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しおりを挟むヒロインがこの学園に来て早1ヶ月。
その期間悪役令嬢が何やらヒロインにちょっかいを出していたが、ぬるい。ぬる過ぎる。
もっとやれ! と横槍を入れたくなるほどぬるい。ゲームと現実は違うらしい。バケツの水はコップの水になったり、平手打ちは壁ドンになっていたりと現実補正がかかっているようだ。
まあ、悪役令嬢もその取り巻きも貴族のお嬢様だから、ガチのいじめを知らないのも無理は無い。
ヒロインにとって悪役令嬢は欠かせない存在だ。どれだけぬるくても、ヒロインは大袈裟に反応している。
それを見て思った。ヒロイン確実にゲームの記憶持ってんじゃん、と。
このままだと悪役令嬢が別にそれほどのことをしていないにもかかわらず、家が没落という結果を招いてしまう。
だからといって助けも庇いもしないが。
我が身可愛くて何が悪い。私は善人じゃない。
友達だったら助けたかもしれないが、そもそも私の立ち位置は悪役令嬢に敵対する悪役令嬢なのだ。私は特に敵視しているつもりは無いが、向こうがやたらと敵対してくる。そんなやつを助けようなんて欠片も思わない。
まあ助ける友達なんて居ないが。
私は身分が高いため、よく遠巻きにされる。自分で言うのもなんだが、私の美しすぎる美貌も人を遠ざける要因の一つだ。別にナルシストな訳じゃない。客観的に見た一般論だ。
ゲームのキャラなだけあって美しいのは当然かもしれないが。
あとはこの頭脳。自分の頭ながらいい出来をしている。前世じゃ絶対無理な暗記力に応用力など、全てにおいて素晴らしい。
マジで才能溢れる女性、って感じ。もし男に生まれてたら絶対モテモテだっただろう。攻略対象にだって負けない。あ、ヒロインはいらないけど。
悪役令嬢がそんな私に劣等感を抱いているのは、気づいている。テストの結果が貼り出される度に睨みつけられるし、運動においても私に負ける度に嫌味を言ってくる。
周りが勝手に犬猿の仲だと思ってしまうのも無理はない。
否定しない私も私だが。だってめんどくさいし。
めんどくさいと言えば、貴族という身分がそもそもめんどくさい。
まず言葉遣い。同い年の人間相手にですます口調。仕草や動作も洗練されていなくてはならない。
心の中では口の悪い女だが、それを欠片も外に出さない私を誰か褒めて欲しい。
めんどくさいの頂点はやっぱりパーティーかな。
最初こそ煌びやかな世界、美味しい料理、サイコー! なんて思っていたけど、ドレスは疲れるし愛想は振りまかないといけないし、コルセットがキツくて料理なんて一口も食べられない。何より貴族同士の上辺の争いがくっそだるい。
平民が良かったなー、なんて度々思うが、そうなると愛しのロゼンに会えなかったわけで、仕方ないので貴族のあれやこれやは我慢している。
たった1ヶ月しか経っていないのに、ロゼン以外の全員を攻略したヒロインに恐慄く。正気の沙汰じゃない。
ていうか何故いつも誰かしら教室に来るんだ。昼休みや放課後だけじゃダメなのか。お前らのせいで教室がガヤガヤと毎日騒々しい。
勉強するためだけに来た人だって少なからず居るわけで、その人達にとっては迷惑以外の何者でもない。
と言っても学園の人気者たちに何か言える者は誰もいないけれど。
一応公爵家の一員として私には発言力があるしその力も偉大だが、あの中に入り込む勇気はない。勝手にやっとけ状態だ。変なフラグが立っても困るし。
ロゼンとは学園までの行き帰りと、お昼のみ一緒に行動をしている。
ヒロインが学園にやってきたその日に私のクラスに来るなと言ってあるので、すっごく大切な用事がなければ来ることは無いだろう。
私の言葉は必ず守る男だ。そう育てたのだから。
願わくばこのまま一年が過ぎればいい。ああ、こう願うことこそが、フラグとなるのだろうか。
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