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ツギノ町編 第三章 勇者の目覚め
穏やかに光る月の下で
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一方下界では、早くもセイラとノエルがツギノ町に入っていた。
夜の帳も下りて月の輝く時刻。
ジンが部屋を借りている宿屋の下でオブザーバーズの隊員と通信をしている。
ちなみにこのオブザーバーズの隊員というのはエアではない。
ゼウスからの直々の任という事で連れて来た平のオブザーバーだ。
この町で潜伏しているエアをいちいち探すのは手間なので、天界から適当に連れてきた方が早いのである。
セイラがジンの部屋の窓を見ながら心の声で問い掛けた。
(今は大丈夫?)
(うん、女勇者が部屋で動かなくなってからしばらく経ったよ)
(ありがとう)
セイラはノエルと目を合わせて頷くと、小石を窓に投げつけた。
一度ではジンは顔を出さない。
前回でそれを学習したセイラは次々に石を投げつけていく。
しかしジンは前回よりも長い時間が経っても顔を出さない。
寝てしまっているのかもしれない。
心配になったセイラがノエルに声をかけた。
「ちょっとこういう時どうすんのよ」
「前も思ってたんだが……オブザーバーズの隊員に頼めばいいんじゃないか?」
「あっ」
頬を赤く染めるセイラ。
自分でジンに声をかけたくてその方法が視野に入っていなかったらしい。
もっともノエルはそんな彼女の様子には気付いていない様だが。
「お前がそんなうっかりミスなんて珍しいよな」
「うっ、うるさいわね」
「何怒ってんだよ。ほら、お前しか通信繋がってねえんだから」
照れ隠しにそっぽを向いてから、セイラは心の声で呼びかけた。
(もしもし、まだ繋がってるわよね?)
(どうかした?)
(ジンが寝てるかもしれないから、窓から顔を出す様にそっちから呼びかけてくれない?)
(了解)
(ありがとう)
うまくいったらしく、少し待つとジンが窓から顔を出した。
セイラがくいっ、と親指を立てて自分の後ろを指すと、眠そうな顔のジンが両腕でバツを作った。
それを見たセイラの腕に魔力が集まり始める。
魔法を発動させようとしているらしい。
ノエルがそれを止めると、ジンも慌てて姿を消した。
ジンと合流すると、三人は前回と同じ様に宿から離れていく。
頃合いを見計らってジンがぶっきらぼうに言った。
「お前あんなところで魔法を使おうとしてんじゃねえよ」
「あんたがふざけた事をするからでしょうが」
「ちょっとした冗談じゃねえか」
二人のいつもと変わらないやり取りをノエルが微笑みと共に見守る。
ややあって、セイラが一つ咳ばらいをしてから喋り始めた。
「で、今日の用件だけど。そろそろグランドクエストが始まるから、過干渉はするなとゼウス様が仰ってたわ」
「って事はレベルが発動条件になってたのか」
「そこまでは聞いてないけど……」
「今日のクエストでまたティナのレベルが上がったんだよ」
「ふ~ん、良かったわね」
嬉しそうに語るジンを見て、セイラはそっぽを向いてしまう。
しかしそれを別段気にする事もなくジンは話を続ける。
「そういやさ、そろそろお前らをティナに紹介しようと思うんだよ」
「「はぁ?」」
とんでもない提案に、セイラとノエルの声が被った。
セイラが勢いよく言葉をぶつけていく。
「そんな事出来るわけないでしょうが」
「何でだよ。どうせこうやって会うなら、冒険者仲間とかで紹介した方がティナから隠れなくても良くなるだろ。もし緊急の案件とかだったらいちいち夜を待つわけにもいかないだろうし」
セイラは腕を組み、拳を顎に当てて考え始めた。
最初はとんでもないと思ったが、ジンの言う事も一理ある。
それに堂々と会えればセイラとノエルも楽でいい。
同じ様に考え事をしていたノエルが口を開く。
「ジンにしちゃ珍しくいい事言うじゃねえか。精霊専用スキルとか使わなけりゃ精霊だってバレる事もほぼないしな」
「そうね。それじゃ今度紹介してもらおうかしら」
セイラの言葉を聞いたジンが訝し気な表情をした。
「何呑気な事を言ってんだよ。明日だ明日。この前飯奢れって言ってただろ。その約束ついでにティナに紹介するよ」
「急だけど、まあそれでもいいわよ」
「決まりだな。明日の朝くらいに適当にこの辺をうろついててくれ」
そこで話は終わり、互いに家路に就くことになった。
セイラとノエルは天界へ。ジンはティナの待つ宿屋へ。
一様に笑顔な三人を、月だけが静かに見守っていた。
夜の帳も下りて月の輝く時刻。
ジンが部屋を借りている宿屋の下でオブザーバーズの隊員と通信をしている。
ちなみにこのオブザーバーズの隊員というのはエアではない。
ゼウスからの直々の任という事で連れて来た平のオブザーバーだ。
この町で潜伏しているエアをいちいち探すのは手間なので、天界から適当に連れてきた方が早いのである。
セイラがジンの部屋の窓を見ながら心の声で問い掛けた。
(今は大丈夫?)
(うん、女勇者が部屋で動かなくなってからしばらく経ったよ)
(ありがとう)
セイラはノエルと目を合わせて頷くと、小石を窓に投げつけた。
一度ではジンは顔を出さない。
前回でそれを学習したセイラは次々に石を投げつけていく。
しかしジンは前回よりも長い時間が経っても顔を出さない。
寝てしまっているのかもしれない。
心配になったセイラがノエルに声をかけた。
「ちょっとこういう時どうすんのよ」
「前も思ってたんだが……オブザーバーズの隊員に頼めばいいんじゃないか?」
「あっ」
頬を赤く染めるセイラ。
自分でジンに声をかけたくてその方法が視野に入っていなかったらしい。
もっともノエルはそんな彼女の様子には気付いていない様だが。
「お前がそんなうっかりミスなんて珍しいよな」
「うっ、うるさいわね」
「何怒ってんだよ。ほら、お前しか通信繋がってねえんだから」
照れ隠しにそっぽを向いてから、セイラは心の声で呼びかけた。
(もしもし、まだ繋がってるわよね?)
(どうかした?)
(ジンが寝てるかもしれないから、窓から顔を出す様にそっちから呼びかけてくれない?)
(了解)
(ありがとう)
うまくいったらしく、少し待つとジンが窓から顔を出した。
セイラがくいっ、と親指を立てて自分の後ろを指すと、眠そうな顔のジンが両腕でバツを作った。
それを見たセイラの腕に魔力が集まり始める。
魔法を発動させようとしているらしい。
ノエルがそれを止めると、ジンも慌てて姿を消した。
ジンと合流すると、三人は前回と同じ様に宿から離れていく。
頃合いを見計らってジンがぶっきらぼうに言った。
「お前あんなところで魔法を使おうとしてんじゃねえよ」
「あんたがふざけた事をするからでしょうが」
「ちょっとした冗談じゃねえか」
二人のいつもと変わらないやり取りをノエルが微笑みと共に見守る。
ややあって、セイラが一つ咳ばらいをしてから喋り始めた。
「で、今日の用件だけど。そろそろグランドクエストが始まるから、過干渉はするなとゼウス様が仰ってたわ」
「って事はレベルが発動条件になってたのか」
「そこまでは聞いてないけど……」
「今日のクエストでまたティナのレベルが上がったんだよ」
「ふ~ん、良かったわね」
嬉しそうに語るジンを見て、セイラはそっぽを向いてしまう。
しかしそれを別段気にする事もなくジンは話を続ける。
「そういやさ、そろそろお前らをティナに紹介しようと思うんだよ」
「「はぁ?」」
とんでもない提案に、セイラとノエルの声が被った。
セイラが勢いよく言葉をぶつけていく。
「そんな事出来るわけないでしょうが」
「何でだよ。どうせこうやって会うなら、冒険者仲間とかで紹介した方がティナから隠れなくても良くなるだろ。もし緊急の案件とかだったらいちいち夜を待つわけにもいかないだろうし」
セイラは腕を組み、拳を顎に当てて考え始めた。
最初はとんでもないと思ったが、ジンの言う事も一理ある。
それに堂々と会えればセイラとノエルも楽でいい。
同じ様に考え事をしていたノエルが口を開く。
「ジンにしちゃ珍しくいい事言うじゃねえか。精霊専用スキルとか使わなけりゃ精霊だってバレる事もほぼないしな」
「そうね。それじゃ今度紹介してもらおうかしら」
セイラの言葉を聞いたジンが訝し気な表情をした。
「何呑気な事を言ってんだよ。明日だ明日。この前飯奢れって言ってただろ。その約束ついでにティナに紹介するよ」
「急だけど、まあそれでもいいわよ」
「決まりだな。明日の朝くらいに適当にこの辺をうろついててくれ」
そこで話は終わり、互いに家路に就くことになった。
セイラとノエルは天界へ。ジンはティナの待つ宿屋へ。
一様に笑顔な三人を、月だけが静かに見守っていた。
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