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番外編…ユーリオン視点

俺様の唯一③

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ある日、真夜中に目が冷め廊下が騒がしい事に気がついた。
暗い廊下を歩いて音のする方へ行くと光が漏れてる部屋を見つけた。扉を少し開け耳を澄ませると………





「王子といえど邪魔なら排除される。それが頂点に立つ『王家の血筋』というものだ。…………邪魔なら殺される。その理は王家であれ貴族であれ平民であれ変わらないって事だ。未来の国王陛下をお守りできるのは名誉であり誉れ高い事だ。側に寄り添って何があっても俺たちは絶対に殿下を一人にしないようにしよう。」

「そうだなぁ~。それにしても………不届きな奴らが多いなまったく。つーか、良くわかったな?不審者を捕まえるなんてお手柄じゃないか。」

「ああ………さっき捕まえた奴は金で雇われたゴロツキに違いないだろう。きっと誰の差し金か聞いても答えられないだろうな。まぁ………俺の考えた罠に嵌まるなんてゴロツキでもかなり弱い奴らが来たんだろう。」

「いやいや!弱くないだろっ!あんな罠、俺でもきっと見抜けず宙釣りにされるわっ!」

「あ~アレクは馬鹿だからな。腕は立つが単細胞だし、まぁ………裏をかくの、苦手そうだな………」

「アキラに腕が立つと思われてるなんて初めて知ったな!…………って、アキラの作戦がエゲツないんだよ!馬鹿でも利口でもアレは罠だと気付かないって!」

「こら、声が大き………………………………あ、」

「ん?…………あ、起こしてしまったか?」


聞き覚えのある声が聞こえ思わず扉を開けてしまった。しばらく二人は俺が近くにいるのに気付かず話していたところに、アキラウルが辺りを見回したところで目が合い固まってしまった。


一体なにがあったんだ?いや、さっきの話からして俺はまた………


「また、刺客が忍び込んだのか……」

「「……………………………」」


思わず俯いた。

そう…………俺は唯一の後継者であり、常に命を狙われる立場にいるというのに…………

……………………………?


そういえばここ最近そんな騒動はなかったのに何故?


ま、まさか……………


「殿下。どうかなさいましたか?眠れませんか?それとも厠に用ですか?」

「………………」

「厠か?なら俺が一緒に行こう。城内でも暗いから気をつけないとな。」

「っ……………いや、厠に用はない。」

「そうですか。………………殿下、何か聞きたいことがお有りのようですね。温かいミルクティーでも用意しましょう。………………アレク」

「はいは~い。殿下~ソファーに腰掛けましょうか。」

「…………………あぁ」


促されるままアレキウスに背中を押されソファーに座った。
そしてすぐに温かい紅茶が用意された。いやこれは紅茶か?色が白く濁ってるが……?
カップを受け取り一口…………甘い、な。初めて飲むな。


「如何ですか?ミルクティー」

「………うまい。だが普通の紅茶で良かったぞ?」

「いえ、子供に寝る前にカフェイン摂らせるわけにはいきませんから。」

「かふぇ…………?」

「いえ、こちらの話です。……でも紅茶だから意味がない、か?まぁ少しくらい問題ないだろう。」

「………………」


何か知らない単語が聞こえたが聞いたら流された。まぁ、そんな気にするようなものではないのだろう。


少し間を置いて俺が気になった事を聞いた。やはり、俺はずっとこの二人に守られていたらしい。どおりで夜中に起こされる事が極端に減ったと思った。
何度も俺を暗殺しようと深夜に城に忍び込まれていたらしい。だがアキラウルが事前に罠を城の彼方此方に仕掛けていたらしく未然に防げているらしい。

どんな罠かと聞くと「踏み込むと足に紐が縛り付けられ捕獲されるように仕込んだ物です」と簡単に説明されたが実物を見てないせいかどんな罠なのかあまり理解できなかった。


「もうバレちゃったんだからもうコソコソやる必要ないよな?」

「ええ、そうですね。」

「じゃ~堂々と殿下の前で待機してりゃいいよなっ!」

「はぁ~………良いんじゃないですか。殿下が許してくれるのであれば。」


あれこれと考えてると二人の視線がこちらに向いていた。な、なんだ………?

二人の話いわく、主に二人で俺の警護にあたってるらしく、5時間毎に交代しているらしい。その仮眠室が王室の警護にあたってる騎士団の常住してる駐屯地の一室を借りてるらしいのだが、粗末な部屋で居心地が悪く、なんとかして俺の寝室に護衛と称してソファーなどを借りてそこで休ませてほしかったのだとか。

………俺は、近くに誰一人許したことが無く他人がいるところで休めるだろうかと不安になった。


が、



「この前さぁ~師団長が………………」

「ふはっ。そんな事あったな。あれは思わず笑ってしまったよ。」

「な~!でもその後、理不尽に俺たちに草むしりの刑にあったのは納得行かないよな~」

「まぁ、私達はまだ下っ端だからな。それよりこの前の…………」

「あ~あ~あったわそんな事!あれは辛かったなぁ~。笑うの堪えるのに。」

「私は我慢できたがな。お前はバレて叱られてたな。」

「そうなんだよな~お前だけお咎め無しとかズルいよな~」

「いや、それはお前が……………」


延々と二人で俺の知らない思い出話をし始めた。………まだ就寝の時間であって、多少小声ではあるが、こんな興味の惹かれる話を近くでされては気になって仕方がなく眠れる気がしないんだが。


「………おい」

「あ、す、申し訳ございません殿下っ!煩かったですよねっ!?」

「いや………」

「ふふ……殿下、面白い話をしましょう。この前、陛下と父、宰相が二人で話してた話なんですがね…………陛下が殿下の模った像を城下町の広場の目立つ所に作ろうと言い出した事があるんですよ。」

「は?………お、俺の像?」

「そうです。殿下の姿をした像を、です。」

「………うわぁ~俺は嫌だな。何が嬉しくて自分の像を目立つ所に作りたいと思うんだよ。拷問だよ拷問。」

「ふふ……私も断固拒否です。宰相も一生懸命止めてたんですが作り出す気満々の陛下を誰も止めることができず………」

「つ、作ったのか………?」

「ご安心ください殿下。作る事を阻止致しましたから。」

「え、アキラがか?」

「ええ。まぁ私がボソッと「そんな事された子供の気持ちを考えてください。私ならもう二度と外を歩けなくなります。」って言ったら止めてくださいました。」

「「…………………………」」

「ん?お二人とも、どうかしましたか?…………ああ、それとこの前騎士団長の方がミリヤリーさんの大切な物を触ってしまい個室に引きずられていくのを見ました。後に騎士団長が青を通り過ぎ真っ白な顔して歩いてる姿を見ました。それからミリヤリーさんの私物には地雷が埋まってると言われるようになったのですよ。」

「俺もそれ聞いた。団長より強いミリヤリーさんって何者なんだろ?」

「ミリヤリーさんの情報網は凄いですから、何か弱みでも囁かれたんじゃないかと私は思いますが。」

「そういえばこの話は知ってるか?あの……………」


次々に話題が尽きず話し続ける二人。知らない事、知らない名前、知らない地形、知らない派閥争い………やっと外に出始めた俺にとって知らないことだらけに疎外感を強く感じた。

そして二人の話を聞いてるうちにいつの間にか眠ってしまってたらしく気付けば外は明るかった。
………何故、誰も起こしてこないのだ……?

部屋から出て近くにいた護衛に聞くとアキラウルが俺が起きるまで静かにしてほしいと言っていたらしい。昨日騒がしくしてしまったから寝不足にならないよう自然と起きるのを待ってほしいと言ったらしい。

そして二人はもう訓練所へ行き今はここにいないと言われた。



………この俺が気付かなかった、だと?
いつも、いつ命を狙われてるかわからない毎日に神経を張り詰めていたのに?
俺はあの二人が喋ってるのにも関わらず爆睡していただと?
そしてあの二人が退出していったのに気付かない、だと…………?


そこで漸く、俺は二人を無意識に信頼しているのだと自覚した時だった。




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それからはずっと、二人と共に行動した。
日中は訓練と勉学に励み、夜はどちらかが俺の寝室に留まり、もう一人は扉のすぐ傍で護衛と一緒に待機するようになった。寝室に留まる奴にソファーを貸し、自分で毛布を持ち込み、そこで仮眠を取っている。

………俺の一つ上の二人。たった一つしか違わないのに二人が頼もしく見えるのは、やはり俺がまだまだ未熟だからだろうか………?



更に先程の出来事。二人はあのピンクプラチナの髪の娘を溺愛する姿を見て、さらにアキラウルのあんな優しそうな姿を見て胸のあたりがムカムカしてならない。胸焼けが酷く、つい胸に手を当て抑えてしまった。





「どうかしましたか殿下っ!具合が悪いのですか?」


ハッとして声がした方を向くと………アキラウルが心配そうに俺の顔を伺ってる姿が映った。その後ろからアレキウスが走ってこちらに向かってる姿も見えて何故かホッと安堵した。


「………いや、大丈夫だ。」

「…左様ですか。殿下、無理してこの場にいなくても構まないんですよ?もう挨拶は済みました。もうお部屋に戻られては如何ですか?」

「………アキラウルも一緒か?」

「勿論です。私は殿下から離れたりしません。さぁ、もう役目を果たしました。お戻りになりゆっくりと休みましょう。」


  『勿論です。私は殿下から離れたりしません。』


その言葉を聞いて先程までの胸焼けがスッと無くなった。胸を押さえていた手を離しアキラウルの袖をキュッと掴んだ。するとすぐ袖から手を払われ、ギュッと手を握ってくれた。


「アレキウス、殿下はお疲れの様だ。陛下にこの事を伝えてくれ。私は殿下と部屋に戻る。」

「わかった。すみません殿下。体調が悪いのにすぐに気付けず、申し訳ございません。お冷をお持ちしました。喉を潤してから退場されてはどうですか。」

「……あぁ、貰おう。」


あぁ、そういえば気付けば喉がカラカラだ。アレキウスから渡されたコップを受け取り飲もうとした。………が、俺が受け取る前にアキラウルが奪い取り何故か俺より先に水を飲まれた。


「な、何をするアキラウル!」

「…………………申し訳ございません殿下。お部屋に付いてから私がお入れします。さぁ、戻りましょう。」

「なっ…………!」


何故か無表情で俺の手を取り無理矢理椅子から立たされ引っ張られるように会場から出ていった。その際アレキウスに何か話しかけていたが一体なんだと言うのだろうか…………!




それからいつもの自分の部屋に連れ戻され「準備して参ります」と言い、出ていったきり…………アキラウルは来ることはなかった。





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更新が遅くなり申し訳ございません。リアルが忙しく中々書く暇が取れず遅くなりました。

ユーリオン視点は本編の裏話のような話になってて、何故か本編より長くなりそうな雰囲気が出てきてしまいました(汗)

そして展開がドロドロ………書いてる自分でも「どうしてこうなった!?」と驚く内容となっております。

本編で書けなかったユーリオンとアキラウルの閨事情を書きたいので………もう数話かかります。

最後までお付き合いいただけると有り難いです。
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