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第3章〜幻想都市グリーディア〜

魔法装甲

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「はあぁぁっ!!」
両手を広げたまま魔力を込め続けるレベッカ。

「レベッカ!止めて!!それを使ったらみんなただじゃ済まなくなる!」

「悪いなキャラット。これしか奴に対抗出来ないんだ」


……何をする気だ?
今止めた方がいいのか?
いや下手に刺激すると危険か……?


開いていた両手を前で交差させるレベッカ。
「行くぞ…!“仇なす者を肉片と化せ!嵐狼ストームウルフ”!!」
周囲の空気が一瞬収束され、レベッカの後ろに
嵐狼ストームウルフが1体現れた。

「それは……。」
嵐狼ストームウルフか……。
どれ程の破壊力があるのかは未知数だが……
発動できる俺は魔力障壁で無事だろうけど
範囲がわからない以上周りが危険だな……。

「ふふっ、驚いたか?これは嵐狼ストームウルフ……!!グリーディアでも使える者はそうおらんぞ……!!死ぬ前にあいまみえたことを誇るがいい!」

「……そんなにすごかったのか……嵐狼ストームウルフ。」

「何……?」
なんだ奴のこの落ち着きは……。
それに…嵐狼ストームウルフを知っている……!?


片手を掲げるフューゼ。
「来い。」
周囲の空気が圧縮され嵐狼ストームウルフが現れる。

「んなっ……!!嵐狼ストームウルフを……!?」
たじろぐレベッカ。

「勘違いしないでほしいが嵐狼ストームウルフを使ってる奴を倒したりしてないぞ。使ってる奴を見たのはお前が初めてだからな。」

「な、なんだと?」

「ある奴から風狼ウィンドウルフを教えて貰ってな。それを使おうとしたら嵐狼ストームウルフになってたんだよ。」


馬鹿な……。
風の属性が流れるグリーディアの民ですら
一等魔力持ちで修練を積んでやっとのことで
使用できるのが嵐狼ストームウルフ……。
それを……風狼ウィンドウルフを使おうとして使えた?
話を聞く限りかなりの短期間で……
しかも無詠唱……
何なんだ……こいつは……。

「グリーディア王レベッカ。」

「……。」
呼びかけには答えずにフューゼの目を見つめるレベッカ。

嵐狼ストームウルフ同士で戦うとどうなるのか大体は予想がつくだろう。」

「くっ……!」

「だからここまでに……「そういう訳にはいかんのだ!!」」
声を張り上げるレベッカ。

「グリーディアをやっとここまでの国に築き上げてきたのだ……民のためにも我が屈するわけにはいかない……!!」

「うあああぁぁぁっ!!“仇なす者を肉片と化せ!嵐狼ストームウルフ”!!」
レベッカが詠唱を済ませるともう1体の
嵐狼ストームウルフが現れた。

そして膝をつくレベッカ。

「レベッカぁぁ!!」
叫ぶキャラット。

「これで……どうだ?ヴァンドラ……!!」


「……悪いがそれで引くわけにはいかないな。」
フューゼが魔力を込め両手を広げる。
すると一瞬で10体程の嵐狼ストームウルフが現れた。


「うそ……」
力なく座り込むキャラット。

「馬鹿な……!!|嵐狼ストームウルフを……貴様……!!」
化物かこいつは……!!!


「これでわかっただろう?とりあえずロングソードを治療してくれればそれでいい。その後話しがしたいなら付き合ってやる。」


はぁはぁと乱れていた呼吸を整え、フッと笑うレベッカ。
「あたしは引かないよ。キャラット」

「え……!?」

ゆっくり立ち上がるレベッカ。
「ヴァンドラ。勝負だよ」


「“我が身体に宿りて全てを刻む力を授けよ…魔法装甲マジックアーマー!ストルフ!”」
レベッカが詠唱すると同時に2体の嵐狼ストームウルフ
レベッカに吸収され緑の光を放ち
気付けばレベッカに嵐狼ストームウルフでできた
魔法装甲マジックアーマーが装備されていた。


「何だと……!?」
何だあれ……!すごいかっこいいじゃないか……!


「終わりだヴァンドラ。あたしの命に代えてでもグリーディアは守る。そして貴様を殺す」
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