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Ⅱ 第二学年
27 竜人の里1
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竜王夫妻には撲の家で仮眠を取って貰い、翌朝、僕も同行して彼らの家に向かう事にした、竜姫はこれがゲームのやり納と思ったのか、寝ないでテレビに齧りついていた。
それにしても、新年早々トラブルの臭いがプンプンする、神様は僕の願いを聞き流してしまったのだろうか。
竜角寺は成田の先なので、猫毛駅から成田行きの快速列車に乗るのか思ったのだが、何故か竜王さん達は猫毛海岸駅へ向かった。
路地を曲がる毎に護衛の竜人達が増えて行き、駅に着いた時には三十人くらいの黒いコートにサングラスを掛けた強面の竜人さん達に囲まれていた。
うん、何だか拉致された気分だ。
初売りに向かう買い物客だろうか、駅は込み合っていた。
ホームの真ん中あたりで電車を待っていると、さほど待たずに電車が入って来た。
客で通勤ラッシュ並みに込み合う車両の真ん中に、何故か古めかしい木造の車両が一両混じっている。
誰もこの車両に気が付かない様で、誰も乗り込んで来ない。
僕達はその車両に乗り込んで行った。
中も外見同様で昭和の車両のような、木の床のレトロな雰囲気だった、乗っているのは僕等と護衛の人達だけだ。
椅子に腰掛け外を見る、やはり誰もこの車両に気が付いていない。
列車が走り出す、昨夜は竜姫のゲームの相手をやらされたので少々寝不足だ、うとうとして目が覚めたら、モノレールの車両に混じってモノレールの軌道を走っている。
千葉駅に着いたら、何処を如何走ればそうなるのか解らないが、再びJRの成田空港行きの特急列車の間に紛れ込んでいた。
途中駅に停まる事無く、列車は順調に走っていたが、途中トンネルを抜けると急に家が無くなり、印旛沼なのだろうか、一面に水の広がる世界を列車が走っていた。
水の上に線路が延々と伸びている。
湖面から丘を登る石段の前で列車が止まった、列車を降りて石段を登る。
丘の上には集落が広がっていた、その中の一際重厚で大きな、お寺の様な日本家屋が竜王さんの住いだった。
玄関には大勢の女中さんが出迎え、奥の豪華な料理が用意された大広間に通された。
そこでは竜人達が平伏して竜王夫妻を待っていた。
「うむ、待たせたな。竜姫も揃ったのでこれより新年の義を始める」
太鼓が打ち鳴らされる、大広間の外の廊下にもこの館の使用人だろうか、正座して並んだ。
もう一度太鼓が鳴らされると、全員が上座に座っている竜王夫妻と竜姫に平伏する。
『あけましておめでとうございます』
僕は客用の席なのだろうか、左手の上席に座らされている、勿論周囲に併せて平伏して挨拶した。
竜王と竜妃が挨拶して、部族代表が祝辞を宣べる、そして酒盛りが始まった。
竜王と竜妃は注ぎに来る族長達の相手をしている、このへんは竜族も人間社会と一緒らしい。
竜姫の所へも若い竜人達が注ぎに来ているが、竜姫に冷たくあしらわれている。
何人かは竜姫の尻に手を伸ばして殴り倒されている、竜人はロリが多いのだろうか。
隣に座っている竜人の爺さんに聞いてみる。
「ああ、あれか、人族には尾が無いからのう。ありゃ求愛行動じゃ。相手の尾に触れて己の意思を示すんじゃ。じゃがありゃ脈無しじゃな、ほんに根性が無い。儂が若かった時は抑え付けて尾を撫で回したもんじゃがのー」
「でも、竜姫はまだ子供でしょ」
「子造りには早いが、相手を決めるには遅すぎるくらいじゃ。竜王様は今年中には相手を決めたいそうじゃぞ。なんでも相手が決まれば花嫁修業にも身が入るだろうとおっしゃってたそうじゃ。姫様は脱走の常習犯じゃからの」
竜姫が二十四人目の男を殴り飛ばした、一族の期待を担っているのだろう、男達も必死だ。
突然竜姫が立ち上がり僕の方へ走って来る、そして僕を強引に立たせて竜王夫妻の前に連れて行く。
「父様、母様。妾はこの者の求愛を受けようと思う」
周囲の若い竜人から敵意の眼差しが降り注ぐ。
「竜姫それは誠か」
「はい、父様。こやつは毎日妾の尾を撫で回して求愛しております」
確かに事実だが、制裁を加えていただけで、求愛してた訳じゃない。
竜王さんと竜妃さんの背後から黒いオーラが立ち昇っている。
突然若い竜人の一人が目の前に立ち塞がった。
「人間の分際で、竜姫様に求愛するなど分不相応だ。思い知らせてやる。勝負しろ」
「うむ、許そう。それでは両人庭へ出ろ」
おーい、僕の意思は聞いてくれないの。
それにしても、新年早々トラブルの臭いがプンプンする、神様は僕の願いを聞き流してしまったのだろうか。
竜角寺は成田の先なので、猫毛駅から成田行きの快速列車に乗るのか思ったのだが、何故か竜王さん達は猫毛海岸駅へ向かった。
路地を曲がる毎に護衛の竜人達が増えて行き、駅に着いた時には三十人くらいの黒いコートにサングラスを掛けた強面の竜人さん達に囲まれていた。
うん、何だか拉致された気分だ。
初売りに向かう買い物客だろうか、駅は込み合っていた。
ホームの真ん中あたりで電車を待っていると、さほど待たずに電車が入って来た。
客で通勤ラッシュ並みに込み合う車両の真ん中に、何故か古めかしい木造の車両が一両混じっている。
誰もこの車両に気が付かない様で、誰も乗り込んで来ない。
僕達はその車両に乗り込んで行った。
中も外見同様で昭和の車両のような、木の床のレトロな雰囲気だった、乗っているのは僕等と護衛の人達だけだ。
椅子に腰掛け外を見る、やはり誰もこの車両に気が付いていない。
列車が走り出す、昨夜は竜姫のゲームの相手をやらされたので少々寝不足だ、うとうとして目が覚めたら、モノレールの車両に混じってモノレールの軌道を走っている。
千葉駅に着いたら、何処を如何走ればそうなるのか解らないが、再びJRの成田空港行きの特急列車の間に紛れ込んでいた。
途中駅に停まる事無く、列車は順調に走っていたが、途中トンネルを抜けると急に家が無くなり、印旛沼なのだろうか、一面に水の広がる世界を列車が走っていた。
水の上に線路が延々と伸びている。
湖面から丘を登る石段の前で列車が止まった、列車を降りて石段を登る。
丘の上には集落が広がっていた、その中の一際重厚で大きな、お寺の様な日本家屋が竜王さんの住いだった。
玄関には大勢の女中さんが出迎え、奥の豪華な料理が用意された大広間に通された。
そこでは竜人達が平伏して竜王夫妻を待っていた。
「うむ、待たせたな。竜姫も揃ったのでこれより新年の義を始める」
太鼓が打ち鳴らされる、大広間の外の廊下にもこの館の使用人だろうか、正座して並んだ。
もう一度太鼓が鳴らされると、全員が上座に座っている竜王夫妻と竜姫に平伏する。
『あけましておめでとうございます』
僕は客用の席なのだろうか、左手の上席に座らされている、勿論周囲に併せて平伏して挨拶した。
竜王と竜妃が挨拶して、部族代表が祝辞を宣べる、そして酒盛りが始まった。
竜王と竜妃は注ぎに来る族長達の相手をしている、このへんは竜族も人間社会と一緒らしい。
竜姫の所へも若い竜人達が注ぎに来ているが、竜姫に冷たくあしらわれている。
何人かは竜姫の尻に手を伸ばして殴り倒されている、竜人はロリが多いのだろうか。
隣に座っている竜人の爺さんに聞いてみる。
「ああ、あれか、人族には尾が無いからのう。ありゃ求愛行動じゃ。相手の尾に触れて己の意思を示すんじゃ。じゃがありゃ脈無しじゃな、ほんに根性が無い。儂が若かった時は抑え付けて尾を撫で回したもんじゃがのー」
「でも、竜姫はまだ子供でしょ」
「子造りには早いが、相手を決めるには遅すぎるくらいじゃ。竜王様は今年中には相手を決めたいそうじゃぞ。なんでも相手が決まれば花嫁修業にも身が入るだろうとおっしゃってたそうじゃ。姫様は脱走の常習犯じゃからの」
竜姫が二十四人目の男を殴り飛ばした、一族の期待を担っているのだろう、男達も必死だ。
突然竜姫が立ち上がり僕の方へ走って来る、そして僕を強引に立たせて竜王夫妻の前に連れて行く。
「父様、母様。妾はこの者の求愛を受けようと思う」
周囲の若い竜人から敵意の眼差しが降り注ぐ。
「竜姫それは誠か」
「はい、父様。こやつは毎日妾の尾を撫で回して求愛しております」
確かに事実だが、制裁を加えていただけで、求愛してた訳じゃない。
竜王さんと竜妃さんの背後から黒いオーラが立ち昇っている。
突然若い竜人の一人が目の前に立ち塞がった。
「人間の分際で、竜姫様に求愛するなど分不相応だ。思い知らせてやる。勝負しろ」
「うむ、許そう。それでは両人庭へ出ろ」
おーい、僕の意思は聞いてくれないの。
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