんなは…………

「町のみんなと私の仲間は!!!!」

私はその叫び声と共に、目を覚ます。そして、そこにいたのは…みんなだった。みんな、凄く私を心配してくれてる。でも、私には…分かる。

「町………壊されちゃった。人も、沢山………ごめん。私がふがいないせいで!!」

「いや、良いんだ」

それでも、みんなは優しかった。

みんなは、私に深々と頭を下げる。困惑しながらも、嬉しさを感じていた私に、町のみんなは言う。

「グルーシャ船長!!! 今まで俺達の為にありがとう!!! あんたのおかげでこの街はここまで大きくなれた!!!」

「みんな…!!」

私の瞳から、涙が伝う。その涙で瞳が濡れた為か、私は前が少し見えづらくなっていた。

でも、それでも。

町のイカ焼き屋も運営してた町長のザンギエフさんが、私に歩み寄ってくれてるのが、私の瞳には映った。

そして、そんなどうしようもない私を………

ザンギエフさんは、抱きしめてくれた。

「今までありがとう。グルーシャ。………これからの復興は、俺達で頑張るから、お前は自分のやりたいことをやれ。お前は、本当によく頑張った。だからこそ、お前の海賊の仲間と一緒に、人生を生きるんだ。それが、俺達からの願いだ」

そして、最後に彼はこう付け加えた。

「今まで、ありがとう。グルーシャ。お前は俺達の可愛い娘だったなあ。本当にありがとう」

「……うん。ありがとう。みんな」

私は、泣きじゃくる私に鞭を打って、とびっきりの笑顔を作る。

「みんなは私にとっての仲間であり…!! お父さんでした!!!」

────メアリー暦1012年。

私の故郷は、余りにも優しく…温もりで溢れていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~

ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。 兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。 異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。 最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。 やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。 そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。 想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。 すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。 辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。 ※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。 ※8万字前後になる予定です。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...