女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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伝説の武器編 後編 ドキッ! 男だらけの試練の迷宮

世界樹の花

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 そんな感じで雑談を交わしながら奥に向かい、途中で見つけた部屋に寄り道をする形で探索をしていった。
 そして何個目かの部屋を見付けた時のことだ。

 ついに宝箱を発見することに成功し、今まさにそれを開けようとしていた。
 
 ここでの俺たちの並びは宝箱に向かって右からキース、俺、マイアー。俺が真ん中で宝箱の正面にいる。
 で、俺の真後ろにムガルがいて、丁度ムガルを頂点にした下向きの三角を描くような配置だ。
 そしてムガルの真後ろにはこの部屋唯一の出入り口がある。

 宝箱を目の前にした俺は生唾を飲み、はやる心を抑えながら口を開いた。

「よ、よ~し、開けるぞ……」
「ジン、お兄ちゃんは応援してるからなっ」
「何をだよ」

 ため息まじりにそう言いながら宝箱に手をかけて開く。
 すると宝箱には牙がついていて、中にはアイテムの代わりに眼が見えている。
 宝箱に擬態する「イベントモンスター」の一種、ミミックだ。

 ミミックは真っ先に俺に襲いかかってきた。
 俺は身体を後ろに倒しながら、飛んできたミミックを下から蹴り上げるようにして後方に飛ばす。
 するとちょうどムガルの目の前にお届けする形になる。

 俺はほぼ寝そべった姿勢のままで叫んだ。

「ムガル! 頼んだぜ!」
「わわっ、『せいけんづき』っ!!」

 慌てながらもとっさに放たれたその技は恐ろしいほどに鋭い。
 拳がめり込むと同時に、ミミックは部屋の奥の壁まで高度を落とすことなく真っすぐに飛び、光の粒子となって霧散した。

 俺は起き上がると、ムガルの方に歩み寄って声をかける。

「さすがだな」
「い、いえ、そんな……」

 と、ムガルが自信の頭をさすりながら照れた表情を見せたその時だった。

「キキーッ!」
「キキーッ!」

 ゴブリン、とは言っても通常より身体が明らかに大きいからホブゴブリンか。
 それが三体ほど部屋になだれこんできたかと思うと、まっすぐに俺の方に向かってくる。
 そんなホブゴブリンたちを見た途端に目を見開き、ムガルが叫んだ。

「君たち!」

 俺はホブゴブリンたちを攻撃してしまう可能性のあるキースを手で制した。

「キーッ!」
「キキーッ!!」

 全員が静かに見守る中、ホブゴブリンたちは揃って俺をぽかぽかと殴り始める。
 ムガルが慌てて俺に視線をやりながら口を開いた。

「あの、ジンさん、その子たちは」
「わかってる。手は出さねえよ」
「ありがとうございます」

 詳しいことはわからないけど、こいつらはムガルの知り合いってことはまず間違いないだろう。
 なぜ、どうやってここに来たのかという疑問は残るけど、知り合いでないとこんなところまでわざわざ入ってくる意味がない。

「『リジェネレート』」

 念のためHPを一定時間ごとに一定量回復する支援魔法を自分にかけておく。
 これで一定時間内でHPが赤字になることはない。つまり、このまま放置しても俺がホブゴブリンたちに倒されることはないってことだ。

 しばらく待っているとやがて攻撃は止み、ホブゴブリンたちは膝に手をついて肩で息をし始めた。
 それから体力が回復すると、ムガルと俺の間に立ち塞がるように並んでまたキーキー言い出す。すると今度は、ムガルがその後ろからウホウホ言い出した。恐らくはモンスターの言葉で会話をしているのだろう。

 俺もさすがにモンスターの言葉はわからないし、テレパシーを使っても口から出ている言葉は翻訳出来ないので黙って見守ることにした。
 キースとマイアーにもその意図は伝わっているらしく、俺と同じように腕を組んで彼らを静かに眺めてくれている。

 少しの間待つと話が終わったのか、こちらを向いてムガルが口を開く。

「この子たち、僕の部下のホブゴブリンたちなんですけど……心配になって追いかけてきてくれたみたいです。そしたらちょうどミミックと戦っているところを見たらしく、みなさんと戦闘をしていると勘違いしたみたいで」
「いい部下じゃねえか」

 俺がそう言うと、キースもいい話だなと何度かうなずいた後、しかし、と疑問を口にする。

「なぜこの場所がわかったんだ?」
「この子たちは攻撃力的に壁を破壊できませんから。僕が空けた穴から入って、通路に落ちている毛を追っかけてきたんだとか」

 毛か。言われて目を凝らしてみれば、まあわからないという程じゃない。
 俺たちより背が小さくて視界の低いホブゴブリンだから見付けられたのかもしれないな。

「専用スキルでこいつらと会話するから待っててくれ」
「わかった」

 二人に断りを入れ、キースからの返事を聞くと「テレパシー」を発動する。

(おい、聞こえるか? お前たちの目の前にいるものだけど)

 すると、どのホブゴブリンかはわからないけどすぐに反応があった。

(あ、今ムガル様からお話を伺いました。あの、失礼なことをしてしまってすいませんでした)
(気にすんな。それだけムガルが心配だったってことだろ)
(はい。もういてもたってもいられなくて、死ぬときは一緒にと思い……)

 お、重いな……とりあえず話を変えよう。

(ま、ムガルから事情の説明を受けてんなら話は早い。あんまり時間もないし、さっさと次の宝箱探しにいくから。気をつけて帰れよ)

 そう言ってキースとマイアーに視線を送って頷いてから通路に向かって歩き出そうとすると、心の声で呼び止められた。今まで会話してたやつだろうか。

(お待ちください!)
(ん、どうした?)
(贈り物をお探しでしたら、これなんていかがでしょうか)

 ホブゴブリンからこちらに向かって差し出されたのは花だった。とはいってもほとんど茎はなく、先端の部分だけだ。それに見たこともない。どんな種類の花なのか見当もつかないな。
 じっと観察していると続けて説明が入った。

(この辺りで拾ったんですけど、中々綺麗だなと思ったので)
(ふむ……)

 確かに綺麗な花だと思うけど、正直それだけじゃ贈り物としての善し悪しを判断できない。キースとマイアーにも話を聞いてみよう。
 二人を手招きして花を指差すと、キースがその花を手に取り、空いた手を顎にやりながら口を開く。

「これは世界樹の花だな」
「世界樹の花?」

 俺がそっくりそのまま聞き返すと、キースは一つうなずいてから花をホブゴブリンに差し戻しつつ答えた。

「あまりにも木が大きいので目立たないが、世界樹は幹でも枝でも、至るところに花をぽつぽつと咲かせているんだ。割と高い位置に咲いていることが多いから、こういった形でも手に入ること自体が珍しい」
「でもこんなんじゃすぐに枯れちまいそうだな」
「それがそうでもないんだ。ジンも知っているとは思うが、世界樹はただの巨木とはいえ微量な魔力が宿っている。その影響なのか、この花はこうして木から離れても枯れることなく瑞々しい姿を保ち続けるのだそうだ」
「ほ~ん」

 すげー強い風とかが吹いてこの辺まで落ちて来たのかな。とにかくこのホブゴブリンの強運に感謝だ。とはいっても、まだ肝心なことを聞いていない。
 知識を語り終えて少しすっきりしたような表情をしているキースに尋ねた。

「で、結局これは贈り物としてはどうなんだ?」
「悪くはないと思うぞ。少なくともこのダンジョン内では、贈り物としてこれよりいいものは中々見つからないだろうな」
「そんなにかよ」
「まあ特にお守りとしての効果などがあるわけではないが、ただでさえ貴重なもので綺麗だし、枯れないしな。お兄ちゃんもたまたま手に入れたらその時付き合ってる女に渡したりするぞ」
「別にそこまでは聞いてない」

 自慢げに語るキースに相槌をうってから少し考えてみる。
 うん。まあクソ野郎ではあるけど女心を知る生物のお墨付きだし、これに決めるか。時間も惜しいしな。
 もう一度ホブゴブリンに向き直って心の声に会話を切り替えた。

(じゃあそれを貰おうかな。そうだな、お前らは実用的なものの方がいいだろうから……これでどうだ?)

 やくそうやレイナルド用のおやつやら、持っていたものをごそっと取り出して差し出す。
 するとホブゴブリンは驚いた様子でぶんぶんと手を横に振った。

(いえいえ、そんなの貰えませんよ! これはその、失礼をしたことのお詫びや私たちを生かしてくださったことへのお礼のようなものですので)
(そんなのお詫びやお礼をされるほどのものでもないから。それより貴重なものみたいだし、ただで貰うのは悪いから受け取ってくれよ)

 ホブゴブリンはムガルの方を振り返った。ちなみに、このやり取りはモンスター側全員に聞こえているはずだ。
 ムガルがうなずいたのを見て、ホブゴブリンはこちらに向き直る。

(それではありがたくいただきます。先にどうぞこちらを……)
(ありがとな)

 花を受け取ってこちらの物を差し出す。それから花を眺めた。
 ティナに良く似合いそうで、瑞々しい生命の輝きからは何か不思議な力を感じることができる。
 これを見ているとなんとなくだけど、世界樹がただの巨木じゃないような気もしてくるな。

 とにかく贈り物も入手できたので、あとやるべきことは一つだ。キースとマイアーの方を向いて口を開く。

「よし、それじゃあすぐにでもティナたちと合流したい。やってもらえるか?」
「ああ。私のことをこの場でお兄ちゃんと呼んでくれればすぐにでも可能だ」
「わかった、じゃあ歩いていくわ。またな」

 急ごうと通路に向かって駆け出すと、後ろから肩を掴まれた。

「嘘だよジン。いいからお兄ちゃんに任せなさい。というか任せてください」
「悪いけど本当に急ぎだから、頼むぜ」
「かしこまりました。マイアー」

 そう言ってキースが視線を寄越すと、マイアーは瞑目する。「マップ」を発動して地図を確認しているのだろう。
 それが終わると目を開いてキースに必要な情報と座標を告げた。情報は俺も頭に入れておく。

 スキル発動の準備をしながらキースが口を開く。

「よしいくぞ。ジン、準備はいいか?」
「ああ。じゃあムガルとその部下たち、またな」
「キキーッ!」
「キキーッ!」
「お元気で」

 俺が片手をあげるとそのアクションで伝わったのか、ホブゴブリンたちもムガルと一緒に手を振ってくれた。
 こちらに手のひらを向けて、キースがスキル名を宣言する。

「『ワープ』」

 俺が転送される直前に見たのは、精霊たちとモンスターたちが並び立って笑顔を浮かべている、そんな平和な光景だった。
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