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その視線が、じっとそこに注がれているのを感じる。
「……ッ」
これは何の辱めなのか……と羞恥にのたうち回りそうになる。
だがそれよりも、男のそこを見て、英が正気に戻ってしまう方が怖かった。
「なにいつまで見てんだよ」
そう言って、身体を捩ろうとする。
それを英はあろうことか、濡れそぼったそこに手を伸ばすことで阻止してきた。
「お前……っ」
あまりのことに駈は言葉を失い、顔を引きつらせる。だが英はそれに見向きもせず、その指を薄い陰毛の中へともぐり込ませてきた。
「うわ……すっごい濡れてる」
「あっ……当たり前だろ!」
ひどい感想を吐く英に咄嗟にそう噛みつく。さっきあんなに盛大に吐き出したのだから当然だ。
それなのに、英はまじまじとそこを見つめながら指先でその湿りを確かめていく。
しかも、そうするに飽き足らず、今度はまた少しずつ芯を取り戻し始めた陰茎や陰嚢にも指を這わせてきた。
「やっ、ばか! ……う、んぁっ……」
上げかかった抗議の声が官能的な呻きに変わる。
汚れたそこを見られているだけでも気が触れてしまいそうだというのに……駈は下半身を悶えつかせながら、シーツを手繰り寄せてどうにかその顔だけでも隠そうと躍起になった。
「んっ、や、やめろ、それ……」
汗を浮かせた真っ赤な顔が、隠し切れなかったシーツから半分覗いている。
「……」
膝を擦り合わせながら涙声で訴えられ、英は自分のそこが痛いほど充血してくるのを感じていた。
目の前の痴態に煽られるまま、英はその指をさらに奥へと潜ませていった。
「ひ……っ」
入口へとたどり着いた指先に、駈はきつく目を瞑る。
帰宅時のシャワーで一応準備はしておいたのだが、もう大分時間も経ってしまい、そこは固く閉ざされていた。
そうでなくても、身体はどうしても強張ってしまう。
「駈……力抜いて」
優しい声が真上から降ってくる。
さらに、温かい唇が顔中に落とされた後、唇をゆっくりと塞いでくる。
唾液をかき混ぜるようなそれに、身体がびくびくと反応する。
……それなのに、英が指でなぞり上げているそこだけは、なぜか上手く力を散らすことが出来ないでいた。
駈はだんだんと情けない気持ちになってくる。
未経験者の英に、自分がしっかりと導いてやらねば……と思っていたのに、いざ始まってみるとこの通り、導くどころか、より面倒な事態を引き起こしてしまっている。
こんな調子では、きっと英のそこもそのうち、冗談抜きに萎えてしまうかもしれない――そう思うと、目の前がじわりと歪んだ。
と、英がその唇をほどく。
そして、駈へと静かに語り掛けた。
「駈……やっぱり、辛い?」
英の目がまた揺れている。駈はすぐに首を横に振った。
だが、さっきのように「いつものことだから」という言い訳を使うわけにもいかず、顔を背けて黙ってしまう。
そんな駈に、英は尻の間に伸ばしていた指を戻すと、ほとんど密着させていた身体を起こした。
「あっ……」
自分のせいでそうさせたというのに、ついそんな惜しむような声を出してしまい、駈はますますいたたまれなくなった。
駈は目元をごしごしと擦ると、手を付いて上体を起こす。
「英、ごめん、俺……」
だが、英はそれをすぐに遮った。
「それはこっちの台詞だよ」
英は駈の髪をひと撫ですると、こつ、とその額に自分の額をくっつけた。
「急ぎ過ぎた……ほんとゴメン」
「……」
駈は眉を下げる英を見上げる。
そんな姿を、今日はもう何度も見てきたな、と思った。
「何か、今日……お前に謝られてばかりいる気がする」
そう言うと、英は「そうかな?」と小さく笑った。
「だとしたら……昔、言えなかった分、今言っているのかも」
英はそう呟くと、駈の頬に唇を押し当てた。
「俺、やっぱりこの通り、まだまだだけどさ……でも、時間ならこれからたくさんあるだろ?」
鼻先が触れる距離で、二人の視線が交わる。
「だから、駈も一人で頑張りすぎないで」
駈は目を見開いて英を見上げる。
「お前……どうして……」
すると英は「俺は医者ですから」とおちゃらけるので、駈は「そのネタやめろっての」と正面の腹に軽く突きを入れてやった。
英は「いたいって、もう」と殴られたところをさすりながら、「まぁ……駈の顔を見ていりゃ分かるよ」と微笑んだ。
「でも、昔は分かっていて無視したり、挑発したり……随分子供だったよな、俺」
はは、と首を竦める英を見やりながら、自分も似たようなものだったな、と駈は振り返った。
彼を自分勝手だなんだと非難しておきながら、そんな彼が自分の傍から離れないのをいいことに、彼が自分を察してくれるのに甘えていたのだと。
「それは……お互い様だろ」
駈はそう言うと、英へと右手を伸ばす。
そして、その頭を軽く抱きかかえると、お返しとばかりに英の頬に唇を寄せた。
「……」
妙な沈黙が流れる。
駈は黙ったままの英を見た。
彼はなぜか、キスされた箇所を手のひらで押さえて惚けた顔をしていた。
「……なんだよその顔」
「いや……」
英は赤い顔で俯いている。
「何か急に……恥ずかしくなってきた」
「……ッ」
これは何の辱めなのか……と羞恥にのたうち回りそうになる。
だがそれよりも、男のそこを見て、英が正気に戻ってしまう方が怖かった。
「なにいつまで見てんだよ」
そう言って、身体を捩ろうとする。
それを英はあろうことか、濡れそぼったそこに手を伸ばすことで阻止してきた。
「お前……っ」
あまりのことに駈は言葉を失い、顔を引きつらせる。だが英はそれに見向きもせず、その指を薄い陰毛の中へともぐり込ませてきた。
「うわ……すっごい濡れてる」
「あっ……当たり前だろ!」
ひどい感想を吐く英に咄嗟にそう噛みつく。さっきあんなに盛大に吐き出したのだから当然だ。
それなのに、英はまじまじとそこを見つめながら指先でその湿りを確かめていく。
しかも、そうするに飽き足らず、今度はまた少しずつ芯を取り戻し始めた陰茎や陰嚢にも指を這わせてきた。
「やっ、ばか! ……う、んぁっ……」
上げかかった抗議の声が官能的な呻きに変わる。
汚れたそこを見られているだけでも気が触れてしまいそうだというのに……駈は下半身を悶えつかせながら、シーツを手繰り寄せてどうにかその顔だけでも隠そうと躍起になった。
「んっ、や、やめろ、それ……」
汗を浮かせた真っ赤な顔が、隠し切れなかったシーツから半分覗いている。
「……」
膝を擦り合わせながら涙声で訴えられ、英は自分のそこが痛いほど充血してくるのを感じていた。
目の前の痴態に煽られるまま、英はその指をさらに奥へと潜ませていった。
「ひ……っ」
入口へとたどり着いた指先に、駈はきつく目を瞑る。
帰宅時のシャワーで一応準備はしておいたのだが、もう大分時間も経ってしまい、そこは固く閉ざされていた。
そうでなくても、身体はどうしても強張ってしまう。
「駈……力抜いて」
優しい声が真上から降ってくる。
さらに、温かい唇が顔中に落とされた後、唇をゆっくりと塞いでくる。
唾液をかき混ぜるようなそれに、身体がびくびくと反応する。
……それなのに、英が指でなぞり上げているそこだけは、なぜか上手く力を散らすことが出来ないでいた。
駈はだんだんと情けない気持ちになってくる。
未経験者の英に、自分がしっかりと導いてやらねば……と思っていたのに、いざ始まってみるとこの通り、導くどころか、より面倒な事態を引き起こしてしまっている。
こんな調子では、きっと英のそこもそのうち、冗談抜きに萎えてしまうかもしれない――そう思うと、目の前がじわりと歪んだ。
と、英がその唇をほどく。
そして、駈へと静かに語り掛けた。
「駈……やっぱり、辛い?」
英の目がまた揺れている。駈はすぐに首を横に振った。
だが、さっきのように「いつものことだから」という言い訳を使うわけにもいかず、顔を背けて黙ってしまう。
そんな駈に、英は尻の間に伸ばしていた指を戻すと、ほとんど密着させていた身体を起こした。
「あっ……」
自分のせいでそうさせたというのに、ついそんな惜しむような声を出してしまい、駈はますますいたたまれなくなった。
駈は目元をごしごしと擦ると、手を付いて上体を起こす。
「英、ごめん、俺……」
だが、英はそれをすぐに遮った。
「それはこっちの台詞だよ」
英は駈の髪をひと撫ですると、こつ、とその額に自分の額をくっつけた。
「急ぎ過ぎた……ほんとゴメン」
「……」
駈は眉を下げる英を見上げる。
そんな姿を、今日はもう何度も見てきたな、と思った。
「何か、今日……お前に謝られてばかりいる気がする」
そう言うと、英は「そうかな?」と小さく笑った。
「だとしたら……昔、言えなかった分、今言っているのかも」
英はそう呟くと、駈の頬に唇を押し当てた。
「俺、やっぱりこの通り、まだまだだけどさ……でも、時間ならこれからたくさんあるだろ?」
鼻先が触れる距離で、二人の視線が交わる。
「だから、駈も一人で頑張りすぎないで」
駈は目を見開いて英を見上げる。
「お前……どうして……」
すると英は「俺は医者ですから」とおちゃらけるので、駈は「そのネタやめろっての」と正面の腹に軽く突きを入れてやった。
英は「いたいって、もう」と殴られたところをさすりながら、「まぁ……駈の顔を見ていりゃ分かるよ」と微笑んだ。
「でも、昔は分かっていて無視したり、挑発したり……随分子供だったよな、俺」
はは、と首を竦める英を見やりながら、自分も似たようなものだったな、と駈は振り返った。
彼を自分勝手だなんだと非難しておきながら、そんな彼が自分の傍から離れないのをいいことに、彼が自分を察してくれるのに甘えていたのだと。
「それは……お互い様だろ」
駈はそう言うと、英へと右手を伸ばす。
そして、その頭を軽く抱きかかえると、お返しとばかりに英の頬に唇を寄せた。
「……」
妙な沈黙が流れる。
駈は黙ったままの英を見た。
彼はなぜか、キスされた箇所を手のひらで押さえて惚けた顔をしていた。
「……なんだよその顔」
「いや……」
英は赤い顔で俯いている。
「何か急に……恥ずかしくなってきた」
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