悪役令嬢だって恋したい! ~乙女ゲーの世界に迷い込んだ私が、火あぶりフラグを折りまくる!!~

園宮りおん

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103、母と息子

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 王妃様と薔薇園を見て回った日から数日後、私達は本格的に東方への支度を始めていた。
 アドニスと伯爵様は東方へ引き連れていく一個師団との演習で忙しい中、毎日公爵家へ私を迎えに来てくれる。
 そして、アドニス達が仕事をしている間は、王宮で王妃様と色んな話をした。
 王妃様のお母様の事、そして私のこの指輪を下さった理由も。

「シャルロッテ。私はアドニスや貴方の味方となるつもりですが、私が間違った時は貴方が私にそう言いなさい」

 傍にいたメリエッタさんが少し驚いた顔をする。
 王妃様がこんなことを言うのは珍しい。
 いつも自信と威厳に溢れた人だから。

「そんな……。マリエティーア様、私こそ分からないことばかりです。色々とお教えくださいませ」

「もちろん、そうさせてもらいますよシャルロッテ。貴方には未熟なところも多いですからね」

 とんだヤブヘビだったかも。
 マリエティーア様は笑うと、暫く私の顔をジッと見つめる。

「アドニスには、時期が来たらもう一度そなたにプロポーズをすると聞きました。今の言葉を聞いた限りでは、その時は受け入れるつもりがあると考えてよいのですね?」

 アドニスがマリエティーア様に伝えたのだろう。
 白ウサギが治った時にもう一度、私にプロポーズをすると。
 そして、それは東方から帰ってきた時になるだろう。
 私はもう答えは決めていた、元の世界のこともあるけれど今は自分の気持ちに正直でありたい。

「はい、マリエティーア様。その時が来て、もしアドニスが私にそう言ってくれたのなら喜んで」

 私の答えを聞いて、マリエティーア様は立ち上がると暫く窓の外を眺めていた。
 そこから見える空を見つめている。

「そうですか……。シャルロッテ、こちらにいらっしゃい」

 私は王妃様の言葉に頷くと、マリエティーア様に歩み寄った。
 本当に綺麗な人、やっぱりアドニスのお母さんだよね。
 ずっと怖い人だって思ってた。
 でも、王妃様の優しい抱擁が私を包んでいくのが分かる。

「王妃様……」

 マリエティーア様は、私の指に嵌めてくれた指輪はそっとなぞる。
 そして、何かを思い出したように微笑む。

「暫くこうさせておくれ。思い出したのです。とても幼い頃、母がこうしてくれたことを」

 とても優しい気持ちが伝わってきて、私はマリエティーア様の胸に頬を寄せた。
 多くは語ってくれないけれど、王妃様がアドニスと私を本当に愛してくれているのが伝わってくる。
 メリエッタさんが、静かに涙を流していた。

「わたくしが愛したあの子には、貴方が大きな翼を与えました。わたくしは、その翼で貴方達が空高く羽ばたくのを見守りましょう」

「マリエティーア様……」

 私はマリエティーア様が下さった指輪を胸に当てると、窓の外を見上げる。
 そこには、とても美しい空が広がっていた。

 すると、部屋の扉を誰かがノックをする。
 今部屋にいるのは私と王妃様とメリエッタさん。
 メリエッタさんが扉に歩み寄ると、外に待機をしている他の侍女達に話しかける。

「アドニス殿下がお見えになられました」

 メリエッタさんがそう言うと、扉が開いてアドニスと伯爵様が部屋に入ってくる。
 それを見て王妃様が、口を開く。

「東方への旅立ちの準備はどうですか? アドニス」

 王妃様のその言葉に、アドニスと伯爵様は前に進み出ると一礼する。
 アドニスは王妃様に答えた。

「はい、母上。順調に準備が整っています。三日後には都を発てるでしょう」

(三日後、そういえばお父様もそう言っていたわ)

 一度東方に旅立てば一か月は帰ってこられない。
 アシュロード城への旅、一体どんな旅になるのだろうか。
 東方を守る貴公子レオンハート・アシュロード。
 
(大丈夫よ、きっと何も起こらない。みんな無事に帰ってこられるわ)

 私はそう願いながら、マリエティーア様を見る。
 アドニスに会えなくなるのは王妃様にとっても、とてもお寂しいだろう。
 王妃様は何も言わずにアドニスに歩み寄ると、私にしてくれたようにその体を優しく抱きしめた。
 アドニスが驚いたようにマリエティーア様を見る。

「母上……」

「元気でアドニス、元気で行ってきなさい。母はいつもここで祈っていますよ」

 アドニスは最初は戸惑った顔をしていたが、まるで小さな子供のような顔で暫く王妃様に抱かれていた。
 そして、王太子の顔に戻ると。

「母上、必ず使命を成し遂げて都に帰ってきます。母上の息子として恥じることがないように」
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