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46 新年
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再び時間を巻き戻す。
年末まで後2週と迫ると、再びサラは王都に帰還する貴族達の手配で忙しくなる。
船の貯留とスケジュール調整、馬車や積荷の手配などに忙殺される。
しかも、時間にルーズな貴族が多く、出航が深夜まで及んでしまう。
貴族の来訪時に学習したカムがいち早く港の宿を確保したため、歌姫達も安心して夜の船出を見送れた。
特に王の船への見送りはサラが先頭に立った。
王の船との理由ではなく、歌に酒を飲む喜びをたっぷり織り交ぜて歌い上げ、エリスを十分に怒らせたかったのだ。
甲板で怒るエリスに嬉しそうに手を振るサラ、乗船した女官達が一斉に非難の眼差しを送る。
帰りは王都まで1週間近い長旅となるのである。
カムも見送りの仕事が多くなるので、サラと二人で港の宿に宿泊した。
最初は久々の内風呂で恥かしがったサラであったが、結局風呂で寝入ってしまうため、洗髪も含めてカムが面倒を見ることになる。
朝の食堂で寝ぼけ眼のサラを甲斐甲斐しく世話するカムを同宿の歌姫達が興味津々で観察する。
王の出立後、サラが安心してカムに甘えるようになる。
実はアリサが解らなかっただけで、サラもアリサを十分に意識していたのである。
ただ、子供相手と思い態度に出ないように気を付けていた。
勿論恥かしいのでカムにも気付かれないようにした。
ただ、カムは知らなかったが、帰宅したカムからアリサの匂いがするのである。
直ぐに風呂へ行かせたが、風呂から帰っても匂いを纏っているような気がした。
他の雌が二人だけの場に入り込み、存在を主張している様で心が騒いだ。
これが一月続いたのである。
匂いの強い日はカムを締め上げようとすら思ったが自重した。
数日前からこの匂いがやっと無くなった。
やっと安心してカムの匂いを感じて過ごせるようになった。
勿論恥かしいからカムには話せない。
薄れる意識の中でカムに髪を洗って貰いながら、幸せを堪能していのである。
貴族達が帰ると年末が目前となる。
秘密会議のメンバーの結婚式が一斉に始まり忙しくなる。
会場は宿であったり、自宅であったり、組合の会館であったりとそれぞれの家が習慣とする場所で行われた。
全ての結婚式に呼ばれて出席するが、毎回それぞれの家の違いを知り驚かされる。
昔の習慣を色濃く残す家や中央大陸の文化に強く影響を受けた家など、家風に色濃く表れていた。
ただ、共通することは、儀式に古い習慣が織り込まれていること。
意味を知らずに古語が語られている。
最初の結婚式で儀式の言葉が取り違えられていたので、カムが興味から正しい言葉に並べ変えて歌ってみる。
小声であったが、並べられた神器が反応して驚かれ、そして感謝された。
同様な事が数回続き、タナス国の有名人であるとの認識から、自分達の輪の中の語り部として認識されるようになり、結婚式前の儀式にも呼ばれるようになる。
秘密会議のメンバーは非常に喜んだ。
親しい身内として最初から呼びたかったが親族に反対されていたのである。
ここでも、カムは多くを発見する。
古語よりさらに古い言語使われ、古い儀式が伝承されていたのである。
神器が反応するものから、庭に音楽を奏でる柱が出現するもの、中には地中から礼拝堂らしき建物が出現するものまであった。
勿論途中からカムは自重するようになる。
結婚式で死人が出ては冗談にもならない。
カムとサラからの贈り物も話題となった。
花婿と花嫁は恐縮したが、二人は珍しい物が手に入ると取り分けて用意していたのである。
二人が珍しいと思う物は、普通であれば物凄く入手困難な物なのである。
古物商が薄汚れたガラクタと思っていたものが実は精緻な刻印が施された魔具であることが多く、ホグの町には火が無くても鍋を暖める皿や空気中の水を集める水の減らない壺等の名人の作品がごろごろしていたのである。
サラはエリスが帰ってからは、実に嬉しそうに酒を飲む。
結婚式でも遠慮せずに酒を飲み、酔うとホグナを手に歌い出す。
港での歌は流石に控えるが中央大陸の祝い唄を好んで歌う。
男女で歌う歌が多くカムは無理矢理付き合わされる。
結婚式には後輩として必ず歌姫が1人か2人呼ばれており、職権乱用で小さな酔っ払いがホグナを渡して歌わせる。
港で鍛えた声が響き渡り、毎日演奏しているので技量も格段に上達している。
親族として同席しているホグナの師匠達も黙っていられない。
結局毎回同じパターンで式は賑やかに盛り上がって進行する。
5人目に呼ばれた結婚式ではほとんどの女性がホグナを持参し、賑やかな宴が続いた。
サラは必ず参戦して盛り上がり、最後にカムが背負って帰ることになった。
結婚式が一段落すると年末が目前であった。
サラは年末と年始に数日間休むがカムは宿勤めなので休みは無い。
それでも早めに帰りサラと過ごす時間を大切にする。
真夜中、寝ていると遠くから新年を告げる時の教会の鐘が聞こえてくる。
「新しき年に感謝」
サラ小さい声で呟く。
「新しき年に感謝」
カムも小声で呟き脇に眠るサラを抱きしめる。
サラもカムの胸に顔を埋めてじっとしている。
直に静かなサラの寝息が聞こえて来る。
無意識にカムの胸に頬擦りして息を付く。
サラを抱きしめたまま、カムも意識を手放して行く。
翌朝、眠い目をこすりながらサラは役所、カムは宿へと向かう。
カムはいつも通りの帳場での接客と温泉区役員としての挨拶回りがある。
サラは気楽なもので顔合わせと挨拶、全員で新年を祝ってから酒を飲んでお終いである。
「サラさん、新しき年に感謝」
「クー、新しき年に感謝」
女子は氷花祭りや愛湯の衣装と同じ様な祝服を着て、頭に祭りと同じ帽子を被っている職員が多い。
役所の職員には地元民が多いと感じていたが、再認識させられる。
サラは何時もどおりの黒の修服である。
幸い男性が黒色系の服を着ているので目立つことは無かった。
役所に近づくにつれて多くの挨拶が行き交っている。
処内に入るとほぼ全員揃っており、処長と二人で処員に挨拶する。
登用処の職員が呼びに来るのを待って、処長を連れて所長室に向かう。
廊下に出ると、各処から処長が続々と所長室に向かっている。
互いに廊下で挨拶を交わして連れ立って所長室に入る。
既に登用処長が応接椅子で所長と向き合って坐っていた。
所長室の会議テーブルで所長の挨拶を聞いた後、さっさと退出しようとするサラを所長が呼び止める。
「サラ君、すまんが町長から君の同道を頼まれてね、悪いが付き合ってくれないか」
処で新年を祝い、酒を飲んだら直に帰るつもりでいた。
ただ家に帰ってもカムを待つだけの身なので了承した。
各処から乾杯の歓声が聞こえる中、役所の玄関に回された馬車で所長と登用処長、サラの三人で町長の館に向かう。
ホグの町の町長は名誉職である。
引退後にホグで余生を送る貴族の老人が互選で決めている。
実務は全て役所が行うので、名目的な飾りである。
ただ、諸外国からの来客の接待は、身分の低い所長では荷が重たい。
このため飾りであっても貴族の長は必要な存在であった。
今の町長は元侯爵である。
息子に爵位を譲り隠居したとはいえ、タナス国の元有力貴族である。
館に向かう馬車で所長と登用処長は緊張していた。
年末まで後2週と迫ると、再びサラは王都に帰還する貴族達の手配で忙しくなる。
船の貯留とスケジュール調整、馬車や積荷の手配などに忙殺される。
しかも、時間にルーズな貴族が多く、出航が深夜まで及んでしまう。
貴族の来訪時に学習したカムがいち早く港の宿を確保したため、歌姫達も安心して夜の船出を見送れた。
特に王の船への見送りはサラが先頭に立った。
王の船との理由ではなく、歌に酒を飲む喜びをたっぷり織り交ぜて歌い上げ、エリスを十分に怒らせたかったのだ。
甲板で怒るエリスに嬉しそうに手を振るサラ、乗船した女官達が一斉に非難の眼差しを送る。
帰りは王都まで1週間近い長旅となるのである。
カムも見送りの仕事が多くなるので、サラと二人で港の宿に宿泊した。
最初は久々の内風呂で恥かしがったサラであったが、結局風呂で寝入ってしまうため、洗髪も含めてカムが面倒を見ることになる。
朝の食堂で寝ぼけ眼のサラを甲斐甲斐しく世話するカムを同宿の歌姫達が興味津々で観察する。
王の出立後、サラが安心してカムに甘えるようになる。
実はアリサが解らなかっただけで、サラもアリサを十分に意識していたのである。
ただ、子供相手と思い態度に出ないように気を付けていた。
勿論恥かしいのでカムにも気付かれないようにした。
ただ、カムは知らなかったが、帰宅したカムからアリサの匂いがするのである。
直ぐに風呂へ行かせたが、風呂から帰っても匂いを纏っているような気がした。
他の雌が二人だけの場に入り込み、存在を主張している様で心が騒いだ。
これが一月続いたのである。
匂いの強い日はカムを締め上げようとすら思ったが自重した。
数日前からこの匂いがやっと無くなった。
やっと安心してカムの匂いを感じて過ごせるようになった。
勿論恥かしいからカムには話せない。
薄れる意識の中でカムに髪を洗って貰いながら、幸せを堪能していのである。
貴族達が帰ると年末が目前となる。
秘密会議のメンバーの結婚式が一斉に始まり忙しくなる。
会場は宿であったり、自宅であったり、組合の会館であったりとそれぞれの家が習慣とする場所で行われた。
全ての結婚式に呼ばれて出席するが、毎回それぞれの家の違いを知り驚かされる。
昔の習慣を色濃く残す家や中央大陸の文化に強く影響を受けた家など、家風に色濃く表れていた。
ただ、共通することは、儀式に古い習慣が織り込まれていること。
意味を知らずに古語が語られている。
最初の結婚式で儀式の言葉が取り違えられていたので、カムが興味から正しい言葉に並べ変えて歌ってみる。
小声であったが、並べられた神器が反応して驚かれ、そして感謝された。
同様な事が数回続き、タナス国の有名人であるとの認識から、自分達の輪の中の語り部として認識されるようになり、結婚式前の儀式にも呼ばれるようになる。
秘密会議のメンバーは非常に喜んだ。
親しい身内として最初から呼びたかったが親族に反対されていたのである。
ここでも、カムは多くを発見する。
古語よりさらに古い言語使われ、古い儀式が伝承されていたのである。
神器が反応するものから、庭に音楽を奏でる柱が出現するもの、中には地中から礼拝堂らしき建物が出現するものまであった。
勿論途中からカムは自重するようになる。
結婚式で死人が出ては冗談にもならない。
カムとサラからの贈り物も話題となった。
花婿と花嫁は恐縮したが、二人は珍しい物が手に入ると取り分けて用意していたのである。
二人が珍しいと思う物は、普通であれば物凄く入手困難な物なのである。
古物商が薄汚れたガラクタと思っていたものが実は精緻な刻印が施された魔具であることが多く、ホグの町には火が無くても鍋を暖める皿や空気中の水を集める水の減らない壺等の名人の作品がごろごろしていたのである。
サラはエリスが帰ってからは、実に嬉しそうに酒を飲む。
結婚式でも遠慮せずに酒を飲み、酔うとホグナを手に歌い出す。
港での歌は流石に控えるが中央大陸の祝い唄を好んで歌う。
男女で歌う歌が多くカムは無理矢理付き合わされる。
結婚式には後輩として必ず歌姫が1人か2人呼ばれており、職権乱用で小さな酔っ払いがホグナを渡して歌わせる。
港で鍛えた声が響き渡り、毎日演奏しているので技量も格段に上達している。
親族として同席しているホグナの師匠達も黙っていられない。
結局毎回同じパターンで式は賑やかに盛り上がって進行する。
5人目に呼ばれた結婚式ではほとんどの女性がホグナを持参し、賑やかな宴が続いた。
サラは必ず参戦して盛り上がり、最後にカムが背負って帰ることになった。
結婚式が一段落すると年末が目前であった。
サラは年末と年始に数日間休むがカムは宿勤めなので休みは無い。
それでも早めに帰りサラと過ごす時間を大切にする。
真夜中、寝ていると遠くから新年を告げる時の教会の鐘が聞こえてくる。
「新しき年に感謝」
サラ小さい声で呟く。
「新しき年に感謝」
カムも小声で呟き脇に眠るサラを抱きしめる。
サラもカムの胸に顔を埋めてじっとしている。
直に静かなサラの寝息が聞こえて来る。
無意識にカムの胸に頬擦りして息を付く。
サラを抱きしめたまま、カムも意識を手放して行く。
翌朝、眠い目をこすりながらサラは役所、カムは宿へと向かう。
カムはいつも通りの帳場での接客と温泉区役員としての挨拶回りがある。
サラは気楽なもので顔合わせと挨拶、全員で新年を祝ってから酒を飲んでお終いである。
「サラさん、新しき年に感謝」
「クー、新しき年に感謝」
女子は氷花祭りや愛湯の衣装と同じ様な祝服を着て、頭に祭りと同じ帽子を被っている職員が多い。
役所の職員には地元民が多いと感じていたが、再認識させられる。
サラは何時もどおりの黒の修服である。
幸い男性が黒色系の服を着ているので目立つことは無かった。
役所に近づくにつれて多くの挨拶が行き交っている。
処内に入るとほぼ全員揃っており、処長と二人で処員に挨拶する。
登用処の職員が呼びに来るのを待って、処長を連れて所長室に向かう。
廊下に出ると、各処から処長が続々と所長室に向かっている。
互いに廊下で挨拶を交わして連れ立って所長室に入る。
既に登用処長が応接椅子で所長と向き合って坐っていた。
所長室の会議テーブルで所長の挨拶を聞いた後、さっさと退出しようとするサラを所長が呼び止める。
「サラ君、すまんが町長から君の同道を頼まれてね、悪いが付き合ってくれないか」
処で新年を祝い、酒を飲んだら直に帰るつもりでいた。
ただ家に帰ってもカムを待つだけの身なので了承した。
各処から乾杯の歓声が聞こえる中、役所の玄関に回された馬車で所長と登用処長、サラの三人で町長の館に向かう。
ホグの町の町長は名誉職である。
引退後にホグで余生を送る貴族の老人が互選で決めている。
実務は全て役所が行うので、名目的な飾りである。
ただ、諸外国からの来客の接待は、身分の低い所長では荷が重たい。
このため飾りであっても貴族の長は必要な存在であった。
今の町長は元侯爵である。
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