魂呑み込む、死神の歌 〜青春を生きる死神は図らずも人間を虜にする〜

仁乃戀

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第二章

たった1つの勝負事

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 翌日、連絡先を交換した先輩からの連絡もなく、4人で黙々と勉強をしていた。
 教室の中には控えめなクーラーの音が広がり、そこにシャーペンの先が擦れる効果音が加わる。
 勉強を始めてから1時間半ほど経ったとき、隣で英単語の暗記をしている智和が唐突に大きなため息をついた。

 「はぁぁ…………。 なんか息苦しいよ。 お前らよくそんなに集中力続くよな」

 たしかに、隣で見ている感じだと智和は30分ほどで集中が切れたようだった。
 やけにそわそわしたり、うつらうつらして机に顔をぶつけそうになったりしていたが、なんとか自分を奮い立たせて勉強を続けていた。

 「集中力が続く時間は人によるらしいから、気にすることねーよ。 俺らもいつまでも集中できるってわけじゃないしな」
 「でも思ったんだけど、その個人差って勉強の出来に影響するんじゃないか? 単純に集中できる時間が増えたら勉強する時間も増えるだろ? それって俺不利じゃね?」
 「勉強は量が大事だって意見があれば、質が大事だって意見もある。 でも、それって実際その人に合ってるかどうかの話だと思うんだよな。 短期集中型の人だろうが長期集中型の人だろうが、勉強の効率化が出来ていれば学力はぐんぐん伸びる」
 「……なんかお前がどこかの塾講師に見えてきた」
 「いつも俺が教えてるからそう見えるんじゃないか?」

 でもなぁ、と椅子にもたれかかってぐらぐらと身体を揺らす。

 「今回も奢りはきついよ。 もっとハンデつけてくれ」
 「20点くらいならいいけど」
 「少ねぇよ! 50点くらい余裕あんだろ、頼むよ」
 「そんなに奢りが嫌なら単純に勝負だけして奢りなしにすれば良いんじゃないか?」
 「いや、それだとやる気が出ねぇ」
 「やる気の代わりにプライドが犠牲になってるぞ」

 彼の言う通り、俺らは定期テストがあるたびに点数で勝負をしている。
 負けた方は勝った方にジュースを1本奢る。
 ありきたりなものだ。

 最初は点数のハンデをつけてなかったのだが、想像以上に差がついてしまったからその次からはハンデをつけるようになり、回数を重ねるごとに増えていっている。
 なんだかんだ俺が勝つのだが。

 「ねえ、私もやりたい」

 ハンデを何点上げるかの協議をしているところに、綾瀬が乱入してくる。

 「お? 俺と楽と3人で勝負するか?」
 「いや、藤崎とだけでいいや」
 「俺の扱い酷くね!?」

 あからさまに悲しむ様子をみてぽんぽんと智和の頭に手を乗せる椎名。
 智和はいつも明るい素振りを見せているけど、意外と傷つきやすい。
 ……のだが、椎名の行動に幸せそうに頬が緩める様子を見ると安心した。

 「勝った方が負けた人の言うことを1つ聞く、っていうのでどう?」
 「なんか罰ゲームみたいな方向になりそうなんだけど」
 「そんな変なこと言わないから大丈夫。 あと、勝負する科目は英語だけでいい?」
 「任せる」
 「余裕そうだね」
 「英語は得意だからな」
 「そうなんだ。 でも私も英語は大の得意だから、あまり舐めてると痛い目見るよ?」

 得意げな顔を作って俺に視線を向けてくる。

 たかがテスト。
 そう思っていたが、このたった1つの約束に狂わされるなどとは思いもしなかった。
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