女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

文字の大きさ
87 / 207
伝説の武器編 後編 ドキッ! 男だらけの試練の迷宮

世界樹の花

しおりを挟む
 そんな感じで雑談を交わしながら奥に向かい、途中で見つけた部屋に寄り道をする形で探索をしていった。
 そして何個目かの部屋を見付けた時のことだ。

 ついに宝箱を発見することに成功し、今まさにそれを開けようとしていた。
 
 ここでの俺たちの並びは宝箱に向かって右からキース、俺、マイアー。俺が真ん中で宝箱の正面にいる。
 で、俺の真後ろにムガルがいて、丁度ムガルを頂点にした下向きの三角を描くような配置だ。
 そしてムガルの真後ろにはこの部屋唯一の出入り口がある。

 宝箱を目の前にした俺は生唾を飲み、はやる心を抑えながら口を開いた。

「よ、よ~し、開けるぞ……」
「ジン、お兄ちゃんは応援してるからなっ」
「何をだよ」

 ため息まじりにそう言いながら宝箱に手をかけて開く。
 すると宝箱には牙がついていて、中にはアイテムの代わりに眼が見えている。
 宝箱に擬態する「イベントモンスター」の一種、ミミックだ。

 ミミックは真っ先に俺に襲いかかってきた。
 俺は身体を後ろに倒しながら、飛んできたミミックを下から蹴り上げるようにして後方に飛ばす。
 するとちょうどムガルの目の前にお届けする形になる。

 俺はほぼ寝そべった姿勢のままで叫んだ。

「ムガル! 頼んだぜ!」
「わわっ、『せいけんづき』っ!!」

 慌てながらもとっさに放たれたその技は恐ろしいほどに鋭い。
 拳がめり込むと同時に、ミミックは部屋の奥の壁まで高度を落とすことなく真っすぐに飛び、光の粒子となって霧散した。

 俺は起き上がると、ムガルの方に歩み寄って声をかける。

「さすがだな」
「い、いえ、そんな……」

 と、ムガルが自信の頭をさすりながら照れた表情を見せたその時だった。

「キキーッ!」
「キキーッ!」

 ゴブリン、とは言っても通常より身体が明らかに大きいからホブゴブリンか。
 それが三体ほど部屋になだれこんできたかと思うと、まっすぐに俺の方に向かってくる。
 そんなホブゴブリンたちを見た途端に目を見開き、ムガルが叫んだ。

「君たち!」

 俺はホブゴブリンたちを攻撃してしまう可能性のあるキースを手で制した。

「キーッ!」
「キキーッ!!」

 全員が静かに見守る中、ホブゴブリンたちは揃って俺をぽかぽかと殴り始める。
 ムガルが慌てて俺に視線をやりながら口を開いた。

「あの、ジンさん、その子たちは」
「わかってる。手は出さねえよ」
「ありがとうございます」

 詳しいことはわからないけど、こいつらはムガルの知り合いってことはまず間違いないだろう。
 なぜ、どうやってここに来たのかという疑問は残るけど、知り合いでないとこんなところまでわざわざ入ってくる意味がない。

「『リジェネレート』」

 念のためHPを一定時間ごとに一定量回復する支援魔法を自分にかけておく。
 これで一定時間内でHPが赤字になることはない。つまり、このまま放置しても俺がホブゴブリンたちに倒されることはないってことだ。

 しばらく待っているとやがて攻撃は止み、ホブゴブリンたちは膝に手をついて肩で息をし始めた。
 それから体力が回復すると、ムガルと俺の間に立ち塞がるように並んでまたキーキー言い出す。すると今度は、ムガルがその後ろからウホウホ言い出した。恐らくはモンスターの言葉で会話をしているのだろう。

 俺もさすがにモンスターの言葉はわからないし、テレパシーを使っても口から出ている言葉は翻訳出来ないので黙って見守ることにした。
 キースとマイアーにもその意図は伝わっているらしく、俺と同じように腕を組んで彼らを静かに眺めてくれている。

 少しの間待つと話が終わったのか、こちらを向いてムガルが口を開く。

「この子たち、僕の部下のホブゴブリンたちなんですけど……心配になって追いかけてきてくれたみたいです。そしたらちょうどミミックと戦っているところを見たらしく、みなさんと戦闘をしていると勘違いしたみたいで」
「いい部下じゃねえか」

 俺がそう言うと、キースもいい話だなと何度かうなずいた後、しかし、と疑問を口にする。

「なぜこの場所がわかったんだ?」
「この子たちは攻撃力的に壁を破壊できませんから。僕が空けた穴から入って、通路に落ちている毛を追っかけてきたんだとか」

 毛か。言われて目を凝らしてみれば、まあわからないという程じゃない。
 俺たちより背が小さくて視界の低いホブゴブリンだから見付けられたのかもしれないな。

「専用スキルでこいつらと会話するから待っててくれ」
「わかった」

 二人に断りを入れ、キースからの返事を聞くと「テレパシー」を発動する。

(おい、聞こえるか? お前たちの目の前にいるものだけど)

 すると、どのホブゴブリンかはわからないけどすぐに反応があった。

(あ、今ムガル様からお話を伺いました。あの、失礼なことをしてしまってすいませんでした)
(気にすんな。それだけムガルが心配だったってことだろ)
(はい。もういてもたってもいられなくて、死ぬときは一緒にと思い……)

 お、重いな……とりあえず話を変えよう。

(ま、ムガルから事情の説明を受けてんなら話は早い。あんまり時間もないし、さっさと次の宝箱探しにいくから。気をつけて帰れよ)

 そう言ってキースとマイアーに視線を送って頷いてから通路に向かって歩き出そうとすると、心の声で呼び止められた。今まで会話してたやつだろうか。

(お待ちください!)
(ん、どうした?)
(贈り物をお探しでしたら、これなんていかがでしょうか)

 ホブゴブリンからこちらに向かって差し出されたのは花だった。とはいってもほとんど茎はなく、先端の部分だけだ。それに見たこともない。どんな種類の花なのか見当もつかないな。
 じっと観察していると続けて説明が入った。

(この辺りで拾ったんですけど、中々綺麗だなと思ったので)
(ふむ……)

 確かに綺麗な花だと思うけど、正直それだけじゃ贈り物としての善し悪しを判断できない。キースとマイアーにも話を聞いてみよう。
 二人を手招きして花を指差すと、キースがその花を手に取り、空いた手を顎にやりながら口を開く。

「これは世界樹の花だな」
「世界樹の花?」

 俺がそっくりそのまま聞き返すと、キースは一つうなずいてから花をホブゴブリンに差し戻しつつ答えた。

「あまりにも木が大きいので目立たないが、世界樹は幹でも枝でも、至るところに花をぽつぽつと咲かせているんだ。割と高い位置に咲いていることが多いから、こういった形でも手に入ること自体が珍しい」
「でもこんなんじゃすぐに枯れちまいそうだな」
「それがそうでもないんだ。ジンも知っているとは思うが、世界樹はただの巨木とはいえ微量な魔力が宿っている。その影響なのか、この花はこうして木から離れても枯れることなく瑞々しい姿を保ち続けるのだそうだ」
「ほ~ん」

 すげー強い風とかが吹いてこの辺まで落ちて来たのかな。とにかくこのホブゴブリンの強運に感謝だ。とはいっても、まだ肝心なことを聞いていない。
 知識を語り終えて少しすっきりしたような表情をしているキースに尋ねた。

「で、結局これは贈り物としてはどうなんだ?」
「悪くはないと思うぞ。少なくともこのダンジョン内では、贈り物としてこれよりいいものは中々見つからないだろうな」
「そんなにかよ」
「まあ特にお守りとしての効果などがあるわけではないが、ただでさえ貴重なもので綺麗だし、枯れないしな。お兄ちゃんもたまたま手に入れたらその時付き合ってる女に渡したりするぞ」
「別にそこまでは聞いてない」

 自慢げに語るキースに相槌をうってから少し考えてみる。
 うん。まあクソ野郎ではあるけど女心を知る生物のお墨付きだし、これに決めるか。時間も惜しいしな。
 もう一度ホブゴブリンに向き直って心の声に会話を切り替えた。

(じゃあそれを貰おうかな。そうだな、お前らは実用的なものの方がいいだろうから……これでどうだ?)

 やくそうやレイナルド用のおやつやら、持っていたものをごそっと取り出して差し出す。
 するとホブゴブリンは驚いた様子でぶんぶんと手を横に振った。

(いえいえ、そんなの貰えませんよ! これはその、失礼をしたことのお詫びや私たちを生かしてくださったことへのお礼のようなものですので)
(そんなのお詫びやお礼をされるほどのものでもないから。それより貴重なものみたいだし、ただで貰うのは悪いから受け取ってくれよ)

 ホブゴブリンはムガルの方を振り返った。ちなみに、このやり取りはモンスター側全員に聞こえているはずだ。
 ムガルがうなずいたのを見て、ホブゴブリンはこちらに向き直る。

(それではありがたくいただきます。先にどうぞこちらを……)
(ありがとな)

 花を受け取ってこちらの物を差し出す。それから花を眺めた。
 ティナに良く似合いそうで、瑞々しい生命の輝きからは何か不思議な力を感じることができる。
 これを見ているとなんとなくだけど、世界樹がただの巨木じゃないような気もしてくるな。

 とにかく贈り物も入手できたので、あとやるべきことは一つだ。キースとマイアーの方を向いて口を開く。

「よし、それじゃあすぐにでもティナたちと合流したい。やってもらえるか?」
「ああ。私のことをこの場でお兄ちゃんと呼んでくれればすぐにでも可能だ」
「わかった、じゃあ歩いていくわ。またな」

 急ごうと通路に向かって駆け出すと、後ろから肩を掴まれた。

「嘘だよジン。いいからお兄ちゃんに任せなさい。というか任せてください」
「悪いけど本当に急ぎだから、頼むぜ」
「かしこまりました。マイアー」

 そう言ってキースが視線を寄越すと、マイアーは瞑目する。「マップ」を発動して地図を確認しているのだろう。
 それが終わると目を開いてキースに必要な情報と座標を告げた。情報は俺も頭に入れておく。

 スキル発動の準備をしながらキースが口を開く。

「よしいくぞ。ジン、準備はいいか?」
「ああ。じゃあムガルとその部下たち、またな」
「キキーッ!」
「キキーッ!」
「お元気で」

 俺が片手をあげるとそのアクションで伝わったのか、ホブゴブリンたちもムガルと一緒に手を振ってくれた。
 こちらに手のひらを向けて、キースがスキル名を宣言する。

「『ワープ』」

 俺が転送される直前に見たのは、精霊たちとモンスターたちが並び立って笑顔を浮かべている、そんな平和な光景だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...