魔符屋の倅・・・・・魔力は無いけど、オーラで頑張る

切粉立方体

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21 遺跡

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「・・・・レオさんとジュリアさんが戦ってたのは、大蜥蜴のスケルトンだったぜ。だからここは死霊遺跡である可能性が高いと思う。腐敗臭がしないから、かなり古い遺跡だと思うぜ」
「骨系の遺跡か。姉さんに聞いた事があるよ」
「タナス、骨系って何んだ」
「外界から千年以上閉ざされていた遺跡のことだよ。遺跡って一番奥に小さな邪素貯まりを持っていて、邪素の力を使って、魔獣を作り出す能力があるんだ。でも、長期間外界から新しい生き物が入って来ないと、遺跡は魔獣の肉体を作れなくなるらしいんだよ。それで骨とか霊に魔石を核として命素を宿らせて、魔獣の代わりにするんだ。だから魔獣の替りにスケルトンが護っている遺跡を骨系の遺跡って呼んでるんだよ」
「まだ浅い階層だから、相手はゴブリンとかオークのスケルトンだろうな。火も雷も効果が無いから、ルイーズ、ソフィア、クロエは魔法じゃなくて物理攻撃で倒してくれ。逆にスケルトンが火や雷の力を纏うと、難易度が跳ね上がるからさ」
「騎士爵風情が私を呼び捨てにするなんて生意気ですけど、緊急事態だから我慢します。了解するわ」
「私も何か腹が立つけど了解よ」
「了解だけど、嘘だったら制裁よ」
「・・了解だ。それじゃ奴らの倒し方を説明するぞ、大事な話だからちゃんと聞いてくれよ」

 全員がウィルに注目する。

「狙う場所は腰骨だ。腰骨を砕けば、骨が再生するまで立ち上がれなくなる。仰向けだと抵抗されるから、倒した時に腹這いにさせるのがコツだ。肋骨の間から刃を入れて胸の結界を破壊する。胸の中に浮かんでいる魔石を弾き出せば、灰になって崩れる。」
「股間を切上げれば良いのね。得意ですわ」

 クロエが恐ろしいことを言う。

「ああ、でも仰向けだと結界を破壊する間、俺達は無防備になる。攻撃してくる奴の相手をしたくなるが、仰向けのゴブリンやオークのスケルトンの攻撃力なら、防御結界が十分に守ってくれる。怖いし少し痛いんだけど、相手の攻撃を無視して結界破壊に集中した方が、結果的に最小の被害で仕留められる。立ってる時に、一発で結界と魔石を破壊できる自信があれば別だけど、立っている時の攻撃力は強いし、肋骨に武器を絡め捕られたら命取りだ。十分気を付けてくれ。問題はゴーストが混じっていた時だ。ゴーストには結界が利かない。物理的な攻撃力はないんだが、体力と生命力がごっそり吸われる。ユーリ、聖符は持っているか」
「ええと・・、初級が五束、中級が二束、上級が一束あるが、どれにする」
「・・・そりゃ有り難いな、初級で十分だ。奴等には聖魔法しか効かないんだ。攻撃は出来ないけど、しばらく近付いて来なくなる」
「それじゃ半束づつ配るよ」
「あーあ、こんな事なら、聖剣も持って来れば良かったですわ」
「ええ、霊との戦いに紙の玩具を使うなんて恥ですわね」
「聖剣鍛冶と聖宝珠の家系の者が揃っていながら、玩具に頼ったなんて外聞が悪すぎますわ」

 玩具呼ばわりされると魔符工房の息子としては面白くないが、返してくれとも言えないので我慢する。

「取り囲まれたら、中に一人を残して五人で円陣を組む。誰かが結界を壊されたら、中の一人と交替して急いで結界を張り直すんだ。でもそんな事態は出来れば避けたい。最初はあそこの入口まで誘き寄せて迎え討つ」

 周囲を見回すと、僕達が落ちた場所は神殿の礼拝堂の様な感じのドーム型の天井を持つ石壁の大きな部屋で、入口が一ヶ所だけある。

「三人で入口を塞いで迎え撃ってくれ。最初は俺とユーリとタナスで誘き出すから、ルイーズ達が迎え討ってくれ。俺達は後ろで待機して、結界が壊れるか、体力が限界になったら交替する」
「ほほほ、まあ良いでしょ。御手並みを拝見させて頂くわ」
「あなた達、逃げ足は速そうですものね」
「まあ、精々頑張りなさい」

 光符を翳したウィルを先頭に、通路を歩く。
 外は小さな前室になっており、五方に通路が伸びていた。
 僕達は、一番左側の通路を最初に調べることにした。
ーーーーー

「五百八十七、五百八十八、五百八十九・・・」

 僕が歩数を数え、タナスが地図を書く。
 通路脇にある七十三番目の部屋を覗き込んだ時だった。
 部屋の中に骨がぶつかり合う音が響き渡り、闇の中で無数のスケルトンが立ち上がった。

『ヒー』

 背後から地響きの様な音が迫って来る。
 膝が振るえて転びそうになるのを我慢しながら、入口を目指して必死に走った。
 振り返ると、光符の灯りが届く範囲は無数の骸骨で埋め尽くされていた。

 恐怖で膝に力が入らない、失禁しそうになるのを何とか堪え、光符で照らされた拠点の入口に走り込んだ。
 ウィルはルイーズの後ろ、僕はソフィアの後ろ、タナスはクロエの後ろに控える。
 ルイーズ達の剣術の力量は確かだ、流石に子爵様の御令嬢だ。
 股間を切り上げ、足蹴にしたスケルトンの胸を一刺ししている。

 ソフィアの結界が破壊された。
 スケルトンを足蹴にしている隙に、何度か攻撃を受けていたので、スケールメイルの結界でも耐えられなかったのだろう。
 怖かったが、交代してスケルトンの前に立つ。
 足が動かずのめりそうになったが、剣が運良く骸骨の腰骨に届き、骨を叩き折った。
 バランスを崩して倒れた骸骨の肋骨の間に刃を突き入れ、剣で結界を破壊する。
 魔石を弾き飛ばすと、骸骨が崩れて灰に変った。
 頭の中でファンファーレが響く。

 少し頭が冷え、冷静に次の骸骨を観察すると、相手の棍棒の動きは遅く、相手も、次の相手の攻撃も余裕で見えている。
 剣を掌の延長と思い込み、ファラ師匠から教わった股間への攻撃の型をトレースする。
 一歩踏み込んで相手の腰骨を断つ、考えなくても、身体で覚えた動きが再現出来ている。
 肋骨に刃を差し入れ、魔石を弾き飛ばす。
 夢中で目の前の骸骨と戦い続け、もう一度頭の中でファンファーレが鳴った時、ソフィアに後ろから肩を叩かれた。

「ユーリ替われ」
「了解」

 目の前の骸骨を跳ね除け、ソフィアと入れ替わる。
 両脇は既に、ルイーズとクロエに入れ替わっていた。

「おう、ユーリ粘ったな。すまんが治癒札くれないか、交替間際に一発喰らっちまった」
「ユーリ、僕も」
「あっ、すまん、先に渡しておけば良かったな」
 
 半束づつ渡しておく。
 二人と入れ替わったルイーズとクロエにも渡し、ソフィアの分も託しておく。
 何度か入れ替わり、三回目のファンファーレが頭の中で鳴ると、急に身体が軽くなり、相手の動きが止まって見える様になった。
 相手の動きに合わせて懐に入り、肋骨の間に刃を差し入れ、結界を破壊して一発で魔石を弾ける様になった。
 後ろから肩を叩かれたのでソフィアと入れ替わろうとしたら、後ろがクロエに替わっていた。

「ユーリだけ入れ替わりが少ないから、ソフィアが焦れてクロエと替わったらしいよ。ユーリは僕の倍以上粘ってるんだって、何か自信を無くしちゃうな」
「何かすまん」

 四回目のファンファーレが鳴った直後にウィルとタナスが魔力切れで結界が張れなくなり危うい状態になったが、僕もレベルアップで集中力が増し、なんとか骸骨が途絶えるまで耐えきった。
 ルイーズとソフィアとクロエも体力の限界だったらしく、座り込んでいる。
 敷布を敷いて三人を少し休ませ、僕とウィルとタナスで魔石を拾い集めながら周囲を見張る。

「魔力は回復したか」
「いや、まだ結界が張れるほど回復してねえな」
「僕もまだ駄目みたい」
「魔符なら大丈夫か」
「辛うじてかな」
「うん僕も」
「それじゃ半束渡しておくぞ」
「面目ない」
「うんありがと」
 
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