怠けた数だけ強くなれるよ

森野エアコン

文字の大きさ
8 / 14

厄介な

しおりを挟む
 リードを付ける前に、玄関を飛び出した犬を追いかけるってこんなかな。全然、追いつけない。脚速すぎだろ。つか、なんで、あんなに迷い無く走れるんだ。テルルちゃん達の居場所が分かるのか?

「おい、鶏貴族。お前さ、実は飛べたりしない。そんでもって俺を、乗せて飛んでくれ」

「また、頭の悪いことを言っているな貴様は」

「だってよ、このままだと現場に到着しても、ヘトヘトで何の役にも立たないぞ」

「貴様が役に立たないのは、疲労度に関係なく、いつもではないのか」

「everyday⁉︎」

「違う、anytimeだ」

「より酷いじゃねえか!」

「元気ではないか」

 フラフラになりながら、レーナの後を追って着いた場所は、街から少し離れた薄気味悪い荒れ果てた更地だった。薄暗くなってきたし——

「なんか出そうなとこだな」

「実際、ここは怨念の吹き溜まりの様になっているからな、アンデットがいつ現れてもおかしくはないな」

「怨念って……ここって墓地かなんかなのか?」

「いいや、ここは墓地ではない。死体処理場とでも言ったところか」

「死体処理場⁉︎」

 しっ——! レーナが俺の口を塞ぐ。

「騒がないで。怖いなら、あんたはここに居なさい。テルルは私が助けるんだから」

「あのさ、ずっと気になってたんだけど、テルルちゃんは助けるって、奴隷のあの子を助ける気がないみたいにも聴こるから——」

「その通りよ」

「……それ、どう言う事だよ」

「あたしは、テルルが無事なら、それで良いの。あんたは、2人を助ける気みたいだけど、あたしは最初からテルルを助ける事しか考えてないの。もし、どちらか1人しか助けられない状況になったら、あたしは迷わずテルルを選ぶわ」

 本気だ……レーナは、本気でテルルちゃんしか見ていない。他に、どれだけ犠牲が出ても……
 昔、何か有ったんだろうなってのは、分かるけど、今は聴ける雰囲気じゃないし、なにより2人の無事を確認する方が先だ。レーナは、自分の考えを変える気は無いだろうから、俺があの子を何としても助け出さないと。

「2人を助け出す。これは、絶対に変えない」

「勝手にすれば、あたしは変わらないから」

 俺もだ。レーナが、テルルちゃんを助け出すって言うなら、俺が絶対にあの子を助け出せばきっと上手くいく。

「話は終わったか」

「ああ、わりい」

 俺達は敵の痕跡を探すために更地の奥に進む。ただ、探すと言ってもなにも無さ過ぎてどこをどう探せば良いのか。

「ところで鶏貴族、さっきの死体処理場ってどういう事なんだ」

「この地面の下に、大量の死体が埋まっているのだ」

「死体⁉︎」

「ちょっと!いちいち、驚かないでくれる!」

「ご、ごめん……」

 ……驚くなって言われても無理だって。

「じゃあ、この変な黒い靄みたいな物って何なんだ?」

「何だと! ……貴様にはこれが見えているのか」

「え、見えないのが普通なのか?」

「これは、怨念が可視化した物だ。ただ、可視化と言っても、見る事が出来るのは吾輩の様な幻獣と悪魔、天使、精霊などの人ならざる者だけの筈なのだがな。これも、主のお力の影響か……?」

「さっきから何の話ししてんのよ」

「レーナはこの黒い靄って見えてる?」

「黒い靄……何言ってるの?」

 本当に、人には見えないんだな。

「黒い靄なんて見えないけど、この先から強烈な悪臭がする事と、そこにテルルが居るのだけは分かるわ。それで充分よ」

「その臭いの先ってもしかして……」

 この黒い靄の発生源と同じ場所か。
 これを辿って行けば、テルルちゃん達に会える。

「あら~こんな所に何か御用ですか~?」

 どこから現れたんだ——⁉︎

「あなた、ここでも受付嬢なの?出迎えご苦労様探す手間が省けたわ……要件ならわかってるでしょ」

 あの臭い受付嬢、レーナの傷を押し付けた筈なのにピンピンしてんじゃねえか。失敗したのか……くそっ!

「さあ~私はただ……ふざけた贈り物をしてきた、クソったれが近づいて来たので~ぶっ殺しに来ただけですよ~」

「あんた、キャラ変わってるわよ。それに……贈り物?」

 贈り物ってレーナから押し付けた傷の事か?何ともなさそうなのに、でも怒ってるって事は成功してたのか。

「ええ~ムカつくゴブリンが、教えてくれました~その男が——」

 臭い受付嬢が、俺を鬼の形相で睨んでくる。

「てめえは、ここで必ずバラしてやるから大人しくしてろよ、クソったれが!」

「ヒィッ——」

 我ながら、情けない声が出たな。
 でも……仕方ない。だって、怖えもん。

「なんて声出してんのよ、怖いなら今からでも帰りなさい」

「露骨に厄介払いするなよ」

「だって、役に立たなそうだし」

「忘れた武器を持って来てやったのは」

「う、うるさい!」

「あの~これから戦うのですから、私語は謹んで下さいね~まあ、死んだ後でなら好きなだけお喋りしても良いですから~」

 臭い受付嬢が右手を前に出すと、地面から白骨化した腕が次々と生えてきた。

「何だよこれ!」

「だから、いちいち驚かないでって……言ってんでしょ!」

 次々生えてくる腕を、レーナは軽々と躱していく。
 一方、俺はみっともなく逃げ惑う。
 腕が肘まで出ると、腕の下の地面が盛り上がる。

「まだ、なんか出て来んのかよ」

「腕だけな訳ないでしょう。これはスケルトンよ!」

 スケルトン……骸骨の化け物かスゲー数だ。

「なあ、レーナ! あれの倒し方分かるか?」

「あたしは、冒険者やってんだから分かるわよ」

「どうやれば……良いんだっ!」

 スケルトンの大群から逃げるのも限界だ。

「頭を思いっきり殴って、粉々にすれば動きは止まるわ」

「って、言われても……うわっ——⁉︎」

 痛っ——しまった⁉︎ くそっ、脚にしがみついてきやがった。くそっ、くそっ、くそっ‼︎ 全然、離れねえ! どうすれば!

「貴様、なにをやっている、寝るには早過ぎるぞ」

「頭悪いこと言ってんなよ!ピンチなんだよ!」

「この程度でか」

 その瞬間——俺を掴んでいたスケルトンを炎が覆う。

「あっつ!」

 ……く無い。

「さっさと立て、馬鹿者」

 スケルトンを蹴飛ばし、言われた通り立ち上がる。
 スケルトンは燃え尽きて、跡形もなく消えてなくなる。

「今の炎は、お前がやったんだよな」

「吾輩以外に考えられるか?」

「鶏貴族ーーー‼︎」

「な、なんだ貴様⁉︎ し、締まる……首が…」

 俺は力を緩める。嬉しくって、つい。

「お前、戦えるなら最初から、やってくれよ~」

「貴様は他人を頼り過ぎだ」

「ちょっとバカ2人!話し込んでんじゃないわよ!手伝いなさいよ!」

 見ると、レーナがスケルトンに囲まれていた。

「よし、ゆけっ!ナッハバール!かえんほうしゃだ!」

「吾輩を何だと思っているのだ。……仕方ない」

 ナッハバールが両翼を天に掲げると、空に炎の塊が出現する。

「おいっ、それ落としたら、レーナも焼いちまうだろ」

「そんな、芸の無い事する訳無かろう」

 炎の塊から、小さな火の玉が、次々に落下してくる。それは、鳥の形に変わり、スケルトン達に襲い掛かる。
 まるで、大きな花火が弾けたみたいで綺麗だった。

「スーーーゲーーー⁉︎」

「当然だ」

 ん? あれは……マジかよ……

「あの受付嬢、平然としてるぞ!」

「見た目より随分とタフな奴だ……厄介な」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...