君に噛み跡を遺したい。

卵丸

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営業のエースは・・・・・。

番外編 結衣のおつかい

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「あれ、かなちゃん書類を忘れてるよ」

隆志はダイニングテーブルに置いてあるファイルに入っている書類に気づいて、会社まで持って行こうとしたが、スマホから電話が鳴った。

「はい、箕輪です。・・・原稿ですか?はい、もうすぐ短編が終わる予定です・・・ええっ!?夕方に取りに来るんですか!?あっあっあ・・・頑張って終わらせるので、暫くお待ちくださーい!!」

それだけ言うと隆志は慌てて自分の部屋に戻ってしまった。 それを絵本を読んでた結衣はしっかり見ていた。

「・・・ママ、困ってる・・・・・結衣、届ける!」

結衣は隆志のズボンのポケットに入ってある名刺を持ってセイメイブルーの顔型ポシェットに入れ、次にクローゼットの奥に隠してあるクッキー缶の中から隆志のへそくりの二万円もポシェットに入れてファイルを片手に持ち、隆志にバレないようにこっそり出ていった。生憎、要の母親と父親は買い物に出掛けていたので知る由もなく結衣は一人で書類を届けに行った。
駅は要と何回か出かける時に行ったことが有った。結衣は駅員さんに名刺を見せて説明した。

「ここに行きたいんけど、どうしたらいい?」

すると駅員さんはにこやかに丁寧に教えてくれた。

「この会社に行くなら三回目で止まる駅で降りて、たい焼き屋さんが有るからそこを真っ直ぐ進むと、この会社に着くよ。」

「ありがとう・・・どうやって電車に乗ればいいの?」

その駅員さんは切符の買い方も丁寧に教えてくれて、電車の中まで着いてきてくれた。

「気をつけて行くんだよ。」

「ありがとー!!」

結衣は駅員さんに手をブンブン振って歩いて行ったがたい焼き屋が分からなくて自転車に乗ってたおばちゃんに聞いた。

「たい焼き屋さんはどこにあるの?」

おばちゃんは自転車から降りて一緒に連れて行ってくれた。

「ここだよ、お嬢ちゃんはたい焼きを買いに来たの?」

「違う、ここに行くの!」

結衣は名刺を見せるとおばちゃんは少し驚いていた。

「結構、歩くけど大丈夫かい?」

すると結衣は元気な声で宣言した。

「結衣は強い子だから大丈夫!!」


おばちゃんと離れた後、結衣はテクテク会社まで歩いたが大人の歩数で十分くらいかかるので小さい結衣の歩数だと倍以上はかかってしまい、汗だくだし、会社に全然着かなかったが結衣は諦めずに「セイメイジャー」の主題歌を歌って歩いていたが流石に限界が来た。

「・・・・うぅ・・・・会社に着かない・・・・ママに会えない・・・・・。」

すると結衣は良いことを思い付いたがそれは危険な行為でもあった。
結衣はとある男性に声をかけて名刺を見せた。

「あっあのね、ここに行きたいの!抱っこして連れて行って!!」

結衣は疲れて半泣きになりながらスーツの男性に名刺を見せるとその人が飯村だった。

「えっ?・・・氷室絢斗・・・・・氷室の知り合い?」

飯村は混乱しながら結衣を見つめていたが色んな人にチラチラ見られて危険に思い、渋々結衣を抱っこして会社まで行くと丁度良いタイミングで絢斗と要に遭遇した。

***

要は早退をして今、ファミリーレストランに来ていた。

「ママはどれにするの?」

「ん~ママはチーズケーキにしようかな。」

二人で仲良くメニューを選んでいるとヒソヒソと女性二人組が要達の事を話していた。

「ママって事はΩなのね。」

「ヒートしなければいいけど。」

「あの子も可哀想よね、男性が母親なんて。」

「こんな時間帯にいるんだし、幼稚園に行ってないでしょうね。」

「いじめられたんじゃない?」

嫌味しかない会話は全部、要に聞こえていて堪えるのに必死になってベルを押して、店員さんにメニューを言った。
その後、要は結衣が幼稚園に行かなくなった事を思い出していた。

それは参観日の事、母の日が近かったので幼稚園では折り紙のカーネーションを作って「お母さん」に感謝を込めて渡す行事をしたのだが・・・

「ママ、いつもありがとう!」

「結衣、ありがとう」

結衣がカーネーションを渡すと他の園児と母親達が異常な目で二人を見ていた。そして参観日が有った次の日、久しぶりに要が迎えに行くと結衣は泣きながら要の方に歩いてきた。

「結衣、どうしたの?何かあったの?」

すると結衣は泣きながら話したが内容が残酷だった。

「あのね、・・・優奈ゆうなちゃんがね、結衣のママは男で気持ち悪いから遊ばないって言われて・・・それとね・・・ひっく」

「結衣、ゆっくりで良いよ。」

「・・・先生がね・・・・・・。」

今日、おやつのプリンを運んでいたが結衣は何も無い所で転んでしまい、プリンを落としてしまった。それを見た女性先生は呆れたようにプリンを片付けながらボソッと呟いた。

「Ωの娘だもんね。そりゃあ、変な所で転ぶわ。」

それを結衣の目の前で鼻で笑ったのだ。それがショックで結衣は要を見ると悲しくて泣いてしまったのだ。

「おめがはおバカにされちゃうの?」

その言葉で要は悲しくなりながら自分の娘を抱きしめた。すると結衣も要を抱きしめ返した。

「・・・結衣は幼稚園行きたくない?」

「うん、行きたくない・・・。」

それかは結衣は幼稚園を辞めてしまって、今は箕輪家で一日中暮らしている・・・。


「マ・・・ママ、お子様ランチのオムライスに旗付いてたよ!」

結衣の声で我に返るとテーブルの上にチーズケーキとホットコーヒーが届いており、結衣の前にはお子様ランチとオレンジジュースが届いていた。

「おお、良かったね。じゃあ・・・手を合わせて・・・・」

「「いただきます!!」」

結衣はスプーンでオムライスのチキンライスをボロボロ零しながら食べていたが目を輝かせていた。

「おいしい!!」

「そうか、美味しいんだ。」

すると結衣はスプーンでオムライスを掬って要の方に近づかせた。

「ママ、あ~んして!!」

口元がケチャップ塗れの娘が愛しく思いながら要はオムライスを食べた。

『・・・せめて、公園でお友達が出来れば良いんだけど・・・その前に会社の付き添い失敗出来ないな・・・。』

「・・・ママ、おいしい?」

何も言わなくなった要が心配になり結衣は恐る恐る聞いてきたので慌てて笑顔で答えた。

「すっごく美味しいよ、ありがとう結衣。」

すると結衣はとっても愛らしい顔で要に言った。

「やっとママ笑ってくれた!」

その言葉で少しは結衣の前では笑顔でいようと思う要だった。
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