女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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ツギノ町編 第三章 勇者の目覚め

お花摘み

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 ツギノ町に来てから数日が経った。
 
 俺たちは順調にクエストをこなして、ティナのレベルも少しずつだけど上がって来ている。
 そろそろ王都ミツメに拠点を移そうかなあ、と考えていたある日の事。

 セイラたちから、そろそろグランドクエストが始まるという連絡があった。

 グランドクエストってのは、ゼウスの書いたシナリオを進める為に必ず遂行しなければならないクエストの事だ。
 クエストとは言っても、ギルドで受けるそれとは違う。

 だから達成したからと言って報酬や経験値がもらえるわけじゃない。
 どちらかと言えばただのイベントだ。
 でも、ティナの成長に欠かせない何かが手に入るはず。
 
 あえて言えばその要素が報酬の代わりになるんだろうけど……それが何なのかは俺にもまだわからない。
 とにかく準備だけはしっかりしておかないとな。

 あと、セイラとノエルをティナに紹介する事にもなった。
 あくまで偶然に会った体で紹介するからティナには何も言っていない。
 今日は外食でもしてみようぜ、と言って朝から二人で外に出た。

 朝の大通りを歩きながらティナが話しかけて来る。

「外食なんて珍しいね」
「さすがにずっと同じ宿屋の飯ってのも飽きるだろ」
「それもそうか……」

 顎に指を当てて考えながら返事をするティナ。
 まあこれを外食というのかは知らないけどな。 
 ティナには通じてるから別にいい。

 どこかいい店がないか探すフリをしてぶらぶらと歩く。
 ぼちぼちあいつらがどこからか出てくるはずなんだけど……。
 もっと細かいところまで打ち合わせしとくべきだったかな。

 そう思っていた時だった。

「あれ? ジンじゃない?」
「本当だ、久しぶりだなぁ! 元気してたか!?」

 ホームレスとかが居そうな細くて汚い路地から不自然にセイラとノエルが出て来やがった。
 何でそんなところで待ち伏せてんだよ。まあいいか。

 とりあえず旧知の仲的な雰囲気を醸し出しておこうと、片手をあげて応じた。

「よう。あの戦い以来だっけか」

 二人の笑顔が少し強張る。
 もちろん「あの戦い」が何なのかは俺にもわからない。
 取り残されたティナが視線を俺に向けながらおずおずと声を発した。

「えっと……ジン君、こちらの方々は?」
「悪い悪い、こいつらは冒険者仲間のセイラとノエルってんだ。よろしくな」

 ティナの方を向きながら、親指で二人の方を示して紹介する。
 次にティナが少し緊張気味に自己紹介を始めた。

「ティナです。あの、今はジン君とパーティー組んでもらってて……色々お世話になっています。よろしくお願いします」

 最後にぺこりとお礼をして挨拶を絞める。
 
 俺はニヤけてしまいながら視線だけで「どうだ、ティナは可愛いだろ?」と二人に語り掛けた。
 セイラが引きつった笑顔のままこちらを睨んで来る。

 だけどそれも束の間。セイラとノエルはすぐにティナへ返事をした。

「ティナちゃんよろしくね!」
「よろしく頼むぜ!」
「今から飯食いに行くとこなんだけど、よかったらお前らもどうだ?」

 緊張しているティナには少し悪いかなと思ったけど、紹介はなるべく早めにしておいた方がいい。
 多少強引な俺の台詞に、セイラがすぐさま反応した。

「あら、いいの? それじゃあ今日はジンの奢りで!」
「そりゃあいいな!」

 それから俺たちは適当に飯が食えるところを探して町をうろついた。
 歩きながら、セイラはティナに積極的に話しかけている。
 
 見た目以外は基本的にゴリラなセイラも、一応は女子だし気さくなやつだ。
 中々やるなと感心しつつ、今度ティナ情報をあいつからゲットしようと思った。

 その少し後ろを男二人でのんびりと歩く。
 すると、ノエルが少しばかり声を潜めて話しかけて来た。

「お前なぁ、あの戦いって何だよ。余計な設定を盛り込んでんじゃねえ」
「旧知の仲っぽさを出した方がいいかと思ってな。っていうかお前らもあれぐらい上手く対応しろよ」
「そんなもん出さなくても実際に旧知の仲だろうが」
「それもそうだな」

 そこで俺は一つ疑問に思った事を聞いてみた。

「お前らはティナと関わって大丈夫なのか? 俺はそれで追放になったわけだろ」
「そこまで深く関わるわけじゃねえし……お前の提案をゼウス様に話したらすぐに許可を下さったよ。第一、お前だってちゃんとした処分はくらってないだろ」
「そうなのか?」
「ああ。俺もちゃんと知ってるわけじゃないが、正式な追放処分だと俺らと会う事も許されないはずだし、ましてやゼウス様から伝言を受けるなんて絶対に有り得ねえと思うぜ」
「ふ~ん」

 正直どうでもいいと思った俺の思考を読んだのか、ノエルが呆れた表情でため息をついた。
 そんな風に会話をしながら歩いていると、いい感じの店を見付けたので入る。
 
 セイラが見付けたところなのでそこそこにお洒落で女性に人気らしく、店内の客層もそんな感じだ。
 適当に空いてるテーブル席を見付けて座る。

 メニューをティナに渡しながら、セイラが楽しそうに話しかけた。

「さっティナちゃん、遠慮せずに注文してね!」
「でっ、でも、ジン君のお金なんじゃ」
「俺の事はいいから、食いたいもん食えよ」
「そうだそうだ、こいつはかなり稼いでんだから遠慮するこたぁねえぞ!」
「えっ……ジン君ってそんなにお金持ってるんですか?」

 そこで俺は迂闊な発言をしたノエルを睨んだ。
 ノエルも一瞬で色々考えた結果、自分の失態に気付いたらしい。
 
 ティナから見た俺は「自分よりそこそこに強い冒険者の先輩」。
 という事はお金もティナより少し多めに持っている、くらいでないといけない。
 
 とは言ってもこれは俺の説明不足もあるか。
 あまりノエルを責められたものでもないだろう。
 
 とにかくティナが疑問に思うのは当然の事だ。
 俺は取り繕う様に慌てて言葉を発した。

「稼いでるっつうかよ、死んだ親父の遺産が少しばかり残ってんだ」
「えっ、あんたお父さん亡くなったの!?」

 今度はセイラが食いついて来る。
 しまった……こいつらには親父が死んだ設定にしてあるのを話してなかった。
 俺は沈痛な面持ちになって声のトーンを落としていく。

「ああ、そういえばまだ話してなかったか。もう結構前の話だけどな、クエスト中にモンスターにやられちまったんだよ……」
「えっ……でもあんた」

 何かまずい事を言い出しそうなセイラを視線で射抜く。
 そこで察してくれたのか、悲しそうな表情になってセイラが呟いた。

「そう、なんだ……ごめんねジン」
「そんな気にすんなよ、俺はもう吹っ切れたから」

 その後何とか気を取り直して雑談を再開。
 やがて全員分の料理も揃った。
 ティナがお花摘みの為に席を立つと、セイラがすごい勢いで捲し立てて来る。

「あんた何勝手にお父さん死なせてんのよ! バカじゃないの!?」
「だってしょうがねえだろ! そうした方が都合が良かったんだよ!」
「どんな状況よそれ! もう。この前も元気に白菜買ってるところ見たから本当にびっくりしたじゃない……」

 怒りながらもどこか安堵した様子を見せるセイラ。
 すると、俺たちのやり取りを黙って見守っていたノエルが口を開く。

「まあさっきは俺のミスなんかもあったけどよ。ジンもそういうのはあらかじめ話しとけよ」
「ああ。悪い」

 それから少ししてティナが戻って来ると、食事が再開。
 他は特にトラブルもなく最後の方はティナも二人とかなり打ち解けてくれた。
 食事を終えて店を出ると今日のところはそこでお別れだ。

「今日は二人ともありがとう、今度はジン君の昔話とかも聞かせて欲しいな」
「任せてよ」

 ドヤ顔でそう言いながらドンと自分の胸を叩くセイラ。
 ちょっとだけゴリラっぽいと思ったけど、もちろん口には出せない。
 次にノエルが俺の背中を叩きながら笑顔で言った。

「このバカの事、今後ともよろしく頼むぜ」
「えっ、そんな。こちらの方こそ……」

 恐縮といった感じの表情でそう言うティナを見て、俺たちは互いに顔を合わせて笑った。
 そして手を振りながらセイラとノエルが別れの挨拶を口にする。

「それじゃあ、また近いうちに会いましょ!」
「またな!」

 俺とティナも手を振り返して見送った。
 二人の背中が小さくなっていくのを、静かに見守る。
 それから俺は一歩を踏み出してティナに言った。

「さて、今日は防具でも買いに行くか」
「うん」

 ティナはやや遅れて小走りでついて来る。
 そうして今日もまた俺たちの冒険が始まった。
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