VRクソゲー調査団!

偽モスコ先生

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神様になろう!編

アルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡

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 対人戦が終わると、試合開始前に俺たちがいた、俺の宇宙にある惑星1に戻ってくる。ちなみに、ぶっ壊れた惑星は試合が終わると元通りになっていた。

「どうだった?初めての対人戦は」

 目の前にいるアンデルセン東郷ことマリンが感想を求めてくる。
 俺は、肩をすくめてから正直なところを言ってみた。

「基本は育てた惑星をぶつけ合って、生命が強かったり数が多かったりする方が勝つんだろ?廃人有利ゲーだな。対人戦はレポートしなくて良さげだしそろそろこのゲームから引き上げるか……」
「ふふっ、たしかに基本はそうなんだけど、一応逆転要素もあるんだよね……」

 マリンが笑っている。アバターがムキムキの男なので怖い。

「惑星をぶつけて壊れると、自分のHPゲージが減っていってたでしょ?実はHPゲージを減らす方法が他にもあるんだよ」
「ほう、どんなの?」

 あまりにシステムがクソすぎて気にしていなかったけど、たしかにHPゲージはあった。
 しかし、それが本当なら多少は戦略性があることになるな。興味はある。

「直接殴るんだよ」

 何言ってんだコイツ。
 マリンは、得意げにぴっと人差し指を立てて続けた。

「実は、試合開始からある程度時間が経つか、どちらかの惑星が一定の数よりも減ると、相手のところに直接移動できるようになるんだよ。だから相手のところに行って直接殴ることでHPゲージを減らせば、逆転できるってわけ」

 それ、最初から対人戦は格ゲーみたいにした方が良かったんじゃないのか?
 育てた箱庭を使って対戦、っていうメーカーの思惑はわかるけど、惑星をぶつけるって全然意味わかんねえしな。
 しかし、マリンの言うことには疑問がある。
 さっき対人戦をしたときに、互いのアバターは視界の最奥で米粒みたいなるほどの距離が置かれていた。こうして宇宙を育てるときにプレイヤーが空間を移動する速さは人間が徒歩で移動するのとほぼ同じくらいだし、あの距離を移動していくっていうのは現実的な話じゃない気がする。いや元からゲームの中なんだけど。

「何か移動速度を上げたりするスキルっていうのがあるのか?」
「おっ、さすがミル君。鋭いねぇ~。メニューウインドウのスキルタブを開いてみて」

 指示通りに開いてみる。

「そうするとね、一番下のところに『対人限定』っていうスキルがあるでしょ?そこに身体能力を強化したりするスキルが揃ってるんだ」

 本当だ……。スキルを確認してみよう。

「剛腕:力を強化できる。レベルを上げると、行く手を阻む惑星も一撃で粉砕できるようになる」
「金剛:体力を強化できる。レベルを上げると、タンクローリーに跳ねられても生き残れるようになる」

 宇宙にタンクローリーは来ないだろ。

「韋駄天:移動速度を強化できる。レベルを上げると、めっちゃ我慢してからトイレに駆け込む人よりも早く移動できるようになる」
「究極最終ω過剰運転(アルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡):レベルを上げると、特定の状況下で最大5分間だけステータスがボンって上がる。ほんとにめっちゃすごい」

 何か最後すごいの来たな……。ここだけ説明文が小学生みたいになってるし。

「なあマリン。この一番下にあるアルティメットなんちゃらってなんだ?」
「ああ。アルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡のことかな?」
「そうそう。それなんだけどさ……」
「このアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡こそが正に逆転要素って感じでね、これの使い方次第ではどんな逆境でも跳ね返せるんだ」
「使い方の制限とかはないのか?特定の状況下ってあるけど」
「うん、アルティメットファイナルオメ」
「ちょっとちょっと、長い長い。いちいちフルネームで言わなくていいから」
「そう?わかった……」

 マリンはちょっとがっかりしたみたいに俯いた。

「さっきある程度時間が経つか、どちらかの惑星の数が一定数よりも減ると移動できるようになるって言ったでしょ?特定の状況下っていうのはその内、惑星の数が一定数減らされた場合、つまり不利になった側だけが発動できるの」
「それって結局負けてる側が有利じゃね?」
「ここだけ聞けばそう思うよね。でも、話はそう簡単じゃないの」

 マリンは少しドヤ顔をしている。普段なら可愛いのかもしれないが、今はムキムキの筋肉男アバターなのでむかつくだけだ。

「まずね、韋駄天を上げて相手陣地に迫ろうとしても、相手側もプレイヤーに直接惑星をぶつけて撃ち落とすとかの妨害ができちゃうのよ。何個もぶつけられると金剛を上げててもHPがすぐなくなっちゃうの。だから、負けてる側のプレイヤーはファイオメを使ってもそう簡単に相手の陣地にたどり着けるってわけじゃないのよね」

 略称はファイオメらしい。
 逆に惑星をぶつけられても生き残ることが出来るのがすげえよ。さすが神。

「しかも、対人限定スキルって余計に神スキルポイントを使わなくちゃいけないから、スキルレベル上げてる人ってそんなにいないのよ」
「なるほどな。ファイオメを使っても大体は相手陣地に着く前にやられちまうわけか」
「そういうこと。だから、ファイオメを使って逆転勝ちしようと思ったら、余計な神スキルポイントを使って対人限定スキルを上げつつ、惑星を避けるプレイヤースキルも磨かなきゃいけないのよ」
「惑星を避けること自体はできるのか?」
「理論上はね。でもほとんど見たことない。ちょっとぐらい避けても、後はほとんど命中して相手陣地に着く前にぼろぼろになって、着いた瞬間に止めを刺される人がほとんどね」

 宇宙や惑星の育ち具合で負けてると、対人戦に勝つのはかなり難しいってことだな。でも、ここまで来たら対人で少しは勝てるようになるまで遊んだ方がレポートも面白いものになりそうだ。

「わかった。じゃあしばらくは宇宙を育てて神Lvを上げることに専念するわ」
「うん、それがいいと思う。それじゃあ私は今日はこの辺で落ちるね」
「おう。色々ありがとな」

 マリンが落ちた後、俺は時間が許す限り惑星を創り、そこに生命をたくさん創って育てた。今や俺の惑星は、地球で絶滅危惧種に指定されているマウンテンゴリラや、野生の個体が既に絶滅したトキなどが生きる、かつてあるべき姿を取り戻した惑星となっている。たまにマスコミが出てきてそれらに群がってくるものの、内閣総理大臣を配置することでそちらに注意を引いていた。
 惑星が100を超える頃にようやくアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡を使えるようになり、他の対人限定スキルもそこそこのレベルになってきたんだけど、覚えただけではまだまだだ。

 さて、そろそろ俺もログアウトして寝ようかというところなんだけど、先日金だけもらってフレンド登録していなかったおっさんを探してからにしよう。さすがに罪悪感で寝ざめが悪い。
 神々の京都タワーにやってきた。さて、おっさんはいるかな……。
 いた。インフォメーションカウンターのボクサーに何やら話しかけているところだ。そして恐らくはちょうどイエスを選択したところだったんだろう。おっさん目掛けてカウンターパンチが飛んできた。
 しかし、おっさんは見事にそれを避け、そのパンチをくぐって見事にカウンターをNPCにキメる。NPCが沈んだ。おい、インフォメーションカウンター利用したい人はどうすんだよ。
 うわっ、こっちに気づいた。すごい勢いで迫ってくる。

「リム君!リム君じゃないか!うう……もう会えないかと思っていたよ。本当に探したんだ……」

 声が泣きそうだ。というか多分泣いている。

「昨日は本当にすいませんでした。今日もそろそろ落ちるんで、破壊神・紅さんを探してからにしようかなと思って」
「そうだったんだね。ありがとう。マイベストフレンドリム」

 うぜえ……勝手に親友にすんな。
 それからフレンド登録を済ませた。

「ちなみに僕のことは破壊神か紅のどちらかで呼んでくれればいいから」

 どっちも呼びたくない。

「じゃマウンテンゴリラって呼ばせてもらいます」
「ありがとう」

 いいのかよ。感謝されたし。

「どう?あれから宇宙は育ったかな?」
「はい。知り合いから対人戦のこととか聞いて……さっき、ようやくアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡を覚えたところです」
「ああ、対人戦に興味あるんだ?」
「はい、このゲームのコンテンツは一通り遊んでおきたいので……やるからには勝ちたいし」
「対人戦やらないと手に入らないアイテムとかもあるしね、大会にはエントリーするのかな?」
「大会?そんなのあるんですか?」

 初耳だな、まあマリンの方も俺に教える必要は特にないからな。

「うん、不定期だけどそこそこに短いスパンで大会が開催されていてね。キングオブザデストロイ決定戦っていうんだけど」

 破壊するのが目的になってるじゃねーか……。

「この大会の景品が中々にすごいいんだ。何と、運営のできる範囲で、という制限付きだけど何でもお願いごとを一つ聞いてもらえるんだよ」
「それはすごいですね」
「でしょ!?だから私も次は優勝しようと思ってるんだ。優勝した暁には……このゲームの全プレイヤーとのフレンド登録をお願いしようと思ってる」

 やべえな……。どんだけ必死なんだこのおっさん。
 フレンド登録してもその後ブロックされたり解除されたりすることは想定してないんだろうか。

「リム君は出場しないの?」
「どうですかね。今初めて聞いた話ですし……」
「一緒に出場しようよ。もうフレンド登録までした仲なんだし。そして、もし大会で戦うことになったら……私がリム君に勝てば、そのときにはリアルフレンド登録をお願いしようと思っているんだ」

 何だよリアルフレンド登録って。絶対に嫌だ。
 ていうかこのおっさんに俺の正体ばらすわけにいかないんだよな。
 でもキングオブザデストロイ決定戦か……。とりあえずの目標にはなるし、興味がないってわけじゃない。このおっさんとのリアルフレンド登録は嫌だけど、出場するだけしてみるのもいいかもしれないな。

「はは、まあ考えておきますよ」
「うん、もし出場するって決めたら教えてね」
「わかりました」

 絶対に秘密にしておこう。

「もしフレンドの私に内緒で出場したりしたら、リアルアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡が炸裂するから」
「はは、わかりました。それじゃ俺は今日は落ちるんで。お疲れさまでした」
「またね」

 おっさんが何か言っているのを適当に聞き流し、俺は指で時計回りに正方形を描き、メニューウインドウを出現させる。
 それから、近所のコンビニの店長の姿をしたリアルアバターが俺に手を振っているという、世にも恐ろしい風景を目の当たりにしながら、俺は現実世界へと帰還した。
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