35 / 207
王都ミツメ編 前編 新たな出会いたち
まあいけませんわラッド様!
しおりを挟む
昨晩はよく眠れたらしく爽快な目覚めだ。
ベッドから降りると、洗面所で顔を洗ってティナと合流。
宿屋の一階にある酒場で飯を食いながらの予定相談タイムだ。
小動物みたいに飯を食うティナに話を切り出した。
「今日はどうする? 早速クエストにでも行くか?」
質問に対してティナは食器を動かす手を休める。
そして視線を宙に漂わせながら答えてくれた。
「う~ん、それもいいんだけど。今日は街を周ってみたいかも」
「ティナはミツメに来たのは初めてだったか」
「そうなんだよね。だからジン君に案内して欲しいな」
「俺もそんなに詳しくはないぞ。ここはとにかく広いし」
という言い訳を使える程この街は広い。
長年住んでるやつでも知らない場所や店ってのは普通にあると思う。
「それでもいいよ。適当にぶらぶらしよっ」
こちらに向けられたティナの笑顔が眩しすぎる。
何だかデートの予定を立ててるみたいで恥ずかしい!
「ティナがいいならいいけどよ」
顔が熱くなるのを感じながら素っ気なく返事をしてしまった。
街に出ると、人混みの密度の高さは昨日とさほど変わらない。
だけどティナと二人で歩いているという事実だけで足取りは軽くなっていた。
向こうはどう思ってるか知らないけどな。
昨日のエアとの通信の件もあるので、まずは道具屋に行く事に。
地図を買ったらまた一度戻って来て、お姉さんに目ぼしい店の場所をマーキングしてもらおうという話だ。
幸いにも道具屋は近くに一軒あるらしく、お姉さんに口頭で教えてもらう。
エアと違ってめちゃくちゃわかりやすい説明だった。
そんなわけで今は人混みの中を道具屋に向かって歩いているところだ。
街中にはところどころに小川があって、ティナは歩きながらそれを眺めている。
注意しようと少し後ろから声をかけた。
「ティナ、ちゃんと前見ないと危ないぞ」
「は~い」
そうは言いつつもまだ小川の方をちらちらと見ながら歩いている。
ごみごみした街の中に水路というのがまた興味を惹かれるのだろうか。
俺も小川になりてえ……そんな風に考えていた時だった。
「きゃっ! ごめんなさい!」
「どこ見て歩いてんだおらぁ!」
どうやらティナが誰かとぶつかったらしい。
見てみると、相手の男は体格がいいだけであまり品の感じられない、いかにも荒くれ者といった風貌をしている。
隣には一人仲間らしきやつを連れていた。
男は一方的にティナを捲し立てていく。
「ごめんなさいで済むなら衛兵は要らねえんだよ!」
「おい待てよ。よく見たらこの女の子結構可愛いじゃん。おい、お詫びに俺らとよろしくやってくれよ!」
「それいいな! よろしくよろしくぅ!」
「えっ……あの……」
下卑た笑みを浮かべながら、男がティナの手を掴んだ。
ティナはどうしていいかわからない様子で怯えていて、うまく声も出ていない。
俺は荒くれ者の手を掴んでティナから引き剥がして言った。
「この子に何か用か?」
「いっ、いてて……あぁん!? なんだおめえ!」
「この子の仲間だ」
仲間……仲間だよな、今は。将来的には結婚するとしても。
ってそんなこと考えてる場合じゃねえだろジンばかやろぉ!
すると隣にいた男の仲間が俺に顔を近付けて凄んで来る。
「ぶつかって来たのはこの女の方だろうが! 代わりにお前が落とし前つけてくれんのか!? ああ!?」
「何だしょぼそうな装備してんなぁ! この街には来たばっかりか!」
最初に絡んで来た男も便乗して来た。
俺が今装備しているのは「ふだんぎ」で防御力はゼロ。
しょぼいどころの騒ぎじゃない。
まさかテイマーズの訓練をしてそのまま下界に降り立つ事になるとは思ってなかったからな。
こっちに来てからは防具無しでもダメージの入らないモンスターしかいなかったし……。
そんな風に考え事をしていたから黙って立ち尽くす形になってしまった。
俺がびびったと思って二人組は気を良くしたらしい。
ティナとぶつかった方の男はなおも言葉をぶつけて来る。
「おうおう何だ威勢がいいのは最初だけか!」
周囲には少しずつだけど野次馬も沸き始めている。
男は両拳を合わせて言葉を重ねた。
「しょうがねえな、俺がこの街に生きる先輩冒険者としてお前に指導してやるよ!この拳でなあ!」
「ああ、いいぜ」
こんな奴らちょちょいと返り討ちにしてそのままティナと結婚だ。
ゼウスの絵入りこんぼうを取り出して構えた。
だけど相手は何故か腰に下げた剣を抜かずに素手のまま構える。
怪訝な目を向けると、男は口の端を吊り上げて言った。
「駆け出し冒険者君にハンデをやるよ! 俺は武器を使わねえ! さあ、どこからでもかかって来い!」
何言ってんだこいつ。
まあいいや、さっさとぶっ飛ばして……。ぶっ飛ばし……。
…………。
あれっ、よく考えたら俺がこいつに勝つのってまずいんじゃね?
装備から察するに、相手はこの街における中堅レベルの冒険者だろう。
ってことはティナや、ティナより少し上くらいのレベルに「偽装」している俺がこいつに勝つことは本来ならあり得ない。
ここで俺がやつを倒してしまうとかなり不自然な事になる。
う~ん、例えわざとでもティナの目の前で負けるってのはダサいしどうしたもんかなあ。
と、あれこれと思索を巡らせていた時だった。
「ちょっと待ったぁ!」
突然そんな叫び声が上がった。
周囲を見渡していると、いつの間にか異常に増えていた観衆の中から一人の青年が歩み出て来る。
前髪が少し長い金髪に端正だけどどこかキザったらしい容貌。
身体には誰しもが少年時代に好むような、赤と黒の禍々しい鎧を纏っている。
青年はその容貌に相応しい芝居がかった仕草で口を開いた。
「僕の目の前で弱い者いじめなんて、見過ごすわけにはいかないなあ」
「あん? 誰だてめえは?」
男は青年の方を振り向いて誰何《すいか》の声をあげた。
青年は待ってましたと言わんばかりの勢いで口上を述べていく。
「僕の名はラッド=クリスティン! 誉れ高き貴族であるクリスティンの家に生まれた愛と正義の……」
「まあいけませんわラッド様! 貴族と言っても没落貴族ではありませんか!」
ラッドと名乗った男の言葉を遮るように、背後から一人の女性が出て来た。
ウェーブのかかった黒色の髪は腰の辺りにまで伸びて中央で分けられ、健康的な額が顔を覗かせている。
気品のある佇まいをしているものの、どこか気弱そうな雰囲気だ。
……言ってる事は割と辛辣だけどな。
女性の言葉を受けたラッドという男はそちらを振り返って口を開く。
テンションが下がったのか少し声のトーンは落とし気味だ。
「ロザリア……没落貴族呼ばわりはやめてくれないか?」
「私は心配で申し上げているのです。そんなに見栄を張っては後々困った事になってしまいます」
「既に君のおかげで困った事になっているんだけど」
二人が衆目を集めながらの夫婦漫才を繰り広げていると、俺と対峙していた荒くれ者が不機嫌そうに割り込んでいった。
「おいおい何でもいいけど早くしろよ! お前もやんのか!? ああん!?」
「焦るなよ。今にこの僕のブラックエレクトリカルソードの餌食にしてやるから。ロザリア、君は下がっていてくれるかい?」
落ち着いた声音で諭され、ロザリアと呼ばれた女は心配そうな表情のままで群衆の中へと戻っていった。
それを確認してから、ラッドが勢いよく啖呵を切る。
「さあ、裁きの時間だ! ゆくぞ悪党よ!」
「待ってたぜぇ! ヒャッハァ!」
荒くれものは駆け出し、ラッドは剣を抜いて構える。
最初に絡まれた俺とティナは完全な蚊帳の外だけどそれはまあいい。
というより蚊帳の外のままで終わってくれれば大助かりだ。
それはそうと、ラッドが言っていたブラックエレクトリカルソードなんてスキルや武器には聞き覚えがないんだけど、一体何の事だろうか。
武器は多分だけど特別デザインのはがねのつるぎだし、スキルは正確に技や魔法の名前を宣言しないと発動しない。
剣に関するスキルなら俺はほぼ全部把握しているし……。
あ、そういえばティナはスキル名の発言なしに勇者専用スキルらしきものを出してたから例外はあるのか。
あれこれ考えている間にも戦いは進んでいく。
ラッドは右手で構えた剣の先を相手に向けている。
左半身に構えて腰を落とし、左腕を伸ばしている姿勢だ。
そして左の手のひらを相手に向けたままで宣言した。
「ブラックエレクトリカルソードォ!!!!!!…………サンダー」
何か最後にぼそっと呟いたが聞き取れない。
するとラッドの左の手のひらからどう見てもサンダーとしか思えないしょぼさの魔法が出て来た。
ちなみにサンダーというのは雷属性の一番初歩の魔法だ。
「ぐおっ!」
サンダーを防御した荒くれ者が一瞬だけ怯んだ。
その様子を見たラッドが嬉しそうに叫ぶ。
「どうだい!? 僕のブラックエレクトリカルソードの威力は! ふっ、君が死んでしまわない様に威力を調整するのも大変だったよ!」
「どう見てもサンダーだろうが! 何言ってんだお前はよぉ!」
ラッドは攻撃が当たった喜びからか大はしゃぎだ。
荒くれ者から文句をつけられても全く意に介していない。
どんどん二人の距離が近づいていく。
「次はこっちの番だ!」
「ふっ、どうやらそのようだね。来るがいい! ジャスティスガード!」
ラッドはそう宣言したけど、明らかにただの防御だ。
盾も使わずに身体の前で両腕をクロスしている。
対する荒くれ者は走りながら雄叫びをあげている。
「おおおおおおっ!!」
男が思いっきり拳を振りぬく。
ラッドは微動だにせず、真正面からそれを受けた。
「ぶべらっ!!」
変な声をあげながらラッドが後ろに吹き飛んでいく。
群衆の中に突っ込んでそのまま気を失ったらしく微動だにしない。
ロザリアと呼ばれた女性がそちらに駆け寄りながら悲鳴をあげる。
「ラッド様!!」
おいおい、めちゃくちゃ弱いじゃねえか。
まさかの一撃かよ。しかも相手は素手だっつうのに。
俺が戦わなくて済むかもって少しだけ期待してたんだけどな……。
ベッドから降りると、洗面所で顔を洗ってティナと合流。
宿屋の一階にある酒場で飯を食いながらの予定相談タイムだ。
小動物みたいに飯を食うティナに話を切り出した。
「今日はどうする? 早速クエストにでも行くか?」
質問に対してティナは食器を動かす手を休める。
そして視線を宙に漂わせながら答えてくれた。
「う~ん、それもいいんだけど。今日は街を周ってみたいかも」
「ティナはミツメに来たのは初めてだったか」
「そうなんだよね。だからジン君に案内して欲しいな」
「俺もそんなに詳しくはないぞ。ここはとにかく広いし」
という言い訳を使える程この街は広い。
長年住んでるやつでも知らない場所や店ってのは普通にあると思う。
「それでもいいよ。適当にぶらぶらしよっ」
こちらに向けられたティナの笑顔が眩しすぎる。
何だかデートの予定を立ててるみたいで恥ずかしい!
「ティナがいいならいいけどよ」
顔が熱くなるのを感じながら素っ気なく返事をしてしまった。
街に出ると、人混みの密度の高さは昨日とさほど変わらない。
だけどティナと二人で歩いているという事実だけで足取りは軽くなっていた。
向こうはどう思ってるか知らないけどな。
昨日のエアとの通信の件もあるので、まずは道具屋に行く事に。
地図を買ったらまた一度戻って来て、お姉さんに目ぼしい店の場所をマーキングしてもらおうという話だ。
幸いにも道具屋は近くに一軒あるらしく、お姉さんに口頭で教えてもらう。
エアと違ってめちゃくちゃわかりやすい説明だった。
そんなわけで今は人混みの中を道具屋に向かって歩いているところだ。
街中にはところどころに小川があって、ティナは歩きながらそれを眺めている。
注意しようと少し後ろから声をかけた。
「ティナ、ちゃんと前見ないと危ないぞ」
「は~い」
そうは言いつつもまだ小川の方をちらちらと見ながら歩いている。
ごみごみした街の中に水路というのがまた興味を惹かれるのだろうか。
俺も小川になりてえ……そんな風に考えていた時だった。
「きゃっ! ごめんなさい!」
「どこ見て歩いてんだおらぁ!」
どうやらティナが誰かとぶつかったらしい。
見てみると、相手の男は体格がいいだけであまり品の感じられない、いかにも荒くれ者といった風貌をしている。
隣には一人仲間らしきやつを連れていた。
男は一方的にティナを捲し立てていく。
「ごめんなさいで済むなら衛兵は要らねえんだよ!」
「おい待てよ。よく見たらこの女の子結構可愛いじゃん。おい、お詫びに俺らとよろしくやってくれよ!」
「それいいな! よろしくよろしくぅ!」
「えっ……あの……」
下卑た笑みを浮かべながら、男がティナの手を掴んだ。
ティナはどうしていいかわからない様子で怯えていて、うまく声も出ていない。
俺は荒くれ者の手を掴んでティナから引き剥がして言った。
「この子に何か用か?」
「いっ、いてて……あぁん!? なんだおめえ!」
「この子の仲間だ」
仲間……仲間だよな、今は。将来的には結婚するとしても。
ってそんなこと考えてる場合じゃねえだろジンばかやろぉ!
すると隣にいた男の仲間が俺に顔を近付けて凄んで来る。
「ぶつかって来たのはこの女の方だろうが! 代わりにお前が落とし前つけてくれんのか!? ああ!?」
「何だしょぼそうな装備してんなぁ! この街には来たばっかりか!」
最初に絡んで来た男も便乗して来た。
俺が今装備しているのは「ふだんぎ」で防御力はゼロ。
しょぼいどころの騒ぎじゃない。
まさかテイマーズの訓練をしてそのまま下界に降り立つ事になるとは思ってなかったからな。
こっちに来てからは防具無しでもダメージの入らないモンスターしかいなかったし……。
そんな風に考え事をしていたから黙って立ち尽くす形になってしまった。
俺がびびったと思って二人組は気を良くしたらしい。
ティナとぶつかった方の男はなおも言葉をぶつけて来る。
「おうおう何だ威勢がいいのは最初だけか!」
周囲には少しずつだけど野次馬も沸き始めている。
男は両拳を合わせて言葉を重ねた。
「しょうがねえな、俺がこの街に生きる先輩冒険者としてお前に指導してやるよ!この拳でなあ!」
「ああ、いいぜ」
こんな奴らちょちょいと返り討ちにしてそのままティナと結婚だ。
ゼウスの絵入りこんぼうを取り出して構えた。
だけど相手は何故か腰に下げた剣を抜かずに素手のまま構える。
怪訝な目を向けると、男は口の端を吊り上げて言った。
「駆け出し冒険者君にハンデをやるよ! 俺は武器を使わねえ! さあ、どこからでもかかって来い!」
何言ってんだこいつ。
まあいいや、さっさとぶっ飛ばして……。ぶっ飛ばし……。
…………。
あれっ、よく考えたら俺がこいつに勝つのってまずいんじゃね?
装備から察するに、相手はこの街における中堅レベルの冒険者だろう。
ってことはティナや、ティナより少し上くらいのレベルに「偽装」している俺がこいつに勝つことは本来ならあり得ない。
ここで俺がやつを倒してしまうとかなり不自然な事になる。
う~ん、例えわざとでもティナの目の前で負けるってのはダサいしどうしたもんかなあ。
と、あれこれと思索を巡らせていた時だった。
「ちょっと待ったぁ!」
突然そんな叫び声が上がった。
周囲を見渡していると、いつの間にか異常に増えていた観衆の中から一人の青年が歩み出て来る。
前髪が少し長い金髪に端正だけどどこかキザったらしい容貌。
身体には誰しもが少年時代に好むような、赤と黒の禍々しい鎧を纏っている。
青年はその容貌に相応しい芝居がかった仕草で口を開いた。
「僕の目の前で弱い者いじめなんて、見過ごすわけにはいかないなあ」
「あん? 誰だてめえは?」
男は青年の方を振り向いて誰何《すいか》の声をあげた。
青年は待ってましたと言わんばかりの勢いで口上を述べていく。
「僕の名はラッド=クリスティン! 誉れ高き貴族であるクリスティンの家に生まれた愛と正義の……」
「まあいけませんわラッド様! 貴族と言っても没落貴族ではありませんか!」
ラッドと名乗った男の言葉を遮るように、背後から一人の女性が出て来た。
ウェーブのかかった黒色の髪は腰の辺りにまで伸びて中央で分けられ、健康的な額が顔を覗かせている。
気品のある佇まいをしているものの、どこか気弱そうな雰囲気だ。
……言ってる事は割と辛辣だけどな。
女性の言葉を受けたラッドという男はそちらを振り返って口を開く。
テンションが下がったのか少し声のトーンは落とし気味だ。
「ロザリア……没落貴族呼ばわりはやめてくれないか?」
「私は心配で申し上げているのです。そんなに見栄を張っては後々困った事になってしまいます」
「既に君のおかげで困った事になっているんだけど」
二人が衆目を集めながらの夫婦漫才を繰り広げていると、俺と対峙していた荒くれ者が不機嫌そうに割り込んでいった。
「おいおい何でもいいけど早くしろよ! お前もやんのか!? ああん!?」
「焦るなよ。今にこの僕のブラックエレクトリカルソードの餌食にしてやるから。ロザリア、君は下がっていてくれるかい?」
落ち着いた声音で諭され、ロザリアと呼ばれた女は心配そうな表情のままで群衆の中へと戻っていった。
それを確認してから、ラッドが勢いよく啖呵を切る。
「さあ、裁きの時間だ! ゆくぞ悪党よ!」
「待ってたぜぇ! ヒャッハァ!」
荒くれものは駆け出し、ラッドは剣を抜いて構える。
最初に絡まれた俺とティナは完全な蚊帳の外だけどそれはまあいい。
というより蚊帳の外のままで終わってくれれば大助かりだ。
それはそうと、ラッドが言っていたブラックエレクトリカルソードなんてスキルや武器には聞き覚えがないんだけど、一体何の事だろうか。
武器は多分だけど特別デザインのはがねのつるぎだし、スキルは正確に技や魔法の名前を宣言しないと発動しない。
剣に関するスキルなら俺はほぼ全部把握しているし……。
あ、そういえばティナはスキル名の発言なしに勇者専用スキルらしきものを出してたから例外はあるのか。
あれこれ考えている間にも戦いは進んでいく。
ラッドは右手で構えた剣の先を相手に向けている。
左半身に構えて腰を落とし、左腕を伸ばしている姿勢だ。
そして左の手のひらを相手に向けたままで宣言した。
「ブラックエレクトリカルソードォ!!!!!!…………サンダー」
何か最後にぼそっと呟いたが聞き取れない。
するとラッドの左の手のひらからどう見てもサンダーとしか思えないしょぼさの魔法が出て来た。
ちなみにサンダーというのは雷属性の一番初歩の魔法だ。
「ぐおっ!」
サンダーを防御した荒くれ者が一瞬だけ怯んだ。
その様子を見たラッドが嬉しそうに叫ぶ。
「どうだい!? 僕のブラックエレクトリカルソードの威力は! ふっ、君が死んでしまわない様に威力を調整するのも大変だったよ!」
「どう見てもサンダーだろうが! 何言ってんだお前はよぉ!」
ラッドは攻撃が当たった喜びからか大はしゃぎだ。
荒くれ者から文句をつけられても全く意に介していない。
どんどん二人の距離が近づいていく。
「次はこっちの番だ!」
「ふっ、どうやらそのようだね。来るがいい! ジャスティスガード!」
ラッドはそう宣言したけど、明らかにただの防御だ。
盾も使わずに身体の前で両腕をクロスしている。
対する荒くれ者は走りながら雄叫びをあげている。
「おおおおおおっ!!」
男が思いっきり拳を振りぬく。
ラッドは微動だにせず、真正面からそれを受けた。
「ぶべらっ!!」
変な声をあげながらラッドが後ろに吹き飛んでいく。
群衆の中に突っ込んでそのまま気を失ったらしく微動だにしない。
ロザリアと呼ばれた女性がそちらに駆け寄りながら悲鳴をあげる。
「ラッド様!!」
おいおい、めちゃくちゃ弱いじゃねえか。
まさかの一撃かよ。しかも相手は素手だっつうのに。
俺が戦わなくて済むかもって少しだけ期待してたんだけどな……。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる