女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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不死鳥との契約編 前編 ゴバンまったり道中記

ラッドとロザリアの帰還

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 ティナ、エリスの三人で過ごす日々を送っていると、ラッドとロザリアがようやくミツメに帰ってきた。
 その日は王女としての仕事でエリスが不在ということもあり、久々にあの店で食事をしながら今後についての会議をすることになった。

 こういう場所では大体先陣を切りたがるラッドがまず店に入り、それに俺たちが続いていく。
 相変わらずなベルの音と、店員の慎ましやかな挨拶に出迎えられる。

 少し歩いたところで店員がこちらに来て話しかけてきた。

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「四名だ。席はいつものところで頼むよ」
「かしこまりました。それではこちらのお席へどうぞ」

 そう言って奥のテーブル席へ案内された。
 ちなみにここに来たのは久しぶりだしそもそもラッドが同じ席を使い続けたかどうかも怪しいので、今のは店員にさらりと流された形だ。

 ここはラッドとロザリアと初めて会った日に訪れた店。
 初心に帰るとかそんなわけでもないけど、何となく今日はここで話し合いをしたい気分だった。
 横並びに俺とラッド、向かいにティナとロザリアといういつもの配置で席に着いて料理を注文すると、早速ラッドがミツメへ帰るのが遅くなったことを詫びる。

「すまないね。遅くなってしまって」
「別にいいけどよ、何かあったのか?」
「いや特には。ただ僕たちが勇者パーティーの一員になったという噂を聞きつけた親戚が一堂に実家に会してしまってね。報告が終わるとすぐに盛大な歓迎パーティーが催されてしまったのさ」
「そういうことばっかやってっから金がなくなるんじゃねえの?」
「うむ。貴族というのはそういうものなのさ」

 珍しく真面目な口調で、ため息まじりにそう答えるラッド。
 もしかしたら実家や貴族の在り方について思うところがあるのかもしれないな。
 とはいっても本人も慣れたものだからか、話題はすぐに切り替わった。

「それで、そっちの方はうまくいったのかい?」
「ああ。ばっちり伝説の武器とやらを入手してきたぜ」
「これ」

 ティナがそうつぶやきながら、剣の柄をごとっとテーブルの上に置く。
 ラッドはそれに訝し気な視線を送りながら口を開いた。

「これが伝説の武器、なのかい?」
「そうだ。まあ気持ちはわかるけど、使うところを見れば納得すると思うぜ」
「えっとね……」

 そこでティナからラッドとロザリアへと、『ゆうしゃのつるぎ』の概要とこの剣の柄がそれを強化する道具であることが説明される。
 すると感心したようにラッドが頷きながら口を開く。

「別に疑っていたわけではないんだけれど……本当に勇者なんだねえ」
「勇者専用スキルが使えるということは、王女様から認められる以前に神様から選ばれていたということですものね」

 と、ロザリアも続けて驚きの言葉を述べた。
 俺は最初から知ってたぜ! とか言ってみたいけどそこは我慢だ。

「そ、そうみたい……だね」

 ティナはどこか照れくさそうに俯いて顔を赤らめていた。
 その仕草に思わず告白しそうになっていると料理が到着。早くね? 合わせて注文していた飲み物も運ばれてくる。
 そのグラスを手に取って掲げると、ラッドが口を開いた。

「それじゃあ今日は、久々の仲間との再会と、ティナが本当に神から選ばれた勇者だったことと、そして僕たちのこれからに乾杯だね」
「多いなおい」

 いつものラッドに対する茶々だけど、今日はどこか違う気分でそれを言った。
 なんていうか、からかい半分、感謝半分、みたいな。ティナを勇者として歓迎してくれたことがどこか嬉しかったのかもしれない。
 でもこいつに素直に礼を言うのは癪なのでこっそりとつぶやく。

「……ありがとな」
「ん? 何か言ったかい?」
「いや、別に」
「そうかい。それじゃ乾杯!」
「「「かんぱ~い!」」」

 みんながそれぞれに飲み物の入ったグラスを掲げ、お洒落な店内の雰囲気に似合わない賑やかな声で乾杯をした。



「それじゃあこれからの予定を確認しようか」

 乾杯をしてから数分後。一通り飯を食い終わった俺たちは、次に今後の予定を確認していくことにした。
 俺はティナの方を振り向いて口を開く。

「じゃあそれはティナから聞いた方がいい、よな」
「ん」

 ティナは一つうなずいてから喋り始める。

「お店に来るまでにも歩きながら話したけど、このさっきの剣の柄を賜る際にソフィア様にお会いできて、色々教えていただいたの。その時に、次に私たちが目指すべきなのはムコウノ山だっておっしゃってたの」
「ムコウノ山……」

 ラッドがいまいち感情の読めない声でそうつぶやいた。視線で続きを促すと、慌てたように手を振りながら言う。

「ああ、すまない。あの山にそんな変わったものがあるとは聞かないな、とね。続きを話してもらえるかな」
「ソフィア様はそこでね、不死鳥と契約をしてくださいって」
「不死鳥? なんだいそれは」
「魔王城は険しい山に囲まれた場所にあって陸路も海路も無理だから、不死鳥と契約して空から行くんだって」
「へえ。それは知らなかったな」

 ラッドが知らないってことはロザリアも知らないんだろうな。
 俺もそうなんだけど、それは単にシナリオ関連にほとんど興味がなかったからってだけで、精霊として常識って可能性は高い。
 そこで一旦会話が区切られたと見て、間を置いてからロザリアが口を開いた。

「ムコウノ山で不死鳥と契約、他には何かおっしゃっていなかった?」

 優しい声音で聞かれて、ティナは少し斜め上に視線を彷徨わせて「あっ」といって喋り始める。

「ムコウノ山まで行く途中にドワーフの里っていうのがあるから、そこで伝説の防具を作ってもらいなさいっておっしゃってたかな」
「ドワーフたちが代々勇者の装備を作っているというのは有名な話だね。彼らは言葉は荒っぽいけどとても気さくでいい人たちだから、頼めば応じてくれそうだ」

 またラッドが自分の知識を披露しはじめた。
 俺は仲間だし慣れたからいいけど、普通の人間からしたらこういうのってうざいんじゃないのかな、とか思ってしまう。
 ティナは少しだけ首を傾げながら言葉を返した。

「そうなの?」
「ああ。まあ念の為お酒なんかを持っていけば断られることはないさ。とにかく酒とどんちゃん騒ぎの好きな人たちだからね」
「へえ~何だか楽しそう」

 ドワーフに興味ありげなティナ。もし生まれ変われるのならドワーフになろうと思った。

「ま、そういうことならよ。今日はこれから酒でも買いに行くか」
「すまない、僕とロザリアは用事があってね。それはティナと二人で、二人で! 行ってきてくれないかい?」
「…………」
「…………」

 俺とラッドは無言でにらみ合う。
 言葉こそ発されてはいないものの、俺が「また余計な気を回してんじゃねえよ」と視線で伝えると、ラッドは「何を言っているんだい、余計な気なんかじゃないだろう。というかあれから何か進展はあったのかい?」と視線で伝えてくる。

 あえて視線を外すことで「まあ、前よりは仲良くなったとは思うけど。て、手とかばかやろぉ! そんなもんはまだに決まってんだろばかやろぉ!」と伝えた。
 するとラッドは空気で「やれやれ、手を繋ぐってのは最初の一歩に過ぎないのにここまで手こずるなんて先が思いやられるねえ」って伝えて来てるかどうかは知らんけどそう言ってる感じがする。
 ティナとロザリアはその間無言を貫き通していた。

 視線をラッドに戻すと、こちらを見てにやりと不敵に笑っていた。俺は観念したようにため息をついてから口を開く。

「まあ、必要なもんの買い出しはこっちでやっとくからよ。お前らはせいぜいその用事とやらを二人で!!!! ゆっくりと楽しんでこいよ」

 二人で、をめっちゃ強調していったらラッドの身体が一瞬跳ねた。結構びびってくれたらしい。
 ロザリアが朱に染まった頬に手を当てながら口を開く。

「まあジン君ったら。それではラッド様、せっかくですからお言葉に甘えてよろしくさせていただこうではありませんか」
「そうだね。君たちも、せいぜいよろしくやってくれたまえ」
「おうよ、望むところだ!」

 俺が勢いよく返すと、それを聞いたティナがもじもじしながら顔を赤らめ、上目遣いでこちらを見つつ聞いてきた。

「えっ……の、望むところなの?」
「あっ、いや、今のは勢いで……」

 目を逸らすと、ラッドとロザリアがにやにやにこにこと俺たちを眺めていた。
 俺ははめられたのか……。
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