103 / 126
103、母と息子
しおりを挟む
王妃様と薔薇園を見て回った日から数日後、私達は本格的に東方への支度を始めていた。
アドニスと伯爵様は東方へ引き連れていく一個師団との演習で忙しい中、毎日公爵家へ私を迎えに来てくれる。
そして、アドニス達が仕事をしている間は、王宮で王妃様と色んな話をした。
王妃様のお母様の事、そして私のこの指輪を下さった理由も。
「シャルロッテ。私はアドニスや貴方の味方となるつもりですが、私が間違った時は貴方が私にそう言いなさい」
傍にいたメリエッタさんが少し驚いた顔をする。
王妃様がこんなことを言うのは珍しい。
いつも自信と威厳に溢れた人だから。
「そんな……。マリエティーア様、私こそ分からないことばかりです。色々とお教えくださいませ」
「もちろん、そうさせてもらいますよシャルロッテ。貴方には未熟なところも多いですからね」
とんだヤブヘビだったかも。
マリエティーア様は笑うと、暫く私の顔をジッと見つめる。
「アドニスには、時期が来たらもう一度そなたにプロポーズをすると聞きました。今の言葉を聞いた限りでは、その時は受け入れるつもりがあると考えてよいのですね?」
アドニスがマリエティーア様に伝えたのだろう。
白ウサギが治った時にもう一度、私にプロポーズをすると。
そして、それは東方から帰ってきた時になるだろう。
私はもう答えは決めていた、元の世界のこともあるけれど今は自分の気持ちに正直でありたい。
「はい、マリエティーア様。その時が来て、もしアドニスが私にそう言ってくれたのなら喜んで」
私の答えを聞いて、マリエティーア様は立ち上がると暫く窓の外を眺めていた。
そこから見える空を見つめている。
「そうですか……。シャルロッテ、こちらにいらっしゃい」
私は王妃様の言葉に頷くと、マリエティーア様に歩み寄った。
本当に綺麗な人、やっぱりアドニスのお母さんだよね。
ずっと怖い人だって思ってた。
でも、王妃様の優しい抱擁が私を包んでいくのが分かる。
「王妃様……」
マリエティーア様は、私の指に嵌めてくれた指輪はそっとなぞる。
そして、何かを思い出したように微笑む。
「暫くこうさせておくれ。思い出したのです。とても幼い頃、母がこうしてくれたことを」
とても優しい気持ちが伝わってきて、私はマリエティーア様の胸に頬を寄せた。
多くは語ってくれないけれど、王妃様がアドニスと私を本当に愛してくれているのが伝わってくる。
メリエッタさんが、静かに涙を流していた。
「わたくしが愛したあの子には、貴方が大きな翼を与えました。わたくしは、その翼で貴方達が空高く羽ばたくのを見守りましょう」
「マリエティーア様……」
私はマリエティーア様が下さった指輪を胸に当てると、窓の外を見上げる。
そこには、とても美しい空が広がっていた。
すると、部屋の扉を誰かがノックをする。
今部屋にいるのは私と王妃様とメリエッタさん。
メリエッタさんが扉に歩み寄ると、外に待機をしている他の侍女達に話しかける。
「アドニス殿下がお見えになられました」
メリエッタさんがそう言うと、扉が開いてアドニスと伯爵様が部屋に入ってくる。
それを見て王妃様が、口を開く。
「東方への旅立ちの準備はどうですか? アドニス」
王妃様のその言葉に、アドニスと伯爵様は前に進み出ると一礼する。
アドニスは王妃様に答えた。
「はい、母上。順調に準備が整っています。三日後には都を発てるでしょう」
(三日後、そういえばお父様もそう言っていたわ)
一度東方に旅立てば一か月は帰ってこられない。
アシュロード城への旅、一体どんな旅になるのだろうか。
東方を守る貴公子レオンハート・アシュロード。
(大丈夫よ、きっと何も起こらない。みんな無事に帰ってこられるわ)
私はそう願いながら、マリエティーア様を見る。
アドニスに会えなくなるのは王妃様にとっても、とてもお寂しいだろう。
王妃様は何も言わずにアドニスに歩み寄ると、私にしてくれたようにその体を優しく抱きしめた。
アドニスが驚いたようにマリエティーア様を見る。
「母上……」
「元気でアドニス、元気で行ってきなさい。母はいつもここで祈っていますよ」
アドニスは最初は戸惑った顔をしていたが、まるで小さな子供のような顔で暫く王妃様に抱かれていた。
そして、王太子の顔に戻ると。
「母上、必ず使命を成し遂げて都に帰ってきます。母上の息子として恥じることがないように」
アドニスと伯爵様は東方へ引き連れていく一個師団との演習で忙しい中、毎日公爵家へ私を迎えに来てくれる。
そして、アドニス達が仕事をしている間は、王宮で王妃様と色んな話をした。
王妃様のお母様の事、そして私のこの指輪を下さった理由も。
「シャルロッテ。私はアドニスや貴方の味方となるつもりですが、私が間違った時は貴方が私にそう言いなさい」
傍にいたメリエッタさんが少し驚いた顔をする。
王妃様がこんなことを言うのは珍しい。
いつも自信と威厳に溢れた人だから。
「そんな……。マリエティーア様、私こそ分からないことばかりです。色々とお教えくださいませ」
「もちろん、そうさせてもらいますよシャルロッテ。貴方には未熟なところも多いですからね」
とんだヤブヘビだったかも。
マリエティーア様は笑うと、暫く私の顔をジッと見つめる。
「アドニスには、時期が来たらもう一度そなたにプロポーズをすると聞きました。今の言葉を聞いた限りでは、その時は受け入れるつもりがあると考えてよいのですね?」
アドニスがマリエティーア様に伝えたのだろう。
白ウサギが治った時にもう一度、私にプロポーズをすると。
そして、それは東方から帰ってきた時になるだろう。
私はもう答えは決めていた、元の世界のこともあるけれど今は自分の気持ちに正直でありたい。
「はい、マリエティーア様。その時が来て、もしアドニスが私にそう言ってくれたのなら喜んで」
私の答えを聞いて、マリエティーア様は立ち上がると暫く窓の外を眺めていた。
そこから見える空を見つめている。
「そうですか……。シャルロッテ、こちらにいらっしゃい」
私は王妃様の言葉に頷くと、マリエティーア様に歩み寄った。
本当に綺麗な人、やっぱりアドニスのお母さんだよね。
ずっと怖い人だって思ってた。
でも、王妃様の優しい抱擁が私を包んでいくのが分かる。
「王妃様……」
マリエティーア様は、私の指に嵌めてくれた指輪はそっとなぞる。
そして、何かを思い出したように微笑む。
「暫くこうさせておくれ。思い出したのです。とても幼い頃、母がこうしてくれたことを」
とても優しい気持ちが伝わってきて、私はマリエティーア様の胸に頬を寄せた。
多くは語ってくれないけれど、王妃様がアドニスと私を本当に愛してくれているのが伝わってくる。
メリエッタさんが、静かに涙を流していた。
「わたくしが愛したあの子には、貴方が大きな翼を与えました。わたくしは、その翼で貴方達が空高く羽ばたくのを見守りましょう」
「マリエティーア様……」
私はマリエティーア様が下さった指輪を胸に当てると、窓の外を見上げる。
そこには、とても美しい空が広がっていた。
すると、部屋の扉を誰かがノックをする。
今部屋にいるのは私と王妃様とメリエッタさん。
メリエッタさんが扉に歩み寄ると、外に待機をしている他の侍女達に話しかける。
「アドニス殿下がお見えになられました」
メリエッタさんがそう言うと、扉が開いてアドニスと伯爵様が部屋に入ってくる。
それを見て王妃様が、口を開く。
「東方への旅立ちの準備はどうですか? アドニス」
王妃様のその言葉に、アドニスと伯爵様は前に進み出ると一礼する。
アドニスは王妃様に答えた。
「はい、母上。順調に準備が整っています。三日後には都を発てるでしょう」
(三日後、そういえばお父様もそう言っていたわ)
一度東方に旅立てば一か月は帰ってこられない。
アシュロード城への旅、一体どんな旅になるのだろうか。
東方を守る貴公子レオンハート・アシュロード。
(大丈夫よ、きっと何も起こらない。みんな無事に帰ってこられるわ)
私はそう願いながら、マリエティーア様を見る。
アドニスに会えなくなるのは王妃様にとっても、とてもお寂しいだろう。
王妃様は何も言わずにアドニスに歩み寄ると、私にしてくれたようにその体を優しく抱きしめた。
アドニスが驚いたようにマリエティーア様を見る。
「母上……」
「元気でアドニス、元気で行ってきなさい。母はいつもここで祈っていますよ」
アドニスは最初は戸惑った顔をしていたが、まるで小さな子供のような顔で暫く王妃様に抱かれていた。
そして、王太子の顔に戻ると。
「母上、必ず使命を成し遂げて都に帰ってきます。母上の息子として恥じることがないように」
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~
岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。
「これからは自由に生きます」
そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、
「勝手にしろ」
と突き放した。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる