6 / 42
第一章 曼珠沙華
5話 「その言葉が聞けて大変嬉しく思います。」
しおりを挟む
「ふぅ………」
4人が松の間から退出するのを見届けたベゴニアは座っていた椅子にさらに深く腰掛けため息を漏らす。
「あら?いつからいたのアゲハ?いるなら声をかけなさいよ」
視線も向けずに椅子の後ろに佇む人物に声をかける。
「初めからずっといましたよ。気配を消していたので4人には気づかれていないと思いましたが・・・」
黒の燕尾服に白いワイシャツ、首には薄い黄色の蝶ネクタイ、黒の髪をオールバックで整えた背の高い人物がそう答える。
「3人はともかくヒガンバナは気づいていたわよ。あの子は誰よりも目がいいから」
「流石はヒガンバナ殿。彼女とは絶対に敵対したくないものです」
「それが賢明よ。あの中で唯一千紫万紅が使える子だし……何より怒らせるとワタシでも手に負えなくなっちゃうくらいだから」
左手で頬杖をつき上目遣いでアゲハを見る。その言葉にアゲハが苦笑しながら返す。
「ご冗談を……。あなた様ほどのお方が手に負えないとなると誰も彼女を止められないことになりますよ」
「実際にはそれだけ大きな力を秘めているってだけの話よ。その力を無闇に使わない子だっていうのはワタシがよく知ってるわ」
「あなた様がそこまで仰るのは珍しいですね。何か彼女に思い入れでも?」
にこりと笑い興味津々にアゲハが問いかける。その問いかけにベゴニアは呆れたように答える。
「あの子だけに思い入れがあるってわけじゃないわ。ワタシは華乙女の全員を平等に愛してる。誰か1人だけ特別扱いなんて事するわけないじゃないの」
呆れた表情とは裏腹にその言葉には一切の澱みない真剣な声色だった。
「その言葉が聞けて大変嬉しく思います。やはり私目が仕えるお方はあなた様しかおりません」
ベゴニアの答えに感銘を受けたのか、誰に言われたでもなく深々と腰を曲げ頭を下げるアゲハ。それを見たベゴニアは少し鬱陶しそうに顔を歪ませた。
「よしなさいよ、いきなり……。全員とは言ってもラフレシアだけは例外よ。……あのクソババアには、必ずこれまでの悪行の代償を支払わせる!」
これまでにない怒りのこもった声で話す。いつのまにか右手の拳を固く握りしめていた。
「その意見には私目も賛同しております。あの者のこれまでの所業はあまりにも凄惨すぎる」
頭を上げベゴニアに視線を向ける。過去にラフレシアが行った所業を思い出し、眉をひそめ怒りの表情をあらわにする。
「それがかつての同志と戦うことになってもかしら?」
アゲハの顔をチラリと見ながらベゴニアが問いかける。目が合ったアゲハは先ほどの表情から一転し、すました表情で淡々と話す。
「ラフレシアではなくあなた様に忠誠を誓ったあの日から覚悟は出来ております」
ベゴニアの顔を真っ直ぐに見つめるアゲハの真剣な眼差しに、思わずベゴニアは視線をそらし誤魔化すように言葉を紡ぐ。
「ミツバチといいアンタといい…….ワタシについた元昆虫騎士団の連中は変なのばっかりね」
そう呟くベゴニアの表情はどこか嬉しげであった。
4人が松の間から退出するのを見届けたベゴニアは座っていた椅子にさらに深く腰掛けため息を漏らす。
「あら?いつからいたのアゲハ?いるなら声をかけなさいよ」
視線も向けずに椅子の後ろに佇む人物に声をかける。
「初めからずっといましたよ。気配を消していたので4人には気づかれていないと思いましたが・・・」
黒の燕尾服に白いワイシャツ、首には薄い黄色の蝶ネクタイ、黒の髪をオールバックで整えた背の高い人物がそう答える。
「3人はともかくヒガンバナは気づいていたわよ。あの子は誰よりも目がいいから」
「流石はヒガンバナ殿。彼女とは絶対に敵対したくないものです」
「それが賢明よ。あの中で唯一千紫万紅が使える子だし……何より怒らせるとワタシでも手に負えなくなっちゃうくらいだから」
左手で頬杖をつき上目遣いでアゲハを見る。その言葉にアゲハが苦笑しながら返す。
「ご冗談を……。あなた様ほどのお方が手に負えないとなると誰も彼女を止められないことになりますよ」
「実際にはそれだけ大きな力を秘めているってだけの話よ。その力を無闇に使わない子だっていうのはワタシがよく知ってるわ」
「あなた様がそこまで仰るのは珍しいですね。何か彼女に思い入れでも?」
にこりと笑い興味津々にアゲハが問いかける。その問いかけにベゴニアは呆れたように答える。
「あの子だけに思い入れがあるってわけじゃないわ。ワタシは華乙女の全員を平等に愛してる。誰か1人だけ特別扱いなんて事するわけないじゃないの」
呆れた表情とは裏腹にその言葉には一切の澱みない真剣な声色だった。
「その言葉が聞けて大変嬉しく思います。やはり私目が仕えるお方はあなた様しかおりません」
ベゴニアの答えに感銘を受けたのか、誰に言われたでもなく深々と腰を曲げ頭を下げるアゲハ。それを見たベゴニアは少し鬱陶しそうに顔を歪ませた。
「よしなさいよ、いきなり……。全員とは言ってもラフレシアだけは例外よ。……あのクソババアには、必ずこれまでの悪行の代償を支払わせる!」
これまでにない怒りのこもった声で話す。いつのまにか右手の拳を固く握りしめていた。
「その意見には私目も賛同しております。あの者のこれまでの所業はあまりにも凄惨すぎる」
頭を上げベゴニアに視線を向ける。過去にラフレシアが行った所業を思い出し、眉をひそめ怒りの表情をあらわにする。
「それがかつての同志と戦うことになってもかしら?」
アゲハの顔をチラリと見ながらベゴニアが問いかける。目が合ったアゲハは先ほどの表情から一転し、すました表情で淡々と話す。
「ラフレシアではなくあなた様に忠誠を誓ったあの日から覚悟は出来ております」
ベゴニアの顔を真っ直ぐに見つめるアゲハの真剣な眼差しに、思わずベゴニアは視線をそらし誤魔化すように言葉を紡ぐ。
「ミツバチといいアンタといい…….ワタシについた元昆虫騎士団の連中は変なのばっかりね」
そう呟くベゴニアの表情はどこか嬉しげであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる