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千国志編
『千国志』プロローグ
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VR戦略シミュレーションゲーム『千国志』。
…………。
もう何だか名前がアレなんだけど。
国の数増やしてどうするんだよ。史実じゃなくなるし増やす数もおかしいだろ。
くそっ、やる前からツッコミどころ満載だ。
このゲームはプレイ難易度自体が高いとか良くわからないことを言われて俺のところに回ってきたゲームで、俺のところに回ってくるというのは他のやつではレポートが出来ないほどの人類の英知を超える程のクソゲーか、純粋にゲームとしての難易度が高いかのどちらか。要は「厄介な案件」ってことだな。
ごちゃごちゃ言っててもしょうがない。とりあえずプレイしてみよう。
ヘッドギアを装着してベッドに寝転ぶ。
「ダイブスタートオオオォォォンン!!!!!!!」
今のはいつの間にか部屋を覗いでいた親父の声だ。一応言っておくと、ゲームを開始するのに何か言葉を発する必要はない。とはいえタイミングはばっちりだったので、親父の声と一緒に俺の視界はホワイトアウト。意識はゲームの中へと吸い込まれていった。
「『千国志』の世界へようこそ!あなたの名前を教えてください!」
名前はいつもお馴染みの「リム」で。
「リムよ、あなたはこれから中国に乱立した国々のうち、どれか一つの国のリーダーとなって戦争や内政を行って国を強くし、中国統一を目指していただきます」
了解。
「それでは次の中から国を選んでください」
多っ!!国多いなおい!!
システムアナウンスと共に表示されたのは、多分だけど三国志の舞台にもなっている地球の中国って国の地図。なんだけど。
国がめちゃめちゃ多い。タイトル通り1000くらいありそうだ。
ていうかこれどうやって国選ぶんだよ。一つ一つの国が小さすぎて狙った国を選べないんだけど。
試しにぽちっとその辺を押してみる。国の名前は「魏魏魏」と表示された。適当だなおい。これ絶対に国の名前を考える途中でバリエーションなくなってきて考えるの楽なやつにしたパターンじゃねえか。他にも「呉呉」や「蜀蜀蜀蜀蜀」とか似たようなのばっかりだ。
ふと全体を眺めていると、地図の右下の方に「ランダム」というボタンがある。もうめんどくさいしこれでいいや。どれになっても同じだ。
ランダムボタンを押すと、トゥルルルルル……という効果音と一緒に地図上の国がかわるがわる点滅した後、ジャン!!とバラエティー番組で何かの答えを発表するときの音がなり、一つの国が選択された。
表示された名前は「#_魏呉魏呉_ぎごぎご__#」。語感悪いなおい。
「おめでとうございます!!あなたは『魏呉魏呉』の長となりました!!頑張って中国を統一してくださいね!!」
何がおめでたいのか良くわからないけど、とりあえず中国を統一できる気は全くしない。
前途多難を憂いていると、視界が暗転した後、ドドンッ!!という和太鼓を叩いたような音が鳴る。あー、これあれか。史実に基づいて歴史とかをちょっと説明してくれる、あらすじ解説みたいなやつか。
うっすらと見える草原を背景に、風の吹き荒れる音が鳴り始める。
朧げな視界は徐々に鮮明になっていき、テロップと同時にそれを読み上げる男の厳かな声が耳に届いて来た。
「後漢王朝末期、それはもう色々と大変であった……」
予想外にざっくりだなおい。何もわかんねえよ。
「何やかんやあって、中国は1000の国に分かれた……」
中国に何があったんだよ……そこを詳しく教えてくれ。
「ちなみに私の好きな食べ物はハンバーグであった……」
ちょっと可愛いな。唐揚げとかも好きだろ。
「唐揚げは別にそこまで好きではなかった……」
反応してくれるのかよ。親切なシステムだな。
そこまでであらすじ解説は終了らしいんだけど、何も解説してもらっていない。
「戦場チュートリアルを開始しますか? YES/NO」
おっ、チュートリアルか。俺は本来チュートリアルは退屈だからあまりやらない派なんだけど……。仕事だしレポートの為にもやっておこう。イエス。
視界にはどこかの国と国が戦っている戦場が俯瞰図、空の上から眺めるような形で表示されている。自分の勢力と相手の勢力の名前を始めとした各情報が表示されていて、全体的な状況が詳細にわかるようになっていた。敵軍の名前は「呉呉魏魏魏蜀」となっている。ぱっと見た感じではかなり状況は悪いようだ。
左下に補佐役らしき人物の顔が表示され、その横に吹き出しが出てきてセリフが表示され始める。VRなのにここはちょっとVRっぽくない仕様なんだな。
「リム様!リム様ー!!状況は絶望的です!もう夜逃げをした方がよろしいかと存じます!!夜逃げをしますか? YES/NO」
いやいや、そこをどうにかすんのがこのゲームじゃねえのかよ。こいつ最初から諦めてんじゃねえか。そもそもチュートリアルなのに何でいきなりそんな難易度の高そうな場面なんだ。それに夜逃げって。だめだ、まだ戦争が始まってないのにツッコミ疲れて死ぬ。とりあえずノー。
「こんな絶望的な状況を前に戦うとおっしゃられるのですか!?何と!それは勇気にあらず、無謀というもの!今までお世話になりました!私は実家に帰ります!実家も既にやられましたけどね!ハッハッハ!」
何でもいいけど早く戦争を始めて欲しい……。と思っていると、その男のセリフが終わると同時に視界がブラックアウトした。気づけば俺は、広大な草原の中に設置されているらしい、陣幕の中にいる。
そこに慌ただしく一人の男が入ってきた。顔を見てみれば、先ほど夜逃げがどうとか言っていた男だ。
「リム様!先ほどは大変失礼をいたしました。申し遅れました、私、今日より貴方様の補佐役をさせていただいております、ネオ猪八戒と申します」
ネオ猪八戒って色々と世界観どうなってんだよ。いやだめだ、話が進まん、もう何も考えないことにしよう。
それから、見えるもの全てが一時停止をしたようにパタンと止まり、システムアナウンスが流れ始めた。
「貴方は、この陣幕の中から指示を出すことができます。指示は直接口頭で出すこともできますし、ネオ猪八戒に向けて指で二回叩く仕草をすると指示メニューが出てきますので、そちらで出すこともできます。なお、先ほどの戦場の全体マップは『全体マップ!!』と張り裂けんばかりの声で叫ぶか、ネオ猪八戒を殴り倒すことで開きます」
何でそんなシステムなんだよ。ネオ猪八戒可哀そすぎるだろ。
「試しに殴り倒してみてください」
一時停止状態が終わり、時間が動き出した。ネオ猪八戒がこちらを見ている。とりえあず指示通りぶん殴ってみた。ネオ猪八戒がきりもみをしながら後ろに吹き飛ぶ。すると、俺の目の前に先ほどの全体マップが電子音を鳴らして現れる。古代中国の戦場にいるのにSFっぽくて変な感じだ。
状況は変わらず悪いみたいだな。ネオ猪八戒は何事もなかったかのように起き上がってこちらに戻ってくる。
「全体マップを見ていると、敵の中から明らかに突出してきた隊がいます。これを叩きましょう。指示メニューから攻撃を選択するか、『攻撃をする』などと言った感じで口頭でネオ猪八戒に指示を出してみましょう」
せっかくだしここは直接口頭で指示を出してみるか。
「攻撃をする」
「かしこまりました。どのように攻撃をいたしますか?」
ネオ猪八戒がそう言うと、先ほどの全体マップから、敵の陣地を拡大した部分のマップが表示された。これネオ猪八戒をぶん殴る必要なかったな。まあ全体をみたいときには……ってことか。
このマップは、指でドラッグをすることで見るポイントを変えられるらしい。ここで再びシステムアナウンスの声。
「攻撃をさせたい味方の勢力をクリックし、次にターゲットにする敵の勢力をクリックしてください。順番は逆でも構いません。なお、ネオ猪八戒に口頭でそのように伝えることでも指示は出せます」
マップを見ると、焼肉定食(300円)という敵武将の部隊が突出している。300円って安くね?これをクリック。焼肉定食(300円)の部隊が点滅し始めた。
次に、焼肉定食(300円)のほぼ側面にいるマイケルという武将をクリック。もうツッコんだら負けだ。
指示を出し終えると、俺の軍の武将マイケルが敵の軍の武将焼肉定食(300円)を攻撃し始めた。時間がかからなければ問題なく勝てるだろう。
「戦場での時間はリアルタイムで進行します。戦闘の進行を逐一マップで見て確認すると良いでしょう」
え、リアルタイムで進行すんの?その間俺は何すりゃいいんだよ。
その後、システムアナウンスが言った通りに戦闘はリアルタイムで進行した。正直めっちゃ暇だ。どうやら戦場の広さなどもリアルに中国の平原を再現しているらしく、広大な平原の隅で、小鳥のさえずりや風が梢を揺らす音などを聞きながらただ座っているしかない。前線は遠いらしく、ここからでは戦場の音なんて全く聞こえてこなかった。
「『全体マップ』!!!!」
チュートリアルだからだろう、戦況はそんなに激しく変わったりはしない。全体マップを開いたところで特にすることも見るべき点もないので、俺はネオ猪八戒に話しかけてみた。
「調子はどうだ?」
「調子ですか?私の調子は三年前のあのときから狂わされたままです。そう、あれは雨の日でした……」
「いや、ごめん。やっぱりいい」
恐らくNPCにはこんな重い話しか用意されていないんだろう。強引にこじつけてきやがった。NPCには迂闊に話しかけれられないな。
実際に戦闘は出来るんだろうか?暇だし暴れてみたい。ちょっと前線まで行ってみるか。馬とかあるのかな、聞いてみよう。
「馬はあるのか?」
「馬ですか?私の馬は三年前の……」
「ごめんやっぱりいい」
走っていこう。
それから俺は前線目掛けてひたすらに走った。ゲームの中だから疲れることもなく、広大な平原の緑を眺めながらぐんぐん進む。
次第に味方の兵士が増えてきた。しかし数は少なく、前線はまだ遠いらしい。
後ろからネオ猪八戒が追いかけてきた。捕まったら面倒くさそうなので走るスピードを更に上げる。
追いかけっこをしながら更に進むと、また少し味方の兵士が増えてくる。みんな俺がここにいることに驚いている。
更に数分走り続けると、また味方の兵士が増える。
それからまた数分走り……走っ……。
「前線遠すぎだろおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
まごうことなきクソゲーだ!!
絶叫してからじっと空を眺めていると、システムアナウンスが流れてきた。
「味方武将が敵武将の部隊を撃破しました」
ようやくかよ……。ちょうど追いついて来たネオ猪八戒をぶん殴って全体マップを開いてみる。確かにマイケルが焼肉定食(300円)の部隊を破っていた。300円のアイコンが戦場から消えている。
敵軍はあせったのか、次々に敵が突出してくる。チュートリアルだからだろうけど。これを各個撃破していけばいいってわけね……。
俺は試しに「待ち伏せして突出した敵だけを攻撃」と指示を出した後、少し下がって静かな場所を探し、草原の大自然の中でふて寝を決め込むことにした。目が覚めると、いつの間にか周囲から人が消えていて、目の前に「勝利」という文字が浮かび上がっていた。いつの間にか戦闘が終わっていたらしい。
目の前には「戦場チュートリアルはこれで終了です。戦場から退出しますか? YES/NO」という選択肢が浮かび上がっていた。もちろんイエスだ。
…………。
もう何だか名前がアレなんだけど。
国の数増やしてどうするんだよ。史実じゃなくなるし増やす数もおかしいだろ。
くそっ、やる前からツッコミどころ満載だ。
このゲームはプレイ難易度自体が高いとか良くわからないことを言われて俺のところに回ってきたゲームで、俺のところに回ってくるというのは他のやつではレポートが出来ないほどの人類の英知を超える程のクソゲーか、純粋にゲームとしての難易度が高いかのどちらか。要は「厄介な案件」ってことだな。
ごちゃごちゃ言っててもしょうがない。とりあえずプレイしてみよう。
ヘッドギアを装着してベッドに寝転ぶ。
「ダイブスタートオオオォォォンン!!!!!!!」
今のはいつの間にか部屋を覗いでいた親父の声だ。一応言っておくと、ゲームを開始するのに何か言葉を発する必要はない。とはいえタイミングはばっちりだったので、親父の声と一緒に俺の視界はホワイトアウト。意識はゲームの中へと吸い込まれていった。
「『千国志』の世界へようこそ!あなたの名前を教えてください!」
名前はいつもお馴染みの「リム」で。
「リムよ、あなたはこれから中国に乱立した国々のうち、どれか一つの国のリーダーとなって戦争や内政を行って国を強くし、中国統一を目指していただきます」
了解。
「それでは次の中から国を選んでください」
多っ!!国多いなおい!!
システムアナウンスと共に表示されたのは、多分だけど三国志の舞台にもなっている地球の中国って国の地図。なんだけど。
国がめちゃめちゃ多い。タイトル通り1000くらいありそうだ。
ていうかこれどうやって国選ぶんだよ。一つ一つの国が小さすぎて狙った国を選べないんだけど。
試しにぽちっとその辺を押してみる。国の名前は「魏魏魏」と表示された。適当だなおい。これ絶対に国の名前を考える途中でバリエーションなくなってきて考えるの楽なやつにしたパターンじゃねえか。他にも「呉呉」や「蜀蜀蜀蜀蜀」とか似たようなのばっかりだ。
ふと全体を眺めていると、地図の右下の方に「ランダム」というボタンがある。もうめんどくさいしこれでいいや。どれになっても同じだ。
ランダムボタンを押すと、トゥルルルルル……という効果音と一緒に地図上の国がかわるがわる点滅した後、ジャン!!とバラエティー番組で何かの答えを発表するときの音がなり、一つの国が選択された。
表示された名前は「#_魏呉魏呉_ぎごぎご__#」。語感悪いなおい。
「おめでとうございます!!あなたは『魏呉魏呉』の長となりました!!頑張って中国を統一してくださいね!!」
何がおめでたいのか良くわからないけど、とりあえず中国を統一できる気は全くしない。
前途多難を憂いていると、視界が暗転した後、ドドンッ!!という和太鼓を叩いたような音が鳴る。あー、これあれか。史実に基づいて歴史とかをちょっと説明してくれる、あらすじ解説みたいなやつか。
うっすらと見える草原を背景に、風の吹き荒れる音が鳴り始める。
朧げな視界は徐々に鮮明になっていき、テロップと同時にそれを読み上げる男の厳かな声が耳に届いて来た。
「後漢王朝末期、それはもう色々と大変であった……」
予想外にざっくりだなおい。何もわかんねえよ。
「何やかんやあって、中国は1000の国に分かれた……」
中国に何があったんだよ……そこを詳しく教えてくれ。
「ちなみに私の好きな食べ物はハンバーグであった……」
ちょっと可愛いな。唐揚げとかも好きだろ。
「唐揚げは別にそこまで好きではなかった……」
反応してくれるのかよ。親切なシステムだな。
そこまでであらすじ解説は終了らしいんだけど、何も解説してもらっていない。
「戦場チュートリアルを開始しますか? YES/NO」
おっ、チュートリアルか。俺は本来チュートリアルは退屈だからあまりやらない派なんだけど……。仕事だしレポートの為にもやっておこう。イエス。
視界にはどこかの国と国が戦っている戦場が俯瞰図、空の上から眺めるような形で表示されている。自分の勢力と相手の勢力の名前を始めとした各情報が表示されていて、全体的な状況が詳細にわかるようになっていた。敵軍の名前は「呉呉魏魏魏蜀」となっている。ぱっと見た感じではかなり状況は悪いようだ。
左下に補佐役らしき人物の顔が表示され、その横に吹き出しが出てきてセリフが表示され始める。VRなのにここはちょっとVRっぽくない仕様なんだな。
「リム様!リム様ー!!状況は絶望的です!もう夜逃げをした方がよろしいかと存じます!!夜逃げをしますか? YES/NO」
いやいや、そこをどうにかすんのがこのゲームじゃねえのかよ。こいつ最初から諦めてんじゃねえか。そもそもチュートリアルなのに何でいきなりそんな難易度の高そうな場面なんだ。それに夜逃げって。だめだ、まだ戦争が始まってないのにツッコミ疲れて死ぬ。とりあえずノー。
「こんな絶望的な状況を前に戦うとおっしゃられるのですか!?何と!それは勇気にあらず、無謀というもの!今までお世話になりました!私は実家に帰ります!実家も既にやられましたけどね!ハッハッハ!」
何でもいいけど早く戦争を始めて欲しい……。と思っていると、その男のセリフが終わると同時に視界がブラックアウトした。気づけば俺は、広大な草原の中に設置されているらしい、陣幕の中にいる。
そこに慌ただしく一人の男が入ってきた。顔を見てみれば、先ほど夜逃げがどうとか言っていた男だ。
「リム様!先ほどは大変失礼をいたしました。申し遅れました、私、今日より貴方様の補佐役をさせていただいております、ネオ猪八戒と申します」
ネオ猪八戒って色々と世界観どうなってんだよ。いやだめだ、話が進まん、もう何も考えないことにしよう。
それから、見えるもの全てが一時停止をしたようにパタンと止まり、システムアナウンスが流れ始めた。
「貴方は、この陣幕の中から指示を出すことができます。指示は直接口頭で出すこともできますし、ネオ猪八戒に向けて指で二回叩く仕草をすると指示メニューが出てきますので、そちらで出すこともできます。なお、先ほどの戦場の全体マップは『全体マップ!!』と張り裂けんばかりの声で叫ぶか、ネオ猪八戒を殴り倒すことで開きます」
何でそんなシステムなんだよ。ネオ猪八戒可哀そすぎるだろ。
「試しに殴り倒してみてください」
一時停止状態が終わり、時間が動き出した。ネオ猪八戒がこちらを見ている。とりえあず指示通りぶん殴ってみた。ネオ猪八戒がきりもみをしながら後ろに吹き飛ぶ。すると、俺の目の前に先ほどの全体マップが電子音を鳴らして現れる。古代中国の戦場にいるのにSFっぽくて変な感じだ。
状況は変わらず悪いみたいだな。ネオ猪八戒は何事もなかったかのように起き上がってこちらに戻ってくる。
「全体マップを見ていると、敵の中から明らかに突出してきた隊がいます。これを叩きましょう。指示メニューから攻撃を選択するか、『攻撃をする』などと言った感じで口頭でネオ猪八戒に指示を出してみましょう」
せっかくだしここは直接口頭で指示を出してみるか。
「攻撃をする」
「かしこまりました。どのように攻撃をいたしますか?」
ネオ猪八戒がそう言うと、先ほどの全体マップから、敵の陣地を拡大した部分のマップが表示された。これネオ猪八戒をぶん殴る必要なかったな。まあ全体をみたいときには……ってことか。
このマップは、指でドラッグをすることで見るポイントを変えられるらしい。ここで再びシステムアナウンスの声。
「攻撃をさせたい味方の勢力をクリックし、次にターゲットにする敵の勢力をクリックしてください。順番は逆でも構いません。なお、ネオ猪八戒に口頭でそのように伝えることでも指示は出せます」
マップを見ると、焼肉定食(300円)という敵武将の部隊が突出している。300円って安くね?これをクリック。焼肉定食(300円)の部隊が点滅し始めた。
次に、焼肉定食(300円)のほぼ側面にいるマイケルという武将をクリック。もうツッコんだら負けだ。
指示を出し終えると、俺の軍の武将マイケルが敵の軍の武将焼肉定食(300円)を攻撃し始めた。時間がかからなければ問題なく勝てるだろう。
「戦場での時間はリアルタイムで進行します。戦闘の進行を逐一マップで見て確認すると良いでしょう」
え、リアルタイムで進行すんの?その間俺は何すりゃいいんだよ。
その後、システムアナウンスが言った通りに戦闘はリアルタイムで進行した。正直めっちゃ暇だ。どうやら戦場の広さなどもリアルに中国の平原を再現しているらしく、広大な平原の隅で、小鳥のさえずりや風が梢を揺らす音などを聞きながらただ座っているしかない。前線は遠いらしく、ここからでは戦場の音なんて全く聞こえてこなかった。
「『全体マップ』!!!!」
チュートリアルだからだろう、戦況はそんなに激しく変わったりはしない。全体マップを開いたところで特にすることも見るべき点もないので、俺はネオ猪八戒に話しかけてみた。
「調子はどうだ?」
「調子ですか?私の調子は三年前のあのときから狂わされたままです。そう、あれは雨の日でした……」
「いや、ごめん。やっぱりいい」
恐らくNPCにはこんな重い話しか用意されていないんだろう。強引にこじつけてきやがった。NPCには迂闊に話しかけれられないな。
実際に戦闘は出来るんだろうか?暇だし暴れてみたい。ちょっと前線まで行ってみるか。馬とかあるのかな、聞いてみよう。
「馬はあるのか?」
「馬ですか?私の馬は三年前の……」
「ごめんやっぱりいい」
走っていこう。
それから俺は前線目掛けてひたすらに走った。ゲームの中だから疲れることもなく、広大な平原の緑を眺めながらぐんぐん進む。
次第に味方の兵士が増えてきた。しかし数は少なく、前線はまだ遠いらしい。
後ろからネオ猪八戒が追いかけてきた。捕まったら面倒くさそうなので走るスピードを更に上げる。
追いかけっこをしながら更に進むと、また少し味方の兵士が増えてくる。みんな俺がここにいることに驚いている。
更に数分走り続けると、また味方の兵士が増える。
それからまた数分走り……走っ……。
「前線遠すぎだろおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
まごうことなきクソゲーだ!!
絶叫してからじっと空を眺めていると、システムアナウンスが流れてきた。
「味方武将が敵武将の部隊を撃破しました」
ようやくかよ……。ちょうど追いついて来たネオ猪八戒をぶん殴って全体マップを開いてみる。確かにマイケルが焼肉定食(300円)の部隊を破っていた。300円のアイコンが戦場から消えている。
敵軍はあせったのか、次々に敵が突出してくる。チュートリアルだからだろうけど。これを各個撃破していけばいいってわけね……。
俺は試しに「待ち伏せして突出した敵だけを攻撃」と指示を出した後、少し下がって静かな場所を探し、草原の大自然の中でふて寝を決め込むことにした。目が覚めると、いつの間にか周囲から人が消えていて、目の前に「勝利」という文字が浮かび上がっていた。いつの間にか戦闘が終わっていたらしい。
目の前には「戦場チュートリアルはこれで終了です。戦場から退出しますか? YES/NO」という選択肢が浮かび上がっていた。もちろんイエスだ。
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