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第1章~転生そして契約〜

出会い

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体の感覚を失ってからどれほど時間が
たったのかわからない。
なんだかふわふわ浮いているような気分だ。


「ま………よ…。」
ん?何かが聞こえて……ってうおぉ!
急に下に引っ張られる感覚が!

萌渕はぐん!と重力のようなものを感じた。
そしてすぐに地に足がついた。

うおおおっ!久々に地面の感触だ!
何も見えないが目を閉じてるのか?
まだ感覚が冴えてないな……。

「やっ…!……だ!」

ん……。だんだん耳の感覚が戻ってきたぞ。

「契約魔法成功したよ!ほら!みてみて!しかも人型!」

耳はもう問題なさそうだ。
それより契約魔法……?
あぁそんなこと言ってたな…。
俺は何と契約したんだろうか。

「うそ!ありえない!!アンタが人型を召喚するなんて!」

「私だってやればできる子なんですぅ~!」

契約とやらは人型だと珍しいのか…?
というか女性っぽいな。
声はすごく可愛い…。
早く戻れ!視力!てか全感覚!

「ふふふ、最初の命を授けよう!我が眷属よ!その瞳を開き、私に跪けぇ!」

おっ、感覚が戻ってきたぞ!
目も開けられそうだ!

萌渕は感覚を取り戻し、
ゆっくり目を開くとそこには
2人の少女……?がたっていた。

「きゃー!ほら!言うこと聞いた!みてみて!」

「わかってるわよ!うるさいわね」

ここが新しい世界か……。
室内だから外はわからないが
どう見てもこの2人は人間じゃなさそうだ。
人間と似てるが1人は頭から
羽根みたいなのはえてるし
もう1人は犬みたいな耳に角まである。

……でもかなり際どい服をお召になっていて
素晴らしい。

「人型なのはいいけど冴えない見た目ね。」

角の生えた少女が萌渕のほほにふれる。

「やや、やめてください…」

「え!?」
角の生えた少女が素早く身を翻し
羽のはえた少女の後ろに隠れる。

「こいつ……喋ったよ?しかも否定してきた……」
怯える角少女とは対象的に目を輝かせる羽少女。

「喋れるなんてすごい……!おいで!ぎゅーしてあげる!」
両手を広げる少女。

「い、いや初対面ですしそれは……」

「きゃー!ほんとにすごーい!!」
否定も虚しく抱きしめられる萌渕。

初対面でも喋るのが苦痛じゃなくなってる!
さすが神様……!
そして何だか知らんが喜ばれてるし最高の感触……!

「また否定して…わ、私ヴァンドラ様に報告してくる!」
喜ぶ羽少女を尻目にバタン!
とドアを開け角少女は去っていった。







おかしい……。
あの子が人型を契約召喚できたのも
おかしいし眷属がいきなり会話を……
しかもあるじに否定するなんて有り得ない……。
よくわからないけどまずい気がする……。
ヴァンドラ様に早く伝えなきゃ!

バタン!
角少女は勢いよく大きなドアを開ける。
「ヴァンドラ様!!報告があります!」

神妙な顔付きで足を組み
王座に座る男が1人。
「待て……。言わずとも良い。どこから入った?」

「入った……とは?」

「侵入者であろう?これだけ膨大な魔力が急に城内に湧けばすぐにわかる。どこの魔力防壁が破られた?」

「魔力防壁には異常もありません。それは確かです。侵入者はいないかと思われます。」

「なんだと……?」
では……この魔力は一体……?

数秒の静寂。口を開いたのは角少女。
「報告、よろしいでしょうか?」

「構わん。話せ。」

「本日契約召喚の件なのですが人型が召喚されました。」

「ほぅ……?人型が?珍しいな。」

「はい……。しかし奇妙な事に召喚後すぐ言語を理解し、さらには意思を持ち、召喚者に反抗する意思をみせ、実行致しました。」

「意思を持つ眷属……?クククッ……。これは面白いかもしれんぞ。」
笑い出すヴァンドラに不安になる角少女。

「ヴァンドラ様……?」

「今すぐその者を連れてこい。召喚者の顔も見ておきたい。」

「はっ!ただいま!」

バタン!また大きな音を立て少女は走り出した。







「そ…そろそろいいかな?嬉しいけどきついよ。」

「あっ、ごめんね?大丈夫?」

「ここは……?そして君は?」

「自己紹介がまだだったね!ここは私たちの住むお城!そして私は!サキュバスのアリス!宜しくね!」

「サキュバス……?」

「そう!そしてあなたは私の眷属として召喚した名も無き眷属くん!名前はもう決めてあるから安心してね!」

サキュバスってあのサキュバスか?
俺の知ってるサキュバスとおなじなら
この子の格好にも納得がいくけど……

「俺……名前ありますけど……?」

「喋れるなんてほんとにすごいね!……ってえ?」

「俺萌渕っていいます。転生したみたいなんですが」
頭を掻きつつハハッと笑う萌渕。

「モエブチ?というより転生……?私にそんなことできないし契約召喚したはずなんだけどなぁ」

「でもいいや!よくわからないけど君は私の眷属!名前はサキュバスの眷属だからサキュゾク君!」

「えぇ……。そんなにこやかに言われてもその名前は…」

「だめかなー?じゃあけんぞくん!」

「これはひどい」

人と普通に話せるの楽しいな……。
アリス…っていったか?
この子ネーミングは残念だけど可愛いし
この世界に転生してよかったかも。

そんなやり取りをしているとバタン!と
角少女が帰ってきた。

「お取り込み中のとこ悪いけど今すぐヴァンドラ様のとこに来て。そこの人型。」

「えぇー?なんでー?けんぞくん連れてくの?」

「いいから。アンタも早くきて。」
角少女に半ば無理やり引っ張られる形で
俺はその場をあとにした。
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