IT学園○学部

阿井上男

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第四話

目覚め・そして愛しあう兄妹3

朝シャワー中の戯れを終えた後の俺と真姫は、余韻に浸る暇もなく部屋を飛び出た。

本当にもう時間ギリギリだったらしく、普段は余り慌てたりしない真姫が焦っている。

「急いで、兄さん。駆け脚ッ」

真姫は俺の前を、言葉通りに駆け脚で先導する。

真姫はいつでも軽快だが、今日はいつもに増して足取りが軽そうだ。

昨夜の影響はさほどないというのは嘘ではないようで、安心する。

なにか吹っ切れたような真姫の様子に、俺の心持ちもまた弾む。

俺はまだ射精後のだるさの残る体に鞭打ち、真姫の後を追った。

「こっちだよ」

真姫の後を追い、昨夜の大講堂とは逆の方向に走る。

リノリウムの床を靴音が2つ、高く響く。

さほど走らぬ間に、行き止まりに差し掛かった。

昨夜は暗くて何があるかわからなかった区域の先は壁で、そこには大きい扉があった。

扉には「事務局」と張り出されている。

「ここで手続きするんだよ」

「この学園の事務局って、こんな朝早くから空いてるのか?」

「うん。朝の6時から空いてるんだって」

「それはすごいな」

何のためにそんな早くに開けているんだろう。

そんな時間に来る人なんているのか?

俺の戸惑いをよそに、真姫は慣れた様子で事務局の中に入っていく。

戸惑いながらそれに続くと、真姫はあらかじめ用意してあったらしい書類を事務局の女性に手渡していた。

「チェックアウトの手続きですね。あちらでおかけになって少々お待ちください」

人当たりの良い笑顔で対応してくれる女性の事務員さんは、少し離れた木製のテーブルを示してくれる。

俺たちはお辞儀して、そのテーブルへと向かった。

ざわつく事務局の中、俺と真姫は2人来客用テーブルの椅子に隣り合うように腰掛ける。

真姫は、ようやくほっと一息ついたようで、汗ばんだ額をぬぐいながらふっと頬を緩ませた。

「間に合って良かった」

「これで大丈夫なのか?」

「うん。オーバーしちゃってたらペナルティあるけど、何も言われなかったから平気」

「それは良かった」

俺はうなずきながら、真姫の顔を覗き込んだ。

やや汗ばんだ顔には赤みが差し込み、口元がほほ笑みを形作っている。

全体的にすこぶる上機嫌に見えるのは、おそらく今回、チェックアウトに間に合ったためだろう。

真姫が嬉しそうだと俺も嬉しくなる。

「真姫、ハンカチ使うか?」

「あ、ありがと」

俺がハンカチを手渡すとき、真姫の手に触れた。

「あ」

「ん? どうした?」

「別に、なんでも」

素直にハンカチを受け取った真姫は、なぜか伏し目がちになりつつ額をぬぐう。

真姫の顔は、心なしか赤らみが増したように感じた。

何となく真姫の顔をじぃっと見つめる。

「走ったら疲れちゃった。兄さんは?」

「俺は大丈夫だよ」

「よかった」

他愛ない会話でも、にこやかにほほ笑みを浮かべる真姫が、たまらなく愛おしい。

夕べの混乱や狂乱を思い出すと複雑な気持ちになってしまうが、真姫はまだまだ若く未熟さが残る。

兄として、妹を守ることが使命だと思ってきたし、これからもその気持ちは少しも変わらない。

こんなにまで瑞々しい妹の美しさ、愛らしさを、俺が曇らせるようなことがあってはならない。

真姫の伏し目がちな目を縁取る長い睫毛が、小さく揺れる。

その瞳に映る俺は、どんな顔をしているのだろうか。

昨日の夜の事を思い出しながら、俺は真姫の揺らぐ瞳を覗き込み続ける。

真姫を見つめながら、俺はいつしか深く考え込んでしまっていた。

「兄さん?」

「?」

「あの、あんまりじっと見つめられると、その、照れちゃうんだけど」

「あぁ、悪い」

どうやら視線が露骨すぎたようだ。

「どこか変だった?」

「いや。真姫って睫毛が長いな、って思ったんだ」

「えッ?」

「睫毛が長くて艶がある。目がキラキラしてて女の子っぽい」

「やだ。どうしたの、いきなりそんな」

「手も細くて長いし、透明感のある素肌だよ。真姫はやっぱりすごい美少女だよな、って改めて思ってた」

「本当にそう思ってくれてるの?」

「ああ。俺はお世辞が言えるような器用な人間じゃない」

俺は、真姫の目にかかる髪の毛を指で払いのけつつ、微笑む。

「昨日からずっと真姫のことばかり考えてるんだ」

「え、それって」

「俺にとって真姫は、もうただの妹じゃないからさ」

俺は真姫の頬を手のひらで包む。

これほどの愛情を実の妹に抱くことになるだなんて思ってもいなかった。

「真姫は俺にとって大事な女の子なんだ」

「兄さん……」

「だから、もしさっきみたいになってたら、真姫に見とれてるんだって思ってくれ」

「……嬉しい」

真姫が目を潤ませて、俺の手に自らの手を重ねる。

「私、ずっと自信がなかったの。あんまり女の子っぽくないって思ってたから」

「そんなことないだろ。真姫はかわいいよ」

「ありがと。でもね、本気で好きになった人にはもう彼女がいて、初恋は全然うまくいかなかったから」

初恋の人、か。

「初恋の人が一番大好きな人で、そのまま今まできちゃった。後悔したこともあったの」

それは俺のことだろうか。

「だけど、それが間違いじゃないって信じることができたの」

真姫の言葉は重かった。

俺の過去のこと、真姫の過去の想いが、重なったからかもしれない。

「ずっと同じ人を好きでい続けて良かった。兄さんのことを想い続けて良かった」

そうか。

夕べのやりとりでも聞いた、そのくだりは

「兄さんに褒めてもらって、兄さんの……一番大好きな人の彼女になれて、私、いまとっても幸せ」

「よかった」

俺は真姫の事が、実妹というだけでなく、一人の女の子として好きになってしまった。

純粋な瞳は少しの濁りもなく、俺を信頼のまなざしで見つめてくれる。

これほどに俺を想ってくれる人など、そうそう現れないことだろう。

頭の奥が、じぃんと痺れた。

「真姫。もっとよく顔を見せてくれ」

「に、兄さん……?」

実妹の顎に手を当て、くぃ、と上向かせる。

やや強引な仕草だったが、それに抵抗することなく、真姫は俺をキラキラした目で見つめてくる。

まっすぐに視線を外すことなく見つめ合う俺たちは、周囲にどう見られていることか。

気になることは気になる、が、今は真姫のことしか見えない。

「真姫、目を閉じて」

「は……い」

俺が顔を寄せると、真姫はぎゅっと目を閉じる。

ゆっくりと顔を寄せ、やや斜に顔を傾けて、唇を重ねる。

甘い実妹の唇の味が、口に広がった。

「あ、む……ん……」

実妹の唇の端から小さくこぼれる吐息を、甘ったるい呼気と共に吸い込む。

ちゅぶ、ちゅく、と音を立てて兄妹の唇同士を重ねあわせ、こすらせる。

わぁ、と遠くから聞こえた気がしたが、無視をした。

ちゅく、ちゅぷ、と粘液のねぶる音が重ね合わされた狭間からこぼれる最中、艶めかしい吐息の混ざった舌が、実妹味の唾液をまぶしながら俺の口の中に入り込んできた。

甘く蕩けるような実妹味のキスは、やがて舌と舌が絡み合う兄妹味のディープキスへと変遷する。

「ん、むぅん……ちゅく、くちゅ……にい、さぁん……好き……好きぃ……」

隣り合い、互いの唇を貪りあう兄妹に感化されたのか、遠くの席に座っていた若いカップルがキスし始めたのが視界の端に入った。

唾液と抱きが混ざり合う。今の俺は、甘い妹の汁をすべて吸い尽くしても足りないほどの欲望を抱え込んでいる。

俺の背中に手を回し、ぎゅっと背中に爪を食い込ませてくる実妹の仕草すら愛おしい。

真姫とて同じはずだ。俺のマグマのような欲求を、今の真姫なら受け入れてくれると確信できる。

俺はゆっくりと真姫の唇から自らの唇を離した。

「約束したろ」

「え……?」

「俺の方から真姫にキスする、って」

「う……うん、そうだったよね」

ぼぉ、と半開きの目、赤らんだ頬、唇の端からは銀色の唾液の糸が伸びている。

真姫は気だるそうに口元をぬぐうと、恥ずかしそうに顔を伏せた。

「ありがと、兄さん。とっても嬉しい……」

きらめく瞳は俺を捕らえ、感謝とも欲情とも取れる感情を無言のまま俺へと注ぐ。

たとえ相手が肉親でも、恋心の尊さは変わりようがない。

「兄さんからのキス、素敵すぎて……体が、熱くなってきちゃった」

「ま、真姫?」

「エッチ、したくなっちゃったかも……」

大胆な耳打ちに、俺の鼓動が高く跳ねる。

「ね、兄さん……私、昨日みたいに、兄さんに可愛がってもらいたいの……」

半開きの目に、緩んだ口の真姫は、俺に取りすがるように抱き着いてきた。

余りにも可愛らしい実妹の、あまったるい誘惑に、理性が瓦解寸前にまで陥ってしまう。

「ま、真姫、嬉しいけど、昨日はじめてをもらったばっかりなのに」

「もう大丈夫だから」

「いや、体は大事にしないと」

「こんな気持ちを無理に我慢する方が、体に悪いよ」

ひときわウルウルとした目で俺の胸元に顔を埋める真姫に、俺は硬直してしまった。

こんなところで妹と抱き合っているだけでもまずいのに、手を出してしまったら、いったいどうなるのか。

リスクは重々承知である。こんな場所でしていいことではないと、理性ではわかる。

だが、俺の理性の容量が全く足りていないのが現実だった。

真姫の体を味わってからまだ一晩しかたっていない。

あの生々しい実妹の体の味の誘惑を、当の本人からここまで誘われて、断ち切れるほど俺は聖人ではなかった。

「ま、真姫、かわいすぎる」

「兄さん、好き」

真姫の体は程よく引き締まっていて、衣服越しでもしなやかな女性の肢体の感触が分かる。

背中のラインはピンと反っていて、女性特有の柔らかさが手に伝わる。

真姫の丸みを十二分に帯びたヒップラインに手を添えると、期待と欲情で過敏になった実妹の背中がびくんと跳ねた。

真姫は、純粋な子だ。

真姫、と名前を呼ぼうとした瞬間、がたん、と大きい音がした。

「!?」

驚いた俺たちがそちらを向くと、さっきの俺たちに当てられてキスしていたカップルが、椅子に座ったまま抱き合っているところだった。

男性が女性の後ろに回り込むようにして密着している。

その手が、女性の上衣の裾から中に入り込んでいて、胸の辺りに手の形を浮かび上がらせているのが遠めに見えた。

「いいだろ、姉さん。俺もう我慢できないんだ」

「だめ、だめよ。こんなところ……見られちゃう」

「もう我慢できないんだよ。頼むよ」

「でも、もう事務の人、来ちゃうし」

「好きなんだ、姉さん」

「やぁ、ん……あ……」

女性の胸をまさぐる手の動きは小刻みである。

女性の胸の部分が不自然に盛り上がり、頂点部分が手の形を浮かび上がらせている。

頂上の部位、恐らく女性の乳房で最も敏感であろう部位を、指先で転がすのが想像できる。

「や……ッ、乳首……ッ」

そして転がされるたびに、その女性はビクンビクンと肩を震わせる。

艶やかな美女であった。

懇願するように眉根を寄せ、背後に密着する男性の頭を手で抱える女性は、男性の耳元で何やらつぶやく。

すると、男性は驚いたような顔で俺たちへと視線を移した。

「ッ」

俺たちは慌てて視線を外す。

やっぱりまずい。こんな場所で大胆な真似はできない。

真姫も同意見らしく、名残惜しそうではあるが俺から離れた。

むせかえるような実妹の女の香りが、俺の首元あたりから漂い香る。

その艶めかしい香りに、脳の芯が火照るような感覚を覚えながらしばし無言でいると、靴音が近づいてくるのが聞こえた。

「お待たせしました。伊藤様。レストルームご利用ありがとうございました。こちらが控えになります」

いつの間にかすぐそばに来ていた事務員さんが、声をかけてきた。

と、事務員さんが俺に領収書らしき紙を渡してくれた。

「こちらの書類をどうぞ。招待生徒様用の手続き用書類です」

手続き用書類って入学関連だろうか。

「この書類の提出はパートナーが行っても問題ありませんか?」

真姫が事務員に尋ねる。

パートナー?

「はい。問題ございませんが、パートナー様全員の写真とプロフィールカードが必要です」

「不足していなければいいんですね?」

「はい。招待生徒様は4名様までパートナー登録できますので、もし上限まで登録されるならば全員分必要です」

「わかりました。ありがとうございます。後日お持ちしますね」

「よろしくお願いいたします」

俺たちみたいな若造に慇懃なまでの丁寧な対応をしてくれるものだ、と感心する。

事務員さんが去ったあと、真姫は椅子から立ち上がった。

「さ、用事は終わったし、朝ごはんでも食べに行こうよ」

「ん、あぁ。そうだな」

忘れていたが俺たちは昨日の夜、何も食べなかったんだ。

もう朝も遅い。

混乱と狂乱で薄れていた食欲が、自覚と共にこみあげてくる。

それは真姫も同じようで、お腹の虫鳴るのが聞こえた。

あはは、と照れ臭そうに笑う真姫にほほ笑み返す。

「カフェなら空いてるよ。そこでいい?」

「ああ。案内してくれ」

「わかりました」

真姫は上機嫌で俺の前に立つと、ん、と手を差し出す。

一瞬なんのことかわからなかったが、俺は何となく察して、その手を取る。

「行こう」

手をつなぎ、指を絡める。

俺たちは恋人のような手のつなぎ方のまま、事務局から離れた。
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