女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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英雄たちの選択 前編 結集、そして決断

新たな参戦者たち

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 魔王城へと戻って来たジンたちを待ち構えていたのは、意外な客だった。
 ひとまずソフィアの様子を見に行こうと二人が女神の部屋に入ると、そこには見覚えのある顔が三つ。流れるような銀髪にガラス細工のような瞳。青の短髪に、大柄ではないがしっかりとした身体つき。静かにこちらを射抜く理知的な切れ長の双眸に、透き通るような白皙の肌。
 それらを視界に入れたジンとティナが、思わずといった感じで声を発する。

「あれっ。お前ら何でいるんだよ」
「セイラちゃんとノエル君に……エアさんも」

 三人は部屋の中央にあるテーブルの椅子に腰かけ、茶を嗜んでいた。エアが部屋の入り口に視線をやりながら声をかける。

「キース隊長からエリス王女の部屋の位置情報を教えてくれと頼まれてな。どうしてかと聞いたら今回の騒動に関する話を聞かせていただいた。私としてもゲートが閉じてどうしたものかと思っていたから、ひとまずここに来てみようと思ってな。同じくシックスにいて困っていたダンサーズの隊員に飛ばしてもらった」
「私たちも、エアからその話を聞いてひま……力になれないかと思ってついてきたってわけよ」

 なるほど、エアはともかくセイラとノエルはただ暇だっただけか……と、ジンは内心で納得する。と同時に、彼らが精霊だったということをティナにはまだ話していないのを思い出して口を開いた。

「ティナ。まだ話してなかったと思うけど、こいつらも精霊だよ」
「えっ、三人とも?」
「ああ、そういえばもう隠す必要がないんだったか?」

 ノエルから問われ、ジンは短く首を縦に振る。

「そういうことだ」

 それからジンたち精霊陣は、三人も精霊だったこと、セイラとノエルがモンスターテイマーズでの同僚で腐れ縁だったこと、テイマーズ三人とエアはこちらに来てから知り合ったことなどをティナに説明していった。

「そうだったんだ……」

 俯きがちにそうつぶやいたティナの表情はやや暗い。
 戸惑っている、というのが正直な感想だった。ジンの打ち明け話を聞いた時には下界に降りて自分を助け、そのまま心配になってついて来てくれたという事実が嬉しくて衝撃が相殺されていたが、今回はそうもいかない。
 新たに三人の知り合いが精霊だったということに少しばかり疎外感を覚えるのも事実だし、何よりセイラがジンのただの昔からの知り合いではなく、仕事場の同僚で腐れ縁という思いの外親密な関係性であったことも気になる。
 セイラとノエルは、自分の知らないジンをたくさん知っている――そんな思いが心境の複雑さに拍車をかけていた。

「今まで隠してて、ごめんね」

 ティナが暗くなっている理由を、単に自分たちが正体を隠していたせいとだけ思っているセイラが謝罪の言葉を口にする。普段は察しのいい方である彼女も、ティナの複雑過ぎる気持ちを完全には読み取れないようだ。

「ううん。ちょっとびっくりしたけど、仕方のないことだったっていうのはわかってるつもりだから、気にしないで」

 苦笑を浮かべながら忙しなく腕を横に振ってそういうティナに、どうしたものかと顔を見合わせる精霊陣。かと思えば、エアが思わぬ提案を始めた。

「ティナは、何か私たちに隠していることはないか?」
「えっ? 私が?」
「うむ。普段なら怒られるだろうというようなことでも、今打ち明けてしまえば全て許そう。それでおあいこということにしてくれないだろうか」

 今すぐに出来る、エアなりの精一杯の贖罪だった。もちろんこの程度でティナの気が晴れるとは思ってはいないが、何もしないよりはましだろう。
 その考えを理解したのかはわからないが、ティナは顎に手を当て、真剣な表情になって一生懸命に暴露話を探し始めた。するとやがてそれを見つけたらしく、こんなものでもいいのかなと恐る恐るといった様子で話し始める。

「私ね、ハジメ村じゃひのきのぼうを料理の時によく使っててしょっちゅうお母さんや友達に怒られてたの。ほら、あれって武器じゃない? だから……」

 全員はそれがどうしたのかと、黙って話に聞き入っている。

「う……そ、それでっ、旅立ちの時にも料理の時にひのきのぼうは使っちゃだめだよって言われてたんだけど。実は使ってました! ごめんなさい!」

 勢いよく腰を折るティナに、精霊陣は固まってしまう。大して悪いことでもないし、そもそも自分たちには関係がないからだ。
 しかし、ジンが突然何かを思いついたような顔になったかと思うと、頭を抱えて膝から崩れ落ちながら叫んだ。

「たしかに料理の時に何だか良さげな棒を使ってるなとは思ってたけど……あれ、ひのきのぼうだったのか! 何てことだーっ!」
「ジン、しっかりして!」
「大丈夫か! お前がこんなになるなんて、よっぽどショックなんだな!」

 正直ティナにどう対応したらいいかわからないセイラとノエルは、ジンの一世一代の演技に乗っかることにしたらしい。
 ジンは四つん這いの体勢で地面に視線を向けたまま、それを続けた。

「こんなに悲しくなったのは初めてだ。でも、ティナはもっと悲しかったんだもんな……俺も気にしないようにしないとな」

 そこでジンの意図を察したらしい。セイラとノエルは顔を見合わせると、全身をわなわなと震わせた。

「わ、私も料理にひのきのぼうを使おうと思ったことはあるけど、そんな罪深いことは出来なかったわ……何てこと……」
「あれを料理に使うなんて、神話の中だけの話かと思ったぜ」

 ジンが余計なことを言うなとばかりに二人をこっそりと睨みつける。

「私の家では代々、ひのきのぼうを料理に使った者は邪神が復活するための生贄に捧げられるというしきたりがある。しかし、許すと約束してしまったのではティナをそうすることは出来な」
「もうわかったから! それ以上はやめて!」

 いつものごとく考えが読めない無表情のまま、エアが思わぬ参戦をして来た辺りでとうとうティナが顔を赤くしながら降参した。ここまでの事態に発展するとは思っていなかったので、かなり恥ずかしいらしい。
 しかし精霊たちの元に歩み寄って身体を起こしながら、ティナはジンがどういった理由からあんな行動に出たのかを理解して微笑んだ。

 ジンは、何もティナの感情を完全に読めたわけではない。しかし彼女の人柄からして、悲しんではいても怒ってはいないだろうということはわかった。そして、自分が悲しんでいることを気にしないで欲しいと、周囲の人間に対して思うであろうということも。
 だから彼はエアの提案に乗る形で、かつてないほどに悲しむふりをしてティナがあと腐れのないようにしようと画策したのである。もちろん、それとティナが悲しんだことは別問題だが。

「ありがとう、ジン君」
「お、おう」

 お礼を言われてしまい、ジンは照れながらそっぽを向くのであった。

 それから場が落ち着くと、ジンとティナもテーブル席に腰を落ち着けて今後のことについて話し合った。
 アカシックレコードというものの存在と、ゼウスがそれを利用してティナのお尻を狙っているということ。そしてソフィアの提案によってこれから自分たちの手でゼウスの野望を打ち砕かんとしていることがジンから説明されていく。
 全てを聞いたセイラが、腕を組んで眉根を寄せながら言った。

「そんなことがあったのね……いくらゼウス様でも許せない」
「何か辛いことがあってご乱心なさったのかもしれねえが。まあ、そうだよな」

 ジンの影響もあって、他の精霊たちよりかはゼウスへの信仰心が薄いセイラとノエルが不快感を示す。特にセイラは女性として、ティナのお尻を狙うという行動にことさら憤りを感じているようだ。

『ティナのお尻はジンのものだというのにな』
「うるせえよ!」
「ぴーちゃん、焼き鳥にするよ!?」
『いいぞ……』

 テーブルの上で置物になりながらのフェニックスの一言に、ジンとティナが頬を赤らめながら叫ぶ。すると、エアが一瞬目を光らせてから会話に参入する。

「そうなのか? 二人の仲が進展したのなら詳しく聞きたいのだが」
「お前もうるせえ!」

 ジンにそう言われて、とりあえずエアは押し黙った。そして、何かを考え込んでいたセイラが拳を振り上げながら言う。

「よし、私たちもその戦いに参戦する! 同僚たちが相手になるかもしれないけどそんなの知ったことじゃないわ」
「だったら俺もそうするしかねえな」
「じゃあ、決まりだな!」

 微笑をしながらのノエルの言葉を確認するとジンは立ち上がり、手のひらを下に向けてテーブルの上に差し出す。他の面々もそれにならった。

「お前ら、よろしく頼むぜ!」
「まあ、私は戦えな」
「「「「お~!」」」」

 こうして一大決戦を前に、英雄たちが顔を揃えたのであった。
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