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それから数日の間は、城の警備や魔獣についての情報収集をした。
第一王子は他国に亡命しており、第二王子が城を占拠している様だ。
そして、魔獣達が城を守っているらしい。
そして俺は…。
「どれがいいかな…。」
グレイとリオンに頼んで、姿を変えて武器屋に連れて来てもらっていた。
俺としては一緒に戦うためだけど、グレイは納得がいかない様だ。
「あくまで護身用だからな。マナトには強力な守護魔法をかける。」
「魔術師や魔獣に普通の武器は、あまり効果ありませんしね。」
リオンも真剣に選んでくれる気は無さそうで、俺は1人でウロウロと店内を歩きまわる。
RPGゲームに出てくる様なかっこいい剣やナイフ、斧、鞭、イマイチ使い方の分からないようなものまでありとあらゆる武器が揃っている。
大きな剣や斧を持ち歩く力はないし、鞭なんて扱えない。
ひとりで頭を悩ませていると、店の奥にズラリと並べられていた銃が目についた。
そうだ、銃なら撃てるかもしれない。
そう思って、何となく気になった小型の銃をひとつ手に取る。
すると、目立たない容姿に姿を変えたリオンがさり気なく側にやって来て、俺が手に取った銃を覗き込んだ。
「それ、少しだけ魔力の気配がしますね。」
「魔力?」
「持ち主の魔力が強いと、武器にも力が宿ることがあるんです。珍しいですし、少しは役に立つかもしれませんよ?」
「…じゃあ、これにしようかな。」
グレイに言うと、俺が気に入ったのならと弾丸もセットでお金を出してくれた。
若者に買ってもらうのは気が引けたけど、今は手持ちがない。
「ありがとうグレイ。いつになるか分からないけど、返すから。」
「…律儀な奴だな。気にすんな。それより、銃なんて撃てるのか?」
「早速練習してみるよ!」
足手まといになりたくない一心で、俺は人気のない開けた場所で、銃を撃つ練習をした。
グレイやリオンに散々教えてもらったけど、異世界スキルが目覚めることもなく成果はイマイチだ。
このままじゃ、弾丸の無駄使いだ…。
そう思いながら、ふと魔力を増幅出来るなら銃に宿った魔力も同じなんじゃ…。
そう思って、ダメ元でキスをしてみたら…。
「やった、また当たった!」
狙わなくても思った所へ弾が飛ぶようになり、装填すら必要なくなった。
これが、チートというやつなんじゃ…!?
「へー、すげぇじゃん。」
「マナトの力って、そんな使い方もあるんですね!」
グレイとリオンに褒められ、俺も何とか足手まといにならなくて済みそうだ。
そして、俺達はついに王都へ戻ることにした…。
*
活気のあった王都の治安は乱れ、町は荒廃していた。
人々は家に閉じこもるように、昼間でも窓やカーテンを閉め切っている。
俺達は姿を変えたまま、かろうじて営業していた宿屋に部屋を取った。
「グレイやリオンの家族も、心配だよな…。」
あまりに変わり果てた町の様子に、俺はついそう呟いていた。
「僕の両親は、戦争で亡くなっているんです。だから僕は、教会の施設で育ちました。」
リオンはそう言っていつも通りに微笑んでくれたけど、俺は黙りこんでしまう。
「グレイ様のご実家は貴族なので、きっとどこか遠くの別荘にでも…。」
「そーだろうな。身の危険を察知する力には長けた連中だ。」
リオンは話を変える様にグレイの方を見た。
でも、家族の話にグレイの表情は冷たくなる。
「…俺は、父の愛人の子らしい。母が早くに亡くなると、家に居場所はなかった。魔術の才があったから、表向きは正式な子にしてあるけどな。家の権威を高めたかっただけさ。」
リオンも知らなかった様で、しょぼくれてしまう。
2人の話を聞いて、俺も何て答えたらいいか分からなかった。
でも…。
「必ず勝とう。そして、魔王から国を取り戻そう!」
そう言った俺に、2人が笑ってくれる。
「第二王子のせいで貴重な魔術師がさらに減っちゃいましたし、やるしかありませんよね。」
「そーだな。さっさと片付けて、俺はマナトとすろーらいふするぞ!」
グレイの台詞に、リオンが大きな瞳をキョトンとさせる。
「何ですか? そのすろーなんとかって。」
「マナトの夢なんだ。人里離れて、自由にのんびり暮らすのさ。」
「いいですね! 僕も混ぜてください!」
「気を利かせろよ…。」
いつもの調子に戻った2人を眺めながら、グレイとのスローライフを想像してみた。
戦争や王室や貴族の揉め事から離れて、自由に暮らせたらどんなに幸せだろう…。
一度本物の戦いを知り、魔王に立ち向かうなんて内心は逃げ出したいくらい怖い。
でも、聖女の力が俺にあるなら、やるしかないんだ。
その代わり、2人を絶対に死なせない。
俺は強く、そう心に誓った。
第一王子は他国に亡命しており、第二王子が城を占拠している様だ。
そして、魔獣達が城を守っているらしい。
そして俺は…。
「どれがいいかな…。」
グレイとリオンに頼んで、姿を変えて武器屋に連れて来てもらっていた。
俺としては一緒に戦うためだけど、グレイは納得がいかない様だ。
「あくまで護身用だからな。マナトには強力な守護魔法をかける。」
「魔術師や魔獣に普通の武器は、あまり効果ありませんしね。」
リオンも真剣に選んでくれる気は無さそうで、俺は1人でウロウロと店内を歩きまわる。
RPGゲームに出てくる様なかっこいい剣やナイフ、斧、鞭、イマイチ使い方の分からないようなものまでありとあらゆる武器が揃っている。
大きな剣や斧を持ち歩く力はないし、鞭なんて扱えない。
ひとりで頭を悩ませていると、店の奥にズラリと並べられていた銃が目についた。
そうだ、銃なら撃てるかもしれない。
そう思って、何となく気になった小型の銃をひとつ手に取る。
すると、目立たない容姿に姿を変えたリオンがさり気なく側にやって来て、俺が手に取った銃を覗き込んだ。
「それ、少しだけ魔力の気配がしますね。」
「魔力?」
「持ち主の魔力が強いと、武器にも力が宿ることがあるんです。珍しいですし、少しは役に立つかもしれませんよ?」
「…じゃあ、これにしようかな。」
グレイに言うと、俺が気に入ったのならと弾丸もセットでお金を出してくれた。
若者に買ってもらうのは気が引けたけど、今は手持ちがない。
「ありがとうグレイ。いつになるか分からないけど、返すから。」
「…律儀な奴だな。気にすんな。それより、銃なんて撃てるのか?」
「早速練習してみるよ!」
足手まといになりたくない一心で、俺は人気のない開けた場所で、銃を撃つ練習をした。
グレイやリオンに散々教えてもらったけど、異世界スキルが目覚めることもなく成果はイマイチだ。
このままじゃ、弾丸の無駄使いだ…。
そう思いながら、ふと魔力を増幅出来るなら銃に宿った魔力も同じなんじゃ…。
そう思って、ダメ元でキスをしてみたら…。
「やった、また当たった!」
狙わなくても思った所へ弾が飛ぶようになり、装填すら必要なくなった。
これが、チートというやつなんじゃ…!?
「へー、すげぇじゃん。」
「マナトの力って、そんな使い方もあるんですね!」
グレイとリオンに褒められ、俺も何とか足手まといにならなくて済みそうだ。
そして、俺達はついに王都へ戻ることにした…。
*
活気のあった王都の治安は乱れ、町は荒廃していた。
人々は家に閉じこもるように、昼間でも窓やカーテンを閉め切っている。
俺達は姿を変えたまま、かろうじて営業していた宿屋に部屋を取った。
「グレイやリオンの家族も、心配だよな…。」
あまりに変わり果てた町の様子に、俺はついそう呟いていた。
「僕の両親は、戦争で亡くなっているんです。だから僕は、教会の施設で育ちました。」
リオンはそう言っていつも通りに微笑んでくれたけど、俺は黙りこんでしまう。
「グレイ様のご実家は貴族なので、きっとどこか遠くの別荘にでも…。」
「そーだろうな。身の危険を察知する力には長けた連中だ。」
リオンは話を変える様にグレイの方を見た。
でも、家族の話にグレイの表情は冷たくなる。
「…俺は、父の愛人の子らしい。母が早くに亡くなると、家に居場所はなかった。魔術の才があったから、表向きは正式な子にしてあるけどな。家の権威を高めたかっただけさ。」
リオンも知らなかった様で、しょぼくれてしまう。
2人の話を聞いて、俺も何て答えたらいいか分からなかった。
でも…。
「必ず勝とう。そして、魔王から国を取り戻そう!」
そう言った俺に、2人が笑ってくれる。
「第二王子のせいで貴重な魔術師がさらに減っちゃいましたし、やるしかありませんよね。」
「そーだな。さっさと片付けて、俺はマナトとすろーらいふするぞ!」
グレイの台詞に、リオンが大きな瞳をキョトンとさせる。
「何ですか? そのすろーなんとかって。」
「マナトの夢なんだ。人里離れて、自由にのんびり暮らすのさ。」
「いいですね! 僕も混ぜてください!」
「気を利かせろよ…。」
いつもの調子に戻った2人を眺めながら、グレイとのスローライフを想像してみた。
戦争や王室や貴族の揉め事から離れて、自由に暮らせたらどんなに幸せだろう…。
一度本物の戦いを知り、魔王に立ち向かうなんて内心は逃げ出したいくらい怖い。
でも、聖女の力が俺にあるなら、やるしかないんだ。
その代わり、2人を絶対に死なせない。
俺は強く、そう心に誓った。
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