千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜

東雲 大雅

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第一章 曼珠沙華

4話 「「「「それでは行って参ります!!」」」」

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「だってしょうがないじゃない?他の子達は別地区の護衛で忙しいし、何より昆虫騎士団の幹部クラスを相手できる子で、言うこと聞いてくれるの貴方達だけなのよ」

「……それに」

「他の子に頼もうとすると、・・・なぜかここまできてくれないのよね~」

 困った顔をしているが、自身の行いに心当たりがあるのか全く悪びれもせず話すベゴニアに、ひまわりが右手を上げ話し始める。

「それならっ!今回の依頼を達成できた暁には、アタシ達がトウキョウを出て旅するのを認めて下さい!!」

 今にも飛び出してきそうな勢いで話すひまわり。その表情は真剣そのものである。それとは対照的に、ベゴニアはきょとんとした顔で淡々と答える。

「あらっ、そんな事でいいの?いいわよ。許可してあげる。」
 
 さも当然かのように話すベゴニアの答えを聞き、ひまわりは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに満面の笑みを浮かべる。
 
「えっ!いいんですか⁉︎やったーー!」

 あまりの嬉しさにひまわりが飛び跳ねながら隣にいたヒガンバナに抱きつく。

「ちょっとひまわりちゃん!ベゴニア様の前からだから落ち着いて…!」

 興奮するひまわりをヒガンバナが宥める。

「ああ~~、ごめんごめん!つい嬉しくなっちゃって!」
 抱きついていたヒガンバナから離れ、少し冷静になったひまわりは少し恥ずかしそうに下を向く。


 その様子を微笑ましく見つめる桜と、桜の着物の裾を握り不安げな表情で俯くビオラ。

 ビオラの不安げな表情を見たベゴニアが問いかける。

「どうしたのビオラ?そんな不安そうな顔をして……。何か気になる事でもあるのかしら?」

 ベゴニアの問いかけに反応したビオラはすぐに顔を上げたが、視線を少し逸らしながら言いづらそうに答える。

「そう言うわけじゃないんですけど……、ベゴニア様がこんなに簡単に許可をくれるなんて何か裏がありそうで……」
 
 ちらちらとベゴニアの顔色を伺うように話す。
 その答えを聞き、呆れたように笑い、言葉を繋げる。

「酷いこと言うわね~。それだけ今回の任務が大変な事だって分かった上で言ってるのよ。一筋縄じゃいかないからこうやってちゃんとした報酬をあげる事で、貴方達のやる気を出させたい……ただそれだけのことよ」

 ビオラの不安を拭うかのように優しく答える。ベゴニアの慈愛に満ちた表情と声色にビオラの表情も明るくなる。

「それを聞いて安心しました!私もみんなと一緒に頑張ります!!」
 
 元気いっぱいの声と笑顔で答えるビオラを見たベゴニアは優しい表情のまま頷く。

「それでいいわ……。桜は何かあるかしら?」

 視線を桜に向けベゴニアは問いかける。

わたくしは特に何もございません。ベゴニア様の命令でしたら・・・・・・余程のことがない限りは聞きますよ。わたくしは皆さんの笑顔が見れればそれだけで充分です。」
 
 ベゴニアを真っ直ぐに見つめ、澱みなく発言する。
 

「流石は桜ね。少し気になる部分があったけど、まぁ聞かなかった事にしてあげる。」
 
 目を伏せながら桜に言葉を返す。


「最後にヒガンバナ。……貴方はどうかしら?」

 再び視線を上げ、ヒガンバナを見つめながら最後の問いかけを行う。


 ベゴニアの座っている椅子の後ろを眺めていたヒガンバナが、視線をベゴニアに戻し答える。

「・・・・・・私もトウキョウを出る事を許可していただけるのでしたら何もありません。必ず皆んなを無事に守り、そのクロカタゾウムシとか言う昆虫騎士団の幹部を成敗してきます!」 

 熱意のこもった声でそう答える。
 少し力が入っているのか、ヒガンバナの両手はいつのまにか固く握られていた。


「その意気よヒガンバナ。ただし、あまりやりすぎないよう注意しなさい。トウキョウから出さなかったのも……理由の半分は貴方なんだから。」

 ベゴニアが意味深な表情でそう呟く。以前あったのことを言っているだろう。
 それまで笑顔だったひまわりを始め、4人全員が少し暗い表情を見せ、俯いてしまう。
 重たい空気がその場を流れるが、その空気を払拭するかのように、パンッ!と両手を叩き、ベゴニアが声をかける。


「それじゃあ全員納得したことだし、…さっさと行ってらっしゃいな」

 右手をヒラヒラさせ追い払うような仕草をする。
 その言葉を聞いた4人は一斉に顔を上げ、元気よく答える。

「「「「それでは行って参ります!!」」」」

 4人が声を合わせ敬礼をする。


 こうしてクロカタゾウムシ討伐の旅が始まるのであった。
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