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不死鳥との契約編 前編 ゴバンまったり道中記
酒の買い出し
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翌日。決まった通り、俺はティナと酒やら何やらの買い出しに来ている。
もちろん荷物を持つのは俺。頼れる男だということをアピールする千載一遇のチャンスだ。
目的の店へと向かって街中を歩きながらティナに話しかける。
「必要なものだけじゃなくて、買いたいものはどんどん買っていこうぜ。どれだけ荷物が増えても全部俺が持ってやるからな」
「ええっ、普通に私も持つよ……」
「いやいやいいから俺に任せとけって。何ならティナごと持ってやるぜ」
「えっと、それはちょっと恥ずかしいかも……」
俯いて頬を赤く染めるティナを見て、俺の顔も熱くなるのを感じる。
勢いで言ってしまったけどそれもそうだな。抱っこなんてそんな大胆なことは結婚するまでやっちゃだめだ。
結婚したら一日中ティナを抱っこしたいなと考えていると目的の店に到着した。
飲み物、特に酒を中心とした飲料品店だ。そこまで広くない店内には所狭しと瓶や樽に詰められた飲み物が並んでいる。
正直どこに行けばいいかもわからないので適当にうろうろしていると、ティナが顎に人差し指を当てて、その辺の商品を眺めながら口を開く。
「お酒ってどんなのを買えばいいんだろうね?」
実は俺も酒のことはよくわからない。飲んだことないから当然だ。
かといって昨日ラッドにどんな酒を買えばいいのか聞いてみたら「そう言ったこともティナと一緒に考えてみたらいいんじゃないか?」とにやにやしながら言われて普通に殴りそうになった。
ていうかそもそもあいつって酒を飲んだことあるんだろうか……。
意識を目の前に戻すと、無難な選択をして口を開く。
「とりあえず店員にでも聞いてみるか」
店員は大体そこにいるという先入観から、カウンターの見える位置まで少しだけ歩く。
するとそこには、ひょこっともぐらみたいにぎりぎり台から顔を出せている感じの生き物がいた。
やや背の低い胴に、髭もじゃで団子鼻のついた頭が乗っている。偶然なことに店員がドワーフみたいで、宝箱を探り当てた時のような気持ちになった。
後ろからついてきていたティナと顔を見合わせると、店員を見て俺と同じ気持ちになったらしく、悪戯の成功した子供のような笑みをしていて思わず告白しそうになってしまう。
そんな気持ちをどうにか抑えながら店員に声をかけた。
「ちょっとそこの店員さん」
「へい」
ドワーフがこちらを振り向く。へいって。
「ちょっと酒について聞きたいんだけど」
「へい」
そう言うとカウンターから出てこちらまで歩いてきてくれた。
ドワーフという種族は基本的に他の人間と比べて身長が低い。だから店員が俺たちの近くまで来ると、自然と俯き気味な目線で話しかけることになる。
「ドワーフの好きそうな酒ってどういうのがあるんだ?」
「へえ。うちらは酒ならなんでもいけますぜ」
「ん~じゃあ特にこれが好き! みたいなのとかはないのか?」
すると店員はしばらく顎に手をあててむむむ、と考え込み始めた。背が低いからそうしていると顔が全く見えない。
やがて何かに思い至ったのか、店員はゆっくりと顔を上げた。
「好きってのとは違いますが、おすすめなら」
そう言ってとことこと商品が置いてある棚のうちの一つへ向かっていく。
俺たちもゆっくりとそれについていった。
目的の棚の前に到着すると、店員がある商品を手で示しながら口を開く。
「こちらの『エリス』なんておすすめですぜ」
「「『エリス』?」」
ティナと声が揃った。見てみると、瓶に巻かれた紙にはたしかに「エリス」と書かれている。
なんのこっちゃと思い、ティナと顔を見合わせて首を傾げていると、店員が説明してくれた。
「この酒は我らが王女であるエリス様がこの大地に存在していることを感謝するために造られたお酒です。国中から最高の技術を持つ酒職人を集めて造られているので味は最高なんですが、ミツメでしか手に入らんのですわ」
「な、なんだかすごいお酒なんですね……」
何だか怖いものを見たといった感じの顔をしているティナ。
酒が造られた理由が怖すぎる。なんだよ大地に存在していることを感謝って。
他にもこの大地に存在している人間はたくさんいるぞ。
とはいえその部分以外は納得だ。この商品ならまあ失敗ってことはないだろ。
「なるほどな。そういうことならこれを何本か買っていきたいんだけど、在庫はどれくらいあるんだ?」
「2328本ほど」
「なんでそんなにあるんだよ。量産できるような酒じゃねえだろ。まあいいや、じゃあ三本頼む」
「へい毎度。ちなみに、かなりきつ~い酒なんで、もしお客さん方で飲むときには気をつけて飲んでくだせえ」
棚から三本「エリス」を取ると、店員はそのままカウンターに向かう。
俺がそれについていくと、ティナもなぜかついてきてくれた。何だかこういうティナの一挙一動に、最近はどきりとさせられてしまう。
会計を済ませると、店員に挨拶と礼をしてから踵を返して出入り口に向かう。
「毎度。里の連中によろしく言っといてくだせえ」
背中越しのそんな挨拶を聞きながら店を後にした。
王城に戻るとラッドとロザリアがまだ帰っていなかったので、何となく二人でエリスの部屋に向かう。
部屋に到着し、扉を叩きながら先に名乗りをあげた。
「おーいエリスー、ティナと遊びに来てやったぞ~」
たまたま通りかかった兵士が俺の背後から「このいやしんぼがっ!」という声を飛ばしてきた。いやいや、肩車もなにもしてなくてもそれ言われるのかよ。
ティナが口に手を添えてくすくすと笑いながら「人気者だね」とか言っている。いやいや。
念のために扉から一歩下がって待っていると、扉がゆっくりと開いた。そしてその先には、エリスが偉そうに腰に手を当てて立っている。
エリスは、こちらがティナと一緒の時には扉をそっと開ける傾向にあるのだ。
「入りなさい」
促されて中に入ると、ティナが先にテーブルの椅子に座った。俺もすすっとそれに一番近い椅子に座ると、エリスがこっちに寄ってきて不機嫌そうに口を開く。
「そこは私の席よ。あんたは床にでも座ったら?」
俺も座っといてなんだけどティナの近くの席人気ありすぎだろ。
椅子は他にもあるだろうが何を生意気な、といつも通りのやり取りが始まりそうになる前にふと考えてみた。
俺は座れるなら床でも椅子でも大したこだわりはない。ならここは床に座った方が無駄な争いを起こすことなくティナの近くに座れるんじゃないのか?
そう思った俺は立ち上がり、今まで座っていた椅子とティナの間くらいの位置の床に座った。
ティナは驚いた表情で、エリスは何か家畜とかを見る目で俺を見ている。
「……あんたはそれでいいの?」
「おう」
「椅子に座りなよ……」
さすがにやや引き気味のティナ。何とも言えない微妙な空気の中、そこから少しの間静寂が訪れる。
やがて何かを諦めたようにため息をつくと、エリスもさっきまで俺が座っていた椅子に腰かけた。
これで俺は椅子に座ったティナとエリスに挟まれる形になる。そこで俺はさっき買った酒を取り出し、高く掲げてから口を開く。
「そうだエリス、これ見ろよ。お前が存在することを感謝するための酒だってよ」
「知ってるけど……何でそんなもの買ってきたのよ」
まあ、そりゃあ知らないはずもないか。
ちょっとだけつまんねえなと思いながら返事をする。
「今度ドワーフの里に行くからよ、これを手土産に……」
「えっ。ドワーフの里?」
エリスが目を見開いてつぶやく。しまった、まだ次の旅に関しては話してないんだったか。
ティナが何てことをしてくれたんだみたいな目でこちらを見ている。
この状況をどうしようかと思案する間にも、無情に時は進んでいく。
「また旅に出るの……?」
ティナを見つめながら涙目になり、声も尻すぼみになっていくエリス。もういつ
泣いてもおかしくない状況だ。
ティナは慌てて椅子から立ち上がるとエリスの元まで歩み寄り、膝を折って話しかける。
「そうなの。言うの遅くなっちゃってごめんね」
「…………」
これまでの流れで一緒に行けないことを理解しているからか、エリスは何も言わずに泣き出してしまった。
こういう場に俺がいてはまずいかもしれない。目線と手だけを使って謝ると、ティナは微笑みながらうなずく。
それを確認した俺は、音を立てずにこっそり部屋から出ていくのであった。
もちろん荷物を持つのは俺。頼れる男だということをアピールする千載一遇のチャンスだ。
目的の店へと向かって街中を歩きながらティナに話しかける。
「必要なものだけじゃなくて、買いたいものはどんどん買っていこうぜ。どれだけ荷物が増えても全部俺が持ってやるからな」
「ええっ、普通に私も持つよ……」
「いやいやいいから俺に任せとけって。何ならティナごと持ってやるぜ」
「えっと、それはちょっと恥ずかしいかも……」
俯いて頬を赤く染めるティナを見て、俺の顔も熱くなるのを感じる。
勢いで言ってしまったけどそれもそうだな。抱っこなんてそんな大胆なことは結婚するまでやっちゃだめだ。
結婚したら一日中ティナを抱っこしたいなと考えていると目的の店に到着した。
飲み物、特に酒を中心とした飲料品店だ。そこまで広くない店内には所狭しと瓶や樽に詰められた飲み物が並んでいる。
正直どこに行けばいいかもわからないので適当にうろうろしていると、ティナが顎に人差し指を当てて、その辺の商品を眺めながら口を開く。
「お酒ってどんなのを買えばいいんだろうね?」
実は俺も酒のことはよくわからない。飲んだことないから当然だ。
かといって昨日ラッドにどんな酒を買えばいいのか聞いてみたら「そう言ったこともティナと一緒に考えてみたらいいんじゃないか?」とにやにやしながら言われて普通に殴りそうになった。
ていうかそもそもあいつって酒を飲んだことあるんだろうか……。
意識を目の前に戻すと、無難な選択をして口を開く。
「とりあえず店員にでも聞いてみるか」
店員は大体そこにいるという先入観から、カウンターの見える位置まで少しだけ歩く。
するとそこには、ひょこっともぐらみたいにぎりぎり台から顔を出せている感じの生き物がいた。
やや背の低い胴に、髭もじゃで団子鼻のついた頭が乗っている。偶然なことに店員がドワーフみたいで、宝箱を探り当てた時のような気持ちになった。
後ろからついてきていたティナと顔を見合わせると、店員を見て俺と同じ気持ちになったらしく、悪戯の成功した子供のような笑みをしていて思わず告白しそうになってしまう。
そんな気持ちをどうにか抑えながら店員に声をかけた。
「ちょっとそこの店員さん」
「へい」
ドワーフがこちらを振り向く。へいって。
「ちょっと酒について聞きたいんだけど」
「へい」
そう言うとカウンターから出てこちらまで歩いてきてくれた。
ドワーフという種族は基本的に他の人間と比べて身長が低い。だから店員が俺たちの近くまで来ると、自然と俯き気味な目線で話しかけることになる。
「ドワーフの好きそうな酒ってどういうのがあるんだ?」
「へえ。うちらは酒ならなんでもいけますぜ」
「ん~じゃあ特にこれが好き! みたいなのとかはないのか?」
すると店員はしばらく顎に手をあててむむむ、と考え込み始めた。背が低いからそうしていると顔が全く見えない。
やがて何かに思い至ったのか、店員はゆっくりと顔を上げた。
「好きってのとは違いますが、おすすめなら」
そう言ってとことこと商品が置いてある棚のうちの一つへ向かっていく。
俺たちもゆっくりとそれについていった。
目的の棚の前に到着すると、店員がある商品を手で示しながら口を開く。
「こちらの『エリス』なんておすすめですぜ」
「「『エリス』?」」
ティナと声が揃った。見てみると、瓶に巻かれた紙にはたしかに「エリス」と書かれている。
なんのこっちゃと思い、ティナと顔を見合わせて首を傾げていると、店員が説明してくれた。
「この酒は我らが王女であるエリス様がこの大地に存在していることを感謝するために造られたお酒です。国中から最高の技術を持つ酒職人を集めて造られているので味は最高なんですが、ミツメでしか手に入らんのですわ」
「な、なんだかすごいお酒なんですね……」
何だか怖いものを見たといった感じの顔をしているティナ。
酒が造られた理由が怖すぎる。なんだよ大地に存在していることを感謝って。
他にもこの大地に存在している人間はたくさんいるぞ。
とはいえその部分以外は納得だ。この商品ならまあ失敗ってことはないだろ。
「なるほどな。そういうことならこれを何本か買っていきたいんだけど、在庫はどれくらいあるんだ?」
「2328本ほど」
「なんでそんなにあるんだよ。量産できるような酒じゃねえだろ。まあいいや、じゃあ三本頼む」
「へい毎度。ちなみに、かなりきつ~い酒なんで、もしお客さん方で飲むときには気をつけて飲んでくだせえ」
棚から三本「エリス」を取ると、店員はそのままカウンターに向かう。
俺がそれについていくと、ティナもなぜかついてきてくれた。何だかこういうティナの一挙一動に、最近はどきりとさせられてしまう。
会計を済ませると、店員に挨拶と礼をしてから踵を返して出入り口に向かう。
「毎度。里の連中によろしく言っといてくだせえ」
背中越しのそんな挨拶を聞きながら店を後にした。
王城に戻るとラッドとロザリアがまだ帰っていなかったので、何となく二人でエリスの部屋に向かう。
部屋に到着し、扉を叩きながら先に名乗りをあげた。
「おーいエリスー、ティナと遊びに来てやったぞ~」
たまたま通りかかった兵士が俺の背後から「このいやしんぼがっ!」という声を飛ばしてきた。いやいや、肩車もなにもしてなくてもそれ言われるのかよ。
ティナが口に手を添えてくすくすと笑いながら「人気者だね」とか言っている。いやいや。
念のために扉から一歩下がって待っていると、扉がゆっくりと開いた。そしてその先には、エリスが偉そうに腰に手を当てて立っている。
エリスは、こちらがティナと一緒の時には扉をそっと開ける傾向にあるのだ。
「入りなさい」
促されて中に入ると、ティナが先にテーブルの椅子に座った。俺もすすっとそれに一番近い椅子に座ると、エリスがこっちに寄ってきて不機嫌そうに口を開く。
「そこは私の席よ。あんたは床にでも座ったら?」
俺も座っといてなんだけどティナの近くの席人気ありすぎだろ。
椅子は他にもあるだろうが何を生意気な、といつも通りのやり取りが始まりそうになる前にふと考えてみた。
俺は座れるなら床でも椅子でも大したこだわりはない。ならここは床に座った方が無駄な争いを起こすことなくティナの近くに座れるんじゃないのか?
そう思った俺は立ち上がり、今まで座っていた椅子とティナの間くらいの位置の床に座った。
ティナは驚いた表情で、エリスは何か家畜とかを見る目で俺を見ている。
「……あんたはそれでいいの?」
「おう」
「椅子に座りなよ……」
さすがにやや引き気味のティナ。何とも言えない微妙な空気の中、そこから少しの間静寂が訪れる。
やがて何かを諦めたようにため息をつくと、エリスもさっきまで俺が座っていた椅子に腰かけた。
これで俺は椅子に座ったティナとエリスに挟まれる形になる。そこで俺はさっき買った酒を取り出し、高く掲げてから口を開く。
「そうだエリス、これ見ろよ。お前が存在することを感謝するための酒だってよ」
「知ってるけど……何でそんなもの買ってきたのよ」
まあ、そりゃあ知らないはずもないか。
ちょっとだけつまんねえなと思いながら返事をする。
「今度ドワーフの里に行くからよ、これを手土産に……」
「えっ。ドワーフの里?」
エリスが目を見開いてつぶやく。しまった、まだ次の旅に関しては話してないんだったか。
ティナが何てことをしてくれたんだみたいな目でこちらを見ている。
この状況をどうしようかと思案する間にも、無情に時は進んでいく。
「また旅に出るの……?」
ティナを見つめながら涙目になり、声も尻すぼみになっていくエリス。もういつ
泣いてもおかしくない状況だ。
ティナは慌てて椅子から立ち上がるとエリスの元まで歩み寄り、膝を折って話しかける。
「そうなの。言うの遅くなっちゃってごめんね」
「…………」
これまでの流れで一緒に行けないことを理解しているからか、エリスは何も言わずに泣き出してしまった。
こういう場に俺がいてはまずいかもしれない。目線と手だけを使って謝ると、ティナは微笑みながらうなずく。
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