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第一話
私立IT学園・説明会10
実姉の甘ったるいささやきが俺の首元でそよぐ。
そんな些細な行動ですら、今の俺には大きな衝動の引き金になりかねない。
手のひらに伝わる弾力が俺の理性を大きく揺さぶる。姉さんの尻肉の弾力は胸のそれよりも強く、俺の手を押し返す。
いま俺のすべきこと、それはどう考えても姉を説得し、引き離すことだ。だが、頭の奥がしびれた様に麻痺し、うまく行動に起こせない。
「巧くん……ねぇ、触って?」
紡姉さんは、言葉をうまく形作れずにいる俺の手に、高ぶる鼓動を余すことなく伝えてくる。
「ん、ん……」
姉の胸の柔らかさに俺の手が包まれ、弾力に満ち満ちた形の良い尻が俺の左手を跳ね返してくる。思うさまに実姉の女を味わいたいという衝動が俺の胸中に絶え間なくこみあげてくる。本能に負けまいとする俺の理性を苛み、全身に電気のような痺れをもたらす。
姉の女としての魅力は、姉弟の垣根など簡単に壊してしまうほどに強く俺の中に刻み込まれている。紡姉さんは、ただそこにいるだけで女のフェロモンがあふれて漂うような女性だ。こんな密着した状況で姉さんの方から誘われて、狼にならない男などいるはずがない。
しかし。
「だめだ」
俺は姉に絡みついていた両手を、なるべく優しくなるように注意しながらほどいた。
「やぁ」
姉が残念そうな声を上げる。心が痛んだ。俺だって名残惜しいが、そんな状況ではない。
「……やめないと」
欲望に流されかけた時はいつも、俺の脳裏に昔のある光景が脳裏を駆け抜ける。
一時の欲望に負けて犯した過ちの代償、その傷跡の記憶がよみがえり、俺は全身がひきつるのを感じた。
「姉弟のスキンシップの限度を超えてる」
「これはスキンシップじゃないわ」
「?」
「私たちが愛し合うための準備よ。私と巧くんの2人が本当の意味で結ばれる為の前準備なの」
「紡姉さん……」
俺は姉への名残を振り払うように、姉の体から離れる。紡姉さんはわずかに落胆したような様子を見せた。
「私って魅力ない?」
「そんなわけ無いだろ」
俺だって弟である前に男だ。魅力的な女性を見たい、その身に触れたい、という欲望は俺にだって人並みにある。
紡姉さんは言葉では言い表せないほどの魅惑的な女性だ。肉親だからといって、その魅力が薄れることなどない。
「姉弟でこういうことはしちゃいけない……そう言われたじゃないか」
「ええ。その通りね」
「普通の姉弟はこんなふうなことはしない。キスしたり抱き合ったり身体をさわりあったりしない」
「仲良しの姉弟ならそういうことするかもしれないじゃない」
俺は頭を激しく横に振る。
「俺たちは、しちゃいけないんだ」
以前の俺には、姉と弟で仲良くなりすぎる事への危機感がなかった。だから過ちを犯した。
しかし、もうそれは許されない。
俺たちの関係が皆にばれて、住処までなくなり、一家が散り散りになってしまったあの日から、俺は悔やんでいた。
「紡姉さんは頭がいいし、才能がある。すごいところに就職できたじゃないか」
「ほめてくれてありがと。うれしい」
喜びに顔を綻ばせる。姉さんは今でも俺を想っていてくれている……
姉の喜びを遮るのは心が痛むが、ためらっているわけにもいかない。
「姉さんの頭の良さは才能なんだよ。俺なんかじゃ足元にも及ばない」
「そんなこと……」
「そんなこと、あるだろ」
俺は姉さんをまっすぐに見据えた。
「俺にとって姉さんは憧れなんだ。その憧れの人に道を踏み外させたくない。弟の俺のせいで姉さんを追い込むようなことにしてしまったら、後悔してもしきれない」
俺の表情は、姉にどのように映っただろうか。
悲しんでいるように見えただろうか。それとも怒っているように見えただろうか。
そのどちらでもいい。これで俺を避けるようになってくれれば、紡姉さんの人生は順調になる。
俺はもう紡姉さんを傷つけない。普通の姉弟になるんだ。そうすれば、姉さんはいつか素敵な人を見つけて、幸せになってくれるはずだ。
……以前の俺は、そんなことを考えたら落ち込んでしまい、姉さんのことを強引に奪ってしまいたくなる衝動に駆られていたと思う。
成長したんだ。離れて暮らしていた、この数年間で。
この成長を無駄にしてはいけない。
「巧くんにだったら何をされてもいいの。巧くんがして欲しいこと、何でもしてあげたいの」
「俺だって同じだよ。姉さんにしてあげたいことはたくさんある」
「私たち、同じ気持ちよね?」
「ああ」
「だから、姉と弟なのに、恋人同士になったのよね」
それを言われると言葉に詰まる。過去の話だ。
俺と姉さんが特殊な間柄だったということは、言われてしまえば言い逃れのしようがない。
問題なのは、その過去のことが発覚した後も、こうして姉さんが俺を誘惑してくるという事実だ。
俺と姉さんが離ればなれになったのは、そういうことを繰り返さないようにするために周囲が計らったためだということは姉さんも分かっているはずなのに。
「それがダメなことだって、普通じゃないって、思い知らされたじゃないか」
俺と姉は、お互いの思いとは裏腹に引き離された。気持ちだけではどうしようもないことだってある。俺はそれを思い知らされたのだ。
「普通かどうかって誰が決めるの?」
「回りの人たちだよ」
俺は姉から目をそらした。
「姉弟や兄妹は、必要以上に仲良くなったりしない。恋人になったり、しちゃいけないんだ」
「巧くんは私との過去を後悔してるの?」
「……してるよ」
「本当に?」
姉の視線が俺を射抜くように鋭い。普段は温和だが、まじめな話をするときは目じりが上がり、鋭くなる。
この時の姉が一番美しいのではないか。そんなことをぼんやりと思ってしまうほど、玲瓏なる美貌だった。
だが、その美しさは、絶対に俺のものにはならない。俺たちは実の姉弟なのだから、それは許されないんだ。
理解した時は悲しかったが、成長したいま、世の中にはあきらめざるを得ないことだってあると悟ることが出来た。
「姉さんを泣かせた。そのことは本当に後悔してる」
別れ話を切り出した時、離ればなれに暮らすことになったとき、姉は俺を見てさめざめと泣いた。
必死で涙をこらえ、弱気な姿をみせないように努力し、それでもこらえきれずに涙をこぼす姉を、俺は痛みとともに思い出す。
「もう姉さんにあんな顔をさせたくないんだ」
「私を泣かせたことを後悔してくれてるの?」
「……あぁ」
「嬉しい」
真面目に締まった姉の表情が、緩む。躊躇なく無防備な喜びを表現し、瞳がすぅっと糸のように細くなる。やや紅潮した頬に浮かぶおっとりとした笑みが、もとよりの美貌に華やかな愛らしさを混ぜる。
可愛らしいなどという凡庸な言葉では表しきれないほどの女性の色気に、くらくらとしそうだった。
「なんで喜ぶんだよ」
「だって、巧くんの本当の気持ちを知ることができたんだもの」
「本当の気持ちって」
「私があの時に泣いちゃったのは巧くんのせいじゃないわ」
「えッ」
「私はね、巧くんのことが好き。弟としてじゃない。うぅん、弟としても、一人の男性としても、好きよ」
俺たちが付き合うことになったときと全く同じ言葉の内容だった。今まで何回、この言葉を姉さんから聞いただろう。付き合っていた時に、お互いへの想いをどれだけ囁き合っただろう。
抱えきれないほどの恋心がたっぷり含まれた愛の声だ。
胸が熱くたぎり、バクバクと心臓が早鐘を打ち始める。姉の細くなった瞳の端に微かな涙が浮かんでいるのが見えた。
「この気持ちが変わったことはないわ。巧くんだって変わっていない。だから、そんな顔してる……そうでしょ?」
「……」
「私はね、前みたいに巧くんと一緒にいたい。手を繋いだりデートしたりしたいの」
「な」
「巧くんと結ばれたいの。この気持ちは、絶対になくならないわ」
姉の言葉は俺の胸へ突き刺さる。昔の俺なら素直に喜んでいただろう。
だが、もう……
「不可能だよ」
「それ、本心?」
「うん。俺だって、できることならそうしたい。姉さんのことを思う気持ちは変わっていない」
「……」
「それで姉さんが喜んでくれるのなら、いくらでもそうしたい。だけど、俺達の関係が戻るのは許されないんだ」
「誰が許さないの?」
「そんなの決まってる。世間のみんなが……」
「世間のみんなって、そこらへんに住んでる人たちのこと?」
「ああ。世間一般の、大多数の人たちだ。その人たちに……」
「「「許されるよ」」」『』
「はッ?」
即座に否定されたことへの驚きより、声の質が変わったことに驚いてしまう。
姉さんの声と、もう二つの声が全く同時に重なったのだ。
ついさっきまで聞いていた声だ。
「この学園に入るのなら、許されるの」
「たとえば私が兄さんのことを好きだったとしても、この学園に入りさえすれば、許されるの」
「真姫、結ッ」
いつの間にか俺の両脇に真姫と結が寄り添っていた。
ぐい、と体後ごと押し付けるように、腕を抱え込まれる。身動きが取れない。
俺の前面から体を預けてくる紡姉さんに、俺の左脇にすがりつく真姫、右脇に絡みつく結という構図だ。
特に真姫はスポーツをしていて、それなりに力もある。ぎゅうぎゅと押し付けられる柔らかい体には、しっかりとした力がこもっていて、無茶をしないと引き剝がせそうにない。それに、無理に引き離そうとしたら怪我させてしまうかもしれない。
俺は観念して身動きするのをやめた。
「お前たち、喧嘩してたんじゃ」
「あれは演技だよ」
俺の右腕にしがみつきながら、あっさりと結が言う。
「演技?」
「私の作戦よ。二人と相談して作戦を練ったの」
紡姉さんが誇らしげに胸をそる。
「いったん巧くんの気を反らしておいて、二人でじっくりと話をするっていうね」
「作戦ってなんのために?」
「兄さんの本当の気持ちを知っておくため」
真姫が俺の腕に胸を押し付けてくる。俺の左腕が豊かな柔らかみに挟み込まれる。相手は実妹だとわかっていても、その乳房の感覚は、女の柔らかさが息づいていて生々しい。
「普通の兄妹はどんなに想いあっていても、成長したら離ればなれになってそれぞれの道を歩くけど」
ぐいっと俺の両腕に絡みつく細い腕は、妹たちの意思を感じさせるように強く抱えられている。
「この学園ならそんな悲しいことは起きないの」
「こ、この学園なら?」
「この学園に入れば、結たちは胸を張って巧兄にかわいがってもらえるの。兄妹で愛し合ってもいいの」
「は、は? 兄妹で愛し合っても……?」
訳が分からない。この学園に入れば、兄妹や姉弟で愛し合っても許される? どういう理屈だ?
そんな治外法権みたいなこと、実際にあるのか?
「もちろん誰でも入れるわけじゃないわ。この学園に入るにはある条件があるの。それをクリアすれば、無事に入学できるのよ」
紡姉さんの声のトーンは、さっきまでの名残か、すこし上ずっている。いつも冷静、色っぽくて艶やかで、それでいて大人な姉さんにしては、熱っぽい。
真姫と結の声は落ち着いたトーンである。が、どこか普段とは違う。
いつもの真姫は、俺をみる瞳は冷静で、声ももっとハキハキしている。上ずった声と、やや赤見を帯びた頬、そして緊張のためか硬めの表情の真姫は、何だかふわふわした様子だった。
結の声も、普段の元気の良さよりも上せたような心もとなさの方を強く感じる。恥じらいと期待が入り混じっていて、女っぽさを感じた。
「もし私たちみんなが巧兄さんのことが好きで、大好きで仕方なくて……兄さんにとって姉さんが一番だったとしても、それでもみんなが一緒にいたいって同じ思いを抱いてたのなら」
「そして巧くんが、そんな私たちのことを大事って思ってくれるのなら」
「結たちみんな、一緒に大好きな巧兄と居られて、たくさん愛し合えるの」
「それがこの学園……IT学園なのよ。巧くん」
唐突な告白である。意味が分からない。理解が追い付かない。
待て待て。どういうことだ?
もしもって言っていたから仮定の話か。いやしかし、もしもそうならなんだって?
この学園に入学すれば?
結ばれることが出来る?
俺と?
みんな?
紡姉さんや、真姫、結と?
実の姉妹と?
「混乱させてごめんなさい。兄さんをだますようなことをして、本当にごめんなさい」
「だ、だます? なにを、どういうふうに?」
だまされた自覚が全くない。何を言っているんだ真姫は。
「巧兄さんが辛い思いをしたのに、それを蒸し返すようなことをして」
「いや、それは……俺が悪いんだし、真姫が謝るようなことじゃ」
紡姉さんは、身動きできない俺の胸元に頬を擦りながら微笑む。
「そうよ。巧くんは私たちのことをいつも想ってくれているの。ね?」
俺を見る姉の顔には笑みが浮かんでいる。
今でこそ冷静に振る舞っているが、姉さんにとっては思い出すのもはばかられることだったのではないか。
「……俺は、紡姉さんも真姫も結も、みんな大事に想ってるよ」
俺と姉の関係は、ひっそりと行われていた。
そのことについてバレたのも、それによって兄妹みんなが離れ離れになったのも、俺のせいだ。
だから、いつ誰にどう言われようと、それについて弁明はしないと心に決めた。責められて当然。そう思っている。しかし、こんな風に……謝られたり、穏やかな笑みを浮かべるような反応は全くの想定外だった。
「ごめん。整理させてくれ。全く状況が理解しきれないんだ」
「うん。混乱させてごめんね」
「真姫」
真姫が間近から見上げる。普段とはギャップのある物憂げな表情が、真姫の整った顔に見合っていて、息を呑むほどの美貌である。
「俺がこの学園の推薦に受かったっていうのは、本当なのか?」
「うん」
「俺は入学の説明会に参加するためにここに来たんだよな? そのために真姫が俺をここに連れてきたんだよな?」
「うん」
「パンフレットではそんなのどこにも書いてなかったぞ」
「それは、説明会で詳しく教えてもらうことだから……」
真姫は目を伏せ、俺から視線を一度はなす。
……つまり、説明会を俺より前に受けて、その内容を知った上で俺を連れてきた、ということだから。
「……そもそもこの学園って、一体なんなんだ?」
「それは……」
と、真姫が言いかけたタイミングで、こつんと大きい靴の鳴る音が部屋に反響した。
俺達の目が一瞬でそちらに集中する。
「とても仲睦まじいご様子で何よりですわ」
おっとりとした穏やかな声、柔和な笑顔、そしてややふっくらとした女性らしい体型を、白衣に包んだ女医のような格好をした人が、少し離れた場所にある壇上にたっていた。
「伊藤さん。ようこそIT学園の説明会へ。歓迎しますわ」
「え、あ」
俺は自分にくっついてくる姉妹を交互に見る。みんなは、この人が現れても離れてくれない。
「すいません、こんな格好で」
「いいんです。兄妹姉妹の仲睦まじい姿、それは宝物ですから」
反応がおかしい。この女性は学園関係者か?
「みんな、離れてくれ」
「どうして?」
「当たり前だろッ。学園関係者の目の前でこんな」
「だいじょうぶッ。許してくれるよッ」
この状況でも三人とも離れようとしない。
そんな非常識な性格じゃなかったと思うのだが、どうしてしまったんだろうか。
「そのままで結構です……と言いたいところですが、説明を聞くのに相応しくない状況ですね」
「ええーッ」
結が不満そうな声をあげる。紡姉さんも真姫も、何故か不服そうである。
「大人気ないなぁ、あの人」
「は?」
「仕方ないわ。おとなしく椅子に座りましょ」
真姫と結、紡姉さんがそれぞれ俺から離れ、壇上から少し離れた椅子へと移動する。
俺は、ようやく皆から解放された。姉のぬくもり、妹の柔肌、吐息、甘ったるい匂いが薄まっていき、何となくスースーした。
姉妹達の体温が薄れていくのが惜しい、とはさすがに言えなかった。
「巧くん、隣に座りましょ」
「あ、あぁ」
「じゃあ私が巧兄の隣に座るッ」
「あ、ずるいッ」
「えへへー。早いものがちだもんねッ」
三人とも落ち着き払っている。混乱しているのは俺だけなんだろうか。
作戦を考えてくるあたり、もしかしたら事前にやりとりがあったのかもしれない。
それにしても、当事者の俺にだけ知らせずにこんな大規模な入学計画を立てるとか、普通はありえない話だと思うんだが。
「それでは、IT学園招待入学生向け学園説明会を始めさせていただきます」
俺の内心の混乱が収まらぬ中、ついに説明会が始まった。
そんな些細な行動ですら、今の俺には大きな衝動の引き金になりかねない。
手のひらに伝わる弾力が俺の理性を大きく揺さぶる。姉さんの尻肉の弾力は胸のそれよりも強く、俺の手を押し返す。
いま俺のすべきこと、それはどう考えても姉を説得し、引き離すことだ。だが、頭の奥がしびれた様に麻痺し、うまく行動に起こせない。
「巧くん……ねぇ、触って?」
紡姉さんは、言葉をうまく形作れずにいる俺の手に、高ぶる鼓動を余すことなく伝えてくる。
「ん、ん……」
姉の胸の柔らかさに俺の手が包まれ、弾力に満ち満ちた形の良い尻が俺の左手を跳ね返してくる。思うさまに実姉の女を味わいたいという衝動が俺の胸中に絶え間なくこみあげてくる。本能に負けまいとする俺の理性を苛み、全身に電気のような痺れをもたらす。
姉の女としての魅力は、姉弟の垣根など簡単に壊してしまうほどに強く俺の中に刻み込まれている。紡姉さんは、ただそこにいるだけで女のフェロモンがあふれて漂うような女性だ。こんな密着した状況で姉さんの方から誘われて、狼にならない男などいるはずがない。
しかし。
「だめだ」
俺は姉に絡みついていた両手を、なるべく優しくなるように注意しながらほどいた。
「やぁ」
姉が残念そうな声を上げる。心が痛んだ。俺だって名残惜しいが、そんな状況ではない。
「……やめないと」
欲望に流されかけた時はいつも、俺の脳裏に昔のある光景が脳裏を駆け抜ける。
一時の欲望に負けて犯した過ちの代償、その傷跡の記憶がよみがえり、俺は全身がひきつるのを感じた。
「姉弟のスキンシップの限度を超えてる」
「これはスキンシップじゃないわ」
「?」
「私たちが愛し合うための準備よ。私と巧くんの2人が本当の意味で結ばれる為の前準備なの」
「紡姉さん……」
俺は姉への名残を振り払うように、姉の体から離れる。紡姉さんはわずかに落胆したような様子を見せた。
「私って魅力ない?」
「そんなわけ無いだろ」
俺だって弟である前に男だ。魅力的な女性を見たい、その身に触れたい、という欲望は俺にだって人並みにある。
紡姉さんは言葉では言い表せないほどの魅惑的な女性だ。肉親だからといって、その魅力が薄れることなどない。
「姉弟でこういうことはしちゃいけない……そう言われたじゃないか」
「ええ。その通りね」
「普通の姉弟はこんなふうなことはしない。キスしたり抱き合ったり身体をさわりあったりしない」
「仲良しの姉弟ならそういうことするかもしれないじゃない」
俺は頭を激しく横に振る。
「俺たちは、しちゃいけないんだ」
以前の俺には、姉と弟で仲良くなりすぎる事への危機感がなかった。だから過ちを犯した。
しかし、もうそれは許されない。
俺たちの関係が皆にばれて、住処までなくなり、一家が散り散りになってしまったあの日から、俺は悔やんでいた。
「紡姉さんは頭がいいし、才能がある。すごいところに就職できたじゃないか」
「ほめてくれてありがと。うれしい」
喜びに顔を綻ばせる。姉さんは今でも俺を想っていてくれている……
姉の喜びを遮るのは心が痛むが、ためらっているわけにもいかない。
「姉さんの頭の良さは才能なんだよ。俺なんかじゃ足元にも及ばない」
「そんなこと……」
「そんなこと、あるだろ」
俺は姉さんをまっすぐに見据えた。
「俺にとって姉さんは憧れなんだ。その憧れの人に道を踏み外させたくない。弟の俺のせいで姉さんを追い込むようなことにしてしまったら、後悔してもしきれない」
俺の表情は、姉にどのように映っただろうか。
悲しんでいるように見えただろうか。それとも怒っているように見えただろうか。
そのどちらでもいい。これで俺を避けるようになってくれれば、紡姉さんの人生は順調になる。
俺はもう紡姉さんを傷つけない。普通の姉弟になるんだ。そうすれば、姉さんはいつか素敵な人を見つけて、幸せになってくれるはずだ。
……以前の俺は、そんなことを考えたら落ち込んでしまい、姉さんのことを強引に奪ってしまいたくなる衝動に駆られていたと思う。
成長したんだ。離れて暮らしていた、この数年間で。
この成長を無駄にしてはいけない。
「巧くんにだったら何をされてもいいの。巧くんがして欲しいこと、何でもしてあげたいの」
「俺だって同じだよ。姉さんにしてあげたいことはたくさんある」
「私たち、同じ気持ちよね?」
「ああ」
「だから、姉と弟なのに、恋人同士になったのよね」
それを言われると言葉に詰まる。過去の話だ。
俺と姉さんが特殊な間柄だったということは、言われてしまえば言い逃れのしようがない。
問題なのは、その過去のことが発覚した後も、こうして姉さんが俺を誘惑してくるという事実だ。
俺と姉さんが離ればなれになったのは、そういうことを繰り返さないようにするために周囲が計らったためだということは姉さんも分かっているはずなのに。
「それがダメなことだって、普通じゃないって、思い知らされたじゃないか」
俺と姉は、お互いの思いとは裏腹に引き離された。気持ちだけではどうしようもないことだってある。俺はそれを思い知らされたのだ。
「普通かどうかって誰が決めるの?」
「回りの人たちだよ」
俺は姉から目をそらした。
「姉弟や兄妹は、必要以上に仲良くなったりしない。恋人になったり、しちゃいけないんだ」
「巧くんは私との過去を後悔してるの?」
「……してるよ」
「本当に?」
姉の視線が俺を射抜くように鋭い。普段は温和だが、まじめな話をするときは目じりが上がり、鋭くなる。
この時の姉が一番美しいのではないか。そんなことをぼんやりと思ってしまうほど、玲瓏なる美貌だった。
だが、その美しさは、絶対に俺のものにはならない。俺たちは実の姉弟なのだから、それは許されないんだ。
理解した時は悲しかったが、成長したいま、世の中にはあきらめざるを得ないことだってあると悟ることが出来た。
「姉さんを泣かせた。そのことは本当に後悔してる」
別れ話を切り出した時、離ればなれに暮らすことになったとき、姉は俺を見てさめざめと泣いた。
必死で涙をこらえ、弱気な姿をみせないように努力し、それでもこらえきれずに涙をこぼす姉を、俺は痛みとともに思い出す。
「もう姉さんにあんな顔をさせたくないんだ」
「私を泣かせたことを後悔してくれてるの?」
「……あぁ」
「嬉しい」
真面目に締まった姉の表情が、緩む。躊躇なく無防備な喜びを表現し、瞳がすぅっと糸のように細くなる。やや紅潮した頬に浮かぶおっとりとした笑みが、もとよりの美貌に華やかな愛らしさを混ぜる。
可愛らしいなどという凡庸な言葉では表しきれないほどの女性の色気に、くらくらとしそうだった。
「なんで喜ぶんだよ」
「だって、巧くんの本当の気持ちを知ることができたんだもの」
「本当の気持ちって」
「私があの時に泣いちゃったのは巧くんのせいじゃないわ」
「えッ」
「私はね、巧くんのことが好き。弟としてじゃない。うぅん、弟としても、一人の男性としても、好きよ」
俺たちが付き合うことになったときと全く同じ言葉の内容だった。今まで何回、この言葉を姉さんから聞いただろう。付き合っていた時に、お互いへの想いをどれだけ囁き合っただろう。
抱えきれないほどの恋心がたっぷり含まれた愛の声だ。
胸が熱くたぎり、バクバクと心臓が早鐘を打ち始める。姉の細くなった瞳の端に微かな涙が浮かんでいるのが見えた。
「この気持ちが変わったことはないわ。巧くんだって変わっていない。だから、そんな顔してる……そうでしょ?」
「……」
「私はね、前みたいに巧くんと一緒にいたい。手を繋いだりデートしたりしたいの」
「な」
「巧くんと結ばれたいの。この気持ちは、絶対になくならないわ」
姉の言葉は俺の胸へ突き刺さる。昔の俺なら素直に喜んでいただろう。
だが、もう……
「不可能だよ」
「それ、本心?」
「うん。俺だって、できることならそうしたい。姉さんのことを思う気持ちは変わっていない」
「……」
「それで姉さんが喜んでくれるのなら、いくらでもそうしたい。だけど、俺達の関係が戻るのは許されないんだ」
「誰が許さないの?」
「そんなの決まってる。世間のみんなが……」
「世間のみんなって、そこらへんに住んでる人たちのこと?」
「ああ。世間一般の、大多数の人たちだ。その人たちに……」
「「「許されるよ」」」『』
「はッ?」
即座に否定されたことへの驚きより、声の質が変わったことに驚いてしまう。
姉さんの声と、もう二つの声が全く同時に重なったのだ。
ついさっきまで聞いていた声だ。
「この学園に入るのなら、許されるの」
「たとえば私が兄さんのことを好きだったとしても、この学園に入りさえすれば、許されるの」
「真姫、結ッ」
いつの間にか俺の両脇に真姫と結が寄り添っていた。
ぐい、と体後ごと押し付けるように、腕を抱え込まれる。身動きが取れない。
俺の前面から体を預けてくる紡姉さんに、俺の左脇にすがりつく真姫、右脇に絡みつく結という構図だ。
特に真姫はスポーツをしていて、それなりに力もある。ぎゅうぎゅと押し付けられる柔らかい体には、しっかりとした力がこもっていて、無茶をしないと引き剝がせそうにない。それに、無理に引き離そうとしたら怪我させてしまうかもしれない。
俺は観念して身動きするのをやめた。
「お前たち、喧嘩してたんじゃ」
「あれは演技だよ」
俺の右腕にしがみつきながら、あっさりと結が言う。
「演技?」
「私の作戦よ。二人と相談して作戦を練ったの」
紡姉さんが誇らしげに胸をそる。
「いったん巧くんの気を反らしておいて、二人でじっくりと話をするっていうね」
「作戦ってなんのために?」
「兄さんの本当の気持ちを知っておくため」
真姫が俺の腕に胸を押し付けてくる。俺の左腕が豊かな柔らかみに挟み込まれる。相手は実妹だとわかっていても、その乳房の感覚は、女の柔らかさが息づいていて生々しい。
「普通の兄妹はどんなに想いあっていても、成長したら離ればなれになってそれぞれの道を歩くけど」
ぐいっと俺の両腕に絡みつく細い腕は、妹たちの意思を感じさせるように強く抱えられている。
「この学園ならそんな悲しいことは起きないの」
「こ、この学園なら?」
「この学園に入れば、結たちは胸を張って巧兄にかわいがってもらえるの。兄妹で愛し合ってもいいの」
「は、は? 兄妹で愛し合っても……?」
訳が分からない。この学園に入れば、兄妹や姉弟で愛し合っても許される? どういう理屈だ?
そんな治外法権みたいなこと、実際にあるのか?
「もちろん誰でも入れるわけじゃないわ。この学園に入るにはある条件があるの。それをクリアすれば、無事に入学できるのよ」
紡姉さんの声のトーンは、さっきまでの名残か、すこし上ずっている。いつも冷静、色っぽくて艶やかで、それでいて大人な姉さんにしては、熱っぽい。
真姫と結の声は落ち着いたトーンである。が、どこか普段とは違う。
いつもの真姫は、俺をみる瞳は冷静で、声ももっとハキハキしている。上ずった声と、やや赤見を帯びた頬、そして緊張のためか硬めの表情の真姫は、何だかふわふわした様子だった。
結の声も、普段の元気の良さよりも上せたような心もとなさの方を強く感じる。恥じらいと期待が入り混じっていて、女っぽさを感じた。
「もし私たちみんなが巧兄さんのことが好きで、大好きで仕方なくて……兄さんにとって姉さんが一番だったとしても、それでもみんなが一緒にいたいって同じ思いを抱いてたのなら」
「そして巧くんが、そんな私たちのことを大事って思ってくれるのなら」
「結たちみんな、一緒に大好きな巧兄と居られて、たくさん愛し合えるの」
「それがこの学園……IT学園なのよ。巧くん」
唐突な告白である。意味が分からない。理解が追い付かない。
待て待て。どういうことだ?
もしもって言っていたから仮定の話か。いやしかし、もしもそうならなんだって?
この学園に入学すれば?
結ばれることが出来る?
俺と?
みんな?
紡姉さんや、真姫、結と?
実の姉妹と?
「混乱させてごめんなさい。兄さんをだますようなことをして、本当にごめんなさい」
「だ、だます? なにを、どういうふうに?」
だまされた自覚が全くない。何を言っているんだ真姫は。
「巧兄さんが辛い思いをしたのに、それを蒸し返すようなことをして」
「いや、それは……俺が悪いんだし、真姫が謝るようなことじゃ」
紡姉さんは、身動きできない俺の胸元に頬を擦りながら微笑む。
「そうよ。巧くんは私たちのことをいつも想ってくれているの。ね?」
俺を見る姉の顔には笑みが浮かんでいる。
今でこそ冷静に振る舞っているが、姉さんにとっては思い出すのもはばかられることだったのではないか。
「……俺は、紡姉さんも真姫も結も、みんな大事に想ってるよ」
俺と姉の関係は、ひっそりと行われていた。
そのことについてバレたのも、それによって兄妹みんなが離れ離れになったのも、俺のせいだ。
だから、いつ誰にどう言われようと、それについて弁明はしないと心に決めた。責められて当然。そう思っている。しかし、こんな風に……謝られたり、穏やかな笑みを浮かべるような反応は全くの想定外だった。
「ごめん。整理させてくれ。全く状況が理解しきれないんだ」
「うん。混乱させてごめんね」
「真姫」
真姫が間近から見上げる。普段とはギャップのある物憂げな表情が、真姫の整った顔に見合っていて、息を呑むほどの美貌である。
「俺がこの学園の推薦に受かったっていうのは、本当なのか?」
「うん」
「俺は入学の説明会に参加するためにここに来たんだよな? そのために真姫が俺をここに連れてきたんだよな?」
「うん」
「パンフレットではそんなのどこにも書いてなかったぞ」
「それは、説明会で詳しく教えてもらうことだから……」
真姫は目を伏せ、俺から視線を一度はなす。
……つまり、説明会を俺より前に受けて、その内容を知った上で俺を連れてきた、ということだから。
「……そもそもこの学園って、一体なんなんだ?」
「それは……」
と、真姫が言いかけたタイミングで、こつんと大きい靴の鳴る音が部屋に反響した。
俺達の目が一瞬でそちらに集中する。
「とても仲睦まじいご様子で何よりですわ」
おっとりとした穏やかな声、柔和な笑顔、そしてややふっくらとした女性らしい体型を、白衣に包んだ女医のような格好をした人が、少し離れた場所にある壇上にたっていた。
「伊藤さん。ようこそIT学園の説明会へ。歓迎しますわ」
「え、あ」
俺は自分にくっついてくる姉妹を交互に見る。みんなは、この人が現れても離れてくれない。
「すいません、こんな格好で」
「いいんです。兄妹姉妹の仲睦まじい姿、それは宝物ですから」
反応がおかしい。この女性は学園関係者か?
「みんな、離れてくれ」
「どうして?」
「当たり前だろッ。学園関係者の目の前でこんな」
「だいじょうぶッ。許してくれるよッ」
この状況でも三人とも離れようとしない。
そんな非常識な性格じゃなかったと思うのだが、どうしてしまったんだろうか。
「そのままで結構です……と言いたいところですが、説明を聞くのに相応しくない状況ですね」
「ええーッ」
結が不満そうな声をあげる。紡姉さんも真姫も、何故か不服そうである。
「大人気ないなぁ、あの人」
「は?」
「仕方ないわ。おとなしく椅子に座りましょ」
真姫と結、紡姉さんがそれぞれ俺から離れ、壇上から少し離れた椅子へと移動する。
俺は、ようやく皆から解放された。姉のぬくもり、妹の柔肌、吐息、甘ったるい匂いが薄まっていき、何となくスースーした。
姉妹達の体温が薄れていくのが惜しい、とはさすがに言えなかった。
「巧くん、隣に座りましょ」
「あ、あぁ」
「じゃあ私が巧兄の隣に座るッ」
「あ、ずるいッ」
「えへへー。早いものがちだもんねッ」
三人とも落ち着き払っている。混乱しているのは俺だけなんだろうか。
作戦を考えてくるあたり、もしかしたら事前にやりとりがあったのかもしれない。
それにしても、当事者の俺にだけ知らせずにこんな大規模な入学計画を立てるとか、普通はありえない話だと思うんだが。
「それでは、IT学園招待入学生向け学園説明会を始めさせていただきます」
俺の内心の混乱が収まらぬ中、ついに説明会が始まった。
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