IT学園○学部

阿井上男

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第一話

私立IT学園・説明会14

「尽くす、って」

唖然としながら四人の顔をひとりひとり見比べる。

恥じらいにピンクがかった表情の美母、余裕の笑みを浮かべる麗わしい紡姉さん、今にも飛び跳ねそうな元気実妹の結、一人だけやや不安そうな表情の真姫と、四者四様の顔色を浮かべている。

が、共通しているのは、皆が俺へと、何かを期待するような眼差しを向けていることだった。

「待ってくれ。いったい何がなんだか……ッ」

「今はまだわからなくて良いのです」

母が俺の言葉を遮る。

「そうだよッ。今はただ、巧兄は私たちのことを可愛がってくれれば、それでいいの」

「そうそう。巧くんと私たちの本当の関係が、これから始まるんだから」

「ほ、本当の関係って、いったい……?」

俺の疑問に、紡姉さんと結は、飛び跳ねるように抱き着いてきて、返答する。

「こういうこと!」

「そうよ。私たち美少女が、巧くんに、人生の全てを捧げるの。それが、私たちの本来の姿、本当の関係なの」

話しの内容が、全く伝わらない。俺は、目を白黒させることしかできなかった。

俺の左右から抱き着いてくる紡姉さんと結を持て余していると、背中に厚みのある柔肉のたわみが、何度も弾んだ。

「巧さん、私たちは愛し合うために、こうして集まったのですよ」

「り、理事長……」

「んもぅ……名前で呼んでと言いましたのに」

理事長……母さんが、軽く拗ねる。その美貌にうっすらとほの見える若々しい面持ちが、女の恥じらいを含み、俺に際どい衝動を送り込んでくる。

そして同時に、背中に押し付けられたたわみが、女の象徴・乳であることに気づく。

柔軟に形を変えてたわむ母の乳は、触れ合った感触から、美巨乳を誇る姉さんの胸よりも一回り大きいと感じる。柔らかく芯があり、みっちり詰まった母の乳肉が、息子である俺を男として認識し、誘うように瑞々しくうねる。

母は、わざとらしく身をよじり、その頂点にツンと立つ突起をこすらせながら、俺に耳元に口を寄せてきた。

「私たちは、あなたに、真心と愛情を捧げます。一生涯、あなただけを主人と定め、尽くします」

「な、な、な、な」

「あなたには、私たちの愛情を一身に引き受けていただきます。それが、愛し合うために生まれてきた家族に課せられた使命なのですよ」

「愛し合う、ため……ッ」

母の言葉を聞いた瞬間、頭に電撃のようなビリっとした感覚が走り抜ける。

まるで引き金を引いたかのような、何かのスイッチが入ったかのような感触である。

意識が徐々に遠のいていくような感覚と、体の奥底からこみ上げてくるような熱い衝動が、全身を支配し始める。

この感覚、さっき皆とキスしている最中に感じた感覚だ。

「巧くん。私たちの気持ちわかってくれたでしょ?」

姉の声が妖しく脳内に反響する。

すぐ近くから聞こえているはずの声が、まるでどこか遠いところから届いているかのようだ。

下腹部の奥からこみ上げてくるこの衝動は、許しがたい情念を伴ってむくむくと膨らみ始めている。

「巧さんには、これからひとつ、していただくことがあります」

衝動を抑えながらだから言葉が満足に頭に入っていかない。母の声、姉の吐息、結の小刻みなゆらぎ、それらが全て、性衝動に彩られた肉欲となり、俺の身体に広がっていく。

「私たちの中から一人、選んでいただきます」

「……ッ?」

「今夜の枕のお供を誰にするか、お選びいただきたいのです」

「枕のお供? どういう意味です?」

「野暮なことはいいっこなしよ……巧くん。私はもう、あなたのモノだから、どういうことをするのかハッキリと言えるんだけど」

俺はあわてて姉さんの声をさえぎる。姉さんは、特徴的な糸目笑いをこらえもせず、俺の左腕に絡みつきながらむにゅにゅっと胸が大胆に変形するくらいに強く抱き着いてきた。

何をするか……そんなの、この流れで分からないほど、俺は朴念仁ではない。

だけど……まさか、そんな。この中の一人と、今夜、結ばれる?

母の言葉が頭の中で響くも、理解をしきる前に衝動はどんどん膨らんでいく。

だが、と俺は自分の衝動をせき止めた。ダメだ、どう考えてもだめだ。昔、俺は姉さんとのことで、悲しませてしまった。その経験を糧にできなければ、ただの性欲で暴走するケダモノだ。暴走するわけには行かない。

「ねッ、巧兄! 結ね、いっぱい勉強したのッ」

結の高い声が斜め後ろから聞こえる。

顔をそちらに向ける前に、結が俺の前に回り込んできた。

腰のあたりにしがみついてくる結は、上目遣いで俺を見上げる。

「巧兄に気に入ってもらう自信あるのッ! だから結のことを選んでッ」

「結ちゃん。焦りは禁物よ」

紡姉さんが俺の首に腕を巻きつけるようにして抱きついてくる。

「こういう時は経験者が最初に名乗り出るべきだと思うのよ。そう思わない?」

「経験者ってどういうことぉ?」

「巧くんの好みを知り尽くした女こそが、初夜の相手にはふさわしいってこと」

妖艶な笑みである。姉の流し目が、弟の俺を捉えて離さない。

姉の言外のアピールにふらつきそうになってしまう。

「年長者に譲るべきというのなら、私こそ譲られるべきではありませんか?」

母がおっとりと割り込んできた。

「あら。理事長はまだ巧くんと再会したばかりでしょう? もっと日常的なスキンシップを経てからの方がよろしいのでは?」

「お気遣いはありがたく受け取らせていただきます。ですが、善は急げというではありませんか。私は、巧さんと早く打ち解けたいのです。それに、条件は平等なのですよ」

俺の前に体をまわりこませた母は、俺の腕をとり、巨乳の谷間にぐいぐいと寄せる。

豊かすぎる乳房は紡姉さんの胸を凌駕するサイズでありつつ、やわらかさも極上だ。

弾力と弾力の狭間に埋め込まれた腕が、嬉しい感触を脳に伝えてくる。

「巧さんのことであるならば、引くわけにはいきませんもの」

にっこりと微笑む母の目は細く閉じられていて、上機嫌な笑みを湛えている。

が、半開きの目の奥から覗く瞳には、生ぬるい情欲の炎がほのかに伺えた、気がした。

口をゆるく開き、唇をねぶるようにひと舐めする仕草が、男の性欲を揺さぶる。

「成長した息子のたくましさを、今夜、じっくりと母に見せてくださいませんか……?」

母の誘惑に、俺の全身の衝動が限界に達した、ような気がした。

「あらあら、期待してくださっているのですね」

母の視線が低い。

は、として自らの下腹部を見ると、隆起したものがズボンを押しあげ、大きな膨らみを形成していた。

「やだやだ、結のことを見てよお、巧兄ィ」

結は俺の腰のあたりにしがみつきつつ、自らの太ももを開いて、その間のあたりから

スカートがめくれ、その下のショーツが丸見えになる。

ややピンクがかったレースのショーツは結の風貌に見合わず大人っぽい。

「確かめてみて」

結は俺の手を取り、指先を自らのスカート内部へと誘う。

既に頭がぼうっとしていた俺は、抵抗するでもなくその誘いに委ねてしまっていた。

やや汗ばんでいるのか、生々しい感触が俺の指先に伝わる。

「ん……ッ」

結が小さくか細い声を漏らす。まだ子供だと思っていた結が、こんな声を出すとは。

「ね、結も成長してるでしょ?」

得意げに結は笑みを俺へと向けるが、そのほころんだ表情には余裕はなさそうである。

「巧くん、迷わないで。巧くんのベストパートナーは私なの」

姉は結から俺の手を奪い取り、自らの胸に押し当てた。

姉の乳房は母の乳房ほど大きくはないが、服越しにでもわかるほど形は流麗で、何より敏感だった

「ドキドキしてるのがわかってくれた?」

ツンとした乳房の頂点の感覚が、手の平に伝わる。

姉は興奮すると乳房が張る体質だった。

乳房が張り詰め、ツンと立った乳首が布をおし上げて自己主張している。

「あン……ッ」

そこに俺の手のひらが擦れたため、姉がびくりと肩を揺らした。

姉は乳首が敏感で、衣服の上から転がされるとひどく興奮するという趣向を持っている人だった。

思わず昔の光景を思いだし、生唾を飲み込む。

「私ならあなたを誰よりも満足させてあげられるわ」

姉の色香に惑わされそうになる。

「胸のこととあらば、私も自信はございますわ」

母は谷間に挟み込んでいた腕を解放し、自らの胸元に誘導した。

ぴっちりしたスーツのボタンを何個か外し、その隙間から俺の手を滑り込ませた。

たどり着いた先は、実母の乳房を覆うブラジャーの表面である。

水色のブラは母の大人な雰囲気にぴったりで、その表面にあしらわれた模様がちょうどよい刺激となり俺の手を喜ばせてくれる。

母は俺の手をまさぐらせる。すると、

「ん……あ……はぁ、ン……」

母は小さく声を跳ね上がらせた。

「夢のようです……巧さんに……愛する息子に、母の胸を……揉みしだいていただける、だなんて」

おっとりとした母の、欲情をたたえた女の顔は、この上ない興奮を煽り立ててくる。

なんていう美しさだ。

それにこの感覚……ずっと憧れていた、母の胸の感覚だ。

俺は手に広がる感触をもっとたくさん味わいたくて、何度も揉みしだく。

揉みしだくたびに複雑に形を変える母の乳房に、俺はいつしか夢中になってしまっていた。

「今夜、母のぬくもりを味わってくださいませんか……?」

母は大人の色香を漂わせ、実の息子を誘惑する。

思わず頭を縦に振りそうになってしまう。

「やんやん。妹だって頑張れば巧兄を気持ちよくしてあげられるもんッ」

俺の腕を奪われた結は、俺の膝頭にこすりつけるように、自らのスカートの中を押し付けてきた。

結は全身を上下させながら、ショーツに覆われた中でも最も敏感な部位をぐりぐりとこすり当てる。

ぐりゅ、という感触とともに、何かが蠢いた。

「くぅンッ」

結がひときわ高い声をあげる。

一瞬、とろんとした表情になった結は、濡れた瞳で俺を見上げてくる。

「巧兄ぃ、お願い。結のこと、選んで」

結の声が高く、小刻みに震える。

思わず結の名前を呼びそうになり、思いとどまる。

末妹の結は対抗するように元気いっぱいのみずみずしさを振りまき、そして姉が女盛りのしなやかさを武器に迫ってくる。

女性として見てはいけないハズの肉親が、あまりにも肉感的に、俺に誘いかけてくる。

選ぶ、というのが俺の想像とおりなら、この状態で誰かを選んでしまえばそれこそ引き返せないところまで行き着いてしまう。

最後にひとかけら残された理性が、消滅しそうになる中、俺はふと違和感を感じて目を後ろへ向けた。

「……あ」

そこには、ぽつん、と取り残されたように佇む妹の姿があった。

真姫だ。

みんなが俺に迫る中、真姫は一人、寂しそうに俺たちを見つめていた。

真姫の姿は寂しそうで、そして冷静であるようにも思えた。

体の奥底から吹き出しかけていたマグマのような衝動が、一気に冷める。

「……」

俺と真姫の視線が合う。

ハッとしたように、真姫が目をそらした。

俺は反射的に口にしていた。

「真姫」

「えッ」

「!?」

「えぇッ」

四者四様の反応を返してくる。

返答が意外だったのか、皆硬直している。

その隙をついて輪の中からするりと抜け出した俺は、離れた場所に移動していた真姫の前に近寄って、言った。

「真姫、すまないが頼む」

「え……あ……」

俺に負けず劣らず混乱した様子の真姫は、小刻みに体を揺らしていた。

震えているのか。

俺は真姫の肩に手を置き、彼女にだけ聞こえるように囁く。

「大丈夫だから。安心してくれ」

「ッ」

口を震わせ、顔を真っ赤にしていた真姫が、一度俺を見上げた後に小さく頷いた。

「真姫にお願いします。これでいいんですよね?」

今夜のお供、という言葉が俺の想像通りなら、誘惑に乗った時点で取り返しのつかないことになるだろう。

とはいえ皆、乗り気になってしまっている。

この空気を振り払って強引に話をなかったことにするのは、色々と苦しい。

だが流されてしまうわけにはいかない。

ならば一番、まともな状況へと持って行きやすい選択をするならば、真姫だと思えた。

真姫はこの空気の中、唯一流されきっていないように思えたからだ。

「分かりました。今夜の巧さんのお供は、真姫さんということに決定いたします」

母は落胆したような面持ちでもなく、淡々と告げる。

「もう夜も遅い時間です。お部屋までの道は真姫さんがご案内してください」

母が冷静さを取り戻した声音で了承を告げる。

「やーんッ、巧兄のいけずぅッ。今日のために可愛い下着にして準備してきたのにぃ」

「私のことを選んでくれると思ってたのに。残念」

姉妹の嘆きが耳に入り、罪悪感が胸を刺す。

いくら取り繕っても、ふたりを選ばなかったというのは現実である。申し訳なさで暗い気持ちになってしまう。

「まぁまぁ二人とも。私も個人的には残念でしたが、巧さんの意志が第一です」

「それもそうだけどぉ……」

「初夜のお相手は、譲りたくなかったわ」

「ふふッ。真姫さんだってその気持ちは一緒でしたもの。ね?」

「ッ」

急に話を振られて、真姫は目を見開く。

どうもさっきから口数が少ない真姫は、その表情のまま、こくんと一度、頷いた。

「ほら。恋する乙女の気持ちは、同じ女性として尊重しなければ」

「……それもそうだよね。少し悔しいけど、仕方ないことだよねッ」

「ええ。そのとおりですよ。今日は始まりの日というだけのことです。特別な日のひと時は、真姫さんに譲りましょう。私たちは明日からたっぷりと愛してもらえば良いのです」

「んッ!?」

それって……いったいどういうことだ?

「初耳、って顔ね。巧くん」

考えを見透かされたような姉の言葉に、俺はあからさまにうろたえてしまう。

「それに関しては、真姫ちゃんが教えてくれるわ」

姉さんは俺の横に立つ真姫に視線を移す。

「ふたりっきりの個室の中で、ね」

紡姉さんはそれだけ言うと、俺たちから離れていった。

「母さん、私たちの部屋はどちら?」

「あちらにご用意させていただいております。結さんもいらっしゃい」

「はぁい。巧兄、明日は結を選んでねーッ」

明日? 明日って……まさか。

「真姫さんはこの建物の構造を熟知しておりますので、真姫さんにお任せいたします。真姫さん、頑張ってお勤めを果たしてくださいね」

母は、その口元に機嫌よさそうな笑みを浮かべ、妖艶にほほ笑む。さっきまで残念そうにしていたのが演技だったかのように、口の端がくぃっと上がり、とても嬉しそうであった。

「は……はい……ッ」

対する真姫は、目を白黒させて、がちがちに緊張していた。体は硬直し、スレンダーな体をぴぃんと引きつらせ、まっすぐにその場に立ち尽くす。

まるで突発的にセレモニーを振られたかのような緊張ぶりだった。

「真姫ちゃん」

紡姉さんが、髪をなびかせつつ真姫へと流し目を向ける。

「な、なに」

「子供のころからの夢だったんでしょう? よかったわね。頑張りなさい」

「……ッ! ……ッ!」

「次は結が夢をかなえる番だからね。真姫姉、感想きかせてねー」

結はワクワクした表情で真姫へおねだりする。どうも、俺が置いてけぼりのような状態で話は進んでいた。

「あ、あの、俺は……」

「巧さんは、真姫さんを、心から愛してあげてください」

「真姫ちゃんの想いを受け止めてあげてね、巧くん」

「真姫姉の気持ちは知ってるから、結も今だけは応援するね。だけど巧兄、結のことも忘れないでねッ」

さっきまでの熱量が嘘のように、あっさりと母と姉妹たちは引き下がっていく。

やがて、母と紡姉さんと結は、そうやって口々に俺と真姫のことを話しながら奥の扉へと去っていく。

急にガランとして、この空間がだだっ広く感じられた。

その後ろ姿を見送りながら、俺は真姫の顔を盗み見る。

「……」

真姫は、硬直していた。どこか遠くを見るような、半笑いのような、それでいて何も考えていないような、そんな雰囲気である。

さて、どうしたものか。

俺はまだ混乱冷めやらぬ部屋の中、真姫と二人きり、ただただその場に立ち尽くしていた。
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