怪奇事変

桜木未来(小説家見習い)

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怪奇事変 交換日記

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クラスで流行っている交換日記、誰しも一度は聞いた事はあるのではないか?
 この学校でもそれは行われており、1学年から3学年を通して続けた交換日記は云わば学校の“伝説の書”などとくだらない称号をつけられるが、一部の教員はこの所業を素晴らしい物だと感じ、図書室の一角に、卒業生の覧っと同時にアルバムも同じ様に保管されている。

 今ではそれを作るのがこの学校の楽しみの1つでもあり――怪談話にもなっていた。

 それはある学生の体験談だった。
 同じように自分もこの学校の卒業生として旅立つ前に何かを残したいっと言う気持ちで書き始めた交換日記、それに協力してくれる友人やクラスメイト。
 だがしかし、1日1日の出来事を例え文字数の制限がなくとも書かなければならないのは所業であった。
 
 先人の知恵を拝借する為、一冊の交換日記を借り、参考程度にどのような内容を書いてあるか読もうとページを開いた瞬間

 ――死ね――

 その多くの文字がページの最後まで大きく殴り書きされていたのだ。
 既に書いてあった内容は部分的にしか読み取れず、何が起きたのか分からず、何故このような本を学校側は認可して図書館に置いてあるのか混乱するだけだった。

 翌日――日記を返す際にうっかり落としてしまうと、そこにはただ文字の羅列だけが残っていた。
 昨日みたあの凶器に満ちた文言は何一つ書いておらず、まるで魔法の様に消えてなくなっていたのだ。
 そしてそれを見たのは1人だけではなかった。

 この本を借りた人間は全員“その文章を目にしている”のだ。
 返す際、家を出る前、携帯で写真を撮った者さえいたが、返却すると全てその文言は綺麗に消えてなくなっていた。
 
 ――交換日記――

 誰かに交換して日記を回す行為であったが、別の意味でこの学校では有名となった。
 この日記を借りた人間は必ず負傷者が出ている――交換を意味する言葉、その意味自体が大きく異なっているのだ。
 つまり、読むからわりにそれ相応の“交換”が行われる、読む代償として腕を折った者、交通事故に遭い歩けなくなった者、通り魔に刺され重傷を負った者……。
 
 ――それが“交換日記”である――

 「ただの噂っしょ?」

 そう片づける友人に私は食い下がる。

 「そんな事ないって、マジなんだって!」

 「じゃ放課後……図書館に行って片っ端からその交換日記借りてみれば良いんじゃん?実証とか??」

 「あのね、本当だったら――」

 「ないない、ありえない、それを実証させてあーげる」

 そう言った2人の生徒も、禁忌に触れた為、最悪の形として見つかってしまった。
 
 警察に押収された交換日記は学校に戻ってきた物の、あり得ないとわかりつつもその危険性から、“ある部屋”に隠されたと言う。
 その部屋が何処かは噂では校長室などと言っているが未だに実態はつかめない。

 もし可能性があるとすれば――それは自身の“交換日記”を完成させ、この学校に収める時にその場所を割り出せるかもしれない。
 そう思った数名が1年から3年まで交換日記を続け、ついにあと数日と言う所までやってきたのだった。

 そうしてその怪談話を交えた真相を知る為に代表として2人の生徒が、交換日記のメンバーで決定された。

 夏希花なつきはな
 冬木霙ふゆきみぞれ

 この2名が代表として行うことになった。

 王西女学園、隣は男子学園とまぁよくある設定と言えば良いのかどうか、兎に角第一印象は互いの学校で両者は“最悪”だった。
 女子がする事を男子がからかい、それを怒る女子、終いには最終的に無視まですると言った末路。
 最早誰が悪かったと言うより恒例行事となった日常で、犬猿の仲となった両学園は互いを尊重する事無く、女子は徹底的なまでの嫌悪感による無視、そんな女子に対して男子は陰口を吐き捨てるだけ、そんな関係だ。
 
 「てかさ、別に風習とかどうでも良くない?」

 先に言ってきたのは夏希だった。
 霙は夏希と初学年一緒であり、最初に話をかけてもらった人物、霙にとって一番最初にできた大切な友人。
 そんな冬木霙は夏希とは反対の意見だった。

 「(男の人は……怖い)」

 すぐ怒鳴るし、喧嘩するし、食べ方も上品とは言えない、街中を歩いて居ればこちらの気持ちも考えずズカズカと入り込んで自分優先の話ばかりして来る。
 それがとてもつもなく……苦手なのだ。

 夏希と知り合ってからのこの3年、ずっと登校と帰宅は共にしているが、横から男子生徒が出てくると……気分が悪くなってくる。

 「誰だっけ、あの新入りの一年の子?」

 「え?」

 「みぞれ~、ちゃんと聞いといてよー」

 「ご、ごめん」

 嫌悪感と此処数年の事を思い出したら何だか吐き気を催してしまい、すぐさま切り替える。

 「ほら、一年で幼馴染が居るって言ってた」

 「えっと、春藤結乃春しゅんどうゆのはさん?」

 「そうそう!“はるふじ”って呼んでたけど、後で違って大恥かいたな~」

 「仕方ないよ、私も夏希が間違えるまで“はるふじさん”って呼んでたから」

 「あの子、地毛なんだってよ、あの桃色の髪」

 「珍しいよね、アニメのキャラクターみたいで」

 「ね?先生たちも驚いてたけど、うちの部にも欲しかったな」

 「何部に入ったんだっけ?」
 
 「ん~……なんか幼馴染と家族がらみの交流があるから帰宅部って聞いたけど」

 「そんな部ないけど……」

 「まぁ、あの子ぐらいだよ、堂々と男子と話せるのって」

 「見た事あるの?」

 「と~くからね!目つき悪くて、頭は金平糖みたくツンツンしてる黒髪の男子だったけど……なんか仲良さそうだったな、アレが幼馴染だったりしてな」

 霙は想像つかなかった。
 もし自分に幼馴染なるものがいたとして、それが男性だった場合受け入れられただろうか?
 否、不可能だ。

 だから進学も女子高一択で進んできた、社会に出れば男性との付き合いもあるかもしれないが、なるべく男性とは関わりを持ちたくは……ない。

 「それより見せに行こうぜ、アタシ達の“交換日記”」

 「うん!」



 「すまないね、コレは受け取れない」

 「はぁ!?」

 「ど、どうして…ですか」

 男性教員は深々と椅子に腰をかけながら空を見つめ答える。

 「あんな事件があった後だ、事件の解明にと警察とれい……いや、真相を辿ってはいるが、未だに不明、あり得ない話だが“交換日記”をあまり良く思わない人物が居るとしか思えん」

 「で、でもさ」

 「そ、そうですよ、いくらなんでも、私たちは単純に――」

 「君達が決して悪戯で匿名の誰かを傷つける為に書いた日記じゃない事はわかっているつもりだ」

 「“傷付ける”?」

 「……少し話過ぎてしまったようだ、兎に角、その“交換日記”はそれを書いた者達と君達で学校で贈呈するのではなく、君達自身で保管しなさい、良いですね?」

 「「……はい」」

 としか言えなかった。
 どうしてこんな……記念にってみんなで頑張った集大成なのに、何故?



 「はぁ~みんなにどう説明すれば良いんだよ~」

 途方に暮れながら帰路に着く夏希と霙。
 霙は先ほどの教員の口から出た“傷つける”と言う単語に奇妙な違和感を覚えていた。
 “交換日記”が“傷つける”……これは霙たちの学校である怪談話では有名となってしまった件で、今では誰でも知っている内容だ。

 だが……教員が最も詳しく言っていた“匿名の誰かを傷つける為”っと言う言葉が引っかかっていた。

 「ねぇ、夏希ちゃん、なんで先生は私たちの日記に対して“匿名の誰かを傷つける為”じゃないって言及したんだろう?」

 「さぁ~……読み返したけど、誰も傷つくような悪口なんて書いて無くない?」

 「うん、でも先生は確かにそう言ってた、夏希ちゃんの思考も間違ってない、なら答えは」

 「……もしかして、前の“交換日記”には匿名の悪口が書かれていた?」

 「かもしれない、それで書かれた本人が――」

 「借りた人間に仕返し……?え?おかしくない?」

 「う、うん、そこはおかしい。だって借りてる人は――」

 霙は1つの可能性が浮かんだ。
 卒業生が残した日記を借りる事ができる、そしてそこに“文字を付け足す”事は――“可能”だ。

 「憶測だけど、もしかしたら借りた人はその日記に付け加えたんじゃないかな?例えば――」

 「匿名の人物に対しての“誹謗中傷”って事か……」

 「うん、信じられないかもしれないけど」

 でも、そうだとしても事件の全容として犯人や事故を起こした人物は何れも女性ではなく男性が多いのだ。
 女性の比率としてはほぼ0に近い事からまた、謎が深まる。

 「まぁ、当初の目的とはズレてないし、やってみる?」

 「やってみる……て、何を?」

 「深夜に潜入作戦、見つかれば即留年アウトコース」

 「えぇ……」

 「霙は男ダメかもだけど、知り合いに凄腕の鍵開け名人が居るからソイツに頼んで捜索しよ!」

 「だ、ダメだよ!」

 夏希とならともかく男もその中に混じるとかあり得ない。

 「大丈夫、ソイツ霙の事知ってる人物だから、多分話振ってこないと思うし、なるべく2人だけにはしないから」

 「……でも」

 「じゃ今夜学校裏で集合って事で、遅刻厳禁だぞ~」

 そう言うと夏希は楽しそうに小走りに帰宅していった。
 途方に暮れた霙はコレから夜間に潜入しつつ、知らない男性と共に行動する事に嫌悪と罪悪感がわいてきていた。



 ――夜間21時10分 校舎裏――

 「ばんわ~ッス」
 
 「霙、さっきぶり!」

 「……ぅ」

 言葉に詰まる、大人の男性ではない少し上の先輩に当たる人、恐らくは。

 「ああ、コイツは去年卒業した簗木健巳やなぎたつみ、霙の事情は知ってるから話はかけて来ないけど……ナンパすんなよ?」

 「しないよ、俺には高嶺の花だよ、それに危ない橋渡ってる最中に恋愛なんてできないって」

 「男はいつもそう言って女のケツばっか見てるんじゃん」

 「おい、誰と一緒にしてる?いちよ鍵開け職人として修業をだな――」

 「はいはい、行こ~」

 「おい!夏!お前、人の事駒みたく使いやがって――」

 遠く離れていく2人の声を余所に、未だに霙はその場に動けずにいた。

 「霙、早く行こう」

 「ああ、ぅぅ……」

 夏希に半ば無理やり連れて行かれる形で校舎の中に潜入する事にした。
 これが霙にとって初めての潜入だった。

 「よし、警備員が行った」

 「行くべ」

 「待て」

 ガシっと腕を掴む簗木さんと妻かれる夏希。
 霙ならその場で発狂しているかもしれないが、夏希はそうでもなかった様子だ。

 「なに?」
 
 「巡回は警備員だけじゃなくて、校舎の中に残ってる教員も居るだろう?つうか何処目指すんだよ」

 「え?そりゃ――校長室?」

 「一発で退学だぞ!?」
 
 「そ、そうだよ、こ、校長せん、せいの部屋は――」

 「そのスリルがたまんないじゃん?」

 「「えー」」

 簗木さんと声が被ってしまった。
 正直、嫌悪感が少しあったが真面な感覚な人が居て良かったと少し感じたのだった。

 そして――

 「校長室ね、さーせんね、開けさせてもらいやす~」

 「お前が言うな、やるの俺だし……」

 そう言って簡単な工具を取り出して、夏希に指示を出す。
 
 「夏、冬木さんと周りを見ててくれ、万が一ヤバそうなら裏から逃げる……つうか、時間的に見つかる可能性の方が大だが」

 「りょーかい」

 「……」

 夏希は抵抗ないのだろううか?
 いや、男子校が隣にあろうとどうでも良いと言い、親友の私にさえ隠していた――いや、言わなかった男性の友人が居るのだから別に抵抗などはないのだろう。
 それが若干羨ましくもあり……気持ち悪さも含む。
 ふと以前の幼少期の記憶が蘇る、同年代に***された。

 「もぅ……ぃぃ」

 あの時の記憶は捨てる、思い出さない、思い出してはいけない。
 でも男性を見ると、やはり思い出してしまう。
 憎い?気持ち悪い?*してやりたい?

 「開いた!」

 「シッ!声がデカイ、バカ」

 「わ、悪い、空いた、ゆっくり入るぞ」

 そうして手早く3人は部屋に入ると、また暗闇に月明かりが通った室内が不気味に感じつつ、簗木と夏希は黙々と作業を続ける。

 「定番だと金庫?」
 
 「あり得るな、つうか全部を解錠するのに時間足りないって」

 「なんで?」

 「勝手口の開閉はどの道気づかれる、さっき1階で巡回してた警備員と入れ替わる様に教員が1階の見回りに入ったから――」

 「もう動き出してても良いって頃合いか」

 「逆算しても、見つけるのはかなり難易度たけーな、資料を持ち出して都合よく抜け出せても不法侵入とかでしばらく謹慎処分じゃないか?」

 「……謹慎で済めば良いですけどね」

 「霙、アンタ普通に健巳と話せるじゃん……」

 驚いた表情で2人が霙を見る。
 恥ずかしくなった霙は顔を背けて続ける。

 「逆算すると時間はほとんどないです、教員達が騒ぎ出すのも、時間の問題ですので、怪しい場所のみをピックアップして探しましょう」

 「「りょーかい」」

 息をそろえた号令で夏希と簗木はそれぞれ怪しい場所を言い、そこを解錠していく。
 
 「封筒系、書類系と言えば引き出しのデスクか、金庫が定番だろうな」

 「どうする?」

 「金庫は時間かかる、デスク周りから行くか」

 そうして取り掛かる事、数分で解錠を済ませ中の書類を見て行くも、関連する“日記”は見つからない。
 簗木が金庫に取り掛かっている間、施錠の確認を霙はしつつ、自分なら何処に隠すか?を検討しつつ、引き出しにつめてあった本棚に目が行った。
 霙は身長が低い為、本を夏希にとってもらい幾つか調べていくと――そこにはやはり巧妙な手口で隠されていた“交換日記”が存在した。

 「ありました」

 「「マジ!?」」

 金庫と書類から手を離した2人は霙に近づき内容を確認しようとするも、霙は男嫌いと言う事もあり距離をとる。

 「す、すみません」

 「あ、ああ、良いって良いって、とりあえずは目的の――伏せろ!」

 そうして咄嗟に屈むとライトを照らしている職員が何名か。

 「き、気づかれた?」

 「かもな、やっぱそこまで時間なかったか、あとはどう脱出するか……」

 「……勝手口は塞がれてますし、大胆な発想になってしまいますけど……」

 そこで霙が考えた案とはこうだ、シンプルに校舎の窓から脱出する事。
 教員が徘徊しているならば、開閉の問題に関してはさほど重要ではない、あとはどうバレない様に脱出するか。

 「俺が囮になってる間、2人は脱出しろよ」

 「健巳、アンタ、それで良いの?」

 「な~に!卒業して懐かしくなったからなんて理由を適当に言ってればさほど問題ねーだろう!」

 「(捕まった時の話してる)」

 「兎に角、適当に解錠するから、そこの部屋の窓から出て外で合流で」

 そうして巡回を掻い潜りながら手早く解錠をすませて、窓の扉を開けると、生暖かい風が入ってくる。

 「だ――」

 「おい!そこで何をしてる!?」

 「やべ、早いとこ退散!」

 「お、OK!」

 夏希と霙は急いでその窓から外に身を放り出してる最中で、丁度ドアが開くと同時に簗木の悲鳴が聞こえた。

 「い、いてぇ!ちょ!た、たんま!たんま!先公ガチでいてぇって!」

 「霙、行くよ」

 「え?でも……」

 出ていった窓を見つめながらこのままで良いのか悩む霙の手を強引に掴み、夏希はその場をあとにする。

 「と、とりあえず、やった……」

 「う、うん」

 2人は息を切らしながら近くのベンチに腰をかける。
 簗木が捕まった事のみが心配だが、そんな心配は夏希の一言で払拭される。

 「大丈夫、アイツはそんな簡単に身内を受け渡すようなチキンじゃないから、多少拷問されても問題なし!」

 「ご、拷問は問題あり……なんじゃないかな」

 そう言っていると1枚の紙が霙の懐から落ちる。

 「あ、霙、落ちたよ~」

 そう拾って夏希がそれを見ると、固まってしまった。
 特に表情は変わっていなかったが様子がおかしい。
 どうしたのか声をかけるタイミングを計っていると、夏希から声がかかった。

 「霙……何、コレ……」

 そうして見せてきた紙には――

 ――呪ワレローー

 と殴り書きされた文章だけが映っていた。
 恐る恐る霙が抱えている本に似せた“交換日記”を見るとそこにも同じ文章、いや、それ以上の罵詈雑言が殴り書きされていた。



 次の日――

 体調不良で休むことを訴えた霙は机の上に置かれた“交換日記”に頭を悩ませていた。
 文章は辛うじて読み取れるが、解読すれば何気ない日常の内容を書いてあるだけ、それ以外は殴り書きされた大文字が邪魔して読めない。
 特に――名前の部分は全て黒文字で塗りつぶされており、時折赤い線のようなものが含まれているのも不気味だった。

 そしてページを追うごとに全く殴り書きされていないページだけが映った物があった。
 名前は塗りつぶされているが、丁寧な執筆で今日の出来事を書かれていた。

 ――それは一言で言えば、気持ち悪い文章だった――

 どうやらその子は“虐め”に遭っており、この“交換日記”を通じて誰かに助けを請う行為を繰り返していたが、結局は誰も彼女のメッセージには気づけなかったのだ。
 これを隠していた校長もこの事が露見するのを恐れ、本の背表紙だけを残し、何かこの“交換日記”を後付けして本に似せていたのだろう。
 
 1月10日
 ***ちゃんがトイレで上から水を被せたあと、無理やりドアをこじ開け、便器の掃除用具を口の中に突っ込まれ、掃除された。
 嫌がった私は何度も止めてっと懇願したが止めてもらえず、終いには口の中に便器で救った水を飲ませられた。
 
 1月17日
 お母さんが作ってくれた弁当に、工具用のノリや絵具で着色と言って食材を台無しにされた、挙句の果てには、お弁当箱ごと、校庭に捨てられた。
 酷い。
 一生懸命作ってくれたお母さんの料理なのに……それを先生に行ったら、私がその人たちと友人関係にあると勘違いされて、校庭を掃除しろって言われた。
 あんまりだよ。

 1月24日
 みんな****のに、どうして私に酷い事するんだろう。
 隣の男子学校が羨ましい……こんな事になるなら、女学じゃなくて男女共学の学校に進学すれば良かった。
 みんな*****!

 「……」

 霙はこの子の言いたい事が手に取る様に分かった。
 多分、今見たページは本の一部、あとのページにはライターなるもので額に火傷や、ニスを頭から被せられたり、施錠され放課後……巡回の警備員が見つかるまで何も、誰も、助けてはくれなかったのだろう。

 思い出す、霙も狭い個室の中で男子にされた行為。
 助けてと懇願しても助けもらえず、無理やり犯された記憶――霙が男性を極度に嫌う理由は過去によるトラウマ。
 例え、相手が好奇心で事を行ったとしても、その対象者に与えられた精神的苦痛は――一生癒えない傷となった。

 「内容は違うけど、この子の気持ちは……分かる」

 A4サイズの紙をちぎり、終わったページの後に続くようにテープで貼り付け、霙は続きの内容を書いた。
 その子の物語から自分の物語へと変わるように。

 「え?」

 急に明かりが消える、ブレーカーが落ちてしまった様だ。
 多分両親が点けてくれるだろうと、しばらく待っても点く事はなかった。

 「お父さんもお母さんも何して――」
  
 そこで気づく、何故扉の隙間から明かりが漏れているのだろうっと。
 そしてそれは――何故霙の部屋のみが消灯したのだろうと。

 「(電池?)」

 LEDだ、そんな簡単に寿命を迎える訳がない。
 電気のスイッチがある場所を触れようとすると、ヌメった感触が伝わりその場で叫ぶ。
 ペチャ、ペチャっと言う不気味な音と共に、そこに現れたのは憎らしめに見る、髪の長い制服を着た女性だった。

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 映画であるようなワンシーンを見せられ逃亡を図ろうとするも、凄まじい力で髪を引っ張られ地面に叩きつけられる。
 その拍子に何かに当たり顔がグッサリと切れ、血が滴る中、ソレは凄まじい力で首を絞めらる。
 身動きが取れないまま、口からは血と泡が、目は焦点が合わず、失禁している、そんな感覚だけが残り意識を失った。


 
 『霙?夏希だけど……元気?アレから学校、卒業したけどまだ部屋、いるの?』

 『……夏は、あの夜、何か……あった?』

 『……遭った、濡れた女が出てきて呪い殺すって近くにあったギターで頭殴られた』

 『…………そう』

 『……淡泊だね、ねぇ、霙、アレ、まだある?』

 『うん』

 『……返そう?』

 『違う……夏、違うんだよ――私ね』

 ――もうダメなんだよ――

 『え?』

 『だって……』

 ゆっくりと部屋を見ると、そこには体育座りをして、今にも殺してきそうな女が座っていた。

 『私は……“交換”されちゃったから』


 第十七怪 交換する呪いの日記
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