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第三十五話 クエストと順位
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アカデミーの学生は、学内外からアカデミーの学生に向けて依頼されたクエストを受注することができる。
アカデミーの外にある職種である冒険者が受けるモノと形式は酷似しているが、元より冒険者システムが参考にされているのだから当然だ。
学外の者からはアカデミークエスト、学内の者からは単にクエストと呼ばれる制度が存在するのは、アカデミー創立の理念が理由である。
かつて人や魔による争乱が絶えなかった時代と比べ、今のティアマート大陸は平和だ。
だが、現代もティアマート大陸を襲う脅威が完全に消え去ったわけでなく、至るところにその影が見え隠れしている。
そんな脅威に対処し、大陸の平和を守る人材を育てる、というのがアカデミーの存在意義だ。
その存在意義を学生に理解させ、学園の支援がある内に経験を積ませるためにクエスト制度が作られた。
基本的に人というのは経験によって学ぶ生き物だ。
それはこの世界でも変わらないため、クエストを通して人助けを行い、それにより依頼主から感謝の言葉や報酬を貰うことは、アカデミーの学生達の卒業後の進路において良い経験になるだろう。
そんなクエストを受ける意欲を高めつつ、学生達への支援としてあるのが、依頼達成報酬としてアカデミーから追加で与えられるポイントだ。
「ふむ。クエストの難易度と付与ポイントの数値の関係性は変わらない、か」
クエスト内容が書かれた紙が貼られた掲示板を見渡しながら、思わず独り言ちた。
感覚的な話だが、クエストの難易度に対して付与されるポイントの数値はゲームの時と変わらないように見える。
簡単なクエストはポイントが低く、難しいクエストはポイントが高い。
アカデミーがある学園都市内でのクエストはポイントが低く、学園都市から離れた場所でのクエストはポイントが高い。
クエストとポイントの関係性は大体こんな感じになっている。
学生達の背後にはアカデミーがついており、そのアカデミーにはアカデミーの卒業生達やアカデミーの創業者一族、そしてアカデミーがあるエクシード皇国がついている。
これらの存在がついているアカデミーの学生達は、同じような活動をしている冒険者達よりも手厚く守られているのは間違いない。
「……この時点で貼られていたのか」
視線を向けた先のクエスト用紙には、学園都市から少し離れた都市での人探しの依頼が書かれていた。
このクエストは、ゲーム本編のメインストーリー第1章に関連したクエストだが、今はこのクエストを受けることができない。
俺にクエストを受ける時間がないというわけではなく、このクエストは既に受注している者がいるという意味の実行中の印が付けられていたからだ。
タイミングからして現在受けている学生は、最終的に対象を見つけることができずに終わるだろう。
事前に解決できるかと思ったが、今の学生がいつ終わるか分からないし難しそうだな。
俺という存在自体が本来の流れから逸脱しているから、そこまでゲーム本編の流れに固執するつもりはない。
だが、ゲームでの知識を最大限に活かすには、本来の流れのままの方が対策を立てやすいのも事実だ。
被害を受ける者を減らすには事前に対処するのが一番だが、その結果予想外の事態が起きてしまい、逆に被害が拡大してしまう可能性もある。
そのため、基本的には対策を用意しつつ待ち構える受けの姿勢で臨むつもりだ。
この人探しクエストも同様で、第1章が本格的に動き出す前にやれることはやっておこうと思う。
「今日皇女様に会えるなら楽なんだがな……ん?」
寮に戻ろうかと思って掲示板に背を向けると、俺と同じように掲示板を見ている者達がいた。
1人は青髪のイケメン槍使いであるクアン・スアハで、もう1人は赤みを帯びた金髪のポンコツ魔法使いアーリャ・グレイストだった。
2人が一緒に見ているわけではなく、それぞれ1人で見に来ているようだ。
クエストが貼られた掲示板は横に広いため、こういうことは普通にあるだろうな。
このまま去るのも何だし、2人のうち近くにいたクアンに声を掛けた。
「久しぶりだな、クアン。クエストでも受けるのか?」
「アンリか。いや、どんなクエストがあるかが気になって見に来ただけだ。そっちは?」
「俺もそんなところだ」
クアンの制服の襟元の徽章に視線を向けると色は金色だった。
「やっぱりクアンもSクラスだったんだな」
「ああ。物理試験の枠で合格した。アンリは?」
「一応魔法枠で受かったな」
それぞれ筆記2位タイ、魔法1位タイ、物理3位で総合順位2位だったので、最も順位の高かった魔法枠での合格になったようだ。
「……魔法枠? 本当か?」
「うん、本当だぞ。魔法が同率1位だったからな。ちなみに物理は3位だ」
「そうか。俺は物理が2位だったから物理枠だ。他の2つは4位以下だな」
クアンは物理試験の最後の実戦試験は脱落したが、実戦試験の評価はオマケみたいな扱いらしいから、他の物理試験項目の多くでクアンの方が俺より上だったのだろう。
「なるほど。ちなみに物理の1位はフレイヤだぞ。本人が言っていたから間違いないだろう」
なお、アウラは魔法3位タイでの合格だ。
「そうか。流石はセイズ家だな。そういえば──」
「あぁっ! 貴方はアンリ・ラグナローグ!」
クアンが何かを言おうとしたタイミングで、横合いからアーリャの叫ぶかのような大声が聞こえてきた。
おそらく俺とクアンの話し声で存在に気付いたようだ。
「お、お前はポンコツ娘ッ!」
「誰がポンコツ娘ですかッ!? 私の名前はアーリャ・グレイストです!」
「うん、知ってる」
「……イイ性格してますわね」
「なんか褒められてしまったぞ、クアン」
「分かってて言ってるだろ?」
「勿論だ」
「ぐぐぐっ……」
俺とクアンのやり取りにアーリャの唸り声を上げる。
せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ。
「アーリャは魔法枠でのSクラスか?」
「コホン。ええ、魔法の名家たるグレイスト家の娘ですので、当然ながら魔法枠での合格です」
「そうか。何位だったんだ?」
「3位ですわ。そういう貴方は? 見たところ同じSクラスのようですが?」
「俺か? 魔法の同率1位での合格だ」
「……」
クアンの溜め息を横で聞きながら、硬直してしまったアーリャを慰めるようにポンっと肩に手を置いてやった。
ドンマイ。
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