女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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序章 出会い

vs ジャイアントベアー

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 教会前で手を振ってばいばいをしながら子供と別れる。
 扉を開けて中に入ると静かに佇む影が一つ。
 神官服を着たじいさんが奥の祭壇に向かって跪き、お祈りをしているところだ。
 
 お祈りは人間がゼウスにお願い事をする儀式の様なものらしい。
 あのスケベジジイに何かを頼むのはやめた方がいいと思うんだが。

 見た感じあの女の子はいないな……。
 とはいえ、さっきの子供たちで学習した。
 このじいさんに女の子の事を聞けば俺は不審者丸出しだ。

 だからそのまま帰ろうと思った時だった。
 じいさんが立ち上がってこちらを振り向き、声をかけて来る。

「こんにちは……村の外からいらっしゃった方ですね。本日はどういったご用件でしょうか?」

 しまった……話しかけられた以上無視する事も出来ない。
 さっき子供たちに使った設定をもう一度出そう。

「いや旅の途中で冒険者の仕事がてらこの村に寄ってな。せっかくだからお祈りでもさせてもらおうと思って」
「それはよい事ですね。さあこちらへどうぞ」

 じいさんは自分の前を手で示した。
 そこまで歩いて行くも、お祈りのやり方がわからずに立ち止まる。

「お祈りの仕方は人それぞれでいいのです。神父である私の前だからと言って正式なやり方などを気にする必要はありませんよ」

 このじいさん神父だったのか。
 神父ってのは確かゼウスの手下を喜んでやる変わった人間たちの事だよな。

 まあいい……俺はさっき神父がやってたみたいに跪いた。

「ゼウス様はいつでも私たちの事を見ていらっしゃいます。お祈りの際にお願い事などもしてみればきっと聞いてくださいますよ」

 ほう……それは中々いい事を聞いた。
 えっと……地上の女の子をのぞき見るのはもうやめて、神の力をもっとまともな事に使えクソジジイ……と。
 ちゃんと聞こえたかな……。

 気が済んだので立ち上がり、神父に礼を言っておく。

「ありがとな。何だかすごくいい事をした気分だよ」
「ええ、お祈りはいくらしてもし過ぎということはありませんから……」

 神父はそう穏やかに返してくれた。
 微妙に会話が噛み合ってない気もするけどまあいいか。
 
 何とかうまくやり過ごせたな。
 そう思い立ち去ろうと一歩を踏み出した時だった。

「時に、冒険者の仕事というのはどんなものなのですか? この村に冒険者の仕事の対象になる様なものがあるとは思えないのですが」

 神父が意外に鋭い事を聞いて来た。
 焦りが顔に出ない様に努めながら返事をする。

「冒険者組合《ギルド》に寄った時に、この辺に狂暴なモンスターが出たって噂を聞いてな。その情報も聞こうと思ってこの村に寄ったんだ。何か知っていれば教えてくれないか?」

 咄嗟についたにしては我ながらうまい嘘だ。
 そしてもう一度「マップ」を発動。
 
 より広範囲を表示して……適正範囲外モンスターは……いたいた。
 案外嘘でもなかった……タイミングいいな俺。

「すいません、私の方ではそのような情報は……」
「そうか。急に訪ねて悪かったな」
「いえ。ただ……もしその情報が本当だとすると……」
「どうした?」

 じいさんはそこで一度黙って俯き、やがて決心したように言った。

「旅の方……お願いがあります。先ほどこの村で生まれ育った一人の女の子が冒険者を志して旅立ったばかりなのです。もし街道沿いにその狂暴なモンスターがいれば鉢合わせてしまいます。それを……」
「街道沿いだな!? わかった! 任せろ!」

 じいさんの言葉を最後まで聞かずに俺は駆け出した。
 俺の背中を追いかけるようにじいさんが叫ぶ。

「あなたにゼウス様のご加護があらんことを!」

 いや、それは別にいらないんだけど……。
 そう思いながら教会を後にした。

 入れ違いになってたか……。
 でも女の子のおおよその現在位置はわかった。
 街道沿いを行っているとわかれば、俺の足なら一瞬で追いつけるはずだ。

 教会を出てただひたすらに走りながらもう一度「マップ」を発動。
 地図上では街道は区別されていないからわからないけど……。

 何だか嫌な予感がする。
 じいさんの言っていた通り、あの女の子と適正範囲外モンスターが鉢合わせれば間違いなく殺されてしまうだろう。

 無事でいてくれよ……。
 俺は祈るような気持ちで街道を沿って走っていく。

 りんごを取りに行ったとき時と同じで、村が見える内は人間の速度。
 村が見えなくなってしばらくしたら全速力だ。

 左右に広がるのどかな田園風景が前から後ろへと一瞬で流れて行く。
 人間とは思えない速度で走る俺を見て精霊だとわかるのか、その辺りにいたモンスターたちは街道から離れる様に散らばっていく。

 しばらく走ると、前方にモンスターに襲われている女の子二人組が見えて来た。
 …………あれだ!!

 小さい女の子を抱きかかえたまま負傷している。
 あのモンスターから身を挺して守ろうとしているのだろう。
 でもあのままじゃ死んじまうぞ。

 やがてモンスターが腕を大きく振り上げて止めを刺す体勢に入った。
 くそっ……まずい! 間に合え!

 俺は「テレパシー」を発動した。
 今はもう射程内に入っているはずだ。

(おーい!!!! そこのお前!!!! ちょっと待て!!!!)
(えっ……)

 モンスターの動きが一瞬だけゆっくりになる。
 ぎりぎり間に合った!
 俺はモンスターが死なないように横から軽~く飛び蹴りを入れた。

(ぐはっ!!!!)

 吹き飛んで行くモンスターの巨体。
 女の子の目の前を歩いて横切りながら、横目でちらっと顔を見てみる。

 やっぱり可愛いな……。
 いやいやめっちゃ苦しそうだしそんな事を考えてる場合じゃない。
 ひとまずこいつをどうにかしてやらないとな。

 そして女の子たちとモンスターの間に立ち、俺は言った。

「大丈夫か?よく頑張ったな、ここは俺に任せてくれ」

 ふっ……決まった。
 背中を向けてるからどんな反応かは見れないけどな。

 ……とは言ったものの、普通にこいつを倒すのはまずい。
 テイマーズの仕事の基本だからというのもあるけど、ゴブリンの時とは違って今は人間が側にいる。
 万が一にも人間に俺の正体がばれたらさすがにゼウスに消されちまう。
 
 それにあの女の子と友達になることを考えれば、俺も初心者に毛が生えた程度の冒険者っぽい振る舞いをしないとだめだ。
 一緒に冒険をするには、レベルが近くないと何かと都合が悪いからな。

 モンスターテイマーズ専用スキル「スキャン」を発動。
 ターゲットにしたモンスターのデータを頭の中に浮かび上がらせるスキルだ。

 どれどれ……「ジャイアントベアーLv15」ね。
 HP……攻撃力……防御力……ふむふむ。
 ていうかこいつ……どこかで見た事あるな。

 もう一度「テレパシー」で語り掛けてみる。
 端から見てお互いにじっとしていると不自然なので、剣を構えて間合いを測るように左右へと動く。

(おい、お前。俺に見覚えはないか?)
(あの……ジンさん、ですよね。その説はお世話になりました)
(やっぱりテイムした事があったか。性懲りもなく適正範囲内から出て来やがって……いや、もしかして魔王の仕業か?)
(はい、そうなんです……魔王様が『お前がいきなりフィールドボス的な感じで最初の村近くにいたら面白くね?』とおっしゃって……それでさっきここにポップしたばかりなんです)
(あのバカが……まあいい。命は助けてやるから俺の言うことを聞け)
(はいっ!! ありがとうございます!! 何なりと!!)

 そうだな……まずは愛剣を何とかすべきか。
 この剣で攻撃すればかすっただけでもこいつは死ぬだろう。

(まずガードするフリをしてやるから、大剣を吹き飛ばせ)
(人間たちの前で演技をするんですね! かしこまりました!)

「グオオオォォォォッ!!!!」
「はっ!!」

 襲い掛かって来るベアー。
 中々に迫真の演技だ。
 俺は大剣を横に構えてやつの通常攻撃をガードする。

 下から振り上げる軌道でベアーは俺の大剣を吹き飛ばした。
 大剣は宙を舞い、俺の後方に落ちて音を立てる。

(よしいいぞ! 中々やるじゃねえか)
(ありがとうございます!)

「グルルルルル……」
「ちっ……武器を飛ばされたか」
「お兄ちゃん頑張れー!」

 小さな女の子の声援が飛んで来た。
 いや、出来ればベアーの方を応援してやってくれ。
 
 女勇者の声は無い。
 あの傷だし気絶とかしているのかもしれない。
 早めにケリをつけるか……。

(よし、適当に俺に攻撃を振ってこい。全力でいいぞ)
(いいんですか!?)
(ばっか、お前の攻撃じゃまともにくらってもダメージにならねえよ)
(そうでした! では……!)

「ガアアアアアアアッ!!!!」

 雄叫びをあげ、こちらに接近しながら腕を引くベアー。
 俺は繰り出されたパンチをぎりぎりで回避し、ベアーの腹に拳を入れた。

 ずんっという音と共にベアーの身体が揺れたかと思うと、次の瞬間には膝から崩れ落ちる。

(ふう……中々いい演技だった。約束通り命は助けてやるから、さっさと縄張りに戻るんだぞ)
(オロロロロ……ありがとうございまオロロロロ)

 どうやら俺のパンチは人間でいうみぞおちとか言うところに入ったらしい。
 ベアーは地面に寝転がった体勢のまま口から大地に肥料をまき散らしている。

「何とか気絶させた! 今の内に逃げるぞ!」
「うん!」

 俺は小さな女の子に声をかけ……。
 あれっ、勇者の方はどうすんだこれ……気絶してるけど……。
 ええいっ!!

 思い切って勇者をお姫様だっこしてその場から離脱した。
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