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Ⅱ 第二学年
28 竜人の里2
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館の中の鍛錬場なのだろうか、良く踏み固められた広い中庭に無理矢理連れて行かれた。
中央に仕切り線が描かれており、そこに若い竜人と向き合って立たされる。
若い竜人は竜姫に良い処を見せたいらしく、ちらちらと竜姫に視線を送って自己完結して舞い上がっている、人族に負けるとは微塵も考えていないのだろう。
大広間で様子を見ていた人達は、全員が思い思いに酒と料理と座布団を持って見に来ている、良い気なもんだ。
相手の関係者なのだろうか、盛り上がって、拳を振り上げて気合いを入れている一団もいる。
戦闘好きと言われている竜人族らしい雰囲気だ。
周りを竜人に囲まれている状態なので逃げ出す訳にも行かない、しかも次の若い竜人達が籤を引いて順番待ちをしている。
仕方が無い、気が乗らないが相手をすることにした、うん、雄でも尻尾は有る事だし精々楽しませて貰おう。
審判は竜王自らが勤めるようだ、さっき怖い顔をしてたから、たぶん娘が自ら宣言した相手は感情的に受け入れ難いのだろう、うん父親の宿命だ。
「始め」
相手が本性を現して巨大な竜に変身して僕を威圧する、だが僕は真面に相手をする気はさらさら無い。
僕の作戦は何時もどおりワンパターンだ。
ダミーを残して自分は精神体に変身し、相手の背後から襲いかかって定義空間の皮相に引きずり込む。
相手はまんまと注文に嵌った、でも駄目だ此奴は、竜姫に比べて基礎体力が無さ過ぎる、尻尾を少し擦ったら、口から泡を吹いて気絶してしまった。
仕方が無いので現実世界に引っ張り出して地面の上に転がした。
竜人達の間に驚愕が走る、竜人の若者が撲を襲ったと思ったら、何か訳が判らない内に口から泡を吹いて転がされているのだ。
竜人が人に負けるとは思っていなかったのだろう。
二人目は緊張した面持ちで僕と向かい合った、こいつには期待したのだが、残念ながら同じように脆かった。
これから技を繰り出そうと思った時に気絶してしまうのだ、欲求不満になりそうだ、仕方が無いから、次は順番待ちしてる奴にも襲いかかって、二匹纏めて皮相に引きずり込んで相手をしてやった。
でも駄目だ此奴等、基礎体力が無いから直ぐに気絶してしまう。
「卑怯だぞ貴様」
全員を片付けたと思ったら、最初の奴が起き上がってクレームを付けて来た。
殴り合いと思っていたら、尻尾を擽り倒されたので納得が行かなかったらしい。
でも駄目と言う説明は聞いていないし、相手の得意な土俵で相撲を取る気も無い、第一に楽しみが無くなる。
「正々堂々と勝負を、うわっ」
面倒臭いし喧しいので、もう一回皮相に引きずり込んで、みっちりと相手をしてやった。
「雷人君の勝ちで良いなお前等」
不満は有りそうだったが、何度か再戦してやると文句を言う奴は居なくなった、最初の奴は四回挑戦し、まだ白目を剥いてピクリとも動かない。
「なら、竜姫を宜しく頼む」
一瞬何を言われたか解らなかった、はっ!しまった、また尻尾に夢中になって、本来の目的を忘れ、結果的にはまんまと竜姫の策に填まってしまったのだ。
竜姫が嬉しそうな顔をしている、たぶんこの餓鬼は、僕を出汁にして里の外で過ごせるのが嬉しいのだろう。
うやむやのうちに、新年の儀は僕と竜姫の訳の解らない祝宴にされてしまった。
結局竜姫を連れ帰る事になってしまった。
「まあ、竜姫ちゃん、お家に帰らなくても良くなったの」
「はい、父さんも母さんも雷人さんと一緒に暮らしても良いと言ってました」
「まあそうなの、雷人、あなた金持ちなんだから竜姫ちゃん養ってあげなさい。でも手出しちゃ駄目よ、犯罪だから」
「お母さん宜しくお願いします」
「はいはい、宜しくね」
なんか家の親も適当だ、竜姫は目の色を変えて本格的に撲の部屋のテレビゲームを物色している。
正月休み中ずっとゲームで遊んでいた竜姫が少々心配だったので、正月明けから学院にぶち込んだ。
手続きはもう手慣れたものだ、ゲーム機から引き剥がすのに少々苦労したが、ランドセルを背負って天狗の子供達と一緒に元気に初等部へ通っている。
「豆撒きやりたい」
「うん僕らも、やった事無い」
事務所で夕飯を食わせていたら、竜姫と天狗の子供達が突然言い始めた、学校で豆撒きの話が出たらしい。
僕は毎日鬼を祓っているような物なので節分の豆撒きをしたことがない。
「鬼役は雷人な」
「適役過ぎて何にも言えないな、じゃっ、節分のお知らせを得意先に配るか」
「千枚くらい作れば良いか」
「ああ、人数分の酒集めるからそれだけ必要だろう」
明美と香だ、また得意先に酒を強請る積りだ、話が大きくならなければ良いが。
「父の知り合いに福の神が居るから呼ぶか」
えっ!
中央に仕切り線が描かれており、そこに若い竜人と向き合って立たされる。
若い竜人は竜姫に良い処を見せたいらしく、ちらちらと竜姫に視線を送って自己完結して舞い上がっている、人族に負けるとは微塵も考えていないのだろう。
大広間で様子を見ていた人達は、全員が思い思いに酒と料理と座布団を持って見に来ている、良い気なもんだ。
相手の関係者なのだろうか、盛り上がって、拳を振り上げて気合いを入れている一団もいる。
戦闘好きと言われている竜人族らしい雰囲気だ。
周りを竜人に囲まれている状態なので逃げ出す訳にも行かない、しかも次の若い竜人達が籤を引いて順番待ちをしている。
仕方が無い、気が乗らないが相手をすることにした、うん、雄でも尻尾は有る事だし精々楽しませて貰おう。
審判は竜王自らが勤めるようだ、さっき怖い顔をしてたから、たぶん娘が自ら宣言した相手は感情的に受け入れ難いのだろう、うん父親の宿命だ。
「始め」
相手が本性を現して巨大な竜に変身して僕を威圧する、だが僕は真面に相手をする気はさらさら無い。
僕の作戦は何時もどおりワンパターンだ。
ダミーを残して自分は精神体に変身し、相手の背後から襲いかかって定義空間の皮相に引きずり込む。
相手はまんまと注文に嵌った、でも駄目だ此奴は、竜姫に比べて基礎体力が無さ過ぎる、尻尾を少し擦ったら、口から泡を吹いて気絶してしまった。
仕方が無いので現実世界に引っ張り出して地面の上に転がした。
竜人達の間に驚愕が走る、竜人の若者が撲を襲ったと思ったら、何か訳が判らない内に口から泡を吹いて転がされているのだ。
竜人が人に負けるとは思っていなかったのだろう。
二人目は緊張した面持ちで僕と向かい合った、こいつには期待したのだが、残念ながら同じように脆かった。
これから技を繰り出そうと思った時に気絶してしまうのだ、欲求不満になりそうだ、仕方が無いから、次は順番待ちしてる奴にも襲いかかって、二匹纏めて皮相に引きずり込んで相手をしてやった。
でも駄目だ此奴等、基礎体力が無いから直ぐに気絶してしまう。
「卑怯だぞ貴様」
全員を片付けたと思ったら、最初の奴が起き上がってクレームを付けて来た。
殴り合いと思っていたら、尻尾を擽り倒されたので納得が行かなかったらしい。
でも駄目と言う説明は聞いていないし、相手の得意な土俵で相撲を取る気も無い、第一に楽しみが無くなる。
「正々堂々と勝負を、うわっ」
面倒臭いし喧しいので、もう一回皮相に引きずり込んで、みっちりと相手をしてやった。
「雷人君の勝ちで良いなお前等」
不満は有りそうだったが、何度か再戦してやると文句を言う奴は居なくなった、最初の奴は四回挑戦し、まだ白目を剥いてピクリとも動かない。
「なら、竜姫を宜しく頼む」
一瞬何を言われたか解らなかった、はっ!しまった、また尻尾に夢中になって、本来の目的を忘れ、結果的にはまんまと竜姫の策に填まってしまったのだ。
竜姫が嬉しそうな顔をしている、たぶんこの餓鬼は、僕を出汁にして里の外で過ごせるのが嬉しいのだろう。
うやむやのうちに、新年の儀は僕と竜姫の訳の解らない祝宴にされてしまった。
結局竜姫を連れ帰る事になってしまった。
「まあ、竜姫ちゃん、お家に帰らなくても良くなったの」
「はい、父さんも母さんも雷人さんと一緒に暮らしても良いと言ってました」
「まあそうなの、雷人、あなた金持ちなんだから竜姫ちゃん養ってあげなさい。でも手出しちゃ駄目よ、犯罪だから」
「お母さん宜しくお願いします」
「はいはい、宜しくね」
なんか家の親も適当だ、竜姫は目の色を変えて本格的に撲の部屋のテレビゲームを物色している。
正月休み中ずっとゲームで遊んでいた竜姫が少々心配だったので、正月明けから学院にぶち込んだ。
手続きはもう手慣れたものだ、ゲーム機から引き剥がすのに少々苦労したが、ランドセルを背負って天狗の子供達と一緒に元気に初等部へ通っている。
「豆撒きやりたい」
「うん僕らも、やった事無い」
事務所で夕飯を食わせていたら、竜姫と天狗の子供達が突然言い始めた、学校で豆撒きの話が出たらしい。
僕は毎日鬼を祓っているような物なので節分の豆撒きをしたことがない。
「鬼役は雷人な」
「適役過ぎて何にも言えないな、じゃっ、節分のお知らせを得意先に配るか」
「千枚くらい作れば良いか」
「ああ、人数分の酒集めるからそれだけ必要だろう」
明美と香だ、また得意先に酒を強請る積りだ、話が大きくならなければ良いが。
「父の知り合いに福の神が居るから呼ぶか」
えっ!
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