転生魔女は悠々自適に世界を旅する

黛 ちまた

文字の大きさ
54 / 70
双子魔女の旅立ち

またね、フュリンガー!

しおりを挟む
 移民問題が解消され、かつ季節は秋。
 領都の食料品店は秋の味覚大売り出しだった。
 ニルアインワからもぎ取った森から収穫したものが出回ってるみたい。森は資源の宝庫だよね!

 エレンは本屋へ。ファゴットはむくつけき男になってシエを連れて地図作りの完成に向けて燃えてる。
 私は特にやりたいこともなかったから、キトラとシュナを連れて山に行き、噂のキノコ採取に。これはちゃんとエレンに許可を取ってます。収穫したキノコはお母さんに送って、残りは我らが美味しくいただく予定。

 馬車より天狼のほうが当然揺れるけど、速さにひょええああぁぁぁ! となってる間に到着した。当然無事じゃないので、しばらく休憩した……げっそり。

 三十分程休憩し、なんとか生き返ったのでキノコを捜索。
 魔法と鑑定リング様々である。いやほんと、キノコはヤバいからね。

 アンズタケやキンチャヤマイグチ、ハナイグチ、ツクリタケもたっぷりあったので、たっぷりいただいた!
 キノコのクリームシチュー食べたーい!!
 そして目標のパイン・ボリートを発見! ポルチーニの一種で、この山にしかないという奴。前世、山か里かで紛争になったキノコに似てる。
 この山にしかないということなので、取り過ぎはあかんよね、と思って収穫はほどほどにしておいた。
 マジックバッグに入れて、じゃあ帰るか! となって思い出す。だから、また酔うじゃん……。



 馬車の二階の居間で休んでいたらエレンが帰ってきた。
 二階に上がってきた時のほくほく顔からして、気にいるものが見つかったもよう。良かったね。エレンは本好きなので馬車での移動中や寝る前なんかに読んでる。

「おかえり」
「ただいまー」
「いいのあったー?」
「あった!」

 マジックバッグからいそいそと本を取り出す。……えー? 随分買ったね? これ、もはや鑑定リング諦めてるな。いいけど。
 私はカメラを買うぜ。

「キノコいっぱい採ってきてくれてありがとう」
「うん。ただ酔ったよ」
「直線距離で登れないくらい急斜面だもんね。お疲れ様」
「アレはやっぱりなんとかしたい」

 天狼に乗ってる時は仕方ないにしても、せめて馬車だけでもなんとかしたい!

「旅立ち前に食糧の買い出しとクルックさんの所に行こう」
「うん、そうしよう」

 紙のことは忘れてたけど、旅立つ前にクルックさんに挨拶することは忘れてないよ!



 連日日用品や食糧をたっぷり買い込んだ。また旅が始まるからね。大事です。この前の特別依頼の報酬、思った以上に凄かったし。
 そうそう、ギルドでフレディさんの紹介状をもらった。これでマルングリティの凄腕(?)魔道具師に会えるぞ!

 買い出しの最後にクルックさんのお店に行ったら賢者くんがいた。

「おっ、英雄のご帰還じゃん」
「英雄?」

 誰のこと?

「六つの村を奪還して、領地を守る防壁を作ってくれた双子の魔女は今じゃ領民にとって英雄扱いだぞ?」
「なにそれ逃げたい」
「なるに決まってんじゃん」

 そう言ってケラケラと賢者くんは笑った。
 ところで肩に乗ってる生き物が気になる。

「賢者くん、その肩に乗ってるのって?」
「あぁ、コイツ? 可愛いだろ、水猫だ」

 水猫ってことは使い魔?
 賢者くんの肩の上でにょろーんと伸びたりしてる。猫は液体だもんね。時折透けるのが不思議。

「天狼が良いって言ってたけど、水猫に選ばれたことを受け入れたんだ」
「まぁな。自分の力で無双してやるって決めたからさ」
「おぉ、かっこよ」
「だろ?」

 ニカッと笑う賢者くん。まごうことなきDK感。

「そろそろ旅立つんだろ?」
「うん」
「また何処かで会えるといいな」
「そうだね」

 賢者くんも無双のためには旅立たないとね。

 店を出ようとした賢者くんが振り返った。

「オレの名前、ダニー・グリフィン・デコス」
「お貴族様!?」
「男爵家だけどな。じゃあ、またな!」

 そう言って爽やかに去って行った。
 陽キャだ。

「彼も良いほうに向かって良かったよ」

 クルックさんがニコニコしながら言った。

「やたら絡んでくるからどうしようって思ったけど、悪い人じゃなくて本当良かった」
「うんうん」
「そうだねぇ。賢者うんぬんの前に貴族に目を付けられるのは面倒ごとにしかならないから、良かったよ」

 それは確かに。

「さて、お待たせしたね。これが錬金術で作った紙だよ」

 カウンターに紙の束が置かれた。

「触ってみていい?」
「勿論」

 ツルツルしてる。普通の紙と違って毛羽だってない。前世の紙に近い感じ。

「何処から聞きつけたのか、魔女通販から声がかかってね。今後はそっちでも買えるよ」
「おぉー」
「日用品だから値段もそんなに高くしてないからね」
「うん、ありがとう、クルックさん!」

 紙の束とインクを買い、おやつをご馳走になった。

「帰ったら顔を見せにきておくれ」
「うん」

 クルックさんがホビットのハーフで良かったなって思う。人よりも寿命が長いから。

「またね、クルックさん」
「またね」
「良い旅を」

 買い出しを終えて馬車に戻った私達は、そのまま旅立つことにした。
 コヴァルシャに向かうなら、夜のうちに出ると関所に朝に着くとギルドで教えてもらったから。

 領都を出る時、門番の兵士さん達に笑顔で送り出された。

「良い旅を!」
「ありがとうございます」

 手を振って馬車に乗り込む。
 またね、フュリンガー!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた

平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。 それから幾千年。 現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。 そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。 ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。 だが彼自身はまだ知らない。 自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。 竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。 これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。

元勇者は魔力無限の闇属性使い ~世界の中心に理想郷を作り上げて無双します~

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
  魔王を倒した(和解)した元勇者・ユメは、平和になった異世界を満喫していた。しかしある日、風の帝王に呼び出されるといきなり『追放』を言い渡された。絶望したユメは、魔法使い、聖女、超初心者の仲間と共に、理想郷を作ることを決意。  帝国に負けない【防衛値】を極めることにした。  信頼できる仲間と共に守備を固めていれば、どんなモンスターに襲われてもビクともしないほどに国は盤石となった。  そうしてある日、今度は魔神が復活。各地で暴れまわり、その魔の手は帝国にも襲い掛かった。すると、帝王から帝国防衛に戻れと言われた。だが、もう遅い。  すでに理想郷を築き上げたユメは、自分の国を守ることだけに全力を尽くしていく。

あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト
ファンタジー
ダンジョン専門に、魔物を狩って生計を立てる古参のソロ冒険者ジーン。本人はロートルの二流の冒険者だと思っているが、実はダンジョン最強と評価される凄腕だ。だがジーンはある日、同業の若手冒険者から妬まれ、その恋人のギルド受付嬢から嫌がらせを受けダンジョンを出入り禁止にされてしまう。路頭に迷うジーンだったが、そこに現れた魔女に「1年間、別人の姿に変身する薬」をもらう。だが、実際には「1歳の姿に変身する薬」だった。子供の姿になったジーンは仕方なくシェルパとなってダンジョンに潜り込むのだが、そんな時ダンジョンい異変が起こり始めた。

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

追放されたけど実は世界最強だった件 〜異世界でスローライフを満喫してたら、元婚約者が泣きついてきた〜

にゃ-さん
ファンタジー
王国一の魔術師と呼ばれながらも、冤罪で追放された青年レオン。 田舎でのんびり暮らすつもりが、助けた村娘が実は聖女、拾った猫が神獣、弄った畑が伝説の大地に!? やがて彼の存在は国を超えて伝説となり、かつて彼を見下した者たちが次々とひざまずく――。 ざまぁあり、無自覚ハーレムありの、スカッと系異世界リベンジ譚。

辺境の落ちこぼれと呼ばれた少年、実は王も龍も跪く最強でした

たまごころ
ファンタジー
村で「落ちこぼれ」と呼ばれた少年アレン。魔法も剣も使えず、追放される運命だった。 だが彼の力は、世界の理そのものに干渉する“神級スキル”だった。 自覚のないまま危機を救い、美女を助け、敵を粉砕し、気づけば各国の王も、竜すらも彼に頭を下げる。 勘違いと優しさと恐るべき力が織りなす、最強無自覚ハーレムファンタジー、ここに開幕!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...