25 / 25
番外編2
ジェミーはお嬢様が大好き⑥ 完
しおりを挟む月日は流れ、お嬢様が卒業間近で懐妊したと報告があがった。もうそれだけで公爵家は蜂の巣をつついたように大騒ぎになった。奥様は大喜びしていたが旦那様とノアルーア様が………二人の背中から黒いものが視えるんですけど………。
悪阻が酷いとのことで学園から帰宅してきたお嬢様を見て急いで駆けつけ荷物を奪い去りすぐに寝室へと通す。
体を冷やすことのないよう部屋は暖かく保ち、ベッドはいつも清潔に準備し、いつでも嘔吐できるよう袋を準備したりと思いつく限り準備した。
「お嬢様、寒くないですか?」
「ええ、大丈夫よ」
「お嬢様、もし何か召し上がれるようなら果物を召し上がってください。味が濃いものは戻してしまう可能性があるので禁止ですよ」
「ええ、ええ、わかったわ」
「あとお嬢様、移動する際は必ず私をお呼びくださいね!あと────」
「ジェミー! もうたくさんよ! そんな気を遣わなくても大丈夫よ!」
「お嬢様ぁ~~~………」
もうどうしたらいいかわかんない!近所の妊婦さんにいろいろ話を聞いてアドバイスしてもらったけど、それでも何かしてないと不安で不安でっ!
ついにお嬢様に叱られてしまった。その後、侍女長にも。
「お嬢様、寒かったら言ってくださいね。私が人肌で温め──」
「うっとうしいわよジェミー!!こんなうっとうしいと思ったのはいつぶりかしら!なんで当事者より侍女が焦ってるのよ!」
「うぅ………」
ついに部屋を追い出されてしまった。しかも廊下で待機していた侍女長に呆れた目をむけられてしまったわ………
そんなこんなで数ヶ月。お嬢様が安定期に入り、この機に結婚式をあげようという話が上がり、公爵家はまた大騒ぎになった。
元々お嬢様が学園を卒業と共に結婚する流れだったのでウェディングドレスはできていたが、妊娠したとわかったので微調整する事になった。とくにお腹周りは締め付けてしまわないよう少し緩めに手を加えた。コルセットなんてもっての外で準備はしない事となった。まぁお嬢様ならコルセットなくても体型は靭やかで美しいので必要がないわね。この世界で一番スタイルが良いの!誰にも真似できないわ!
着付けを奥様と侍女長とカタリアーナお嬢様と手分けして準備していく。
着飾ったお嬢様は女神です。
旦那様もノアルーア様もお嬢様の姿を見て褒めていて、奥様カタリアーナ様は涙ぐんでて……私ももらい泣きしました。
そして旦那様のエスコートでお嬢様が聖拝堂に入場して祭壇まで辿り着き殿下へと替わり式が始まる。
そして挙式が終わり次はフラワーシャワーという式典?が始まる。
これはお嬢様からの提案で、なんでも?花の香で周囲を清めることで幸せを妬む悪魔から、新郎新婦を守るというおまじないの意味があるらしい。
様々な花を集め花びらを摘み取り式に参加していただいた貴族たちに説明をして協力してもらい花びらを入れた籠を配り式から出てきた殿下とお嬢様に花びらを蒔いてもらった。そして「おめでとうございます」と口々に祝福の言葉が、歓声が上がる。あぁ、お嬢様の満面の笑みが見れて、なんだか幸せをお裾分けされた気分になった。
「ジェミー!」
「えっ」
急にお嬢様から声をかけられたお嬢様の方を振り向くと、お嬢様が持っていた花束が宙を舞い私の方へと投げられていた。それを掴むと何故か私の後ろを指差され、後ろを振り向くと………
「ジェミー」
「ブラン?」
「これを受け取ってくれないか」
「えっ──………っ! あ、えっ? これ、は……!」
私の後ろにはブランがいた。そして片膝を床につき片手を私に向けられ、その手には……宝石が付けられた指輪があった。つまり、ブランは私にプロポーズをしているの?
「ジェミーはミヤルカーナ様が結婚するまで自分はしないと言っていただろう? 今日、ミヤルカーナ様が結婚した。だから俺がジェミーにプロポーズしても問題ないだろう? 受け取ってくれないか?」
ブランは、付き合って10年経つ。もう私は30歳近くになり、行き遅れた女だった。ブランにはいつ別れを切り出されるか不安にも思ってたがお嬢様より先に結婚する気はないと付き合う始めから言っていた。それを忠実に守ってたのか結婚の話しは一切してこなかった。………このまま付き合ってて良いのかな悩んだ時もあったけど、ブランが別れを切り出さない限り恋人でいようと思っていた。
でも………ブランは、ずっと私の側にいて喧嘩もしたこともあったけどすぐに仲直りして、ずっとずっと側を離れなかった。
そして今日この日を待ってたかのようにプロポーズをしてくるなんて………っ!
目頭が熱くなって頬に涙が伝ってきてブランの顔が歪んで見える……。 手に力が入らず震えてるのがわかったが、それでも手を伸ばしブランの手にある指輪を受け取った。そしてすぐにブランに指輪を取られ、私の指に嵌めてくれた。
そして抱きしめられ「有難う」と一言、耳元で囁かれた。
後から聞いた話。
ブランはお嬢様に何度か「いつジェミーを幸せにしてくれるの?」と急かされていたらしい。求婚しない理由があるため曖昧に返答をしていたら
「あなたなんかに私の大切なジェミーを任せておけないわ!今すぐ別れなさい!」
「ええっ!?」
「それが嫌ならさっさとプロポーズしなさいよ!この意気地なし!」
「ミ、ミヤルカーナサマ………」
このままじゃ本当に私と別れさせられると焦ったブランは、私がお嬢様が結婚するまで誰とも結婚しないと言う事を話したらしく、本当は今すぐに一緒になりたいとも言ったらしい。
そしたらお嬢様が「あの子は……っ!」と怒りだしたが、すぐに落ち着きため息をこぼしたらしい。
『あなたはそれでいいの?ジェミーはもう20歳過ぎて、行き遅れの女とみられるわよ?歳を重ねるごとに子も身籠りにくくなるし、そのうち互いに、新しい出会いがあって別れたくなるかもしれないわよ?』
『………ジェミーに新たな出会いがあり、俺と別れたいと言われたら、それは受け入れます。しかし、俺からは決してジェミーから離れないと自信持って言えます。』
『そう………わかったわ。じゃあ、私が1つブランに提案してあげるわ。それは────』
そしてお嬢様の提案というのは『幸せを周りにおすそ分けするため花嫁が花束を投げるイベントがあるの。私はジェミーに花束を投げるから、それを合図にプロポーズしなさい!』との事だった。
二人で計画していたとは……お嬢様が私のためにっ!
しかも、その話は私のお義父さんも知ってたらしく、さらに一緒に住む準備もしてくれていたらしい。ブランはお義父さんとも仲がよく結婚したら3人で暮らそうとも言ってくれた。
……実は、お義父さんはもう50歳過ぎてる。にも関わらず、私が養子になってからも誰一人妻を迎え入れてないのだ。つまり、私にはお義母さんがいないって事。叔母さんが亡くなってからずっと二人で暮らしていた。
その理由は………実はお義父さん、無精子症だったの。衛兵でも十分な給金はあるし、容姿も悪くないし結婚相手にはもってこいの人なのに子供ができないという理由でお義父さんは独身を貫いていたのだ。ただ、私がいるから問題なれいと言ってたので嬉しくて家から出ることができなかったんだよね。だから公爵家の侍女になっても通いだったし。
そんなわけでお嬢様の挙式が終わり披露宴も終わり、全て終わった頃には真夜中だった。
次の日、お嬢様に「今日は家に帰って報告なさい!落ち着いたら帰ってきてね!」と言われ、また目頭が熱くなる。もうずっと泣きっぱなしだった。
そしてブランが公爵家まで迎えに来てくれたので一緒にお義父さんに報告しに一緒に行った。
「そうか。やっと結婚を受けたか。」
「うん。お義父さんも、知ってたんだよね」
「あぁ。でも、ジェミーの気持ちもわからなくもないからな。ブランは待つと言ってたから俺も待つことにしたんだ。」
「そ、そうなんだ………」
「ブラン。ジェミーをよろしくな。それと、俺の事は義父と思えよ。」
「衛兵長…………はい。これから、よろしくお願いします。」
そう、実はお義父さんとブランは職場が同じなのだ。ブランとの出会いも、お義父さん絡みだ。だからお義父さんとブランは仲良しなのよね。これか家族になって、もし、できればお義父さんに孫を抱かせたいな。
……2年後、願いが叶いブランとの子を身籠った。さらにお嬢様も、2人目を身籠ったと報告があった。公爵家は何故か大騒ぎになった。
「ジェミーの子、女の子だったら私の子の侍女として側にきなさい!男の子だったら騎士を目指させ近衛騎士にさせてね!」
お嬢様は2児の母になっても相変わらず傲慢で我儘だった。
将来、王宮で働く騎士や侍女に身分関係なく実力でなれる、そんな日がくるのかな………
ふふ、私はお嬢様がいつまでも大好きです。
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(45件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
書籍化おめでとうございます。
早速、購入させていただきました。
活動報告にもコメントさせていただいたのですが、本当に大好きなお話なので、素敵な表紙も続編も嬉しいです。
欲を言えば、挿絵が欲しかったなーと思います…
(きっと作者さんも欲しかったですよね)
電子書籍化はされない予定なのでしょうか?
探しても見つかりませんでした。
昨日、書籍発売されてたので、買ってきました。美麗な表紙で内容も増量されてたので、満足でした。アルファポリスの新刊案内見てたときに、読んだことある話だなと思ってたんですが、書籍化おめでとうございます。大好きな話で、本で読めるようになって嬉しいです。
感想有難うございます!そして手に取って頂き有難うございます!
すみません報告が遅くなりました。アオイ冬子さんの描いた表紙がとても綺麗で気に入ってます。
番外編を近いうちに投稿しますので興味がありましたら読んでいただければと思います。
有難うございました。
面白かったです!!!
18以上なのにほっこりしました〜