女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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世界の真実編 後編 突撃!魔王城

突撃!魔王城

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 わかってはいたけど魔王城は結構近かった。ていうか何ならまだぎりぎりでルーカスが見えている。
 まずは高度を落とさずに上空から様子を窺うことにした。

「何にもいねえな」
「ですわね。見張りの一人くらいいても良さそうですのに」

 俺の左に並んで眼下の景色を眺めながら、ロザリアがそう言った。
 ちなみにラッドは今回移動距離が短いから眠らせてはいないけど、やはり怖いらしく後ろで縮こまっている。
 屋上には見張りの姿は見えず、簡単に着地出来そうだ。

「よし、みんな準備はいいか?」
「う、うむ。むしろ早く下りて欲しいねえ」
「大丈夫ですわ」
「…………」

 返事がないのでふと横を見た。ティナは俯いて固まったまま返事をしてくれる気配がない。頬を赤く染めての真剣な表情で、口を引き結んでいる。
 どうしたものかわからず、ティナに近付いて少し離れたところで顔を覗き込みながら声をかけた。

「おーい、ティナ」
「っ!!??」

 ティナは後ろに飛びのき、顔を更に赤くして叫ぶ。

「きゅきゅ、急に何!? ジン君の変態!!」
「へん……!?」

 ショック過ぎて言葉を失ってしまった。でもティナにそう言われると自分でもかなりの変態のような気がしてくるから不思議だ。
 するといつの間に忍び寄ったのか、背後から声が聞こえてきた。

「今のはジン君が悪いですわ。せっかく、ティナちゃんは恥ずかしがっているとあらかじめ教えておいてあげましたのに」
「お、おう。何かごめん」
『おい、準備はいいのか? 人を待たせておいてまたイチャイ』
「おう! もういいから! 早く下りてくれ!」
『いいぞ……』

 これ以上ティナを刺激するようなことを言われたらかなわないので、慌てて不自然にフェニックスの言葉を遮ったものの、いつもの快諾っぷりによって話が流れて事なきを得た。
 
 そこまで高度を上げてなかったのですぐに魔王城の屋上へと着地し、各自で周囲を警戒しながらフェニックスから下りていく。
 目の前には小さい部屋のようなものがある。地図通りならここに階段があって、城の中へ入れるようになっているはずだ。
 
 俺たちはその部屋の前で輪になった。
 最近こういう時に場を仕切るのはティナの役目だったんだけど、何だか今はあまり喋らないので俺が代わりをやることにする。

「じゃ、乗り込むぞ。これで長いようで短かった旅も終わりだ。お前ら、何か言っておくことはあるか?」
「ないね。大事なことはもうロザリアに伝えたからね」
「ですわ」

 ラッドが前髪をかきあげながら言うと、ロザリアも微笑みながらそれに続く。
 そんな二人とは対照的に浮かない顔をしているティナは、みんなから視線に気づくと顔をあげて、申し訳なさそうな表情で口を開いた。

「あの、ジン君。さっきはひどいこと言っちゃって、ごめんね」
「「「…………」」」

 何とも言えない空気が場に漂う。ていうか正直そう言われると、あの時本当に変態と思ってたんだな、と思ってちょっとへこむ。
 俺はティナが気にしなくて済むように、出来るだけ明るい表情と声音を作ったつもりで言った。

「いやいや、俺は本当に変態だしそんなに気にしなくていいぜ?」
「そうだよ。そんなの今更じゃないか」
「ですわね。今後もジン君には気を付けた方がいいと思います」

 何かラッドとロザリアも乗っかって来たけど今なら許す。
 ロザリアがティナの背後に移動して、両肩に手を置きながら声をかけた。

「それよりもティナちゃん、今は魔王を倒すことに集中しましょう。そんなことでは足元をすくわれてしまいますわ」
『そうだぞ、ティナが負けたら私も消えてしまうのだからな。恐らくだが』
「うおっ」

 フェニックスが突然喋り出したからちょっとだけ驚いてしまった。

「そっ、そうだね。みんなありがとう」

 ティナはそう言って照れたように笑うと、一つ深呼吸をして、みんなを凛とした瞳で見つめてから右手を円の中心に差し出す。俺たちも、それに続いて手を重ねていった。
 そして全員の手が重なったところで、ティナが声を張る。

「それじゃあみんな、絶対に魔王を倒して、生きて帰ってこようね!」
「「「おー!!」」」

 俺たちの声は快晴の空の下、どこまでも響いていく気がした。



 扉の前に立ち、手で二回ほど叩いて音を出す。木製の扉が奏でる硬質な音が、いくら魔王城と言えども人間の家と変わらない部分もあるのだなと、そんなことを全員に思わせてくれる。

「お、お邪魔しま~す」

 扉を開けて恐る恐る中に入りながら、ティナがそんなことを言った。

「ティナ、それ別に言わなくていいから」
「そうかな?」
「でもようやくティナらしさが戻ってきて安心したよ」
「え~っ、何それ」

 全員で小さく笑い合いながら階段を下りていく。
 和やかな雰囲気ながらも、さすがに下の階に着いたところでみんな武器を取り出して構える。俺もみんなと同じ気分を味わいたいから、「レーダー」を使うことは自粛して一緒に周囲を警戒しつつ進んだ。

 松明が点在してはいるものの光源として十分な量ではなく、魔王城の廊下はどこも薄気味悪い暗さだった。石造りなのはミツメの城と変わらない。なのに床や壁からはまるで温かさが感じられず、それが浸透したかのような空気がひんやりと肌に触れてくる。
 先頭を歩きながらティナがぽつりとつぶやく。

「誰もいないね」
「ああ、逆に何かの罠じゃないかと思えるくらいだな」
「より一層警戒を強めて行こうじゃないか」
「ラッドもたまにはいいこというな」
「ふっ、当然さ」

 武器を構えて左右を見渡しながらそんな軽口を叩きあっていると、やがて一つの扉の前に到着した。通路の先には右の壁にいくつも似たような扉があるから、城に住むモンスターたちの部屋なのかもしれない。
 全員でその扉の前に並ぶと、ティナが口を開いた。

「どうする? ここ、入ってみる?」
「入ろうぜ」

 入りたそうに目をきらきらと輝かせているティナは、俺がそう返事をすると迷うことなく扉を開いて恐る恐る中に入っていく。

「お邪魔しま~す……」

 ティナに続いて部屋に入ったものの、中には誰もいなかった。けど、明らかに生活の痕跡がある。幹部の部屋という可能性もあるし、何かいいアイテムが落ちているかもしれない。
 よし、この部屋を探索してみよう……ってみんなに言おうと思ったら、すでにそれは始まっていた。それぞれが思い思いにものを触ったり眺めたりしている。

 壁際でラッドが顎に手を当てて唸りながら何かを見下ろしているので、話しかけてみた。

「何見てんだ?」
「いや、これはどう見ても馬か何かの寝床にしか見えないのだけれど、そんなはずもないし何だろうなあと思ってね」

 視線の先を追うと、藁の敷き詰めてある木箱があった。たしかにぱっと見では馬か何かの寝床にしか見えない。

「案外普通に馬の寝床だったりするのかもな」
「こんなところに? 馬のモンスターなんていたかな……というか、あそこに立派なベッドがあるじゃないか」

 ラッドが人差し指で示した先には、俺たちも使っているような、よく見る形のベッドが置いてある。
 そういえばツギノ町にいた時にデュラハンと戦ったことがあったな。まああいつとは限らないけど、可能性は高いだろう。デュラハンって数自体が少ないし、馬と一緒に暮らしているあいつらならこの部屋の様相にも納得だ。

 そして部屋主にある程度の見当がついた瞬間、俺はあることを思いつく。それを実行しようとベッドの方に移動していくと、ティナとロザリアの前を通った。
 二人は馬の寝床とは別の壁際にいくつか飾られてある、黒い鎧を着せ合いっこして遊んでいるみたいだ。俺もやりたい。

 ロザリアに鎧を着せられたらしいティナが声をかけてくれた。

「見て見てージン君、似合う?」
「ぶっ。何やってんだよ」

 ティナはなぜか胴の部分だけを纏っている。どう考えても大きさが合ってなくて鎧に着られていると言った方が正しい。
 残りの下半身部分は飾った状態のまま置かれていて、兜はロザリアの手の中だ。

「ふふっ、ティナちゃんとても似合っていますわ。では私も」

 ロザリアが手に持っていた兜をかぶった。頭から下はふわふわしたドレスみたいな服を着ているから、違和感がすごい。
 兜をかぶったままのロザリアが俺たちの方を向いて尋ねる。

「どうですか?」
「あはは、かわいー」

 ティナがそう言ったと同時に、俺の横からぬっとラッドが出てきた。

「ふっ、ロザリアは何を着ても似合うね。下がドレスローブだから一見して違和感があるようにも思えるが、それがまたロザリアの魅力を引き立てるためのオーケストラを奏でている」
「まあ、ありがとうございますラッド様……何を仰っているのかよくわかりませんけど」

 ロザリアの言う通りなのでラッドは放っといて、俺はさっき思いついたことを試すことにした。みんなから離れてベッドをあれこれと手で探ってみる。
 まずシーツの下を隅から隅まで隈なく。そこが終わると、ベッド上部を一通り観察してから下の方へ。
 ベッドの下に手を突っ込んでがさごそとやっていたらラッドが話しかけてきた。

「ジン。君は一体何をやっているんだい?」
「決まってんだろ。あれだよあれ……っと、これか!?」
「なになに? 何か貴重なアイテム?」

 目的の物が手に触れた感触に、思わず大きな声をあげてしまったのでティナとロザリアも寄ってくる。でも。

「……何ですか? それ」

 ベッドの下から取り出した物を見たロザリアがそう言って首を傾げたけど、実は俺も気持ちは同じだった。
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