女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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世界の真実編 前編 世界の真実とそれぞれの「これから」

兄貴、再来

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 正面出入り口から出て街から離れること少し。
 ゲートを使えばその時その時で街の出入り口付近の人気のないところに出るはずなので、この辺で待っておけば大丈夫だと思う。
 ちなみにこのゲートっつうのは無駄に優秀で、精霊は人間として判定されない。

 そんなことを考えていると。

「ジイイイイイイィィィィィィン!!」

 声がした瞬間に背後に向けて回し蹴りを繰り出すも、見事に空を切る。どこだ、と思い周囲を見渡すと、エアとキースが普通に正面に立っていた。
 呆れ顔なエアがいつもの台詞を吐く。

「何をやっているのだお前は」
「お兄ちゃんだってな、いつも頬ずりばっかりするわけじゃないぞ! ただこうやって会うだけでもジン成分の補充は可能だ!」
「知らねえよ」

 立ち話もなんだけど、ティナたちの目に触れるとキースが俺の兄であることを説明しないといけない。それは俺が嫌だったので、キースの「テレポート」でどこかよく知らない街へと移動した。
 この「テレポート」はダンサーズ専用スキルじゃないから人間でも使ってるやつがいる。「ワープ」との違いは、座標指定等移動先の情報が必要ないことだ。術者が一度行ったことのある街ならほぼ制限無しで転移できるらしい。
 
 そう言えば、結局ティナたちは誰も「テレポート」を使えるようにならなかったな。まあ、それはそれで味のある旅が出来たから俺は楽しかったけど。

 キースに連れられてやって来たのは、そんなに人は多くないけど宿屋や武器防具屋、道具屋や食料品店喫茶店と、必要な施設が一通り揃っている街だった。雰囲気的にはどこかトチュウノ町に似ている。
 歩道がきっちりと整備されているということはなく、どちらかと言えば空き地にぽつぽつと建物を建てた感じなのもそうだ。
 昼時にも関わらずそんなに人通りは多くない。特に苦労することもなく目的の喫茶店にたどり着いた。

 適当に空いているテーブル席を見つけて座る。俺の正面にキースがいて、その隣にエアだ。
 窓から差し込む陽光に照らされて、キースの金髪とエアの水色の髪が眩しいほどにその存在感を示す。二人とも肌は色白く、黙っていればただの変人だってことを忘れてしまいそうなくらいにはモテそうだ。

 何かこいつらと座ってると負けた気になるな、と思っているとキースがおもむろに口を開いた。

「ジン。二人ともかっこいいな、モテそうだな、とか思っているな?」
「こいつらと座ってると俺の存在ってものがよくわからなくなるな……とも思っていそうですね」
「お前らいきなり人の心を読もうとしてんじゃねえよ」

 しかも半分くらい合ってるのが余計に鬱陶しい。
 しまった、エアはシックスに居てもらった方がよかったな。こいつら二人揃うと割とめんどくさいぞ。
 キースを連れてきてもらった手前、そんなことは言えないんだけど。

 余計にめんどくさくなる前にさっさと話を切り出すことにした。

「ティナに気持ちを伝えたいんだけど、どう伝えればいいと思う?」
「…………」

 キースはテーブルに肘をついて手を組んだまま、こちらを真顔で見つめている。

「……え? 普通に『好きだ』とかじゃだめなのか?」
「恥ずかしくてそんなことは言えねえよばかやろぉ、らしいですよ」
「な、何だと……」

 エアから説明を受けたキースは愕然とした表情になって、いきなり椅子から立ち上がった。
 そして、わなわなと手を震わせながら口を開く。

「可愛すぎか……」
「おい」

 がばっと天井を仰ぎ見ながら叫ぶキース。

「好きだ、が恥ずかしくて言えないとか! 俺はどうしたらいいんだ! あまりの可愛さに悶えすぎてお兄ちゃん死んじゃうぞ!」
「うるせえよ! いいから座れ!」

 店内にいる数少ない客の注目を軒並み集めてしまっている。くそっ、やっぱりこいつに相談したのは失敗だったか。
 顔が熱くなるのを感じていると、キースはもう一度席に座って手を組んでから話を切り出した。

「まあジンが可愛いのは今に始まった話ではない。『やっぱりこいつに相談したのは失敗だったな』とか思われているだろうから、先に結論を言おう」

 何で俺の考えてることがこいつらにいちいちばれてんだ? もしかして顔に出てたりすんのか。
 もったいぶるような間を空けてからキースは続けた。

「やはり好きだ、と言うしかないと思うぞ」
「ですね」
「だ、だからそんなの恥ずかしくて言えねえって……」

 キースがいつになく真剣な表情で俺の言葉を遮る。

「そうは言うがなジン、自分の気持ちを伝えるのに恥ずかしくないわけがないだろう。どうあっても告白というのは勇気がいるものだ。言ってみれば好きな人の前で裸になるようなものなのだからな」
「キース隊長、裸になるのはさすがにやり過ぎかと。たしかに多少興奮はしますが初心者にはあまりおすすめ出来ません」

 初心者って何だよ。

「例え話だ馬鹿者……ん? エア君にはそういう性癖があるのか」
「否定はしませんが」
「おい待て、話が逸れてるしその話はそれ以上聞きたくない」

 好きだ、みたいな直球な言葉を使うのは避けては通れない道ってわけか。たしかにキースの言う通りなのかもしれない。
 目を伏せて考え込んでいる俺をどう捉えたのか、キースは更に言葉を付け足す。

「まあ本当にどうやっても好きだ、と言えないのなら言葉を少しくらいは考えるのもいいかもしれないが……凝り過ぎると逆に気持ち悪くなったりして失敗するし、勇気がいることにも変わりはない。ジン、頑張れ」

 こいつはたまに本当の兄貴みたいな顔をするよな。いや、正真正銘の兄貴ではあるんだけど普段が気持ち悪すぎるから。
 俺は一つうなずくと、顔が熱くなるのを感じながら確認の為に使おうと思っている台詞を口にしてみた。

「そうだな、そうする。でさ……ずっ、ずっと一緒にいて欲しい、とかにしようと思ってるんだけど、どう」
「何だと!? お兄ちゃんに一緒にいて欲しいのか!? 任せろ!!!!」
「お前じゃねえよ!」

 立ち上がってまたも大声をあげてしまい、周囲の視線が自分たちに集中する。謝罪の言葉を振りまきながら座るとキースが言った。

「それで、決行はいつにするんだ? お兄ちゃんも影から見守りたいから教えてほしい」
「魔王との決戦前に言うとなると今日の夜しかなさそうだけどお前は来んな」
「それがいいだろう。見たところ、ティナは魔王城の地図分くらいのメダルなら今日中にでも稼いでしまいそうだったからな」

 会話に入ってきたエアは、いつの間に注文したのかわからないパンケーキをむしゃむしゃと食っている。俺もキースもパンケーキにはあえて触れない。
 そこでキースが訝し気な視線を俺に送ってくる。

「ん、魔王城の地図? 何でまたそんなものを」
「いや、魔王城の中が一本道ってのはこっちに来てから知ったんだよ。だからティナたちを止めるわけにもいかなくてさ」
「何だそれは……ジン可愛すぎか」
「うるせえよ」

 とはいえ今日は助けられた。時間的にもそこそこ経ったし、礼だけ言ってシックスに送ってもらおう。

「キースにエア、今日はありがとな。散歩って言って出てきたし、そろそろ戻りたいから送ってくれ」
「お兄ちゃんに任せなさい」

 そう言って全員で立ち上がり、カウンターで代金を払って街の外へ出てから「テレポート」でシックス周辺の草原地帯へと戻ってきた。
 キースの方を振り返って挨拶をしようと片手をあげて口を開く。

「それじゃまたなキース。魔王を倒したら会おうぜ」

 するとキースは、一瞬時が止まったみたいに固まってから言った。

「どういうことだ?」
「どういう、って……お前はこの後天界に帰るだろ」
「いや帰らないが」
「何でだよ」
「最愛の弟の貴重な告白シーンが見られるというのに、わざわざ帰る兄なんていると思うか?」
「そこは帰ってくれよ、頼むから」

 告白する時に陰ながら兄も同伴とか悪い意味で一生記憶に残ってしまう。とはいえ本気を出したこいつを誰も止めることができないのも事実。
 鼻息荒く目を輝かせてこちらを見るキースに観念し、一つため息をつく。

「わかったよ。けど、ここからは別行動の方がいいだろ。俺の動きはエアから聞いてくれ……それと、近くにいることが絶対にばれないようにしてくれよ」

 そう頼むと、キースはエアの両肩をがっしりと掴んで目を合わせた。

「エア君、今日から私と君は運命共同体だ」
「それはないです」
「そこは嫌なのかよ」
「ならとりあえずはジンの告白を見守るまでの共同戦線といこうじゃないか」
「共同の部分が嫌です」

 いや、お前ら案外いいペアだと思うぞと、そんな言葉を差し込むようなことはせずに踵を返し、シックスに向かって歩み始めた。
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