千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜

第一章 曼珠沙華

３話 「貴方達しかいないからよ」

　ベゴニアが少し気だるそうに話始める。

「まぁいいわ…。それで詳しい内容なんだけど、最近浅草寺をこのベゴニア様の許可なく無断で占拠してる輩がいるの。それが昆虫騎士団の幹部、クロカタゾウムシとその部下達。要はそいつらを追い払って欲しいって訳なのよ」
　
「ラフレシアのクソババアに唆されてのこのこ来たんでしょうけど、返り討ちにしてやりなさいな」

　怒りのこもった声と目線を4人に向ける。ベゴニアがここまで昆虫騎士団と呼ばれる者たちを敵視するのには理由があった。

　

　人類の過ちにより、かつて美しかった自然が破壊され荒廃した世界。

　ある日、見かねた神が世界から人類を消し、花と昆虫に人の姿と新たな力を与えた。

　花には女性の姿を、昆虫には男性の姿を与え、人類が繁栄するより遥か前の美しい自然を取り戻すために動くよう命じた。
　それぞれを華乙女、昆虫騎士団、と名乗り最初の頃は仲良く協力して活動していた。

　ただ、人の姿を与えられた性なのか、その自然を破壊し、この世界を支配しようと企む昆虫騎士団の者が現れた。
　その者に賛同し、多くの昆虫騎士団を仲間に加え、華乙女の敵となることを選んだのは、ラフレシアと呼ばれる華乙女であった。
　彼女らはキョウトを拠点とし、全国様々な場所に昆虫騎士団を派遣し、その地区の占拠と自然の破壊を行った。

　これらに対抗するべく、ベゴニアは多くの華乙女を取りまとめ、トウキョウを本拠地として自然を守る活動をしていた。
　その本拠地に昆虫騎士団の幹部を派遣したということは、宣戦布告と捉えて間違いないだろう。


「知っての通り奴らはかなり手強いわ…。それでも！……貴方達なら勝てる力を持っていると信じてるの！」

「この美しいトウキョウの自然を守るために、奴らを倒してきてくれないかしら？」

　両手を組み潤んだ瞳で4人に目線を送りそう告げる。


「あの～～、聞きたくないですけど本音は？」

　ヒガンバナがそう呟くと、


「そんなの、……こんな面倒くさいこと聞きてくれそうなの、貴方達しかいないからよ」

　先ほどの表情は嘘かのようにあっけらかんとした態度で答える。


「「「「ひどっ！」」」」

　ここに来る前はベゴニアを擁護していたひまわりも3人につられ思わず口に出していた。