お姫様になってもいいですか?

卵丸

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藤野先輩は止まらない

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 僕は目を泳がせてさっき言ってた言葉を再確認した。

「マネキンになるとは何でしょうか?」

 藤野先輩は僕の顔を見つめながら説明してくれた。

「俺さ、最近男性用のコスチュームを作るの飽きてしもてな女性用のコスチューム作りたいな~と思ったんやけど俺が女の着てたら流石にキモイやろ?せやから可愛いアキちゃんにコスプレを頼みたいなぁ~って思てん!どうやろか?」

 その言葉にときめいたがそんな事よりも気になった言葉があった。

「藤野先輩はコスプレをするんですか?」

「せやで!結構人気あんねんで、見てみるか?」

 藤野先輩はスマホでコスプレ衣装をしている写真を僕に見せてくれた。人気があるゲームやアニメのキャラやふざけてガリガリアイスの丸坊主キャラまでしていた。

「コスプレの幅が凄いですね!」

 藤野先輩は褒められて照れながら僕の背中をバシバシ叩いてきた。地味に痛い。

「せやろ せやろ!普通にコスプレしてたら人気出て、色んなのしてたら結構バズってもうてん!」

 彼のウキウキした顔に僕も少し惹かれてしまった。そのせいか、藤野先輩に少し無茶振りをしてしまった。

「女性用のコスプレを作るなら、僕ドレスが着たいです。」

 その言葉に先輩は顔をポカンとしてしまい僕は慌てて言い訳をした。

「いや、あのですね小さい頃に見ていたプリンセスの服が可愛くて憧れていて・・・って何言ってるんでしょうね!」

 僕は頭をかいて笑って見せると先輩は子供の様な笑顔でガッツポーズをして僕に宣言してきた。

「めっちゃ具体的やし俺もドレスは作った事無いから燃えてきたわ!アキちゃんに似合う可愛ええドレス作ったるな!」

 藤野先輩は鼻息を荒くして提案してきた。

「なぁなぁ創作映画さぁ中世ヨーロッパの劇やん?せやから台本は俺が少し考えてリーダーに提案してみるわ!」

「提案とは?」

 藤野先輩はイヒヒと笑い人差し指を自分の口に指していたずらっ子の様に言った。

「次のサークルまでのお楽しみ♪」

 僕はその笑顔にドキッとしてしまった。

「・・・今日はありがとうございました。」

 僕が出て行こうとすると「ちょい待ちい!」と止められた。

「なんでしょうか?」

 藤野先輩は苦笑いをし、頬をポリポリかきながら言ってきた。

「アキちゃんそのまま帰んの?」

 今の僕は三つ編みをしているワンピースの少女になっていた。僕は顔を赤くしてお礼を口にした。

「・・・言ってくれてありがとうございます。」


 *

 授業が終わった後、女性二人がファッション雑誌を見ていた。

「このドレス可愛くない?」

「確かに可愛いけど、これは兎菓子 真里亜とがし まりあちゃんだから似合うんじゃないかな?」

「確かに真里亜ちゃんパワーはあるよ」

 僕は気になり二人の間の雑誌を見ると真里亜さんはウェディングドレスを着ていてにこやかに微笑んでいた。

『やっぱいつ見ても綺麗な人だよな・・・。』

 すると女性二人が困った顔で僕の方を見ていた。

「あのう・・・」

 僕は、はっとして少し慌てながら言い訳を言ってしまった。

「あっいやその最近、兎菓子さん見る様になったな~と思って!」

 すると女性二人もにこやかになり話してくれた。

「確かに真里亜ちゃん最近ドラマでも見る様になったよね!」

「役柄も凄いよね!恋愛ドラマのヒロインをやったと思ったら、ミステリードラマでは頭が可笑しい殺人鬼役をやってたし!」

「私もそれ見た!笑い方が恐ろしかったよね!」

「それも彼女の魅力じゃない?」

 僕は小さい頃から大好きだった人を褒められて彼女たちの言葉が嬉しかった。
 その時僕は無駄な思いを抱いてしまった。

『僕もウェディングドレスを着て結婚式に出たいな・・・。』

 今日は映画サークルの台本を決める日で全員出席していた。リーダーが、皆のストーリーを纏めたが大体はラブストーリーになっていた。因みにこの映画は大学祭で上映する予定だ。

「他に話の内容言いたいやつはないか?」

 すると藤野先輩が手を思いっ切りあげた。リーダーが名前を指摘すると先輩は立ってメモ帳を出して創作映画の内容話した。

「皆が言うとった。転生ものと恋愛ものも、ええかも知れへんけど俺は大学祭やからこそ刺激的なやつがええと思うねん!」

「刺激的とは?」

 リーダーが藤野先輩に聞くと彼は僕の方を振り向き少し微笑んでから言った。

「いっそのこと復讐劇にしようや!!」

 その言葉に皆がざわついた。僕も予想外過ぎて固まってしまったが藤野先輩は気にせず話していた。

「大体の内容はわかりやすいでぇ、女たらしの王子様がある日庶民の女と寝てしまって子供を作って仕舞うんやけど、それをバレたらあかんと思て王子が庶民の女を殺してしまうねん、それを見た片思いだった、庶民の男が王子の女たらしを利用して女装して城に行って寝ようとした瞬間に王子を殺して自分も自殺して仕舞う話やけどどうやろか?」

 一部がおぉ~と歓声をあげたが二年生の女性の先輩が口答えしてきた。

「あんまり刺激過ぎる内容は良くないとおもうわ!」

「何か重すぎるよね?」

 特に女性人の反応が良くなかった。でも、僕は先輩の意思が分かった。

『藤野先輩は僕こと思って言ってくれている!それに僕もお姫様みたいなドレスは着たい!!』

「おっ椎名くんも何かあるのか?」

 僕はいつの間にか手を挙げていた。慌てて僕は意味わからなくなりながら話していた。

「王子の女たらしはいいんですけど、庶民の女性を殺すんじゃなくて嫌がる庶民の女性にキスをして、それを見た両思いの庶民の男性が腹を立てて、王子の誕生の舞踏会で国の人達全員参加できるパーティで王子がある女の人に一目惚れをして踊って唇にキスをした後に男だと暴露して王子はショックを受けて復讐劇は終わる・・・でいかがでしょうか?」

 僕は息継ぎを余りせず早口で話してしまってから、皆があんぐりしているのに気づいてしまった。

「あ・・・・あのう」

 意外にも僕の内容を賛成したのは柚木さんだった。

「良いじゃん!面白そうだし、これなら老若男女問わず見れる内容だよね」

 柚木さんの言葉に女性陣から賛成の言葉が絶賛した。

「それなら楽しそうだし良いかな」

「私嫌がる庶民女性やりたーい!」

「藤野のはちょっと後味悪いもんね、断然、椎名君のやつが良い」

 その結果僕の内容が採用されて舞踏会のシーンは野々原ののはら先輩の別荘でする事になった。後は役決めだが多分難しいと思われた。理由は同じ黒色の髪なのにサラサラで睫毛が長くて肌も白くて唇が薄い爽やかなイケメンでアイドルも顔負けな美男子八雲 恭弥やぐも きょうや 先輩がいるからだ。絶対に女装する庶民男性は彼に決まるであろう。

『八雲先輩は美人系だもんなぁ』

「皆はどの役やりたいか手を挙げてくれ!」

リーダーの言葉に皆がシーンとしていたが藤野が真っ直ぐ手を挙げた。

「庶民男性役はアキちゃんがええと思います!そして女たらし役は恭弥がええと思います!」

八雲先輩が驚いた顔をした後に藤野先輩を睨んでいて怖かったがそれがまた結構絶賛だった。

「八雲君大体ナレーションだもんね」

「恭君の女性を口説くシーン見たいかも!」

「八雲やれよ!絶対面白いから!」

「椎名君も綺麗系ではあるもんね!」

「なぁリーダー藤野が言ってたやつでいいんじゃね?」

「・・・確かに面白い出来にはなりそうだな特に女たらしの八雲は俺が見てみたいかも」

リーダーは笑いを堪えながら二役の名前を書いて決定とホワイトボードに書いた。

八雲先輩は藤野先輩を睨んでいたが完全に無視をして僕にピースサインを送っていた。
僕も皆にバレない様に小さくピースサインを送ったが鬼の様に睨んでいる八雲先輩にはばれてると思う。

『改めて思うと僕は八雲先輩にキスをするんだよね!・・・どうしよう』
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